UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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「俺も早く異世界で冒険したい!」

 骨は待ってろ。もうすぐ出れるから

「灰の方は何時帰ってくるのですか?」

「ネームレスさん、はよ」


火防女/誘導

 

 

 

 生えでる岩々、墓標のように突き刺さる剣や杖の武器の数々、静寂が支配するその空間で一人の女が祈りを捧げ続けていた。

 

 ナザリック地下大墳墓・第六階層『最初の火の炉』

 至高の四十二人、その一人であるネームレスにとって第二のマイルームと言えるその領域にはただ一人だけそこにいる事を許されたNPCがいる。

 領域守護者という肩書きはあれども、守護者としての行動は一切無く、ただ祈る事だけを望まれたNPC。

 名をレティシア。ネームレスに創られた火防女としてのNPC。ユグドラシル時代においてはネームレスのジェスチャーに反応したジェスチャーをするかこの領域の中心にある篝火に祈りを捧げるだけのNPCでしかなかったが、ナザリックが異世界へと転移した現在、彼女はほかのNPCとは違うものになっていた。

 

 

「……灰の方」

 

 

 ネームレスが彼女に記したフレーバーテキスト。それは彼女がネームレスと同じく嘗ては違う世界違う時代で生き死した存在だったが彼女のソウルをこの世界に現れたネームレスが嘗ての彼女そっくりの身体に注いだ事で蘇ったという旨。

 本来ならばただのフレーバーテキストだったがフレーバーテキストが現実化した以上、彼女はそうなのだ。

 嘗てネームレスが火の無い灰であった時に彼とともに火を消した火防女、それが蘇った者。そういう経緯が現実化した為か、彼女はナザリックのNPCでありながら他のNPCのようにナザリックに忠誠を誓っているわけではない。

 彼女は第一にネームレスを、その次に至高の四十一人に対して敬意を払っている。故に彼らがナザリックを去るというのならば止めはしない、それが彼らの選択ならば止めるというのは間違っていると判断しているからだ。

 

 だから、彼女は種族もあってナザリックの他のNPCから浮いている。

 さて、そんな彼女がいる領域に一つの人影が訪れた。

 

 

「確か、レティシアだったか?」

 

「……モモンガ様」

 

 

 魔王然とした黒いローブに身を包んだ白骨の異形、ネームレスと同じくアンデッド種に属するスケルトン系の最上位種が一つ『死の支配者』たる至高の四十二人が一人にしてナザリックの最高支配者・モモンガ。

 慈悲深い声音の彼に彼女は一礼する。

 

 

「……ふむ、ネームレスさんがいないがどうだ?」

 

「はい、灰の方がおりませんがしかし何も変わりません。ただ、いつもより祈る時間が長いだけです」

 

「そうか……」

 

 

 顔の半分近くを仮面のようなもので隠している彼女の表情は読めず、悲しんでいるのか怒っているのかどうなのかがわからない為モモンガがどう話すべきかを迷っている内に、今度は彼女が口を開いた。

 

 

「モモンガ様。灰の方は……また旅へ出られたのですね。何時終わるともしれない旅を」

 

「…………いや、あの人は戻ってくる。既に伝言(メッセージ)によって話した」

 

「本当ですか……!……あ、いえ、申し訳ございません」

 

 

 不安気で儚げな彼女の言葉に一瞬、モモンガは言葉が詰まりそうになったがすぐにかぶりを振ってつい十数時間ほど前の伝言のやり取りを口にする。

 それは彼女に対して致命的なまでのものであったか、儚げな雰囲気の彼女らしからぬ喜びに満ちた声音を出させた。

 そして、すぐにそんな自分を恥ずかしみ頬を薄く赤らめた彼女にモモンガは軽く心の中で笑みを浮かべつつナザリックの外を自由気ままに旅しているであろう友人に対して罵倒を投げつける。

 

 

「……そういう事でだ、ネームレスさんが帰ってくるまで少し待たせる」

 

「…………いえ、大丈夫です。戻ってくる、そう分かっているのなら……それだけで、私は」

 

「そうか……(帰ったら絶対イチャつくんだろうなぁ……しかもリア充みたいにじゃなくて熟年の夫婦みたいに……)」

 

 

 こういう相手が欲しかったなぁ……。そう心の中に押しとどめ、モモンガはこの領域を後にした。

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 時と場は移り変わり、カッツェ平野。

 竜王国より北西に位置する年中霧が満ちる平野であるが、この地はいわく付きのものだ。それはアンデッドが多発するという事。アンデッドが出るだけならば危険な場所程度で収まるがしかし、アンデッドが集まるとより上位のアンデッドが発生しやすくなるという概念がある為に王国・帝国共にアンデッド退治を重要視している土地だ。

 そういった背景からこのカッツェ平野は両国の冒険者及びワーカーにとって稼ぎ場であるという認識が大きい。

 

 

 そんな土地にて今日もまた一つのワーカーチームがアンデッドを相手に仕事をしていた。

 

 

「クソッ!野郎まだついてきやがるっ!!」

 

「そんな文句言ってる暇があんならもっと速く走らせなさいよ!」

 

「うっせぇ!?これ以上は無理だ!馬が潰れるぞ!!」

 

「……私が飛行(フライ)を使えば……」

 

「駄目です。アルシェ……それは貴女が囮になるという事と同義です…………大丈夫、頑張れば何とかなります」

 

 

 霧に包まれたカッツェ平野。そこを疾駆するのは三つの影、正確に言えば前方を進む二つの影を後方の大きな影が追いかけているという所だろう。

 まず前方の二つの影。それは二頭の馬に二人ずつ乗った人間、装備を見るに恐らくこのカッツェ平野でアンデッド退治をするためにやってきた冒険者またはワーカーなのだろう。そして、そんな彼らを追いかけている影の正体は────

 

 

「……なんで、こういう時に限ってスケリトル・ドラゴンが出てくんだよッ!」

 

 

 無数の人骨によって形作られた竜の如きアンデッド、名をスケリトル・ドラゴン。第六位階以下の魔法に対する絶対的耐性、つまるところこの世界においては一切の魔法が効かないアンデッドである。

 ミスリル級冒険者チームならば充分討伐できるであろうそれに相対して逃げる彼らはそのレベルではないのか?そう考えられるが決して彼らは実力不足という訳ではない。

 万全ならば充分にスケリトル・ドラゴンを討伐出来る。がしかし、彼らはつい先程までアンデッド退治を行っており、それに応じて消耗してしまっていた。

 

 それ故の逃走だが、片や一頭の馬に二人ずつ乗って逃走、片や疲労など存在しない大型のアンデッド。これがただの獣に追われているならばいずれ疲れ諦めるだろうが、難しいだろう。

 さらに言えばここはカッツェ平野。アンデッドの多発地域である。

 

 

────ザシュッ

 

『ヒヒィィンッ!?』

 

「うわぁ!?」「キャッ!?」

 

 

 唐突に二頭の内の一頭、大柄な男と華奢な少女が乗っていた馬がつんのめりそのまま二人は地面に投げ出された。

 流石に修羅場を潜り抜けてきただけはあるのか、双方共に受身はしっかりととった事で落馬による負傷は無いようだ。

 そんな二人が乗っていた馬をもう一頭に乗っている彼らのリーダーであるヘッケランは見て、すぐさま落馬の理由を悟る。

 

 

骸骨弓兵(スケルトン・アーチャー)かっ!クソッタレ!!」

 

 

 見れば馬の右前脚に深々と刺さる矢が一本。ヘッケランはすぐさまそれがこのカッツェ平野に発生するアンデッドの一種、骸骨弓兵だと理解し手綱をさばいて彼らの方へ馬を動かそうとしたが

 

 

「ヘッケラン!私の事はいいです!」

 

「な!?」

 

 

 大柄な男、ロバーデイクの叫びにヘッケランと彼と同じ馬に乗るイミーナ、そして彼と共に投げ出された少女アルシェは目を見開く。

 

 

「アルシェ、貴女は飛行でヘッケランたちと共に逃げてください。ここは私が殿をつとめます」

 

「そんな……」

 

 

 それは自分を犠牲にして生き延びろ、という言葉だ。これがまったく違うチームの人間ならば躊躇なく逃げただろう、しかし今まで共に戦ってきた仲間を置いて逃げ出せるほど彼女は、いや彼らは薄情者になれなかった。

 

 

「ロバー!!」

 

「ヘッケラン!?何故……!!」

 

 

 ロバーデイクの名を叫びながらロバーデイクのもとへ戻ってきたヘッケランとイミーナ。そんな二人にロバーデイクは困惑と責めるような声音をだす。

 しかし、そんなロバーデイクにヘッケランはぎこちない、だが気持ちの良い笑みを向ける。

 

 

「仲間を囮に生き延びた、なんて恥ずかしくて帰れたもんじゃねえよ」

 

「そういうこと。……アルシェ、あなたは」

 

「みんなが戦うなら、私も……スケリトル・ドラゴンには効かなくても補助は出来る」

 

「…………!」

 

 

 全員が武器を構えスケリトル・ドラゴンを見据える。ヘッケランへと走るスケリトル・ドラゴンはようやく殺せる、と言わんばかりに唸り声を上げている。

 決して万全ではない。希望的に見て何とか全員帰還、普通に考えれば半数は死ぬ、絶望的に見れば全滅。そんな状況にも関わらずヘッケランとロバーデイクは笑っていた。

 全員で、生きて帰るのだ、と。

 

 

 

 ああ、だからだろうか。

 

 

 

 その意気や、良し

 

 

 

 スモウハンマー(武技・処刑鉄鎚)

 

 

 

 

 瞬間、カッツェ平野の濃霧を吹き飛ばさんばかりの雷光が迸りスケリトル・ドラゴンが爆散した。

 

 

「は?」

 

 

 そんなありえない光景に覚悟を決めていた彼らの顔は唖然としたものとなり、スケリトル・ドラゴンが存在していた場所から姿を現す何某はそんな四人にとても軽く言葉をかけた。

 

 

 良い仲間だ。仲間を見捨てず力を合わせる、見事だよ貴公ら。

 

 

 シンプルな騎士鎧に青のサーコート、首元に巻かれた赤いスカーフ、そして一際目が向くのはその身の丈以上の大きさを誇る大鎚。

 そんないきなり現れた騎士、それにすぐヘッケランは硬直より戻り騎士の胸元に輝くものを見つけた。

 

 

「アダマンタイト────?」

 

 

 ヘッケランが見つけたのは騎士の胸元に垂れ下がっている一つのプレート。それは冒険者のランクを示すもので騎士が所持しているのはアダマンタイト……すなわち冒険者の中でも最上位のもの。

 すぐさまヘッケランは自分の記憶からこの騎士が何者なのか考えるが、大鎚を持ったアダマンタイト冒険者など何人もいる訳ではなく王国のアダマンタイト冒険者チーム『蒼の薔薇』に所属する戦士(ガガーラン)を思い浮かべたが噂に聞くような体躯には見えない。

 では、いったいどこのアダマンタイト冒険者か。そう、警戒して────

 

 

 獲物を横取りする形になったが大丈夫だったろうか?

 

「……ああ、いや、助かった」

 

 

 何故だろうか。ヘッケランもイミーナもロバーデイクもアルシェも、全員が目の前の騎士へ対する警戒心を失った。

 理由はわからないが、全員それでいいか、などと普段ならありえない事を考え騎士へと近づいていく。

 

 

「……あんたはいったい」

 

「どこのアダマンタイト冒険者よ……」

 

 む?ああ……私は竜王国の冒険者だよ。と言ってもあくまで身分保障の為に冒険者になっただけで国は大して関係ないか……と、私が誰かか。

 

 

 竜王国。騎士の言葉にヘッケランはすぐに竜王国のアダマンタイト冒険者であるセラブレイトを想像するが恐らく別人だ、と考えつまりは新しいアダマンタイト冒険者と納得した。

 竜王国は年中ビーストマンにより襲撃を受けている。もし、そこで大手柄を挙げたのならアダマンタイト冒険者になれてもおかしくはないし偽っているわけでもないのだろう。

 何せ一撃でスケリトル・ドラゴンを破壊しているのだ。ミスリルやオリハルコンではいささか不可能な事だ。

 

 

 私はアストラのセレネ。先も言ったが竜王国の冒険者だが……まあ、身分保障の為になった結果アダマンタイトを得たに過ぎない。さて、君たちは?

 

「お、俺たちはフォーサイト……帝国のワーカーをやってる。……俺はリーダーのヘッケラン」

 

「イミーナよ」

 

「ロバーデイクと言います」

 

「アルシェ」

 

 

 ヘッケラン、フォーサイトの面々の自己紹介を聞いて何度かセレネは頷きその手に持っていた大鎚から手を離す。すると、まるで靄のように大鎚はその場から消えた。

 それにフォーサイトの面々は目を見開くが何でもないように振る舞うセレネにそういうものなのか、と何故か納得してしまう。

 

 

「あー、セレネさん?」

 

 好きに呼んでくれて構わないとも

 

「……んじゃセレネの旦那。あんた、竜王国の冒険者つったけどこんな所になんの用で来たんだ?依頼?」

 

「ちょっと、ヘッケラン」

 

 構わないさ。ふむ、何故ここにいるか、か。まず、依頼ではない。単純に拠点の移動だよ。とある事情でね、竜王国は私を縛れない……だから、こうして他国へ拠点を移せる。

 

「なんと…………拠点を移すとなると王国か帝国のどちらかですね」

 

 

 セレネの言葉にロバーデイクは頷き、セレネが向かうであろう国を二つあげる。

 

 

 ああ、ひとまずはエ・ランテルに向かおうと思っていてね。貴公らは?

 

「あー、俺らはこのまんま帝国に戻りますわ。結構消耗してますし……」

 

 ふむ、では霧を抜けるまで共に行こうか

 

 

 そんなセレネの提案に一切の不安を持たずに賛同するフォーサイト、恐らくはそのスケリトル・ドラゴンを一撃で粉砕させる実力から自分たちのようなワーカーを騙す必要なんてないだろう、と判断しての事なのだろうがしかしあまりにも素直な事だ。

 そんな四人にセレネは頬付き兜の下で笑みを浮かべこのカッツェ平野を四人もの旅仲間と共に────射られた馬にはポーションを使用し無事に足として作用した────進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はてさて。よもや、あのフォーサイトと縁が出来るとは…………関わらなければナザリックに誘い込まれて無残に死ぬ、そんな未来を許容したのだが…………人化しているからか、友愛が湧いてしまうな。

 まあ、帝国での活動の際に寄る辺が出来たのは丁度いいな…………それにしてもビーストマン殲滅の報酬にアダマンタイト冒険者としての地位と自由に動く権利をもぎ取って正解だった。

 竜王国のアダマンタイト冒険者……なんだったか、ペロ助みたいな性癖持ちの人があの場にいて助かった。彼と兵士らの言葉がなければせいぜいミスリル、良くてオリハルコンだったからな。

 

 にしてもこの指輪、確かレベル二十以下ならNPC、プレイヤー、エネミー関係なく攻撃対象に選ばれないとか何とも微妙とも言えない性能の指輪だったが…………この世界では本当に結構重要だな、おい。

 彼らはまったく警戒していなかったし……攻撃対象に選ばれない、がどうやら装備者に対して友好的にさせるとは…………せいぜい警戒はすれども攻撃しようとは思わない程度だと思ったんだがなぁ。

 

 

 捨てずに持っておいて正解だったか。

 

「……?セレネさん、どうかした?」

 

 なに、こうして少しの間だがこの辛気臭い場所を一人で通らずにすんで、よかったと思ってね。

 

「はは!確かに、こんなところ一人で突っ切りたくはないわな」

 

 

 そんな風に笑うヘッケランに私は兜の下で笑っておき、彼らを見据える。

 帝国での活動の際に利用するのは確定だ。しかし、彼らをナザリックで処分するかというのはいささか遠慮したい。彼らは良いチームだ、無論アインズ・ウール・ゴウンに敵うことはないがそれでもとてもよくまとまっていると思う。

 そうだな、原作どおりに事が進めば充分対応出来るがしかし…………そんなのは私がいてもいなくても変わらない。ならば、崩すのもありか。

 と、どうやら霧が途切れたようだ。

 

 

「おや、無事抜けられたようですね」

 

「てことは、ここでお別れね」

 

 ええ。では、皆さん短い間でしたがお世話になりました。

 

「おいおい、セレネの旦那。世話になったのは俺らの方だって、助けてくれてありがとな」

 

「帝国に来た時は、案内する」

 

 ええ、その時はお願いしますよ。フォーサイトの皆さん。

 

 

 彼らの声を背に、私はエ・ランテルへ向けて馬を進める。

 さて、そろそろモモンガさんから伝言がくる頃合だが…………

 

 

『《伝言》────あ、ネームレスさん、聴こえますか?』

 

『聴こえているよ、モモンガさん』

 

 

 噂をすれば何とやら、だな。

 

 

『実はですね…………』

 

『ふむ…………』

 

 

 カルネ村と接触したのか…………で、今はその村の村長と情報交換中、と。ということはもうすぐガゼフ・ストロノーフとそれを付け狙うニグン率いる陽光聖典……か。

 で、カルネ村で名乗った際に使ったのは自分の名で組織としての名前でアインズ・ウール・ゴウンを出した……アレか。この世界には私がいるのが分かっているから自分の一存でアインズとは名乗れないとかそういうのなのか。

 そう、モモンガさんの言葉をかなり好意的に解釈し、私は彼らにどう動いてもらうかを考える。

 

 

『……まあ、少なくとも意味もなく兵士が村を襲うってことはないでしょう…………竜王国で得た情報的に帝国の鮮血帝?は賢王らしいので多分帝国じゃなくて偽装兵?』

 

『偽装兵ですか?……となると何が狙い…………あ、ネームレスさん、またどこかの団体が来たようです』

 

『ん?それじゃあ、伝言を切っても────』

 

『いえ、このままでいきましょう』

 

『……はい、わかりました』

 

 

 どうやらガゼフ・ストロノーフとその仲間たちがやってきたようだな。はてさて。

 竜王国を見た身では、彼ら陽光聖典には生きて欲しいが…………ううむ。どうするか……そもそも私が竜王国で得た情報をナザリックに送った以上、彼らをわざわざ捕らえる必要がなくて………ついでに生かす必要もなくて……ううむ。

 いや、待てよ?わざわざ法国と敵対する理由なんてないわけで…………

 

 

『…………さーん、おーい、ネームレスさーん』

 

『!?ぁ、ああ、すまないモモンガさん。考え事をしていてね、それでどうしたんですか?』

 

『えっとですね。カルネ村に来た団体なんですが、どうやら王国戦士長?の一団らしくて』

 

『ガゼフ・ストロノーフですね。竜王国でも英雄級の戦士と噂されてました…………恐らくは彼を始末する為の偽装兵なのでは?』

 

『なるほど……ですがあの偽装兵の実力を考えても…………そうか、囮部隊ですね?』

 

 

 流石モモンガさんと言うべきだろう。この人は自己評価が基本的に低いが今の御時世の平均を考えるとこの人普通に上の方なんだよな。

 そりゃあ、アインズ・ウール・ゴウンには公務員なたっち・みーさんややまいこさん、教授がいるから仕方ないけどこの人、小卒だろ?

 なのに結構有能なんだよなぁ……ネーミングセンスは悲しいぐらいに終わってるが。

 

 

『王国は結構腐ってるらしいので恐らく法国ですね。人間が生き残る為に人間はまとまらないといけない、けど王国が腐ってるからもう駄目だ。よし帝国に取り込ませよう……とかそういう話でしょう』

 

『…………なるほど。にしても法国ですか……確か、ネームレスさんはプレイヤーが作った国と考えてるんですよね?』

 

『ええ。竜王国で調べた限り六大神、それと戦って相打ちになった八欲王は間違いなくプレイヤーでしょうね。で、法国のプレイヤーはいないと考えて大丈夫ですが……世界級がある可能性は頭に入れといてください』

 

『プレイヤーの遺産ってことですね?……わかりました』

 

『それと、もし法国だった場合……生かして捕縛でお願いします』

 

『……?プレイヤーがいないのなら報復を警戒しなくてもいいんじゃないですか?』

 

 

 まあ、そういう反応だろうね。

 

 

『今はいなくても今後、私たちみたいに来るかもしれないでしょう?それで下手に殺してしまったら…………』

 

『なるほど……人間種のトップギルドが来た場合、間違いなく敵対されますからね……大義名分を少なくする、と言うことですか?』

 

『ええ……まあ、微々たるものなのかもしれませんが』

 

『わかりました。出来うる限り気絶に留めますね』

 

『はい、お願いしますモモンガさん』

 

 

 …………切れたか。さて、何とか陽光聖典を生かせそうだが…………ァ……巫女姫は死ぬわ。

 うーん、うーん……仕方がない。この際、漆黒聖典を釣るための犠牲と考えよう…………すまなんだ。シャルティアに対しての世界級の使用、これは回避させるついでにあの漆黒聖典の隊長が持っているであろう二十の一である槍は何とかして処理する必要がある。

 もし仮に世界級を持っていないNPCが相対して使われれば…………それだけは避けねばならない。

 

 

 嗚呼、まったくエゴいなぁ……

 

 

 私はそう呟いて苦く笑った。

 

 

 

 

 

 

 







 燃えるッ!?

 貴公ッ!、ヌゥっ俺にもか!?

 ……貴公ら一回下がれッ!!



 まさか、石像が火を吐くとは思わなんだ……

 まったくだ。いや、それよりも二体は流石に狡くはないか?

 そういうこっちは三人だろう

 だな


 その男に初めてあった時はただ利用出来る奴が来た、としか思わなかった。
 まあ、話してみるとなかなか面白い奴ではあったな…………だからだろう、奴の召喚に応え共に戦った。


 と、飛んだァ!?掴んだァ!?

 ぬぅぅおおぉぉぉ!!??食べられるぅゥ!!??

 おい、貴公らぁぁぁ!!??


 …………ああ。うむ、まあ、絆されていったのが理解出来た。
 故にこれ以上は駄目だ、私の使命の為にも彼らと共にいることは出来ない……そう判断して私は奴のもとから離れた。その際に用済みの女を殺してな……。



 ほう、貴公か…………多少は賢いと思ったが、そうでもなかったようだな。
 哀れだよ。炎に向かう蛾のようだ。
 そう思うだろう?なぁ、あんた達。



 ああ、クソッ…………せいぜい、足掻け……貴公……






「…………なんだここは」


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