UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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遅くなると言ったな。
セバスの部分、削れば良くね?
成功だったようだよ、チミ。

とある方がダクソ及びブラボのBGMを日本語訳してるんだが、竜狩りの鎧のが辛い。おいこら、蝶共滅ぼすぞ



前触れ

 

 

 

 リ・エスティーゼ王国が王都リ・エスティーゼ。人口900万という国の王都にしては些か地味さしかなく、何か良い所を探そうとすれば辛うじて古き良き都市という事しか出来ないこの王都。

 バハルス帝国やスレイン法国と違って、竜王国のように通りはしっかりと舗装されておらず、雨が降ればすぐにでも泥と化し泥濘むであろう道路が多い。帝国や法国の様にしっかりと整備されていない道路にはその両国を知る者からすればこの国には金が無いのだろうと考えるかもしれない。

 無論、その考えは間違ってなどおらず実際問題金が無い、否わざわざそういった事に使える金が無いのだ。竜王国の様にそういった事に金を使うならば前線の兵士らの為やビーストマンへの対策の為に金を使えというモノがあるわけでなく、ひとえに腐っているだけだ。

 オツムの悪い、目先の欲ばかりに囚われる貴族が多くいるこの国において、こういった事に使える金が無いのだというよりも、草案が通らないので金が出てこない。

 

 と、さて、そのような王国の王都その一角にて一人の老人が歩を進めていた。

 仕立ての良い燕尾服に身を包み、髪も髭も白いがしかしそこに老人の老いを感じられず、よく整えられている。

 そんな老執事────セバスはある事に思い悩んでいた。

 それはつい先日の事、魔術師ギルドへと足を運びその帰りにて出くわした事態について。

 

 そう、それは魔術師ギルドにて〈浮遊板〉のスクロールを購入し、気ままに自らの趣味である都市の散策と称して王都を目的地も無く無造作に歩いていったその先、治安も悪い路地裏へと入ったその辺りでとある建物から放り捨てられた麻袋との出会い。

 無論、何やら意思を持ったマジックアイテムかモンスターの麻袋というわけではない。単純にその麻袋の中身に足を掴まれたのだ。

 別にセバスにはそれと関わる気など一切なかった。少なくとも主より賜った任務に関係の無い事であるから────だが、セバスは彼女に請われたのだ。

 

 助けて────。と、小さく、蚊の羽音程度でしかない程に、決して耳に入るようなものでない程に、だが、それでも、セバスにはその声が聴こえたのだ。

 だから、だから、セバスは助ける事に決めた。

 自らの創造主の様に、自らの心に従って。

 そうしてセバスは彼女を連れ帰ることに決めた。無論、この王都での任務を与えられた相方であり部下であるソリュシャンに苦言を呈されているが。

 さて、しかしセバスが悩んでいる事はそれが全てではない。正確に言えばそれはあくまで前提事項であって本来の悩みはその先にある。

 今日、朝方に拠点へと訪れた二人の男。一人は役人───腐ったケモノであるが────、もう一人は自称店の代表者という男。明らかに自分が助けた彼女を餌にして狩りに来た者らであった。セバスは既にそれらがこの王国での調査で判明した王国に蠢く蛆虫『八本指』である事は理解していた。だがしかし。

 セバスは決して策謀調略に長けてはいない。デミウルゴスやアルベド、パンドラズ・アクター程の知恵者ではない。そして、何よりも甘いのだ。

 だから、セバスは彼らに好き放題言われ、怒りを抱きかといってどうすればいいのか分からずにこうして、外へと出た。

 デミウルゴスやアルベドのような知恵者に〈伝言〉の一つでもすればこの先は違ったのかもしれない……。

 

 

少なくとも、ソリュシャンを納得させることは出来たのだろう────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エ・ランテル、黄金の輝き亭。

 エ・ランテル随一の高級宿屋。そんな宿屋のなかでも最上位の部屋を使っているのは三人の冒険者。現在とある依頼により王国から離れている『白晶』を除いて二人一組の冒険者。

 

 

「ふぅ、リング・オブ・サステナンスをつけていないとやはり疲れるな……」

 

「おや、父上。どうしました? 指輪つけますか?」

 

「ん、いや大丈夫だ」

 

 

 ソファーに腰掛け、用意された温かいおしぼりを瞼の上に乗っけているモモンもといモモンガ。その見かけはナザリックの支配者らしい姿ではないだろう決して。だがしかし、そんなギルド:アインズ・ウール・ゴウンの至高の四十二人であるモモンガではなく鈴木悟というモモンガの姿に、彼の作り出したNPCであるパンドラズ・アクターは笑みを浮かべる。

 やはり、ナザリックの為ではなくモモンガ自身の為に創られたパンドラズ・アクターは他のNPCとは考えも異なるのだろう。

 さて、パンドラズ・アクターもとい『雷迅』アクトと『漆黒』モモンの二人はいくつかの冒険者組合からの依頼をこなして、このエ・ランテルでの拠点である宿屋にてしばしの休息をとっていた。

 北上してきたゴブリン部族連合の殲滅に始まり、トブの大森林の最深部にて超希少薬草の採集の成功、ギガント・バジリスクの討伐。さらにはカッツェ平野から流れ込んできたアンデッド師団を滅ぼすといった冒険者最高位のアダマンタイト冒険者の肩書に相応しい偉業を積み立てた二人は一部では竜退治を成し遂げた『白晶』のセレネと同等またはそれ以上の冒険者であるという声も出ていた。

 

 

「なあ、パンドラズ・アクター」

 

「はい?」

 

「いや、な? この前も言ったがやっぱり冒険と言ったらドラゴンや巨人、大悪魔との戦いだと俺は思うんだよ」

 

「ええ、はい。父上のそういった冒険者稼業に対するロマンは存じております」

 

 

 ネームレスより下賜された竜狩りの大斧の手入れをしながらアクトはモモンの話に耳を傾ける。傾けるというより流している、という表現に近いが決してそこに突っ込んではいけない。

 

 

「なんやかんやでネームレスさんより冒険者を楽しんでて少し引け目を感じるんだよ。で、ナザリックの為にもそういったこの世界での強者なモンスターを調査したい、と思うわけだよ」

 

「なるほど、調査という名目でロマンを求めたい。そういうことですね父上」

 

「い、いや、そこまでは言ってない……うん、そのはず」

 

 

 目を逸らして話すモモンにアクトは軽く肩を竦め―――次の瞬間にはその視線をこの部屋の出入り口へと向けた。

 アクトのその行動の意味を瞬時に察したモモンはすぐさまそのゆったりとした姿勢を正す。そして、数拍おいて扉よりノックが数度。

 

 

「どうぞ」

 

「冒険者組合から至急組合に来てもらいたい、と言伝がありまして……」

 

 

 扉向こうより告げられた言葉にモモンとアクトは顔を見合わせ、二人は首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 冒険者組合より呼び出されたモモンとアクトの二人は組合へと足を運んだ。二人は組合へ入って早々に受付嬢に二階の応接室へと案内され、他の見知った冒険者らとの挨拶も中断し受付嬢の後を追った。

 

 

「『漆黒』のお二人が到着しました」

 

「おお、そうか。入れてくれ」

 

 

 応接室にいるであろう人物から入室の許可があり、そして受付嬢に促されるままにモモンは応接室の扉に手をかけ扉を開き入室する。

 

 

「失礼する」

 

 

 そう一言断って入室したモモンがまず目にしたのは、ここ最近それなりの頻度で顔を合わせている、このエ・ランテルの冒険者組合におけるトップである男、プルトン・アインザック。

 そんなモモンと目が合ったアインザックは、なんとも気さくな表情で口を開く。

 

 

「やあ、モモン君。それにアクト君、待っていたよ」

 

 

 その口調はまるでモモンとアクトの二人と親しみある関係を思わせるようなものでモモンは内心そんなアインザックに苦い笑みを浮かべながらもその手ですすめられるままにアクトとともに席に着き向かいに座る人物に視線を移す。

 

 

「ああ、彼らはリ・エスティーゼ王国大貴族であるエリアス・ブラント・デイル・レエブン候の使者でね」

 

「レエブン侯とは、あの?」

 

 

 アインザックからの説明を受けながらモモンはその使者という人物を見る。

 黒っぽいローブに身を包む中年の男が二人、使者というよりは魔法詠唱者といった風体だ。そんな姿に一瞬モモンは首をひねりそうになったがすぐさま法国より手に入れていた情報を思い返し、レエブン候という人物が王国貴族の中でもやや異端的な考えを保持しているのを思い出して、この使者もその異端的な考えを持つが故なのだろうと納得した。

 

 

「どうも、『漆黒』のモモンです。それでこちらが相棒のアクト(それにしてもレエブン候か……確か六大貴族の一人らしいがそんな貴族から使者?)」

 

「はじめまして、モモン殿。貴方方の御活躍はかねがね」

 

 

 互いに軽く挨拶を交わして、使者の一人が早々に口を開いた。

 

 

「さっそくですが、我々が貴方方にこうして会いにきた理由を話しましょう。

 実は現在レエブン候はとある悩みを抱えておりまして、その悩みを解決する為に実力者であり人格者でもある『漆黒』の御二人に依頼したい、と」

 

 

 指名依頼。アダマンタイトだからこそのそれにモモンは一瞬心が躍りかけたが、すぐさま心を落ち着かせて使者の言葉を振り返る。六大貴族その一人からの指名依頼、しかし使者はいまだ依頼の詳しい内容を口にしていない。

 モモンはリアルで働いていた頃を思い出し、話の内容を詳しく聞いていないうちは首を絶対に縦には振らない、そうモモンは決めた。と、そんなタイミングでアインザックが横から口を挟む。

 

 

「うん? 実力者であり人格者であると考えるならば、他のアダマンタイトのそれこそ『蒼の薔薇』や『朱の雫』、『太陽』でよいのでは?」

 

 

 アインザックの言う通りだった。

 なぜ態々王都にいる、それこそ自分たちよりも前からアダマンタイト冒険者として信頼のある冒険者ではなく、王都からもレエブン候の領地からも離れているこのエ・ランテルの自分たちなのか。

 モモンもアクトもそれが気になった。そんな気配を感じ取ったのか使者らは顔を見合わせ、再びその口を開いた。

 

 

「実は『蒼の薔薇』は別口で依頼を受けており、『朱の雫』は現在依頼で王都におらず……『太陽』は現在竜王国のほうに出向いておりまして……」

 

 

 なんとも単純な理由だ。

 やや、モモンは拍子抜けしつつアクトからの一方的な〈伝言〉を受け取り、この依頼を受けることを決めた。冒険者として一応貴族と繋がりを持つのもありだと考えたからだ。無論、威張りちらすような貴族は御免被るが。

 この選択がナザリックとしても吉となったのは少し先のこと。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、『太陽』というのは? そのようなアダマンタイトがいると言うのは聞いたことがないのですが」

 

「ああ、『太陽』はアダマンタイトじゃあなくてミスリルの冒険者なんだが、その実力はアダマンタイトクラスと『蒼の薔薇』のお墨付きでね。じき、新たなアダマンタイトになると噂されている冒険者だよ。モモン君」

 

「なるほど」

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人の女がその身体内より一つのスクロールを抜き出す。

 そして、それを開いて────

 

 

『────様でいらっしゃいますか?』

 

『セバス様に裏切りの可能性があります』

 

 

 ナザリックの不利益に成りかねないモノを見逃すはずがなかった。

 

 

 

 

 




バレンタインいいよね。
蘭陵王が良き。ちなみにまだ紫式部は当たってないぞ☆

それと、何時かモモンらの依頼である大森林の薬草採集の話も書いてみたい。え?そこに呪腹がおるじゃろ?あれをじゃなぁ……
王国編はキャラが多いねやっぱり。六腕代替あっても二人死んだし

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