UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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もうバレンタインですね。
皆さんはどうですか?楽しいですか?ちなみに作者は家族以外に貰う予定はないです。後、チョコが最近キツイです。

一瞬、UNDEADでバレンタイン回を書こうかな?と思ったんですがぶっちゃけモモンガ一筋のフレーバーテキストにアルベドがなってないので面白みがないと思いやめました。ネームレス?多分、かぼたんとお茶してる


騎士感/既視感

 

 

 

 

 既に王都の空は夕陽の色に染まり、明るかった路地には薄暗さが生まれ始めたころ合い、セバスは王都における拠点へと戻る道すがら今日の出来事を反芻していた。

 今朝方に拠点に訪れた腐った役人と娼館の管理者を自称する男。その二人の男たちにより、セバスはナザリックにとって不利益となる状況を作り出してしまった。優しいのではなく甘いセバスは原因となった少女を切り捨てるわけでもなく、かといって状況打開の案を自ら出すわけでもなく、そして知恵者であるデミウルゴスやアルベドらに相談するわけでもなく、ただセバスはこの王都を出歩いていた。

 決してセバスは思考を放棄したわけではなかった。ただ、セバスは今回のような悪辣な搦手に対してどの様なことをすればいいのかわからないのだ。そして、ナザリックの者として至高の方々の手を煩わせるわけにはいかない、そんなナザリックのほとんどのシモベが抱いている基本的な考えがセバスの視野を狭めていた。

 さて、そんなどうしようもない中、セバスは一人の少年を助けた。

 道の真ん中で暴漢に暴行されていた少年を助けたのは彼の創造主より継いだ考え故なのか、それとも単に苛立っていたからなのかはわからない。そして、セバスはその場を後にして助けた少年とは違う少年と出会った。

 それは出会ったというには少し不適切かも知れない。

 何故かと言えば、その少年――クライムと名乗った彼はセバスの後を追っていたからだ。さては今朝方の者らからの刺客か何かかとセバスは一瞬考えたが、仮にも刺客であるものが馬鹿正直に呼びかけられて出てくるのはいささかおかしいだろうと判断し、セバスはクライムと言葉を交わした。

 クライム曰く、自らが仕える主の為にも強くなりたい。故に暴漢より少年を救ったその実力を見込んでセバスに一つ指南してもらいたい。

 そんな頼みを受け、セバスはクライムのそのまっすぐなあり方に好感を抱いたのだろう。故にセバスはクライムに一度だけの指南を行った。

 ただ本気で殺そうとした、それだけを。常人では決して耐えることでは出来ない殺気を向ける。普通ならばそのまま死にかねないそれを受けてなお、クライムは耐えて見せた。

 

 その後はブレインという若者と出会い、刺客を打ち倒しそのままセバスは自身に刺客を向けたサキュロントと名乗った娼館の経営者のいる娼館へと襲撃をかけ、サキュロントと共に拠点に現れた役人を殺し、そしてサキュロントと『八本指』と呼ばれるこの王国における巨大な犯罪結社の幹部の一人を捕縛し、娼館で働かされていた何人もの女性を助けた。

 ああ、なんとも創造主に似ている男だろうか。

 少なくとも今朝方の一件を解決したセバスは反芻したそれらに心を落ち着かせて拠点へと帰還した。帰還して拠点である屋敷の扉を開けて、セバスはその眉を動かした。

 

 

「ん?」

 

「おかえりなさいませ、セバス様」

 

 

 なぜならば、扉を開けた先。つまりは拠点の玄関に立つ者に何やら不穏なものを感じたからだ。

 それはメイド服に身を包んだソリュシャン。その姿を改めて認識した瞬間、セバスの背に恐ろしく冷たい何かが生じた。これはなんだ。これは恐怖だ。

 商人の令嬢という設定であり、この拠点には本来のことを何も知らない人間であるツアレがいるというにも関わらず、ソリュシャンがメイド服を着ている。それは演技の必要がなくなったからなのか、それともソリュシャンがメイド服を着なくてなならない理由があるのか。そこまで考えて、セバスは答えにたどり着いた気がして────

 

 

「セバス様、モモンガ様が奥でお待ちになられています」

 

 

 そのソリュシャンの静かな声を受け止めて、セバスはその心臓が握られたかのように硬直した。

 あの主が、いまナザリックに残ってくださる慈悲深き二人の至高の御方、その一人がいまこの拠点に来ている。それを理解し、そして来ている理由がわからないほどセバスは愚かではない。故にセバスは歩を進める。

 その歩き方は断頭台へと歩かされる死刑囚のような重く鈍いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ほぼ同刻。

 バハルス帝国が帝都アーウィンタール。その一角である大闘技場にて彼はとある存在を見た。

 その際の彼の動揺は彼の従者として傍らに(はべ)ていたリロイが彼を心配するほどに。

 

 

 ───貴公。よもや、貴公もこちらへ……

 

 

 その上級騎士の兜にあるスリットから見えるその存在に彼の兜の下の目は見開かれており、手は伸ばしかけやや震えている。その瞳が見つめるのは一人の女性。

 典礼用のやや大きめの帽子を被り美しい金糸の髪を伸ばす騎士の旅装たるベストにその身を包んだ女性。正しく可憐であり凛々しき女騎士。

 そんな彼女にネームレスはどうしようもなく、惹かれてやまない。

 容姿自体はナザリックのメイドら四十二人やアルベド、さらに言えば火防女やエルフリーデに勝るとも劣らぬものであるがだからと言って容姿に惹かれるだろうか、実際のところ容姿に惹かれているわけではない。

 では、何に惹かれているのか。

 

 

『…何か用か。誰かは知らんが、あまり私に関わらぬ方がいい…そのほうが身のためだ…』

 

『…お前は、不死というものを知っているか、その身に呪いを得た者だ。不死となった者は、人ではなくなる。次第に理性を、記憶を失っていく、そしてやがて…亡者となって他人を襲う』

 

『気が付くと、ぼんやりしていることが増えた。少しずつ、昔のことが薄れていくような…』

 

『ああ…お前か…何だか、頭がはっきりしないんだ…ハハハ……』

 

『私の名は、―――。お前に、私の名を覚えておいてほしい。それすらも、いずれ私は…』

 

 

 脳裏にソウルの内から記憶が過る。

 彼女のソウルに彼は惹かれるのだ。

 故にネームレスは彼女のもとへ向かおうとして────

 

 

『―――ネームレスさん、ちょっといいですか?』

 

 ッ………

 

 

 唐突な〈伝言(メッセージ)〉に気を戻し、再び彼女がいた場所にネームレスが視線を向ければ既に彼女はどこにもなく、ネームレスは軽くため息をつきながらモモンガからの〈伝言(メッセージ)〉に応えた。

 

 

『はい、なんですモモンガさん?』

 

『えっと、実はですね―――』

 

 

 あれが果たして現実であったのか、はたまたセレネのソウルが見せた幻影なのかはわからない。

 だが、少なくともネームレスはあの太陽の戦士と似通った感覚を感じてはいたが……ネームレスはモモンガとの〈伝言〉を終えるとそのままリロイを連れて路地へとその姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重い、あまりに重い歩みの果てにセバスはそこへとたどり着いた。

 この屋敷で今もっとも恐ろしき場所である応接室、その扉前。

 

 

「……」

 

 

 息をのむ。ああ、どうか、この瞬間が永遠であれば良いのに。そんな世迷言がセバスの心中に漂い始め―――しかし、そんなセバスの心中などソリュシャンにとってまったくもってどうでもいい話であり、そもそも心が読めるわけではない以上どうしようもない話だ。

 ソリュシャンの細い指が応接室の扉にかかり、そしていっさいの躊躇なくゆっくりと扉が開かれる。

 しっかりと油が差されている扉は、本来なら滑らかに開いていくはずなのに、今はやけに重く室内と廊下に気圧差があるかのような遅さで動いている。それはセバスの心中を理解しているかのようにセバスは思った。

 もしもそうであるならば開かないで欲しいが、実際この扉を開けているのはソリュシャンでありセバスの心中など考慮してくれない。そして、非常にもセバスの視界に応接室内部が映り込む。

 普段と変わらない部屋には、その普段にこの部屋にいるはずのない異形らがそこに佇んでいた。

 

 

 その数は六。

 

 一人はライトブルーの武人。白銀のハルバードを多腕であるその手に持ち、不動の姿勢を維持している。

 一人は悪魔。心底皮肉げにゆがんだ顔に、どのような心内をかくしているのか。

 そしてその悪魔に抱かれた、枯れた枝のような羽を生やした胎児にも似た天使。

 一人はセバスも知らぬ者。金と白の鎧に身を包む聖騎士然として、その手に大槌と大楯を持ち静かにそこにいる。

 

 

 そして最後に―――

 

 

「遅くなりまして申し訳ございません」

 

 

 震えそうになる声を意志の力でねじ伏せ、セバスは礼拝のように深く深くお辞儀を応接室の最奥にて待つ二人の存在に向ける。誇り高きナザリックの家令(ハウス・スチュワート)を兼任する執事というほぼ最高の地位に位置するセバスが、畏敬と畏怖によって頭を垂れる人物などそういない。

 そう、ナザリックにおける絶対の存在である『至高の四十二人』が内、二人。

 

 

――――モモンガ。

――――ネームレス。

 

 その手に黒いオーラを放つスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを握りながら椅子に腰かける死の支配者。

 無手されども丸腰と判断など出来ぬ、火の粉を散らしながら壁に寄りかかる火の簒奪者。

 セバスはこの日、その命を散らす己を理解した。

 




ここ最近うつ伏せで作業することが何度があり背筋をやりました。
Twitterの方でも色々言ってるんですけども、時折盾の勇者の成り上がりとか転スラとかで書きたいなぁと思うこの頃。
最悪、一話分をチーズ短編集に突っ込んでおくのもありかな?と思ってますね。ええ。

感想、意見、誤字脱字報告、お待ちしてます。それと、Twitterも興味があればどうぞ。
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