UNDEAD───不死人   作:カチカチチーズ

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 連日投稿をするつもりでしたが、間に合いませんでしたね……
 少なくとも連日投稿は終わりで週一ないし週二投稿していきます。


 オバマス、ナザリック祭……ソリュシャンしか当たらなかった…番外席次どこ?




二つの魔:改訂版

 

 

 

「わりぃな、ティア。流石にいまのはヤバかった」

 

「ガガーランもアレは危ないんだ」

 

「んだよ、おめぇ。見てたんならあれがヤバいってわかるだろうが」

 

「そろそろ青い血でも流れて、パワーアップしてるころかなと思っていた」

 

「パワーアップっていうよりも、種族変わってんぞ!」

 

「じゃあ、クラスチェンジ」

 

 

 エントマを余所にガガーランと先ほどの一撃から彼女を助けた仲間である忍者のティアがまるで戦っているとは思えないような掛け合いをしつつ、その意識はしっかりと動かないエントマを観察する。ガガーランは先ほどの自分の切り札である武技の複数発動による超級連続攻撃を無傷で捌かれてしまったという事実から警戒度は天井知らず、来たばかりのティアからすればまだエントマの実力はいまだ測りかねているがどう見ても純粋な戦士とは思えないエントマがもしも自分がここに来なければガガーランが致命傷を負いかねなかった、その事実だけで決して油断して良い相手ではないことは強く認識していた。

 そうして、軽い掛け合いを終えた二人は素早く簡潔に情報を共有していく。

 

 

「あっちはこっちを殺す気はないらしい」

 

「……?あっちはモンスター。どういう理由?」

 

「八本指に大切なもんを盗まれてその奪還が目的らしい。で、それを命じた飼い主から八本指以外の人間は殺すなって言われてるんだ、と」

 

「嘘を言ってる可能性は?」

 

「嘘は言ってねえ、だろうがそん代わりに何か隠し事をしてるのは間違いねぇ…それも疚しいことだろうよ」

 

 

 ティアの疑問に自分が感じたモノを率直に伝え、それに対してティアは僅かに逡巡してから、その手に自身の得物である短剣を握りながらやや前傾姿勢をとりながら、ティア側からの最も重要な情報を口にする。

 

 

「もうすぐイビルアイも来る」

 

 

 たった一言。だが、ガガーランにとってそのもう一人の仲間の名前だけで充分であった。

 一人での勝利は不可能に近い、だが二人なら、そしてもう一人、仲間と共にならば決して不可能ではないと直感的にガガーランは理解し、そう信じている。

 なによりもガガーランは理解している。いまここへ向かっている仲間が戦士ではないがそれでも自分よりも経験と実力が高い奴である、と。

 故にガガーランはその増援が来るまでの時間を稼ぐ必要がある。それは状況的にはさきほどとあまり変わらないかもしれない、だがここには既に一人仲間がいる。

 決して難しいことではない。

 

 

「行くぞ!!」

 

「了解」

 

 

 そうして駆けだす二人。

 一方向から固まって突貫する、などという馬鹿はしない。正面から走っていくガガーランに対して、ティアはやや遠回り的にガガーランと纏めて攻撃されない様に向かってくる。

 それを前にしてエントマはその左腕についていた硬甲蟲を外し、新たにどこからともなくやってきた無数の蟲が空いた左腕を覆っていく。一体一体が三センチていどのサイズであるがその形状は先端部分が尖っており、知識のある者が見たならばライフルに使われている弾丸のソレに酷似しているのが理解できるだろう。それが数百体も集まりエントマの腕の太さが元の腕の倍はあろうほどの様を見せる。

 それを見た二人、ガガーランは新たな蟲に舌打ちしながら今度はどのような武器として使うのかを思考し、ティアは駆けだす前にガガーランから伝えられた情報と今集まってきた蟲の数からして手数の多い攻撃をしてくると予想して────

 

 

「(まずはあっちの忍者)」

 

 

 遠回りしつつもその俊敏さからガガーランよりも近くに迫りつつあったティアへとエントマは鋼弾蟲に覆われた左腕を向ける。

 瞬間、腕を覆っていた蟲たちが次々とエントマの手首へと移動していき、ついにはその指先から我先にと飛び立っていく。その際に生じた羽音はまるでガトリングガンのようにも聴こえ、ティア目掛けて殺到していく。射出された鋼弾蟲の数は百を優に超える。そんな数の鋼にめり込んでしまうほどの強度を持つ蟲が一個人を襲えばどうなってしまうのか、誰でもミンチ同然の末路を思い描き、それはティアもまた例外ではない。

 

 

「不動金剛盾の術!」

 

 

 だが、ティアにはそれを防ぐ手立てがあった。

 発動する忍術、それによりティアの前に七色に輝く眩い盾が生じる。射線上に現れた六角形の盾に鋼弾蟲たちが次々に激突していく。いったいどれほどもつというのか、激しい音を響かせながら蟲たちが撃ち込まれた盾は数秒ほどでガラスが割れるような音と共に砕け散るがそれでも充分に役目は果たしたようでその頃には鋼弾蟲は打ち切られ、無傷のティアは幾つものクナイを放つ、鋼弾蟲の反動により僅かに動きが遅れるが対処するのは難しくない。なにより先の蟲に対する反応からして相手が自身の知識上の忍者のそれとやや違く、実力はガガーランと大して変わらないと判断して剣刀蟲で弾く────いや、それよりも先にエントマの感覚が別のモノを感知し、寸前でエントマはその場から素早く飛び退く。

 その判断が正しかった。

 クナイが地面に突き刺さり、その次の瞬間には先ほどまでエントマがいた場所へとガガーランがその刺突戦鎚と共に勢いよく落下し、石畳を破壊してその瓦礫が回避したエントマへと殺到していく。それらをエントマは舌はないが舌打ちしつつ、剣刀蟲を振るいその勢いで瓦礫を吹き飛ばしながら距離をとる。

 普通ならばティアの使用した盾の輝きで眼が眩み、さらにはクナイに視線が誘導されたうえで上空よりガガーランが襲撃する。普通ならばこれで確実に獲れるはずだった。だが、エントマにはティアの技程度でどうこうできる視覚ではない。

 

 

「クソッ、避けられたか!」

 

「んー、じゃあ、次はこっちかなぁ」

 

 

 決まるないしは痛手にならずともそれなりの結果が見込めたはずのコンビネーションを完全に回避されたことで思わず悪態をつくガガーランに対してエントマはまた特殊技術を使用して新たな蟲を呼び寄せながら、思考を回していく。

 しかし、考える暇を与えれば不利になるのを理解しているティアとガガーランはそんな隙など与えないと、攻めていく。

 ガガーランが石畳を砕き、浮かび上がった瓦礫を刺突戦鎚で殴りつけて散弾のようにエントマへと打ち出していき、その瞬間にティアはその姿をその場から消失させる。

 それを見て、エントマは素早く襲い掛かる瓦礫目掛けて懐から取り出した符を放つ。放たれた符は空中で青白い稲妻を纏う鳥の姿へと変化して瓦礫へと向かっていきその稲妻で瓦礫を破壊していく。

 そんなさなかにエントマの意識は姿を消したティアへと向けられる。現状、ガガーランとティアではどちらの方が警戒すべきか、完全に後者である。いまだ後者の手札はほとんど見ていない、警戒するのは当然だろう。

 

 

「ッ、そこぉ!」

 

 

 瓦礫が砕け散っていくのが視界の端に映った刹那、エントマは僅かな気配を察知し誰もいないはずの空間、正確に言えば地面に剣刀蟲による刺突を放つ。

 だが、地面を抉るだけで何もない。それと同時にエントマは勢いよくその場を跳び退けば、突如として爆発と炎が生じた。触れるどころか装備に煤すらつくことはなかったがエントマはその種族上、火に弱い。思わず、本来の顔が顰め面をしてしまうが不意打ちは成功しなかったとほくそ笑み、まるで蛆を小盾ほどのサイズにしたような蟲がのったりとエントマの足元に現れたのを見て空いた左腕を差し伸べ這い上がらせる。

 今までの蟲と違い、見た目からではあまり役割がわからないそれに二人は怪訝な表情を一瞬見せるがティアは新たな術を使い、ガガーランは接近する。影が蠢きもう一人のティアが現れ、三対一の構図が出来上がるがエントマは気にする事はない。

 

 

 刺突戦鎚と剣刀蟲がぶつかり合いながらもエントマの左腕はティアへと向けられ、時折剣刀蟲を影分身へと振りながら優勢を保ち続ける。

 三対一でありながら拮抗する事すらできぬまま、それでも幾ばくかこの状況が続いていくが、それもティアの影分身が剣刀蟲に殴りつけられただの影に戻ったことで崩れていく。

 そうして空いた連携の隙、そこへ向けて左腕の蛆のような蟲、睡煙蟲を向ける。

 

 

「じゃあぁ、おやすみぃ」

 

 

 そんな言葉と共に噴き出されるガス。

 反応しその場から離れる、そうするよりも先にガスが周囲に満ち満ちていく。それに対して二人は思わず片膝を突く。共に高位の冒険者として睡眠に対してある程度の耐性を有している。それ故にすぐに倒れ伏すという事はない、だが片膝つかせただけでエントマには充分。

 待機していた蟲がエントマからの合図によってその背中に張り付き、翅を広げてその場から飛び立つ

 

 

 

「おい、私の仲間をよくも虐めてくれたな」

 

 

 筈だった。

 瞬間、エントマはその身体を大きく捻る。その選択が正しかったようで何か飛来した騎士槍(ランス)のような何かがエントマの背に捕まっていた飛行用の蟲の翅を突き破り、エントマはそのまま地面に落下する。

 メイドであるエントマは無様な落下などはしない、人外としての身体能力を使い軽々と着地したエントマは新しい闖入者に苛立ちながら視線を向ける。片膝をつく二人の前に降り立つ一人の小柄な影。背格好は小さく、仮面で顔を隠したローブを身に纏った何某。

 

 

「やれやれ、彼我の実力差を考えるんだな……こいつはお前たちよりも強いぞ……だが、私よりも弱いがな」

 

「う、っせぇ……」

 

 

 気を保たねばすぐにでも意識を落とし眠ってしまう中、ガガーランは呆れたような上から目線な口調の彼女、イビルアイの言葉に悪態をつく。

 そんな様を見ながらふとエントマはこの闖入者がなぜ、この睡眠ガスがある中で平然としているのか疑問に感じていた。如何に屋外とはいえ、とくにこれと言って風が吹いているわけでもない。現にガスはおおよそが足元に滞留している。他の二人よりもガスに近いはずなのに効いている様子がない、もちろんこういった状態異常への耐性が他の二人よりも優れている可能性があるが………そこまで考えて、エントマはイビルアイに告げる。

 

 

「張り切ってるところでぇ、悪いんだけどぉ。私はここら辺で帰らせてもらうからぁ」

 

「は?逃がすと思っているのか?」

 

「それじゃぁ、後はよろしくお願いしますぅ」

 

 

 イビルアイの出鼻を挫くようなことを言い、その喋り方ともども軽く苛立ちが込められたイビルアイの言葉を無視してそんなどこの誰にいっているのかもわからないことをエントマが言ったと思えば、エントマの背後に黒い空間の歪みが生じた。

 イビルアイらにはわかるべくもないが、それは《転移門(ゲート)》の魔法。

 それに対して、イビルアイが仮面の下で眼を見開きながら、そこより姿を現した存在を見る。

 

 

 それは山羊の頭蓋を模した頭部に四本の黒角を戴き、漆黒の大翼を携えた灰色の肉体でその胴体にはなんらかの魔導的刺青が施されている。ガガーランより巨躯でありながらも身長ほどはある長斧を手にした異形。

 その名前をイビルアイたちは知らない、だがその種族はその身に纏う雰囲気から察することができた。

 

 

悪魔(デーモン)…………!」

 

 

 

 白い息を吐きながら、深淵の悪魔(アビス・デーモン)は眼下の冒険者たちを見た。

 

 

 

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