お久しぶりです、みなさん。
なかなか、筆が進まず更新が少し空いてしまいました。
ところで、ダークソウル3が5周年ですね。私としては感動的です。
記念SSでも書こうか、と思ったのですがそれよりもこちらを進めるべきと思いました……
モンハンライズ、ウマ娘、アークナイツ、やることが多く大変ですが楽しみつつ執筆していきたいな、と思っております。
『────そうか、それは良かった』
そう言ってこめかみから指を離し《
鎧だけでも並みの人間では重荷であるのに、更に斧と盾が加わればその重量は如何ほどのものとなるだろうか。そうして、モモンは視線をアクトからその下、いま自分たちが座っているモノへと向ける。
半透明の一枚板。
《
だが、だがしかし、いまモモンらが乗っているこの半透明の板は王都上空、四百メートル付近を飛んでいる。モモンはこの世界独自の魔法で二人の魔法詠唱者によって引っ張られているこの板に一抹の不安を覚えていた。
高所であることに恐れはない。魔法詠唱者で《飛行》の魔法も自由自在である彼にとって高所などいまさらであった。
板を引っ張っている魔法詠唱者二人への不安?そんなものはない、この移動方法に関して彼らが提案したとはいえ彼らが態々こちらを害する理由もなく、更には提案をした以上はしっかりと慣れているはずなのだ。ならば、不安を抱くのは失礼というモノ。
では、何が不安なのか。
「(……重量は遮断していて、魔法も安定していて途切れるなんてことはないだろうけど…………この板、《浮遊板》だったっけ?何かの拍子で落ちそうで怖ぇぇ)」
魔法の性能やらなんやら、ではない。
今、モモンガはモモンなのだ。つまりは彼がいま指輪の力で死の支配者から人間になっているという事で、視覚的に不安を覚えてしまっていた。それは彼の身体がこの世界の人間以上のレベルや耐久性を有していたとしても数か月前までただの一般人でしかなかったモモンが不安を覚えるのは仕方ない話なのだ。
そんなモモンの内心を察しているのかどうかは不明であるが、板を見るモモンへとアクトはしばし視線を向けて、魔法詠唱者の彼らに聴こえない程度の声量でモモンへと囁く。
「……デミウルゴス殿からですかな?」
「そうだ」
内容としては先ほどの《伝言》の相手を伺うものだが、その口調からして冒険者アクトではなく、パンドラズ・アクター本来のそれでモモンガは彼の質問を首肯してから視線をこの板から引っ張っている魔法詠唱者らへと向け聞こえていないことを確認してから、また口を開く。
「どうやら、エントマが蒼の一員と鉢合わせたらしい」
「それはそれは、離脱は出来たのですかな?」
「《転移門》で離脱した、と。その代わりに深淵の悪魔が戦闘をしているようだ」
そう言ったモモンガにパンドラズ・アクターは僅かに首を傾げた。というのも、エントマがその場から離脱するのに自身の脚や彼女の特殊技術で召喚した蟲を利用しての逃走ならば、確かに足止め要因としてモンスターを代わりに置いていくのは理解できる。だが、離脱に《転移門》を使用したのならばこの世界の冒険者程度では探知すること至難である。
では、なぜわざわざ深淵の悪魔をぶつけたのか。
兜越しに見える父上の表情を見るに、どうやら同じ疑問を抱いているのがパンドラズ・アクターにはわかった。ナザリックの面々、その内頭脳役と言える領域守護者統括であるアルベドと領域守護者の一人であるデミウルゴスはモモンガの事を自分たちでは到底及ばぬ叡智の持ち主であると考えているが、パンドラズ・アクターは知っている。自分の父上であるモモンガは決して地頭が悪いわけではないが、別に自分たちより頭脳面が優れているわけではない、と。
もちろん、わざわざそんなことを彼彼女に伝えるつもりはパンドラズ・アクターには毛頭ない。そんなことをすれば、父上が自分に頼ってくれる機会が少なくなってしまいそう、という創造主を独占したいという欲求が理由の一つであるが、それは置いといてパンドラズ・アクターは自分の主の中にあるほんの少しばかりの虚栄心を尊重しているのだ。
「(……と、少し思考がズレてしまいましたね。今重要なのは、何故わざわざ戦闘を続行させているのか……ふむ、確か今回の作戦既に法国には根回しが終わっているようですし)」
そこまで、思考を回してパンドラズ・アクターはとある可能性に行き着いた。
「なるほど、そういうことでしたか」
「パンドラズ・アクター?」
「恐らく、デミウルゴス殿の思惑としては今回の騒動で我々の名声を大きくするというモノがあると思われます」
「…………ああ、なるほど。王都のアダマンタイトが苦戦する相手を私たちが倒して、ってことか」
パンドラズ・アクターの言葉にやや逡巡してモモンガは納得する。
モモンガは今回の作戦に関しては八本指への報復行為及び、その財産の徴収だけであると認識していたがパンドラズ・アクターの言葉で冒険者としての自分たちの名声を高め、王国内での活動をしやすくする目的があるのを理解した。勿論、あくまでデミウルゴスの考えの一部でしかないが。
「(この世界の実力、王国のそれを考えれば深淵の悪魔は結構ちょうどいいところか。流石にデミウルゴス本人が出るわけにもいかないし、下手に魔将を出すとそれはそれで被害が大きくなりやすい。かと言って、弱かったら弱かったでえぇと、蒼の薔薇だっけ?そのチームや戦士長に倒される可能性があるしな……その点、深淵の悪魔なら魔将クラスには届かないけれども死の騎士よりは強いし……うーん、普通のアダマンタイトの実力がどれぐらいなのかがわからないから、安心とは言えないけど……)」
そうして、パンドラズ・アクターにもわからない様に内心でため息の一つでもついて、モモンガはその視線を半透明の板より見える夜闇に包まれた王都へと向けて───
微かに光のようなものが瞬いた。
いったいなんだ?とモモンガの中に疑問が湧き、軽く視線を動かせばパンドラズ・アクターの視線とかち合い、パンドラズ・アクターはその鎧の下はモモンガと違い変わらず異形種であるためにその光がなんなのか、この夜闇と距離ながら看破した為に僅かに頷く。
その頷きがどういうモノなのかをすぐに理解したモモンガは声を上げる。
「アレは、魔法か?……また、光ったぞ」
「……確かに、魔法……ですね」
モモンガの声に反応し、彼が指さす方を見た魔法詠唱者がそんな風に自信なさげな声をで答えるのはやはり距離と夜闇が理由だろう。
モモンガもそんなことは分かっている。
今回、モモンガらが冒険者としてこの王都にやってきたのは六大貴族と呼ばれる貴族の大家の一つ、レエブン候の邸宅の警護であるのだが、その邸宅警護はあくまで建前で本当の目的は第二王子や王女の派閥が八本指を打ち倒すための戦力。
今こうして王都上空を移動しているのは依頼主であるレエブン候と合流する為であるが────いま、この場で最も優先すべきは自分らも八本指襲撃に参加する事。
眼下の魔法が使われているであろう場所が八本指の拠点なのかどうかは分からないが、もしもそうならば救援という名目で向かうべきだ。
「(なにより、例の蒼の薔薇が深淵の悪魔と戦っているのなら、加勢をすればとりあえず蒼の薔薇と繋がりは持てるだろうしな)」
打算ありきであるが。
そんなモモンガの胸中など魔法詠唱者が知るわけもなく、しばし光が瞬く場所を見ていたと思えば不意に口を開きモモンガに例の場所がどういった場所なのか伝える。それはモモンガの考え通りに襲撃予定の八本指の拠点であるらしかった。
それに満足したモモンガは一度頷き
「そうか、どうやら我々の仕事はまだ残っていたようだ……アクト、行けるか?」
「問題ない。モモン、あそこまで運べるか?」
「骨が折れるが、まあ大丈夫だろう。何より、飛行よりも降下だ。そう難しくない」
そう言って板の上で立ち上がる二人に魔法詠唱者らは心配そうな視線を向けるが、モモンガはむしろ危険なのは君たちであることを伝えつつもある程度の距離で待機してもらう事を伝えて、
「さあ、夜の王都へ、
「……アクト、それはあまり面白くないぞ」
これから戦いであるというのに軽口をたたき合いながら、二人は王都上空四百メートルから飛び降りていった。
ダクソ3、5周年で前書きでは記念SSはかかないと言いましたが、できるならば他のダクソ3クロスオーバー作品の更新もしようかと思案中です。
それでは。
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