というのも本来もう少し長いはずが途中で「あ、これだいぶ長くなる……途中で切らなきゃ次投稿すんの遅くなるわ」となり申して。途中で切って投稿しました。
こう言っては悪いがやはり、ナザリックにいるよりもこうして外にいる方がとても楽だ。
そんな事を考えながらネームレスことセレネは竜王国より貰った駿馬フロム────ネームセンス皆無のモモンガによりダークホースと名付けられそうになったがリバーブローによって何とか回避した────に跨り冒険者としての拠点であるエ・ランテルへと向かっていた。
本来ならば三日ほどナザリックに滞在している予定だったのだが、新たなアダマンタイト冒険者という肩書きのためにそこまでエ・ランテルを離れる事が出来ずナザリックには一日と半分しか居られなかったのだ。
そういった事なら仕方ない、とモモンガ共々納得したセレネはこうして渋々ナザリックを出たのだが…………
いや、まったく。緊張しないですむのは助かるな。
なお、兜の下の顔はわりかし笑顔である。
そう呟いて思い浮かべるのはナザリックでの出来事。ほぼ間違いなくプレッシャーと期待と緊張で胃に致命的な穴が空くであろう玉座の間での守護者謁見である。
遡る事数時間前…………
ナザリック地下大墳墓・第十階層玉座の間には様々な人物が集まっていた。
長い銀色の髪を片方にまとめ、肌は白蝋じみた白さ、瞳は真紅という人間離れした容姿に漆黒のボールガウンドレスを身にまとった可憐な
カマキリとアリを融合させたかのような直立歩行したライトブルーの体色を持つ常人以上の巨躯の蟲、四本の腕と口に該当する場所には虫特有の下顎を持つ
金髪を肩口で切りそろえ緑と青のオッドアイに浅黒い肌、ベストと長ズボンを着たボーイッシュな
黒髪のオールバック、肌はやや日焼けしたような色で丸メガネをかけストライプ入りの赤い三つ揃えのスーツを着用したビジネスマンか弁護士を思わせる
純白のドレスを纏った女神の如き容姿を持つ黒翼を生やした
そんな人ならざるものらが跪き、そんな彼らを見下ろすように数段高い位置に佇むのは二柱の魔人。
片や玉座に座す、漆黒の魔王然としたローブに身を包み胸元からは紅い宝玉が覗く
片や玉座の傍らに立つ、焼け爛れ歪んでいてもなお圧倒的な威を放つ騎士鎧、後頭部に異形の王冠が形作られた兜を纏う
彼らこそがナザリック地下大墳墓における至高の四十二人が二人。
「各々が忙しい中、よくぞ集まってくれたお前達…………さて、此度呼んだのは他でもない。我が友であるネームレスさんが帰還した事を伝える為だ……無論、既に知っていた者もいるようだが」
すまないな、貴公ら。ナザリックがこの世界に転移した際に私はナザリックより離れた土地にて一人佇んでいた…………ナザリックが転移してはや数日、帰還が遅いと言われても仕方がないな。
「ふ、友よ。そのような事を言うものはこのナザリックにはおらんよ」
そうか……それはよかった。さて、貴公ら……すまないが伝える事がある……私とモモンガさんが共に話し合い……このナザリックの新たな方針を決定した。困惑するだろうがどうか聞いてほしい。
力で世界を支配するのは容易かろう。智謀を奮って支配するのも容易いやもしれない。しかし、私もモモンガさんもそれは良しとはしない…………我らが望むのは世界を支配するのではなく異形も人間も亜人も共に過ごせる国…………甘い夢想事ではあろう……しかし、我らはそんな夢幻を追いかけ掴む『プレイヤー』故に…………どうか貴公らの力を貸してほしい。
そんな演説に跪く彼らはただ、ただ御意と一言高らかに叫び自分たちの支配者にしてその全てを捧げるべきいと尊き至高の御方の理想に応えるべくその忠誠をより強く誓った。
そんな彼らに満足したのか二柱とも、軽く頷き解散の旨を伝えその場を後にした。
流石に玉座の間でのあれこれは疲れたな。あの時は人化の指輪を外していたからよかった……。
あ、でもその時のが今更に……うっ……。そう、呟きながら腹に手を当てる主を慰めるように嘶くフロム。
そんなフロムの背を撫でながらセレネは守護者らに告げた言葉が例え無理難題のそれだとしても間違いなく守護者らはそれを成そうと奮闘するのだろうと考えていた。
セレネとモモンガからすればその夢想事は別に重要ではない、二人が望んだのはモモンガが呟いた言葉からデミウルゴスがそのまま受け取りその後曲解してナザリック内に浸透した『世界征服』という野望を止めること。
異形種と人間、亜人が共に暮らせる国に関しては魔導国があったからいけるだろうという考えがあってこそ、なければなかったでまた別の考えを探したが…………
世界征服なんぞしたら、それこそモモンガさんが魔王化する…………いや、それより先にこっちが人間性を失いそうだな。
兜の下で苦笑いをしながらセレネは次に第六階層での、最初の火の炉での出来事を思い浮かべる。
本来ならば真っ先に会いに行かねばならない女性のもとにあろう事かセレネは一番最後、ナザリック出立の前に寄ったのだ。
如何にNPCとはいえ、彼女……レティシアはそのフレーバーテキストによりダークソウル3の記憶が存在しており、レティシアにとってセレネとはNPCにとっての創造主や至高の御方とはまた違う大切な存在なのだ。
彼女自身がどれほど時間がかかっても帰ってきてくれさえすればいいと思っていても一人の女性としてレティシアはそんな自分の気を知らないセレネに対して、NPCとしては酷い対応をもって訴えた。
久しいなレティシa────スパァンッ
『ええ、本当にお久し振りです、灰の方。ですが顔を出すのが些か遅いのでは?聞けば灰の方はナザリックを出立すると聞きました……そして、今がその直前だと…………遅すぎはしませんか?』
え、あ……その。
『嘗ては真っ先に私のもとに来てくださいましたのに…………いいですか?如何に火防女と言えども私もまた一人の乙女……恋い慕う殿方に後回しにされるというのはとても辛い……です』
……そうか、それはすまなかった。レティシア、私の配慮が足りなかったらしい……次からは真っ先に貴公のもとへ行こう。
『はい……ありがとうございます、灰の方…………ですが、それはそれとして貴方には言いたいことがいくつか』
あ、はい。
そんなレティシアに次会えば間違いなく自主的に正座しかねない出来事にブルリと身を震わせる。兜の下では出会い頭に張られた頬がひくつき、その記憶に蓋をする。
と、とりあえずエ・ランテルに戻って依頼をこなそう……信用を高めればモモンガさんが冒険者業をする際に口利き出来るかもしれないし……。
乾いた声でそう呟く彼の背は到底ナザリックの支配者の一人でもアダマンタイト級冒険者でも薪の王でもなく一人の苦労性にしか見えなかった。
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「ねぇ、まだつかないの?」
「……これでもかなり急いでいるんですが、まあ
王国及び法国国境付近上空にて一頭の
一人は鷲馬の手綱を握っている白と茶色のコートに腕輪の様な装飾を付けている金髪の青年、もう一人は青年の後ろでやや危なげに腰掛けている髪が真ん中で白と黒に分かれ更には瞳も髪とは逆だが白黒とオッドアイになっている十代前半程の見た目の少女。
少女からは退屈そうな雰囲気が醸し出され、そんな雰囲気を背中に感じる青年はやや頬が引きつっている。
「そう……」
「…………はぁ」
青年の言葉に興味を無くしたように辺りの景色を見ている少女に聴こえないように青年はため息をつく。
実際、少女の質問した回数はこれで両の手の指では数えるのに足りなくなった。そう何度も聞かれれば流石に辟易するというものだが、青年はそれについて文句は言えない……それは少女が青年よりも実年齢としては歳上且つ実力が上だからだろうか。
そもそも何故自分がこんな事を……と思う青年。今回のこれは青年と少女が所属する法国のまとめ役ともいえる最高神官らから下されたぷれいやーまたは神人の可能性がある、アダマンタイト級冒険者との会合。
青年としてはもしかすれば神に出会えるやもしれないと乗り気ではあったが、この同行者がいただけなかった。これで神ではなく神人だったら青年にとって疲労しか残らないだろう。
そんな青年の気心など知ったものか、と少女は法国より持ってきたルビクキューと呼ばれる玩具を弄りながらただ、ただ辺りの景色を見ている。
それを見ることは出来ないが、できればそのまま到着まで黙っていてくれ……と思う青年だがそんな思いは儚く散ってしまった。少女が何ともなしに口をまた開いたのだ。
「ねぇ、そのエ・ランテルの騎士は私より強いと思う?」
「え?…………神人だったら貴女ほどじゃあないと思いますよ?ただ、もしも本当に神なら……その時は貴女よりも強いかもしれません」
「ふーん、なら私より強い事でも祈っておくわ」
そんな少女らしからぬ言葉にふと気になった青年は、その疑問をそのまま少女にぶつけてみる。
「つ、強さですか?……いえ、確かに人類の守護者になってもらいたい以上、強者であるのはこちらとしても都合がいいですが……」
「私はね、敗北を知りたいの」
敗北を知りたい。青年の疑問に返された答えはそれだった。
それは生まれついての強者故の傲慢な望み。敗北というものを知らないから出てくるもの。
彼女は敗北の辛さを知らない、敗北の恐怖を知らない、敗北の痛みを知らない、敗北の惨めさを知らない、何より彼女は敗北の清々しさを知らないのだ。
だがまあ、そんな彼女の言葉に青年は引きつった表情をするがしかし前を向いてる青年のそれを少女が見れるわけではない為、それに気付かず話を続ける。
「私ね、私より強い男の子供を産みたいの。私より強いなら美しくても醜くても、外道畜生でも清廉潔白でも、高潔でも下卑ていても、頭が良くても悪くても、何なら人間じゃなくても……うん、亜人でもたとえ異形種でもいいわ。私は私より強い男の子供を孕みたいのよ」
「だって、私と私より強い男の間に産まれた子供ならきっと凄く強いわ。もしかしたら竜王よりも強い子供が産まれるかもしれないじゃない?」
「………………」
青年の心の中で、聞かなければよかった、ただその言葉だけが満ちていた。
彼女は神人、しかも最強の人間なのだ、そんな彼女より強い者との間に産まれる子供は確かに強いだろう。そして、未来の人類の守護者として君臨するのだろう…………しかし、強ければ器量や性格、種族はなんでもいいというのは流石に問題だ。
もしかすれば人類にとってとんでもない怪物が産まれる危険性もあるのだから。
青年、クアイエッセは疑問をぶつけた数秒前の自分と彼女に同行する様に命じた隊長と最高神官らを軽く呪った。
なお、法国の裏切り者でクアイエッセの妹の抹殺命令もあるのだがそんなものは最初から些事でしかなく、少女からとんでもない望みを聞いてしまった今のクアイエッセからすれば割とどうでもよかったりする。
強かなかぼたんことレティシア。
沖田オルタは以蔵3になりました。つらたん