本編へ入ります。
「早く上がりなよー」
「ハァ……ハァ……ま、待てって」
氷川家に着いてすぐに膝に手をついて息を整える。
日菜はパパっと靴を脱ぐと二階へと続く階段を駆け上がっていった。
やはりというか日菜に引っ張られて走ることになり信号以外ノンストップで走らされた。
ホントに恐ろしいほどのスタミナ……というか身体能力か。
勉強も運動、見た目もトップクラスとくると逆に苦手なものはどれだけあるかも気になるな。
「ふぅ……お邪魔します」
息が落ち着いたので靴を脱いで上がる。
この家に来るのは3回目だが日菜に呼ばれて来たのは初めてで、2回とも紗夜に呼ばれて来ていた。
そう思っていると二階から日菜の声がした。
「弘くーん、はーやーくー」
「はいはい」
玄関にそれらしき靴が無かったので紗夜はいないようだ。
階段を上ると《Hina》書かれた看板がぶら下がっている扉を開ける。
「入るぞ」
「やっときた!いらっしゃーい」
日菜の部屋はオレンジのカーテンや緑色系の壁紙を使っており間取りもほぼ同じだったが、紗夜の部屋が物が多く年頃の女の子の部屋らしいなと感じた。
「座ったらー?」
「おう」
ふわっとしたラグマットが敷いてあるので座ると鞄から課題を取りだして四つ足テーブルの上に載せていく。
「やっぱり結構あるねー」
「パパっと片して帰るから教えてくれ」
「あ!飲み物持ってくるから先に解いててー!」
そう言って立ち上がるとパタパタと部屋を出ていった。
「はいよー……さて、と?」
ドアから視線を外すと日菜のデスクの上に夕日に反射しているものに目が止まった。
近づいて手に取る。
「これは……家族写真か」
写真には小さい頃の笑顔の姉妹と両親が写っていた。
……二人は母親似なんだな。
二人の母親は同じ髪の色をしており写真の中で優しく微笑んでいた。
二人も大人になったら母親ににて美人になるのかねぇ?
大人しそうに微笑む日菜を思うと可笑しくて一人で笑ってしまった。
その時だった。
一階から階段を上る音が聞こえた。
やっと課題に取りかかれるな。
そう思っていたのだが部屋に入ってきたのは日菜ではなかった。
「日菜?玄関に知らない靴があったのだけど、誰の――って弘人さん!?」
部屋に入ってきたのは学校から帰って来たのだろう紗夜だった。
「おー、紗夜おかえり。お邪魔してるぞ」
妹の部屋に入ったら男がいたらそりゃ驚くよな。
「い、いえ大声を出してすみません。ところで何を持っているんですか?」
紗夜は俺が手に取っていたものが気になったようだ。
「あーこれ?机の上にあった写真。家族写真だろ?二人とも小さい頃のだな」
それを聞くと紗夜が顔を真っ赤にして近づいてきた。
「み、見ないで下さい!」
そう言って写真を取ろうと手を伸ばしてきた。
「うおっ!?いきなりなんだよ!?」
「恥ずかしいので私が預かります!さぁ早く!」
同い年といえど男女の身長差ははっきりとしており紗夜は手を伸ばしても届かなかった。
顔を赤くして手を伸ばす紗夜の姿を見て面白くなってきた俺は写真を右手左手と移動させながら様子を見ていた。
「くっ、この!」
「可愛く写ってるから、いいだろ?」
「か、可愛っ!?何を言ってるんですかー!!」
そう言うと紗夜はどん!と俺を突き飛ばした。
床に倒れると紗夜が上に乗って手を伸ばす。
「ぐぅぅ!取ら、れる!」
ここまでくると取られるのが悔しい。
「あと、少しで……!」
紗夜の指先が写真盾のフレームに触れそうな時、部屋のドアが開いた。
「おまたせー!弘くんにはジュースを混ぜたスペシャルドリンクを……何してるの?」
「「……ち、違う」わ!」
この後ジトーっとした目で見てくる日菜の誤解を解くのに時間がかかり、課題に取りかかったのは日が沈んでからだった。
課題に取り組めない弘人。
果たして無事に終わるのかー?
次回に続きます。
良ければ感想お願いしまーす!ヽ(*゚∀゚*)ノではでは