僕がアイアンマンだ 〜I am IRON MAN〜 作:アリ新タ
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「う……なにが……どう……なって……」
一瞬メタルは意識が飛び、気がついたらひっくり返ってる車の中にメタルはいた。
意識がすぐに戻ったメタルは隣にいるスタークを起こそうとスタークのシートベルトに手を伸ばす。
体のあちこちが痛む中、何とかスタークのシートベルトが外せた。
ずるりと体が落ちたその衝撃でスタークが起きたようだ。
スタークが
「なんだ……何があった?」
「わかんない……とりあえず外に出よう」
体を引きずりながら車のドアを開け、外に出る。
スタークもあとに続き外に出る。居心地悪い状況から何とか抜け出し、なんとか二人が一息つこうとした時、そこには最悪の光景があった。
炎上した車の運転席にいる執事が死んでいる。
なぜ死んでいるか、それは別に頭から血を流しているとか、首の骨が折れているとか、そう言うことではない。
ひと目でわかる。
執事の額に風穴が空いていた。
映画の中でしか見たことない光景、顔から血の気が引いており、虚ろな目は既に
「な……何?……ど、どうゆうこと?………ッ、父さん!?」
「見るな!……お前は見るんじゃない!!」
まだ、10歳の子供。
人の死を見せるには早すぎると咄嗟に判断したスタークはメタルの目を覆う。
しかし、もう遅かった。メタルは目に焼き付けてしまった。
親が忙しい時、一緒に遊んでくれた思い出。
ジャンクフードが食べたくて、こっそり買ってきてくれた思い出。
授業参観にも2、3回来てくれた思い出。
ーー坊ちゃん……坊ちゃん……坊……ちゃ……んーー
自分を呼んでくれた声が脳裏に蘇ってくる。
初めての人の死、それもあまりにも近しい人物、メタルにとっては祖父のような存在だった人物の死は、メタルの思考を停止させるには充分すぎた。
それはスタークも同様で混乱を隠せなかった。
しかし子供の前、自分が戸惑ってはダメだと、この状況を確認する。
車は炎上している。
執事はおそらくライフルなどで、"遠くから"撃たれて死んでいる。
護衛につけた二人は何故かどこにも見当たらない。
状況は確認出来たが、何が起こってるのか結局イマイチわからない。
また、パニックになりそうだと思っている時、突如その声は響いた。
「我々はヒドラ!!スターク氏よ、すぐにビブラニウムと数々の兵器の設計図、を我々に譲渡せよ」
メガホンで言ってるのか、その声はここまで響いた。
そこでスタークがすぐに状況を理解した。
自分は狙われた。
護衛は裏切った。
車も爆発しないように少しの炎上ですむようにしている。
どうやったかは分からないが、周囲には誰も来ないようにしている。
携帯も繋がらないように電波ジャックされている。
ヴィランの"我々"というセリフから相手は1人ではない。
以上の計画を遂行する計画的な犯行。
スタークは己の運命を覚悟して、自分の優先順位を考える。
第一に息子の安全。
第二に核に相当するほどの兵器の設計図。
第三にビブラニウム。
第四に自分の安全。
すぐに車から設計図の入ったアタッシュケースを取り、息子に預ける。
メタルはまだ混乱しているようで自分がどうすればいいのか分からないようだ。
なので、なかなか受け取らないが、スタークは強引にメタルに受け取らせる。
今はメタルを落ち着かせる時間がないのだ。
次にビブラニウム、と思ったけど車の奥にあった為、届かない。
そこで小さな外車の光が近づいてくるのが分かった。
わざとクラックションを鳴らして煽ってるところを見ると相手はまだ油断している。
しかし時間はもうない。
スタークは優先順位の三と四を切り捨てることにした。
メタルの手を掴み、近くのマンホールに行く。
たまたま車の近くにあったのが幸運だった。
無理やり中にメタルと設計図を入れ、マンホールの蓋を閉じようとする。
「いいか!絶対に出てくるな!そしてできるだけ遠くに逃げろ!人の多い方向だ。下水を通るしかないが我慢するんだ!」
「え?父さんは……」
「俺の言うことだけを聞け!父さんはあとから逃げる!分かったか!」
「や、嫌だよ……父さんも逃げよ……」
スタークは息子の悲願も無視してマンホールを閉じる。自分が囮にならないと絶対にヒドラとなのるヴィラン達は追ってくる。そのための苦渋の決断だ。
そして声が漏れないよう、自分の個性でマンホールに蓋と地面のコンクリートを分子レベルで結合される。
「愛してるよ翔子もローズもお前もな」
「嫌だよ!父さん!!父さッ」
息子が叫んでいる途中でマンホールの蓋は閉じることが出来た。
声も漏れないように結合させたので息子の声はもう届かなかった。
その時。トラックのクラックションの音でヴィランの車がギリキリ到着した。
相手はクラックションを鳴らし続けて来たのでメタルの叫びは聞こえてないだろう。
車が止まり、中からコートを羽織った男が出てくる。
あとに続いて裏切った護衛も付いてくる。
「いやー、大変でしたよ。護衛を裏切らせて"4人"という少数の人数の時を狙う。電波もジャックし、道路も誰も来れないようにした」
「お前らは何者だ……何が目的なんだ」
「ヒドラですよ。目的は長くなるので割合しますね。それより日本語は難しいですねー覚えるの大変ですよ」
一連の犯人の顔は、普通の外国人だった。目立った特徴もない普通の男だった。
できるだけ情報を引き出そうとするがこの様子だと手厚い歓迎は期待できそうにないなと少し諦めかけていた。
「へ、ヘルモートさん、今回の件ですが……」
「分かってますよ。報酬でしょ?ちょっと待ってくださいね。」
ヘルモートと呼ばれる人物が自分のコートの中に手を入れてゴソゴソと何かを取り出そうとする。
その時のスタークは内心ビクビクしっぱなしだった。
ヘルモートと呼ばれるヴィランは4人と言った。つまりあちらの情報では予定どうりの4人となっているが今回はイレギュラーであるメタルがいる。
それをこの裏切った二人は知っている。そうなればメタルは必ず殺されるだろう。
頼むから喋らないでくれと心で願っている時。
「いやー、そのことなッ」
「………へ?」
護衛の一人がおそらくメタルのことを言おうとした時、懐から抜いた拳銃で正確に護衛の頭に風穴を開けた。
あまりの自体にもう1人の護衛は間抜けな声を上げた。
「あれ?何か言おうとしました?けどどうせ報酬の催促でしょう。バカですねーあなた達のような証拠の塊、生かすわけないでしょう?」
「はっ?…嫌、やめッ」
無慈悲に不気味な笑顔でもう一人の護衛も一発で息絶えた。
あまりにも恐ろしい出来事に流石にスタークの心は絶望していた。
「でも惜しいですね。アメリカ人じゃなければスカウトしてましたよ。『瞬間移動』と『テレパシー』何ともいい個性です。殺すのが惜しかったですよ」
人を物としか扱っていない。
そしてどうやら相手の発言からアメリカ人に酷い恨みがあるように伺える。
しかし、これでメタルの存在がヴィランに知られる心配がなくなった。
「さて、あなたはどうでしょうか?半分醜い血があるようですが、あなたの力を評価し、妥協してあげても良いですよ」
「へー、そうかい。生かしておくから奴隷になれと?」
「はっきりいってそうですね。でも安心してください。あなたの価値は凄まじいですから命の保証はされてますよ?」
完全に優位にたってる状況にヴィランは隠しもせず堂々と奴隷になれと告げる。
これはスタークも予想していた。自分の価値はここであっさり殺すには勿体なすぎると自覚していた。決してこれは自惚れではない事だ。
「というわけで、大人しくしてくださいね?………家族に会いたいでしょう?」
今の一言でスタークの意思は決まってしまった。
何ものにも変え難い、自分の宝を脅しの材料にしてしまったヴィラン。
スタークは緊張していた面持ちを解き、脱力したようにその場にうずくまった。
「ああ、分かった。………早く行こう」
ヴィランはニコリと笑うと、銃口を突きつけたままゆっくりとこっちに近づいてきた。
スタークは正真正銘丸腰。もはやスタークに抵抗する術は皆無だった。
そうヴィランは判断した。
しかし、家族を引き合いに出した時点でスタークはヴィラン達がメタル達を殺すことは確信していた。
もしくは確実に誘拐以上のことはされるだろう。どのみち酷い未来が待っていることだろう。自分を働かすためのおどしとして。
ヴィランの一言でむしろ冷静になってしまったスタークは決死の行動に出る。
ヴィランとスタークの距離が3mまでに縮まった時、スタークの個性『錬成』の射程距離に入った時、スタークは仕掛けた。
「なっ!!??」
突如としてヴィランの足元のコンクリートがヴィランの顎目がけて伸びたのだ。
それは綺麗にクリティカルヒットしたようで流石のヴィランも倒れようとする。
スタークはそこを見逃さなかった。
相手の銃を奪い一気に羽交い締めにする。護身術はある程度習っていたのでスムーズにおこなえた。
「あ、あなた、コンクリートを自在に操れたんですか?」
「違うよ。合成と分解を連続で使用しただけだ」
スタークの地面のコンクリートを伸ばして当てるなど雄英の某教師位のものだ。
スタークはそのように体積をふやすことは出来ない。
その代わり位置を動かすことは出来る。
スタークのいた場所はコンクリートが不自然に凹んでいた。ちょうどヴィランに攻撃した分の長さだった。
スタークは高速で自分の位置のコンクリートを分解、ヴィランの位置のコンクリートを合成という作業を繰り返したのだ。
「わざわざ一人で来てくれて助かったよ。さて、警備の薄い場所に案内してもらおうか。そして今の私はモラルを気にするレベルはとうに超えてる」
「家族のためには非常に徹する。あなたの評価を見誤ってましたよ」
ヴィランは両手を上げ抵抗の意思がないのを表す。
形成が逆転した状況、しかしスタークは緊張を緩めない。
こちらが『個性』を使ったように、相手も『個性』を持っているはず、少しでも怪しい動きがあればヴィランに突きつけている銃の引き金を引くつもりだ。
「どうした。動け」
だが、ヴィランの態度がいつまでたっても変わらない。焦ってるわけでも、なければ恐れている訳でもない。
変わらず余裕の表情であった。
スタークはここで殺すことを決意した。
これはやばい。手遅れになる。と、直感したのだ。
スタークが迷いなく引き金を引こうとした時、待てども銃声は鳴らない。
否、鳴らせなかった。
「ん?どうしました?随分顔色が悪いですね。あ、それ返してもらいますね」
もう何も出来なかった。
指一本動かせない状態に陥ったスタークはうめき声だけを少しだけ上げながら苦しんでいた。銃を奪い返されれてしまう。
一切の油断はなかった。
予備動作が一切ない『個性』の発動、しかもよりによってこちらの動きをピンポイントで止める類のものであったようだ。
「『神経麻痺』、シンプルでいいでしょう?本当は手を頭に近づけないと行けないのですが、羽交い締めにしてくれて助かりましたよ。あなたからこっちに寄ってきてくれましたからね」
ヴィランがのんびり説明していると、どこからともなくヘリが現れる。何も無かったところから突然姿を見せたのだ。
十中八九相手のヴィランの個性だろう。
「ヘルモートさん。見張りは撤収させました。あとは逃げるだけです」
「了解。あなた達は死体とビブラニウムをヘリに乗せて離陸の準備を」
部下に手早く指示を与えると、1歩も動けないスタークを軽く肩に担いでヘルモートもヘリに向かう。
「さぁヒドラに行きましょう、あなたにはビブラニウムをたっぷり作って頂かないとね。くふふ……」
そう不気味に笑うと素早く準備を終えた部下達の元に向かう。
ヘリに到着したヘルモートの元に部下達が険しい顔で迎える。
「ヘルモートさん。すいません、ビブラニウムはあったのですがもうひとつの狙いの危険兵器の設計図が見当たらなくて……」
「まぁいいでしょう。彼の頭さえあればそこまで重要な事じゃないですよ」
そう告げると自分もヘリの椅子に座る。
ふと、殺した2人の護衛の最後の言葉が気になった。
(何を言おうとしたのでしょう?催促と思いましたが少し気になりますね。嫌な予感がします)
そう考えているとチラッとひっくり返ったスタークが乗っていたリムジンの近くのマンホールに目が止まる。
(………まさかね。考えすぎです)
そう考えをまとめると疲れたと目をつぶって少し休もうと仮眠に入る。
あとに残るのは燃え尽きたリムジンの焦げかすと、静かな夜の道だけであった。
§§§
後日談
それからのことを話そう。
メタルはすぐに保護された。
しかし警察が駆けつけた時にはスタークどころか死体一つ残っていなかった。
メタルの事情聴取から執事の死と護衛の裏切りを聞いたが証拠の2人はその場にいず、車も全焼してスタークの捜索も1年が経過した後、保留という扱いになった。
そうしてメタルが日本に帰国できたのは事件から3ヶ月後のことだった。
メタルが持ち帰ったのは父の形見と言えるかわからない警察でも開けることが出来なかった危険兵器の設計図が入ってるケースだけであった。
警察もこれに関わることは避けたかったらしく、ケースはメタルと一緒に愛杏家に返上する形となった。
日本の空港にはメタルの母、翔子と兄のローズがいて、母は泣きながらメタルを抱きしめ、ローズは目に跡を残した顔を下に向け弟の肩に手をそっと置き、この事件は終息を迎えた。
BADENDという形で……しかし、
「許さない………ゆるさない………絶対に……」
メタルの新たな始まりでもあった。
……To be continued
かなりアイアンマン設定に寄せます。
あとこれからアニメ1期終了時点まで毎日投稿になります。
ぜひご覧下さい!!
新タでした。