僕がアイアンマンだ 〜I am IRON MAN〜   作:アリ新タ

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自動ログイン出来ない……何故だ。


NO.4 新たな生活

 §§§

 

 

 

「おい!訳を言え!!てめぇ!!!」

 

 緑谷がボールを投げた後、急に爆豪が緑谷に襲いかかっていった。

 すぐに相澤によって確保されその場は納まったが、クラスの全員爆豪の奇妙な行動は置いといて次の競技に向かった。

 

 みんなが体育館に向かう途中、メタルが爆豪の隣を通る時、彼のつぶやきが聞こえた。

 

「なんであいつが個性を……」

「ん?」

 

 メタルは首を傾げたが、直ぐに通り過ぎた。

 

 〈第5種目 上体起こし〉

 

 この競技で光ったのは尾白猿尾、個性『尻尾』を持つ少年だ。

 体のどこよりも発達している尻尾で回数を増やして行き、文句無しの1位となり、その他には素の身体能力が高いものから続いていく。

 轟、爆豪、飯田などは普通に測っても高得点をたたき出していく。

 かく言うメタルはと言うと、

 

「なんか……言われてみればロボットだな」

「フォルムが完璧すぎてちょっとキモイな」

 

 最も効率のいい動きを脳にインプットし、あとはその通りに動かすだけ。

 体が勝手にやってくれるし、自分は疲れないという体、感覚で言うと倒れるだけで腹筋何とかってやつだ。

 しかしメタルのこの力は能力を解くと一気に疲れが押し寄せてくるので正直微妙とのことがメタルの評価だが。

 

「71回」

 

 告げられた回数は尾白に次いで2位となった。

 

 

 〈第6種目 長座体前屈〉

 

「あのカエルの子すげーー!!」

「舌が伸びたぞ?」

 

 この競技で目立ったのは蛙吹梅雨、個性『カエル』。

 蛙っぽいことはだいたい出来て、ほぼゼロ度まで体をまげ、その上、舌を伸ばしていた。

 出た記録はダントツ、さすがに彼女が1位と思われたが、ここでも注目されたのがメタルだ。

 

「あ、あれは!?」

「って、ありゃもう人間じゃねーだろ!」

 

 体を100パーセント曲げてほぼゼロ度ではなく完璧にゼロ度に曲げていた。ただ、これだけでは到底、蛙吹の記録には追いつけないが、ここに来てクラスの全員メタルの個性が改めて『ロボット』だと確信することになる。

 

「マシン・ギア!」

 

 メタルは伸ばした腕を肘から先を切り離したのだ。

 誰もが一番最初に思い浮かぶのはロボットの定番、ロケットパンチだろう。

 メタルの腕は、長座体前屈に使う、よく名前のわからない計測器を体育館の端まで飛ばして文句無しの1位となった。

 

「悔しいわ……愛杏ちゃんの個性、かなり万能なのね」

「そうですわね。(ことごと)く私の個性をパクられてしまいましたわ……」

 

 どんどん明かされるメタルの個性周りが次々に驚愕していく。

 

「うぅ……かはっ……はぁ……」

 

 そして赤く晴れた人差し指を抱えながらどんどん記録がドベになって行く緑谷を尻目に見ながらメタルは最後の測定にと、校庭に向かった。

 

 〈第7種目 持久走〉

 

 最高峰の学校だけあって、そこに入学する生徒達も最高峰である。

 ここまでそれなりに長い時間測定を繰り返してきているが、ほとんどのものはもうそれなりに長い時間走っているものの、余裕がある表情をしている。

 

「はっ……はっ……」

「ぜェ……ぜェ……」

 

 

 しかしここに来て息切れするものも現れ、持久走の測定も終盤に差し掛かってきた頃、後方集団の特に走るのにそれほど個性を活用できない組と、前方集団の所々で個性を発動し、走る距離を稼ぐものと、永遠に個性を発動し先頭をぶっちぎる約2名に別れていた。

 

「「「てっ!!ずるいだろアレ!!」」」

 

 主に後方集団の方から叫ぶ声が聞こえる。

 その叫ぶ先は先頭にいる八百万と、メタルだ。

 彼らが怒るのも当然だろう。なぜなら二人とも正確には走っていなかった。

 方や八百万はスクーターに乗り、ガソリンギリギリまで走らせている。これは八百万が個性で生み出したもので相澤から許可が出ているが、問題はメタルの方だ。

 方やメタルは体全体をバイクにトランスフォームし走っていた。

 もうメタルかどうかも分からない無人のバイクがひとりでに走っているという奇妙な光景になっていたが、これももちろん相澤から許可が出ており、疲れない体で他をぶっちぎっていた。

 しかも八百万のただのスクーターと違い、メタルは自分で変形しているのでその機種はメタルの思うがまま。

 メタルの大柄な体がそのままバイクになるのでほぼレース用のバイクになった。既に数週、八百万から差をつけている。

 

「そこまで!」

 

 相澤の掛け声と共に全員の足がゆっくり止まる。

 メタルはマシン・ギアを解き、八百万も、バイクを隅にしまいに行った。

 全員があらかた落ち着いたら相澤が集合をかける。

 

「そんじゃあ、ぱぱっと結果発表。トータルは単純に各種目の合計だ。口頭は面倒だからスクリーンに出すぞ」

 

 全員が固唾を飲んで見守る中、相澤が手元のスクリーンに結果を掲示する。

 

 1位、愛杏メタル

 2位、八百万百

 3位、轟焦凍

 4位、爆豪勝己

 5位、飯田天哉

  ・

  ・

  ・

 20位、緑谷出久

 

 7種目中、3つの種目で最高点をとり、その他も2位か3位という好成績を残し、メタルは文句無しの1位となった。

 対して緑谷はボール投げで高得点をたたき出したものの、そのあとの持久走で腫れた人差し指の痛みと格闘しており、散々な結果となった。

 隣で緑谷が絶望の表情で落胆しているところ、相澤から予想外の声がかかる。

 

「あぁ、ちなみに除籍処分ってのは嘘な」

「「「……はぁ!!??」」」

「君たちの実力を引き出すための合理的虚偽☆」

 

 そのように今までのつまらなそうな相澤の表情がおちゃらけた笑みに変わった。

 

「嘘だろ!!」

「ひどーい!必死に頑張ったのに!!」

「嘘に決まってますわ。入学早々、除籍処分なんて有り得ませんわ」

「うわっ!デクくんから滝のような涙が!!」

 

 不満を垂らすもの、当然と言った表情のもの、物理的にありえない量の涙を流すものなど反応は様々だったが、全員、肩の力が抜けたのか、安心した表情が全員の顔から伺える。

 

「明日からもこれ以上の訓練の目白押しだ。各々ヒーローになるために甘えは捨ておけ。ヒーロー科の自覚を持って取り組むように。以上だ」

 

 そう言い残すとスタスタと退場する相澤見送り、その他のみんなも更衣室に着替えに向かうのであった。2名を覗いて

 

「クソっ……」

「ねぇ、イラついてるとこ悪いけど更衣室行かないの?行かないならひとつ聞いてもいいかい?」

「んだてめぇ……今、機嫌がわりぃんだ。話しかけんな」

「緑谷出久って子になんであんなに突っかかるのか知りたくてね」

「お前、人の話聞いてんのか?」

 

 爆豪の心境的に今はあまり誰かに構ってられないので、軽く舌打ちすると、

 

「あいつに個性があるはずがねぇんだ……」

「ん?それって……」

「うっせ!もう話しかけんな」

 

  それだけ言い残すとそのままいなくなってしまった。

 残されたメタルじっと考え込むと最後にボソリと呟く。

 

「緑谷出久か……」

 

 〈三人称視点END〉

 

 

 §§§

 

 

 〈一人称視点START〉

 

 

「ただいま……」

 

 もう既に日も落ち始めている頃、僕はだだっ広い家の扉を開ける。

 今日は結構疲れた。

 

 自分の個性の都合上、全7種目を個性フル使用で一気にエネルギー切れになった。

 僕の個性のエネルギー源はシンプルなカロリー。

 摂取したカロリーを体内で万能なエネルギーにしてマシン・ギアの動力源にしてる。

 極端な話だが、10分間飛ぶだけでざっと数千キロカロリーは減る。

 燃費が最悪の能力だが、無理やり万能な個性にしたぶん仕方ない妥協点。それにその分、腹は常に減るからほぼ特殊な脂で作ったジュースを常に携帯してるのだが、今日はそれも尽きた。

 これからの訓練上これ以上に個性を使う機会があると考慮し、次からはもっと脂ジュースの量を増やそう。

 

 部屋の明かりをつけ、僕専用のラボに入る。

 

『お帰りなさいませ。メタル様、今日の温度は23度です』

 

 誰もいないと思われる寂しい家から青年男性の声が聞こえる。

 もちろんこの家には僕以外は人っ子一人いない。そう()は。

 

「ジャービス、パワードスーツMarkIIIを雄英に移動させたか?」

『既に完了しています。雄英高校一年生男子更衣室に専用のルームをご用意させており、いつでも着脱可能です』

「最初の試着じゃ脱ぐのに散々だったからな。それとエネルギー切れだ。ダミーに脂ジュースを用意させろ」

『かしこまりました。しかしその前にご報告が、ダミーがメタル様が学校にいる間にグラスを数個割ってしまいまして……』

「はぁ……別にいい。でも僕のコレクションをダミーに近づけるなよ?」

『承知しました』

 

 僕の話している相手、ジャービス。

 恐らく僕が作ってきた技術の中で一番凄いものと問われれば間違いなくジャービスと答えるだろう。

 父が誘拐されて数年、託されたスタークインダストリーズで制作予定だった兵器やロボットの設計図の内、父が未完成だったものを僕が完璧に作り上げたのだ。それは高性能人工知能。

 通称ジャービス、僕のパワードスーツの操作の他、ラボの管理、僕の作品の制作の手伝いなどを任せている。

 

 ダミーは簡単な口頭の命令を聞かせるただのアームだ。しかし随分前に作ったものだから超ポンコツ。正直スクラップにするか迷うレベル。

 

「それと調べて欲しいものがある。静岡県にある折寺中学校の個性届を調べてくれ」

『はぁ……メタル様。あまり個人情報を勝手に探るのは黒よりのグレーですよ?』

「お前のボスは僕だろ。いいから調べてくれ」

『分かりました……。それで誰を調べるんです?』

「一人……いや、二人だ。爆豪勝己と緑谷出久について調べてくれ」

『かしこまりました』

 

 僕が1番気になるのは、爆豪勝己だ。

 体力テストでは4位なものの、爆風を使った飛行に1番びびった。

 生身の体を爆風でバランスよく飛ぶのはきついなんてものじゃない。それは俺も似た原理で飛んでいるからよくわかる。

 爆豪のポテンシャルは恐らくクラスで1番だろう。

 

 そして緑谷出久。

 正直、なぜ僕が緑谷を気にするのに明確な理由がない。

 爆豪が緑谷にキレてただとか、指だけでクラスで1番の火力を出せていただとか、それらが理由とはなりずらい。

 強いていえば勘。ただの勘だった。

 そしてその勘は予想外の展開を呼んだ。

 

『爆豪勝己と緑谷出久に関してのデータの解析が終わりました』

「報告しろ」

『はい。爆豪勝己に関しては何ら変わったことはありません。常に喧嘩腰の不良生徒。成績は良いものの緑谷出久に関してのいじめの報告もされているようです』

「ほう。よくヒーローを志望したな……」

『次に緑谷出久に関してですが……こちらは私も驚きました。クラスではひ弱でそれほど目立ったことは無かったそうですが……』

「どうした?続けろ」

『はい……緑谷出久ですが今年の春まで個性届で『無個性』と提出されています』

「……やっぱりなにかあったんだな」

 

 個性の変更は炎を吹く個性から水を吹く個性への変更は出来ないが、水を吹くから水に変換するという関連性のある理由なら変更がきく。そしてもうひとつが無個性から実は個性があったというものだ。

 それは絶対に病気にかからないというものだったり、視力や筋力が絶対に衰えないものだったり、言わば常時発動型の個性に絞られる。

『超パワー』が急に発言するなんて正直ありえないことだ。

 原則として無個性からの個性変更届は提出できるので誰も気にとめなかったのだろう。

 

「はぁ…分からない。とりあえず今日はもう休む」

『お休みなさいませメタル様』

 

 

 §§§

 

 

 次の日の午前になる。

 最高峰のヒーロー科なんて言われているこの学校でも、もちろん普通の必修科目がある。

 午前中はプロヒーローが真顔で英語を教えているのには少し笑ったけど授業自体はこれでも世界で一二を争うレベルの頭なのでぶっちゃけつまらなかった。

 

 昼は食堂でとる。

 一流の料理を安価で食べられるのでほとんどの生徒がここに集まる。

 ちなみに上鳴と切島に昼食に誘われたので一緒に食べた。

 

 そして午後。

 クラスが待ち望んでいたヒーロー基礎学。

 クラスが静まる中、みんなが待っていたのは、最強のヒーローこと、平和の象徴。

 今年から何故か雄英高校の教師として主にヒーロー基礎学を担当することになっている。

 まだかまだかと待っていたその時、

 

「わーたーしーが!!普通にドアから来た!!!」

 

 陽気なテンションと共に目の前に巨漢の最強が目の前に現れる。

 僕の席はドアのすぐ横なのでいきなり来た時はびっくりした。それよりマントが顔にかかっているのだが。

 

 しかし実物を見たのは初めてだ。

 しかも来ているスーツはシルバーエイジ時代のスーツ。まだオールマイトがナンバーワン1歩前くらいの時の超全盛期の衣装だ。

 画風もオールマイトだけ心なしか濃く感じるほどに平和の象徴の存在感は機械の体の僕でも軽く鳥肌もんだった。

 

「私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローとしての楚辞を作るため様々な訓練をしてもらう。単位数を最も多い。早速だが今日はこれ!戦闘訓練!!」

「戦闘……」

 

 ここに来た目的の大半はこれ、戦闘。

 何も父さんが通ってただけでここを選んだわけじゃない。あいつらに対抗するために未熟な僕じゃどうしようも出来ない。

 

「そしてそれに伴ってコチラ!!入学前に送ってもらった個性届と、要望に沿ってあつらえたコスチューム!!着替えしだいグラウンドβに集合だ」

 

 

 §§§

 

 〈男子更衣室〉

 

「いやーオールマイト初めて見たけど、やっぱオーラがちげーな!」

「あれがNO.1!!あんなひとにおしえてもられるってすげー!!」

 

 更衣室で上鳴と切島と一緒に雑談しながら着替える。

 みんなには言わないが、ここにあるスーツは兄の会社が作ったものがほとんどなのだ。周りを見渡せば自分のスーツや他人のスーツを見てお互いに見せあったりしているが僕にとっては何度も見たのでそんなに珍しさはなかった。

 

「ん?それより愛杏は着替えるのそれだけか?」

「変なスーツだな。ピチピチのヒートテックみたい」

「これはスーツじゃない」

 

 僕が今来ているのは全身ピッチリした運動する時の下着みたいなものだ。

 もちろんこれが数年かけて作ったスーツじゃない。

 僕はこの服のまま更衣室のさらに奥にあるみんなにとっては謎の部屋のドアに立つ。

 

「何だこの部屋?更衣室になんでさらに部屋があるんだ?」

「なんか書いてあるぞ。"愛杏・S(スターク)・メタル?」

「僕のフルネームだ」

 

 ドアを開けるとそこには学校の更衣室の一端にあるとは思えない近未来的な空間があった。

 自分でもよくここに作れたと無茶ぶりした自分がゆうのもなんだが感心する。

 僕が中に入ると、ゾロゾロとギャラリーが増える。

 

「なんだなんだこの部屋」

「奇妙な空間だ……雄英の更衣室に何故こんな所が……」

「お?みんなして何見てるんだ?」

 

 佐藤、常闇、瀬呂など、その他にも大半のクラスの男子が僕専用の特別更衣室に入ってくる。

 

「でも変な機械があるだけで特に何も変わったことわないぞ?」

「愛杏。ここで何するんだ?」

「何って、お着替えだよ」

 

 そう言うと僕はその変な機械の前に立つ。

 足を合わせるところに立つと自動で起動され足を入れるブーツのようなものが地面から現れる。

 次々と地面から背中、腕、膝、胸などのスーツのパーツを体に装着していく。ロボットがボルトを閉め、最後に顔のパーツの面が「カンッ!」と音を立てて装着される。

 

 これこそが僕の英知の結晶。パワードスーツMarkIIIだ。

 

 

「いいだろこれ」

 

「「「いや!!一人だけずるくね!!??」」」

 

 

 ……To be continued

 


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