僕がアイアンマンだ 〜I am IRON MAN〜   作:アリ新タ

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恐らく僕がこの小説を書きたかった1番の理由となる回です。



NO.5 パワードスーツ

 §§§

 

 

 〈数年前〉

 

 

 これはジャービスを完成してからすぐの話。

 まだ僕が資金集めをするために馬鹿みたいに講義をしていた頃だ。ジャービスの補助で作業効率の良さが今までと雲泥の差となり、かねてより計画していた最強のヒーロースーツを作ることにした。

 

「ジャービス起きろ。新しいファイルを作れ。インデックスはMarkII」

『私はいつでも起きていますよ。それよりいよいよですね先代のスターク様も見たら喜ばれるでしょう』

「あぁ………必ず完成させる」

 

 元々は最初に作ろうと思ったのだが、予算がなかった。

 自分のポケットマネーは優に数十億を超ていたが、完全に舐めていた。自動装着や外装の金属など金は滝のように流れていき一気にすっからかんになってしまった。思えばこの時から僕の荒稼ぎ生活が始まったのだろう。

 それで大枚はたいて出来たのはなんともバカでかい鎧。スーツではなく鎧。正直これじゃ機動力も何もあったもんじゃない。

 それで機動力を得るための金属として、大量のゴールドとチタンを集める必要があり、髭を生やした世界中の大学の教授たちのために講義をしてやった。よくガキの僕の授業を素直に聞いてくれるなぁ、と思ったけど。

 でもそのおかげで、今の資金は軽く、前の数百倍にしたので惜しみなく材料を馬鹿買いしてやった。

 

「ダミー、上げろ。違う少し下だ。よしそのまま、いいぞ………もう!邪魔だ!つま先をやってろ。こっちはいい……あぁ悪い邪魔だったか?……上げろ……いや、もういい………まったく……役立たずめ……」

 

 ブーツ型の飛行装置を作っているのをダミーに手伝わせたが失敗だな。

 本当に"不器用"とうい名前をこいつに付けたのは正解だったな。しかし僕はやっぱり天才だ。金さえあればものの数時間で人類が求めていた空飛ぶ靴を作ってしまうんだから。

 ちなみにこの頃はまだマシン・ギアを使えなかったので装置だけで飛ぼうとしてる時だ。

 自分の中のエネルギーを供給することは出来たので早速実験を開始する。

 

「よし!ではテストを始めるぞ。ダミー、火が出たらすぐに消火しろよ。それじゃ撮影開始………グリップ操作起動。ふぅ……まずは小手調べだ。パワー10パーセントで浮上テスト。行くぞ!THREE……TWO……ONE……グハッ!!」

 

 ………ダミーが何を勘違いしたのか、僕に消火器を掛けている。

 いや、今何があったかと言うと、パワーが強すぎた。軽く浮くつもりがひっくり返って壁に衝突してしまった。

 でも、軽いパワー調整とバランスのミスだ。計算事態は間違っちゃいない。大丈夫。僕は天才。世界一頭いい。OK。平常心。

 

 その後も黙々と作業を行っていく。飛行するためのエネルギーの噴出口が2つだけだとバランスが取れないので、手のひらと足の4つでバランスよく浮くことを目指した。

 満遍なく4つの噴出口にパワーを集めるのに苦労したが、何とか試作品が完成した。

 

「テスト11日目、こいつしかいないからまたダミーが消火担当。今度ヘマしたら、お前を市民大学に寄付してやるからな。じゃあ始めるぞ。慎重に……まずは手堅く、パワー1パーセントからだ。THREE……TWO……ONE」

 

 すると、体から微量ながらエネルギーが装置に流れていき。床から足が離れていき、数十センチほど浮くことが出来た。

 

「よし……成功だ。ってダミー、消火器持ってつけ回すな。自分が燃えだしそうな気になってくる。じっとしてろ火が出たら動け。次、2.5パーセント。THREE……TWO……ONE。よーし、いいぞ。そっと、ゆっくり、焦るな。ああ!バイクの方は不味い!!あぁ……大事なロードバイクが……」

 

 先ほどよりも強いエネルギーに少し苦労し、コレクションのロードバイクがめちゃくちゃになったが、いい感じに動けやすくなった。途中壁にぶつかりそうになっても手にも噴出口があるので移動する方向も多少操作できた。

 最後にゆっくりパワーを下げていき、倒れずに着地もできた。

 しかし手と足が結構熱くなってしまった。そこも見かねてダミーが自分に消火器を向けてくる。

 

「よせ!!あ!あ!!あ!!!………はぁ……一応……飛べたな」

 

 

 ここまでくればあとはデータをジャービスに分析させ、最適な出力を常に計算させれば自由に飛べるようになるだろう。最後に外装を作ればパワードスーツMarkIIの完成だ。

 

 そして最後の飛行テストから2日後、完成したスーツを初めて装着する。

 全身メタリックなカラーで金属の仮面にディスプレイを映し出す。これで見た目では小さい目の部分も実際の裸眼で見るより遥かに広い範囲を鷹並の視力で見れる。なんなら後ろまで見れる。そしてこのスーツの7割を操縦しているパートナーを呼ぶ。

 

「ジャービスいるか?」

『はい。メタル様』

「ディスプレイ起動。操作プログラムをインポート。どうだ?」

『ディスプレイ完全起動。プログラムインポート完了。アップロード出来ました。オンライン完了』

「バーチャルチェック」

『バーチャル環境測定中』

「補助翼をチェックしろ」

 

 補助翼は空気抵抗を計算したものだ。

 風の抵抗は空気圧に作用される。飛行機も同じ原理だ。ヘリコプターみたいにプロペラを回転させずに飛べるのは羽を空気圧で浮かしているからだ。スーツにもそれを適用すればかなりのエネルギーを節約でき、バランスも取りやすくなる。これもジャービスが居なければ出来ないことだ。

 

『テスト完了。システムチェックに移ります』

「あー、それより天気と航空情報をチェックし管制通信を傍受しろ」

『しかし、実際に飛行するには何テラバイトもの、計算が必要で……』

「ジャービス……時には歩くより、まず走れだ」

 

 実験なくして成功はない。

 ダラダラ計算をつむのは嫌いなので、すっ飛ばした。どうせ飛行中にジャービスが計算を終了してくれるだろう。

 ジャービス様々だ。

 

「いいか?いくぞ。THREE……TWO……ONE」

 

 今度は1番バランスの取れる最適な出力で、体を浮かす。そのまま一気に出力を上げて飛び立つ。

 

「うぅぅぅぅイェェェェ!!!フォォォォォォォ!!!!」

 

 簡単な低空飛行をするヒーローならいるだろう。

 しかしビルよりも高い高さを身一つで人型スーツで自由自在に飛べたのは僕が地上初だろう。個性という解析不可能な力で飛ぶものと同じことを可能としたのだ。

 これがよろこはずにいられるか?いやない!

 信じられないほどバランスも取れているし、これも1秒で数百回の計算をしてくれるジャービスがいてくれて本当によかった。

 

「夢みたいだ。お、あれはロズ兄の会社だな?1番でっかいのにそれより高く飛べているぞ?」

『窓から殆どの人がこちらを見ています。いきなりこのような歴史的快挙が飛んでいたらさすがに驚きますね』

「煽てるのが上手いな!ジャービス!!よーし!高度を上げるぞ!!」

 

 垂直にどんどん高く上がっていく。

 もう高さには慣れたし男ならやっぱりいちばんだろ。

 

「最高高度の記録は?」

『ブラックバードというジェット機が記録した高度8万5000フィートです』

「記録は破るためにある!!」

 

 どんどん高さが増していくがスーツの中の自動体温調節機で中は快適そのもの。

 実際は極寒の寒さだろうが、この中はまるで春のポカポカした天気並に快適だ。

 こんな小型で、ジェット機の記録を優に超えるなんて、ここ1ヶ月でこれをなしとげたんだから有頂天になっても仕方がない。

 …………そう、仕方なかったんだ。

 

『スーツ氷結していってます』

「そのままいけ!もっと高く!!」

 

 その瞬間足のブーツがバフッと音を立てた。

 嫌な予感がする。いや、正直ずっとしていたが気付かないふりしていた。後悔した時にはもう遅い。

 しかし、ゴールドが届くのが遅れるってことで急いで代用の金属を用意するんじゃなかった。次はちゃんとしたチタン合金で作ろうと決めた時既に落下は始まっていた。

 

「うわああ!!氷結だ。グラップを出して割れ!ジャービス!早く氷を割るんだ!!」

 

 ジャービスがなんとか補助翼を全て無理やりオープンし、なんとか氷は割れた。

 ギリギリでシステムも、復活。地面スレスレで飛行機能が再開し、再び飛べた。

 

「おぉぉぉ!!HAHAHA!!!」

 

 正直少しだけ反省したのでそのままI・アイランドにある自分のラボに帰ろうと来た時、僕はまだ有頂天のままだったことを知らなかった。

 

「よし、パワーOFF」

 

 そう。行き良いが強いので1回屋上に着地しようとしたところ、そのまま地面を突き抜けて。四階全ての床を突き抜けて落下してしまった。

 

(あぁ、今俺の体重忘れてた………)

 

 そして落下した先はロズ兄の大事な車の上だった。

 

「何やってんだ!!!メタル!!!!」

 

 我が兄の怒鳴り声が聞こえてくる中、しかしそれでも成功だと、気分事態はそんなに悪くなかった。

 

 

 §§§

 

 

「高度4万フィートから氷の付着が始まってくる。やっぱりスーツのカーツに問題あり、かな」

『ご明察ですメタル様。よその星に飛び立つなら改善が必要でしょう』

「はぁ、やっぱり金属の構成をゴールドチタン合金にかえろ。そうすれば出力荷重比を変えずにスーツの強度をアップできるはずだ」

『はい。ご提案のスペックをグラフィックに反映しますか?』

「いいね」

 

 ジャービス先生ならデザインまで最高のものを作ってくれる。

 設計を自動でしてくれるのはほんとに助かるし、これのおかげで制作時間を月単位で減らせているのだ。

 少しの時間でデザインが完成したようだ。

 映し出されたものはキンキラキンの金ピカスーツだった

 

『反映終わりました』

「ちょっと派手じゃないか?」

『失礼、貴方は"控えめな"方でしたね?』

「うーん……そうだ。あのマウンテンバイクみたいな赤にしろ」

『それなら"目立たなくて"結構です』

 

 そしてスーツのカラーが決まり、赤色と金色の2色で出来たスーツが映し出される。

 

『変更完了』

「いいね。それでいこう。ペイント!」

『自動組み立て開始……と言っても数百キロ分のゴールドが届くまで作れませんから完成は2ヶ月後です』

「………マジ?」

『マジです』

 

 まぁ何やかんやあって、それまでの間飛行訓練を続けていた。

 楽しすぎたので訓練と言うより遊びだったが、これのおかげで実は自分の個性の進化を見つけることが出来たのだが、それはまた次の機会に、ということで。

 

 こうして完成されたのがパワードスーツMarkIII。

 銃弾程度なら簡単に跳ね返す最強のコスチュームの完成だ。

 そして今現在、

 

 

 §§§

 

 

 

「スゲーな。てかお前の原型なくね?」

「真っ赤で派手だな!俺ももっとそういうのにすれば良かった」

 

 

 僕がパワードスーツを装着してから主に切島と上鳴が羨ましがってくる。

 うん。悪い気はしない。全然悪い気はしない。

 苦労して作ったかいがあったな。

 

「……ッチ」

 

 オット爆豪クン?

 残念だけど舌打ちは聞こえているよ?さらに言うとチラチラとこっちを横目で見ているのも分かっているよ?

 羨ましかろ?ホレホレ。

 

『メタル様。あまり煽るのは行儀がよろしくありません』

「僕は調子に乗ってるやつを煽るのが大好きなんだよ」

「ん?誰と話してんだ?」

 

 スーツからジャービスの声が聞こえてくる。

 外部には聞こえないから周りからは変に思われるのかもな。少し自重するか。

 なんでもないと返事をし、そろそろグラウンドβに到着する。

 光の向こうからオールマイトが迎えてきてくれる。

 

「格好から入るのも大事だぜ?少年少女!自覚するんだ。今日から君たちはヒーローなんだと」

 

 出迎えそうそうカッコイイことを言ってくれる。

 歯の浮くようなセリフを堂々とそれも様になって言えるのはやはりナンバーワンの特権だろう。

 この人から吸収できることは全て取り込む。

 

「いいじゃないかみんな!カッコイイぜ。さぁ始めようか!有精卵共!!」

 

 

 ……To be continued

 

 

 

 

 

 

 




飛行機の説明のくだりは漫画の知識を思い出しながらそれっぽく書いてるだけなのでそんなに気にしないでください。
スーツの下りで丸々1話使ってしまいましたがそれも許してください。

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