僕がアイアンマンだ 〜I am IRON MAN〜 作:アリ新タ
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「いやぁ!実にスピーディで鮮やかな進行。お互いの個性で最大限のパフォーマンス!合わせられた芦戸少女も良かったが、やはりナイスな作戦を立てられた愛杏少年の活躍が良かったな!」
僕らが、最後のペアだったので今は市街地エリアの出入口にて好評を貰っているところだった。
隣で「ドヤァ」と笑みを浮かべている芦戸の他にもしゅんとしている口田と佐藤に、俯いてプルプルしている爆豪など、他にも緑谷を除いだクラスの面々が揃っていた。
「ではみんな!緑谷少年以外は大きな怪我もなく、みんなも真剣に取り組めて良かった!初めての訓練にしちゃ上出来!それじゃ私は緑谷少年に好評を聞かせに行くので、みんなは着替えて教室に………お戻りぃぃぃぃぃぃ!!!」
口早に説明を終えるとあっという間に走り去ってしまった。
あんなに急いで、NO.1ヒーローは随分せっかちなんだなぁーと思っていると突然ジャービスから思わぬ知らせが来る。
『メタル様。オールマイト氏の体温が急激に下がっています』
「ん?正確な数値は?」
『通常が40度近くの高温に体温が保たれているにもかかわらず走り去った瞬間には37度ほどに一気に低下しています』
「うーん。ややこしいな。わかりやすくしてくれ」
『あのような常人を遥かに超える身体能力を発揮するにはそれに応じて体温も上昇します。現に緑谷氏も佐藤氏も個性の使用中は通常より3°ほど上がっています』
「それが気になったのか?」
『ええ。私もあのオールマイトの個性に興味がありますから。恐らく今は個性を解除してるのでしょう』
ジャービスが言ってることが本当なら恐らく個性を解除しているのだろうが、特に気にすることでもなく、それで興味をなくした僕はそのまま教室へと戻るのであった。
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「…」
「………」
(き、気まづい………)
現在の時間は日の沈み始めた午後。
空は紅に染まり、授業の長いヒーロー科の生徒以外はとっくに下校しているので辺りは静まり返っていた。
ただいま僕こと愛杏・スターク・メタルはと言うと別に特別なことをしている訳では無い。
ただ単に下校しているのだ。そう、ただ状況が気まづすぎる。
(まさかこんな落ち込んでますムード全開の爆発少年と被るとは……)
教室を出たら目の前を爆豪が歩いていた。そして自分もそのあとに続いて歩く。下駄箱が同じところにあるから仕方ないだろう。ホントなら「着いてくんな!下まつげ野郎!」と罵ってくるだろうが余程落ち込んでいるらしい。すぐ後ろにいる僕にも気づかないほどだ。
さすがにこの空気を耐えるには僕のメンタルは脆すぎたので、下駄箱で少し待ってから行こう。
そう決意し、下駄箱に寄りかかって立ち止まっていると、廊下から誰かが走ってくる。
「かっちゃん!!かっちゃんまって!!」
この学校で爆豪のことを「かっちゃん」と呼ぶのは一人しかいないだろう。僕が学校の下駄箱の入口で携帯をいじっていたらまだ緑色のジャンプスーツを着たままの緑谷が走って出てきた。
そして何故か、もの陰に隠れた僕。
(って、何やってんだ僕)
明らかに今から第三者の自分が出ていくと、お邪魔でしかないので、空気をよんで、黙っていることにした。
そして何度もあだ名を連呼された、かっちゃんはその歩みを止めた。
「これだけは、君に言わなきゃ行けないと思って、僕の個性は"人から授かったものなんだ。」
「は?」
(は?)
「誰かからは絶対言えない!!でも、コミックみたいな事だけど本当で……まだろくに扱えないし、全然ものにできてない借り物で……それに頼って君に勝った。でもいつかこの個性を自分のものにして、僕の力で君を超える!」
(……)
「なんだそりゃ……訳わかんねぇこと言いやがって。これ以上俺をコケにするつもりか……だからなんだ!今日俺はてめぇに負けた……そんだけだろが!氷のやつ見て適わねぇんじゃって思っちまった!くそォ!ポニーテールのゆうことに納得しちまった!下まつげのスーツ見て羨ましいと思っちまった!!」
(え?僕そこ?)
「こっからだ!こっから俺はここで1番になってやる!!」
「俺に勝つなんて二度とねぇからなクソが!」と最後に言い残して爆豪は歩みを進めた。
何となくバツが悪いな。別に盗み見する気はなかったので偶然聞いてしまったのだが、どうしても気になってしまうことが出来た。
緑谷の言った「授かったもの」という言葉。そのまんま解釈すると色々な辻褄が合う。元々無個性で登録されていた理由。個性に体が追いついてない理由。そして最大の謎が出来てしまう。その個性は"誰"から授かったのか。
色々気になることがあり、直接緑谷に聞こうと出ていこうとしたその時
「いたァァァァ!!爆!豪!!少年!!!」
ここで自分の隠れるという選択が合っていたことにきずく。
もし僕があのまま帰宅を続けていたら、今ほどではないにしろ、このオールマイトと同じ変な空気になってしまっただろう。
しかし本人は全く空気を読めてないのか話を続けていまう。
「言っとくけど自尊心ってのは大事だ。君は間違いなくプロになれる能力を持っている君はまだまだこれからーー」
「離してくれオールマイト……歩けねぇ」
「ーん?」
「言われなくても俺はアンタをも超えるヒーローになる」
「……あれ………あっ……」
オールマイト氏よ、気づくのが遅いぜ……。
とっくに立ち直っていた爆豪は次こそ本当に去ってしまった。
俺を含めた3人はそのままポカンとして、爆豪が見えなくなるまで固まっていた。
§§§
『メタル様。今の会話で気になることがあります』
「お前はいつも唐突だなジャービス」
教室へと戻っていく緑谷とオールマイトを尻目に僕も物陰から出ていき、帰宅を再開した。
ジャービスの言いたいことは僕も知りたかったことだ。聞きたいこともあるし。
『先程の緑谷氏の発言。授かったものと言っていましたが、日本の戸籍に個性を譲渡、また、一時的に借すなどのものは登録されてません』
「……つまり」
『お察しの通りです。戸籍登録してないヴィラン』
「緑谷にかぎって……それはないと思いたいのだが……」
戸籍登録してない人間。そんなのは個性知られるとまずいヴィランくらいだろう。あのオールマイトでさえ一応『超パワー』で戸籍登録されているのだ。日本に個性の譲渡、貸し借りなどに精通したものは無い以上、海外のものかと思われたが、日本に入国する時に一時的な個性照明の提出を行うのでこの可能性もないとするとやはり緑谷にヴィランとの関わりがあるのではという可能性が出てくる。
『しかし、もう一つだけ奇妙な可能性があります』
僕が悩んでいるとジャービスから思わぬ声がかかる。
後にわかるがこのジャービスの言った可能性は本当に的を得ていたのだったことを僕わまだ知らなかった。
しかし、この可能性は全ての辻褄が合いすぎたのだ。
『オールマイト。本名八木俊典氏も緑谷出久氏と同じように高校入学まで無個性で登録されております』
「は?………それって……」
つい昨日確認したばかりだ。
なんてことは無い。ただ単に入試一位が突っかかった、指だけであのパワーを出せる同い年の少年について軽く(法に少し触れたが)調べあげただけだ。それがまさか……。
「ジャービス。過去に無個性。それか元々の個性とは別に個性が途中から超パワーに変更された実績を調べてくれ」
『かしこまりました』
単なる好奇心だろう。
父の仕事を見学するためだけに海外に行ったほどの好奇心のある僕だ。
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それがまさか
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「あっ!あの!ヒーロー科の生徒ですよね。オールマイトの授業について一言お願いします!」
朝から昨日のことで頭がいっぱいの僕は校門の前で群集を作っているマスコミにイライラしながら歩いていると、記者にマイクを向けられる。
「ノーコメント。こんな朝っぱらから校門の前で騒ぐな鬱陶しい。せめて放課後か休日に来い。邪魔にならないよう場所も弁えろ。後ちゃんとアポは取ったのか?社会の常識だぞ。どの会社よりも早く記事を書きたいのはわかるが、ルールは守れ。分かったろとっとと道を開けろ非常識者ども」
それだけ言い残すと無理やり記者を振り切って歩き始める。
しかし、モラルも何もあったもんじゃない。僕が中学生でバリバリ働いているころ、色んなインタビューやら、なんやらを受けてきたが(全て断わっている)本当にこういうのにはウンザリする。
ちなみにこの会話はジャービスが全部録音しているので、後日根も葉もない噂をどこかの会社が記事にしたら裁判で訴えてやろう。
そして賠償金をふんだくって………………潰してやる。僕に牙を向いたらどうなるか……ふふふ……。
『メタル様、また悪い癖が出てますよ?』
「おっと、悪い。もう僕はビジネスマンじゃないんだった」
僕はもう一生分は働いた。ヒーローになったら合法的に父親をさらった組織を潰して助け出し、すぐに引退。
後世は機械いじりを楽しみつつ世界旅行にでも行ってやろう。
これが僕の人生プランだ。
そんなことを考えながら教室に着き、今日もヒーローのための一日が始まった。
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「昨日の戦闘訓練おつかれ」
朝のホームルーム。
相澤から昨日の戦闘訓練について話してもらっている。爆豪と緑谷が共に注意され惨事は簡単に済まされた。そして始まるホームルームの本題。
「そしてホームルームの本題だ。今日は君らに……」
(((また臨時テスト!!??)))
「学級委員を決めてもらう」
(((学校っぽいのきた!)))
これまでの経緯から、また変なテストをさせられるのかと身構えたクラスメイト達だが、放たれた言葉は以外に普通だった。
そこから始まる各々の主張。「ハイハイ!!俺やりたいですそれ!!」だとか、「オイラのカリキュラムはスカート膝丈五十センチ!!」だとか、「俺にやらせろ!!」など一気にクラスが賑やかになった。途中、支持したくなるような内容を叫んでる奴がいたが、僕は特に興味はない。ないったらない。
僕が今一番したくないのは仕事だ。中学の青春まるまる潰して働いていたのだから面倒くさそうなことは極力したくない。ましてや雑務を押し付けられること間違いない委員長などもってのほかだ。
しかし、どうやらクラスメイトたちの意見は違うようでクラスの9割近くがやりたがっていた。理由は今後のヒーロー活動としてみんなを導くリーダーというポジションをしたがるのだろう。
うん。どうでもいいな。
「静粛にしたまえ!」
クラスが騒いでいたら唐突に静寂になるような声が轟く。
それはクラス唯一のメガネ男、飯田であった。
「他をまとめる責任重大な仕事だぞ。やりたいものがやれる訳では無いだろ。周囲からの信頼あってこそ務まる政務。民主主義に乗っ取り、全員のリーダーを決めると言うなら、ここは投票で決めるべきだ」
なんと素晴らしい意見であろう。公平でかつ迅速に決まるすばらしい提案だろう。
しかし、悲しいかな、その言葉に説得力は感じられなかった。意見だけなら良かったであろう。そのそびえ立つ右手が無ければの話だが。
当然クラスからの指摘の嵐、そこでも尚飯田は、「どうでしょうか先生!」と相澤に聞いだし、
「時間内に決めればなんでもいいよ」
の一言で結局、投票に決まったのであった。
「僕4票!!??」
投票の結果、緑谷4票、八百万2票の末、緑谷を委員長、八百万が副委員長となった。僕は最近何かと自分の話題に出てくる緑谷に入れてあげた。
「なんでデクが!誰が入れた!!」
「まぁ、お前に入れるよかマシだな」
「んだと!しょうゆ顔!!」
まぁゼロ票の僕、麗日、飯田、轟から見てだいたい誰が誰に入れたか分かるだろう。だから麗日よ。あからさまな口笛を後ろで吹いてても仕方ないぞ。
「ゼロ票………流石は聖職と言ったところか……」
あれだけ主張していた飯田がゼロ票。先程自分で言っていた「周囲からの信頼あってこそ」の言葉通り、信頼している緑谷に入れたのだろう。ある意味有言実行。みんなは飯田の行為に呆れていたが僕の中でちょっと飯田の株が上がった。
「それじゃこれでホームルーム終了。1限目の準備しろ」
「「「はーい」」」
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「唐突に現れるよ!!校長さ!!!」
只今お昼。安価で食べれる雄英高校のメニューを食べようと、生徒が流れるように移動するこの時間。メタルも例外でなく、食堂に向かおうと教室を出たら目の前に現れたお馴染みの小動物。
「君の注文したラボが完成したよ!」
「何!?」
ラボ。それは研究者、科学者、発明家達の神聖な領域。自分らの血のにじむ様なデータ、発明品、機材などがある。僕らにとって命の次に大事なもの、いや場所だ。
「それで場所は!?」
「ん?いや、ここから北にある下宿所の近くだけど」
正直こんなだだっ広い雄英高校の敷地内を全て把握している訳じゃない。一刻も早く見たい真の我が家に僕は我慢できず残りの休み時間を確認する。
「校長!昼休みあと何分だ!?」
「え?あと40分だけど………まさか!?」
目の前の小動物を問答無用で右脇に抱える。
近くの窓を全開にして靴を左脇に抱える。
「ちょっと!!放課後!放課後にしよう!!」
「思い立ったが吉日だ!!」
「放課後でもまだ吉日さ!!」
マシン・ギア発動。
体内のエネルギーを両手足に集める。靴を脱いだのは噴出口を確保するためだ。
「行くぞ校長。落ちるな?」
「やっ!やめて!!」
そして一気に北に向かい飛び立つ。
「小動物には優しくするさぁぁぁぁぁぁ!!!」
§§§
円形ドーム。
それこそが僕の真の家だ。元々通学するのもめんどくさかったので家は雄英内に作ることを計画した。今のマンションは充分豪華なのだが、仮住まいでしかない。
1階は大したことはない。水槽に長いソファなどが置いてあり、簡単なリビングになってるだけだ。
しかしもちろんそれだけではない。この家は4階建てだが、見た目は1階しかない。残りの3階は地下に伸びているのだ。1階はリビング。F1階はパーティルーム。F2階は各種部屋と寝室。F3階がメインのラボだ。
根津校長に案内させた家に着いた僕は早速地下三階のラボに来ていた。
「いやー凄いね。ホログラフィック技術がすごい。空中にバーチャルモニターや、様々な最先端技術を搭載したロボット。ここだけ近未来みたいさ」
『最先端技術と言うより、これらの設備は全てメタル様がお作りになられたものばかりです。スターク社の独占技術なので他では決して真似出来ないものですね』
校長の賛辞に答えたのはお馴染みのジャービス。この家の管理を隅々までやってくれる僕の最高の相棒だ。
「ジャービスとそれにダミーも移動してきたか」
『はい。さすがメタル様が設計しただけあって完璧な出来です。私も前のマンションより格段に回線が良くなりました』
ジャービスやダミーは感情もプログラムしてあるので嬉しさを感じるのだ。
僕の愛犬ならぬ愛ロボットのダミーも「ウィーン」とそのアームを上下に揺らして喜んでいる様子だ。
ただダミー君。上下に揺らしているアームを近くのPCに当てるのをやめてくれ。
「それにしても、こんな時間だね。休み時間があと10分位だよ。早く戻ったほうがいいんじゃない?」
「おーけー。戻ろう。帰って引越しの準備をしなくちゃいけな……」
プルルルルルルルル!!
「「ん?」」
その部屋に鳴り響いたのは電話の着信音。もちろん僕じゃない。僕ならジャービスが知らせてくれるので着信音自体ならないのだ。そうすると残りはただ一人。
「もしもし?……うん……え?雄英バリアーが?マスコミが押し寄せている?それで警察には……うん、到着するまでマスコミを抑えてて。私も直ぐに向かうよ」
それ言って校長は通話をきった。
校長の喋ったことだけで大体の事情は分かる。しかし雄英バリアーが破れたのは正直焦った。あれはスターク社が作ったものだからだ。ロケットランチャーでもビクともしないシロモノを壊せるはずがない。
「悪いけどメタル君。今すぐ校門まで飛ばしてくれるかな?」
「もちろん。さっきよりも飛ばすから今度はしっかり捕まっててくれ」
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「どうしたら……ただのマスコミにこんなことが出来る?」
校門の状態は悲惨だった。1メートルにも及ぶ厚さの壁は綺麗に崩壊していた。正直壊されたのなら修理すればいい。もちろん数百万はするだろうが、はした金だ。それより、こんなことをするに一体なんの意味があるのかそれこそが根津校長の1番の不安だろう。
「どんなに凄いテクノロジーだって、それをいとも簡単に上からねじ伏せてしまうのが個性。技術者にとって地味に忌々しい存在だよ……まぁ僕が言えることじゃないが」
「そうだね。私もその
「あっ………」
……To be continued