オチを変えずに自分が納得のいく展開にしたオルフェンズ   作:類川成句

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2.地球圏撤退戦・1

ーーーおかしい。

 

ジュリエッタ・ジュリスは目の前のガンダム(バルバトスルプスレクス)の動きに違和感を感じていた。

今までは隙あらばこちらの息の根を止めようと鋭い攻撃をしてきたのに、急に回避が容易な、緩い攻撃をし始めたのだ。

 

急に攻撃の手を緩めるなど、あのパイロットに一体何があったというのか?

宇宙海賊掃討、MA討伐戦であのパイロットの凄まじさは目に焼き付いている。そんな相手がここに来て動きを変えるなど、何らかの思惑があるように思えてならない。それは一体何だ?何が先程までと違う?

戦況は月外縁軌道統制統合艦隊アリアンロッドの有利に進んでいる。反乱軍はMSを回収し離脱の準備に入った。例えここで逃がしたとしてもこの戦場での勝利は目前である。

この状況で反乱軍が、いや鉄華団がとる戦術はなんだ?

ジュリエッタは阿頼耶識を使わずに勝つために、自身を鍛えると共に彼らの戦闘データを研究してきた。

ギャラルホルンと戦い名を上げてきた鉄華団にとっては皮肉なことに、ギャラルホルンこそがもっとも彼らの戦法を熟知している相手なのだ。

 

鉄華団が退却する時に使う常套手段と言えば・・・

 

「そういうことかっ!」

 

それは2年前の鉄華団が地球に降下する時の、カルタ・イシュー率いる地球外縁軌道統制統合艦隊との戦いでの事だ。鉄華団は軌道ステーショングラズヘイム1に損傷を与え、その隙にまんまと地球降下を成し遂げている。

相手が追撃をする余裕を無くすような打撃を与えた後に全力で逃げに走るというなら今回彼らが狙うべきは・・・

先程艦隊本陣に突っ込んでいった輸送艦、急に積極性を失った攻撃はアレから自分を遠ざけるためのものでは?そうと分かってしまえば。

 

「そこをどけぇええ!」

 

案の定、ジュリエッタが輸送艦に向かおうとすれば急に攻撃が激しくなる。これで彼らの狙いがはっきりした。ラスタル・エリオンの座乗する艦隊旗艦。それに間違いあるまい。

 

「あれ・・・?気付かれた?」

 

三日月・オーガスはいつだって多勢と戦ってきた。故に彼は常に最短で敵を仕留めるよう動いており、だからこそ敵の誘導・足止めなどという搦め手には不馴れで、端的に言って向いていなかったのだ。

 

 

■■■■■

 

 

「くっ・・・」

 

マクギリスにとってガエリオが再び目の前に現れたことは面倒事ではあれ、たいした問題ではなかった。

それほどに力量には差があったし、覚悟においてもガエリオでは彼に届かない。

だがその差を埋めるべくガエリオは禁忌に手を染めた。

阿頼耶識TypeE。

戦死した部下、アイン・ダルトンの脳を利用した忌まわしき技術だ。

それに加えて出撃前のアルミリアとのやり取りで負傷した左手がマクギリスの操縦を妨げていたことも二人の差を縮める事に繋がった。

 

「去らばだ・・・っ」

 

そしてついにガエリオ(キマリス)マクギリス(バエル)を捉えた。キマリスの膝に搭載されたドリルが唸りを上げてバエルのコックピットに迫る。

 

「准将ぉー!」

「なっ?!」

「石動!?」

 

間一髪、石動・カミーチェのヘルムヴィーゲ・リンカーがバエルを体当たりで弾き飛ばす。キマリスのドリルは狙いを外し、盾にしたヘルムヴィーゲの巨大な剣を砕く。

 

「准将は残った部隊を纏めて鉄華団と後退を!殿は私が!」

「余計な真似を!」

 

半ばから刀身が砕けたバスターソードから柄を分離し棍棒(クラブ)にして持ち換える。

しかしマクギリスはバエルをヘルムヴィーゲの前に進める。

 

「准将?!」

「石動、私はお前にここで死なれては困るといったはずだが?」

 

そう、石動には大事な役目がある。

ダインスレイヴの連射で戦力をズタズタにされ過ぎた。最早この戦場での逆転勝利は望めないだろう。

だが元々この戦い事態予定外のものだったのだ。

運良くバエルを手にいれるチャンスが巡ってきたが故に行動を起こしたが、本来ラスタル・エリオンとの直接対決には、現在火星で準備している新兵器を投入するつもりだった。バエルもあくまで基本的なメンテナンスをしたのみで、自分用の調整が不十分。

ここで退いてもまだ最終的な勝ちの芽は残っているのだ。その為の切り札を失うわけにはいかなかった。

 

「我々の戦いはまだ終わってはいない。このバエルがあるかぎりな。お前は先に艦に戻って準備を進めておけ」

「・・・了解しました。お早いお帰りを」

 

ヘルムヴィーゲは背を向け離れていく。

その姿を見送りながらガエリオはキマリスの腰からソードを抜く。

 

「今の話を聞いてなお私にこだわるか。石動を仕留め損なった事を後悔するやも知れんぞ?」

「それで困るのはラスタルだ。俺の目的は最初からただ一つ。お前だけだ!マクギリス!」

「フッ、執念というやつか。だがそれでもお前では私には届かない」

「ほざけ!助けが来なければ死んでいた癖に減らず口を!」

 

ガエリオは剣を突き付け吠える。実際あの時石動が助けに入らなければマクギリスは死んでいただろう。

 

---ああ。だから認めよう。このままでは駄目だと。

 

「喜ぶといいガエリオ。今この時代に生きる者達の中で、最初にバエルの真の力を見ることが出来るのだから!」

「何だと?!」

 

脳裏に浮かぶのは天使(ハシュマル)を狩る悪魔(バルバトス)の姿。バルバトスに出来た事がバエルに出来ぬ通理無し。

マクギリスは阿頼耶識のリミッターを外そうとし、ふと左手の傷が痛んだ。

リミッターを外すということは三日月・オーガスのように機体を降りた時に何らかの不具合がでるということだ。

その痛みはまるでアルミリアが自分を引き留めようとしているかのように感じられた。だが、それでも愛程度では自分は止められない。

 

「バエルよ!ろくに言うことを聞かぬ左腕などくれてやる!今こそ300年前に伝説を作りあげた、その真の力を見せる時だ!!」

 

バエルの目が一際強く紅く輝き、そして。




変更点
1・地球圏での戦いはマクギリスにとって予定よりも早いタイミングだった。
2・火星には本命の戦力が控えている。石動はその為に必要。でも後で死ぬ。
3・追い詰められたマクギリス、バエルのリミッター解除。
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