『果て』と言おうか、とにかく何処にあるのかも分からず、ひっそりとある浅くも深くもない山。
そんな山の奥に、『幻想郷』と名付けられた楽園がある。幻と実体の境界に分け隔てられた、全てを受け入れると云う楽園が。
いいや、楽園だけでは無い。
冥界、魔界、天界、地底、地獄、彼岸―――
楽園を通じて、何処にでも行けるだろう。
その楽園は、決して人にとっての安息の地ではないが―――
―――楽園に満ち溢れる幻想は、きっと見る者の心を奪うだろう。
だが、『外』の人間がそれを知ることは殆ど無い。
否、知りようも無い。
結界があるおかげだ。その結界は『常識』を通すことは決してない。
とはいえど、所詮結界。万能では無い。当然のように例外も存在する。
本来は知ることのなかった世界。
それを、奇跡とも呼べる偶然によって知ってしまった一人の青年がいた。
ある人から見れば変わりない、また別の人から見れば少しかわいそうな、ただし物語のように波瀾万丈な。
そんな人生を送ってきたその青年。
その青年は、
だが、当の青年はまだ何も知らない。楽園もまだ生まれてはいない。
「あなたの名前は『
卍卍卍卍
その青年の『物語』は、未だに始まってなどいなかった――
――死してようやく始まった。
「ようやくこの時が来たわよん。まあ、頑張りなさいな」
その青年の運命の歯車は、回り始めてなどいなかった――
――とある少女と出逢って、ようやく回り出す。
「私は西行寺幽々子。よろしくお願いね、無口な亡霊さん」
その青年の『世界』にはは、まだ色が存在しなかった――
――友人を得て、ようやく『舞台』は整い、そして色づいた『世界』が動き出す。
「また来なよ、麟祢!私らはいつでも歓迎するよ!」
「そうだねえ、お前が来ると場が盛り上がるからねえ」
その青年の『物語』は、未だに
――『幻想郷』と言う名の楽園が出来て、初めて綴られる。
「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」
さあ、永く続いた準備期間はもう終わった。
いよいよ今から『物語』を始めようじゃないか。
これは、現代にて死に、亡霊となって過ごす一人の青年と―――
―――後に華胥の亡霊と呼ばれることになる、一人の少女の織り成す―――
――数多くの出会い、そして別れの物語である―――