もしかしたら今日はあと二回ほど投稿するかもしれません。
とにかくごゆっくりどうぞ〜。
「…と、まあそう言うわけでな」
「事情は分かりましたわ。…それにしても記憶喪失、ね。それで幽々子はあんなに落ち込んでるのね」
「……どうかしました?と言うかまず誰ですか?」
「「……」」
物言いたげにこっちを見てきた金髪の少女と、老人にそう返すと、そろって溜息を吐かれた。さっきの少女と云い、この二人と云い、当たり前のことで何故溜息を吐いているのだろう?
「麟祢って本当罪な人、この場合罪作りな幽霊かしら?」
「全くその通りですな」
「…だから何を言ってるんです?」
「麟祢、お主は記憶喪失なのだよ」
「はい?記憶喪失?僕が?いやまさか、そんなことないですよ!」
「なら、自分の名前くらい解るわね?」
「そんなの当然……」
金髪の少女と老人が言っていることが解らずに首を傾げていると、老人がそう言ってきた。僕は直ぐに否定したが、金髪の少女がそう訊いてきた。僕は答えようとして、言葉に詰まった。何故なら…―――
「どうかしたの?」
「……思い出せない。名前が、解らない……」
―――…何も思い出せなかったからだ。何度思い出そうとしても、一向に分からない。名前だけでなく、何もかもが分からなかった。ただ、一つだけ分かることがあった。思い出したわけではなく、感覚的にそう思っただけだが、当たっている自信がある。
「……僕は、既に死んでいるんですよね?」
「…そうだ」
「分かったかしら?自分が記憶喪失だって事が」
「……」
何も言えなかった。二人は僕の無言を肯定と受け取ったようだ。金髪の少女は真っ直ぐ僕を見据えてくる。余りの真剣さに釣られて、僕も佇まいを正した。
「あなたが記憶を失った原因は解らない。でも、必ず戻して差し上げますわ」
「先ずは、儂らの知る限りのことを教えよう。流石に何も知らぬままでは都合が悪かろう」
「……お願いします」
何故突然記憶が無くなったのか、その時何があったのか。それを知らないことには何も始められない。二人もそう思ったようで、二人が知る限りのことを、教えて貰うことにした。
卍卍卍卍
「……隣、座っても良いですか?」
「あら……ええ、もちろん」
隣に座ったは良いが、僕はこの西行寺幽々子と言う少女のことを何も覚えてない。というよりも、知らない。
彼女の方もそれを分かっているようで、表情も声もどこか暗く寂しげだった。その理由は訊くまでも無い、僕が記憶を失ったからだ。だが記憶を失う前に僕と彼女がどういう関係だったのかは聞いてない。あの二人――金髪の少女?が紫、老人が妖忌と言うらしい――はそこまでは教えてくれなかった。
「……本当に何も覚えてないの?」
「……はい」
座ったは良いが何を言えば良いか分からなかったために、僕は黙り込んでしまった。結局先に沈黙を破ったのは彼女の方だった。彼女の問に、僕は頷く。
「…今までのことも全部?」
「……はい」
「昨日のことも?」
「……はい」
「私たちのことも?」
「……はい」
「……そう」
「……ごめんなさい」
彼女の問に、頷くことしか出来ない自分がもどかしい。答える度に彼女の表情が、声が、悲しみを増しているのが分かる。その原因が僕であることも。それなのに、どうすることも出来ない無力な僕が、許せない。理由は分からないが、彼女を悲しませるなと言われた気がした。
「……本当に、何も覚えてないんです。ごめんなさい」
気のせいではなく、本当にそんな声がしたのだ。もう一度謝った僕は、同時に不思議な気持ちになる。落ち込んでいる幽々子に何故かこの気持ちを伝えたかった。
「…だけど…」
だから僕は、言葉を紡ぐのを止めなかった。隣に座る彼女の肩を掴んで、こちらを向かせて、泣き腫らしたように少し赤い目を見る。
「記憶のあるなしなんて、関係ない。『
―――そんなに
「……」
そんな僕の言葉を聞いた彼女は、少しの間驚いたままで―――
「……ふふっ」
やっぱり寂しそうに微笑んだあと―――
「…ありがとう、麟祢」
少しだけ嬉しそうにそう言った。
卍卍卍卍
「……
「無論。この老いぼれに出来ることがあるならば、こちらとしても願ったり叶ったり。喜んで力を貸しますぞ」
「ええ、私もこんな結末は望んでいません。全力で協力しますわ」
麟祢が去った和室で、紫は妖忌の言葉に答えながら二人がいるであろう方へと目を向けた。
その手に握られた『
「幽々子が、罪悪感に押し潰されない内に……」