東方幽闇郷〜君の隣にあるために〜   作:面梟エッホエッホ

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お久しぶりです〜。

これからは遅くても週一で更新できるよう頑張ります。

では17話どうぞ。


第十七話 幽々子の手記

 

夜が明けた。あの後、俺は一人で屋敷に戻り、事の顛末(てんまつ)を話した。妖忌は驚きはしたが、何も言わなかった。眠っていた俺には、どうしようもなかっただろうと慰めてはくれたけど、俺は…―――

 

幽々子が死んで、一番動揺したのは紫だった。どこから聞きつけたのか、やって来るなり凄い剣幕で迫られた。事実と知ると、スキマを開いて帰って行ってしまった。幽々子は、西行妖に封印結界を施したのは紫だと言っていた。『境界を操る程度の能力』を持つ自身の結界が破られたことがショックだったのかも知れない。

 

「…何だこれ?」

 

それから自室に戻ると、文机の上に一冊の手帖が置いてあった。昨日は気づかなかったが、それは俺のものじゃなかったと思う。俺は、何となく手に取ったそれを開いてみた。

 

「幽々子の……日記?」

 

それは、幽々子の日記だった。それも、俺が富士見の屋敷に来る前から、昨日までのだった。どうしてこれが俺の部屋にあるのか。多分置いたのは幽々子なんだろう。だけど、その意図は分からなかった。

とにかく俺は、その日記を最初から読んでいった。

 

卍卍卍卍

 

「………」

 

幽々子の遺した日記。その内容は、俺にとって想像を絶するものだった。

幽々子は元々『死霊を操る程度の能力』を持っていた。それは知っている。何時だったか紫から聞いた。

だが、その能力は父親が死んで西行妖に喰われたことで、『死を操る程度の能力』となり、幽々子を苦しめた。幽々子の意思に関わらず、桜が満開になる度に誰かを殺してしまう、最後の一輪が開花するまであらゆる人が犠牲になる、そんな地獄のような生活が始まった。そこから先のページには、所々涙の跡が有った。

乾いた涙の跡をなぞりながら、俺は心が苦しくて仕方なかった。それでもページを捲るのは止めない。せめて最後まで読もうと思ったからだ。

絶望と孤独。そんな闇から幽々子を救ったのは、紫だったらしい。次のページには、紫の事が書いてあった。突然スキマから現れて、いきなり一方的に友達になるあたり、その頃から変わってないみたいだ。

 

「次は……俺か」

 

ページを捲っていく毎に、幽々子が立ち直っているのが分かった。そしてまたページを捲ると、俺の事が書いてあった。そこから幽々子が元の明るさを取り戻していったのが分かる。だけど反対に俺の心は重くなるだけだった。耐えきれなくなって、俺は日記を読むのを止めた。もう現界だった。そっと日記を閉じ、文机の上に戻した。

 

(幽々子は何もかも信じられなかった俺を信じて、支えてくれた。自分がいっぱいいっぱいだったのに。それなのに俺は、気づけなかった。……甘えてるだけだったんだ)

 

幽々子は、()()()()()と言っていた。でも俺は大人しく待っているつもりはない。もう俺には、幽々子に会わせる顔がない。彼女が居たら、そんな事はないと怒るだろうが、俺自身が許せなかった。意を決した俺は、準備を始めた。

 

卍卍卍卍

 

俺は、西行寺家の門の前にいた。持ち物は僅かな金銭だけ。亡霊である俺は、食料も水も必要ない。

 

「本当に行くのか」

「……はい。短い間でしたが、お世話になりました」

 

後ろから妖忌が訊いてきた。その口調は否定的なものではなかった。或いは止めても無駄だと思ったのかも知れない。俺は、その言葉に頷いて今までの礼を言った。妖忌は、懐から何かを取り出すと投げて渡した。

 

「……戻って来い、と言っても帰ってこないのだろう?持っていけ」

 

渡されたのは、手に納まる程の小さな鏡だった。どうやら妖忌なりの気遣いらしい。その証拠にただの鏡じゃなかった。微かに霊力を帯びている。俺は礼を言ってそれを仕舞うと、妖忌に頭を下げて、屋敷を後にした。後ろは、振り向かない。

 

―――彼も言った通り、俺がここに戻ってくる事はもうない。

 

そう心に決めながら、俺は目的のない旅に出ることにしたのだ。

 




はい。
ここまでで実質上の1章は終了です。

次からは麟祢が旅に出ます。
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