作者は学生なので、この時期は期末テストがあり、その関係で遅くなりました。
以降は事前に告知しますので。
それでは20話どうぞ〜
次の目的地を取り敢えず都に決めた俺は、ひたすら都を目指して歩き続けていた。既に死んでいる身である俺には疲れという概念が無いので、このくらいは余裕だ。
「ちょっと、待ちなさいよ」
「……」
じゃあ何故、足早に進んでいるかって?気まぐれだよ、別に後を着いてくる変な妖怪は関係ない。アレはただの妖怪。俺は逃げてるわけじゃないし、アレは追いかけてきてるわけじゃない。
「待ちなさいって言ってるでしょ!」
「…………」
「聞こえてるんでしょ、何で止まらないのよ」
「………………」
「待ちなさいってば!」
「………
駄目だ、この妖怪しぶとすぎる。無視をするのが疲れるなら、もう観念するしかない。俺は嘆息しながら顔だけ後ろを振り返る。そこには一人の女性が佇んでいた。―――勿論、彼女が先程から声をかけてきている妖怪だ。
まだこの時代の日本にいるはずのない、ブロンドの髪を長く伸ばし、黒い洋服に身を包んだ少女。端から見れば異質な存在に思えるが、同じ妖怪の紫や勇儀も金髪だったことを考えれば別段可笑しなことではない、と思う。
「煩いって、それはないでしょ。話聞きなさいよ」
「嫌だ」
何故かむくれている彼女を見て、俺はどうしてこうなった?と内心で頭を抱えた。
話は、昨日の夜中に
卍卍卍卍
「……」
街を出て、俺は京の都を目指していた。途中の山を一晩かけて超えようとしたのだが、いくら疲れないといっても、流石に飽きた。
そこで山道の脇で休みがてら、少し二胡を弾いていた所、ふと後ろに何かの気配を感じたのだ。人ではない何かの気配を。
「あら、貴方人間?」
「……そう言うお前は……」
―――妖怪か。
心の中で呟いていたつもりだったが、どうやら口に出てしまったらしい。チラと見えたその赤い目に、妖しい光が灯ったのを確かに見た。紫とは違う長く淡い金髪に黒いワンピースのような服装の女。一見すると普通の人間にしか見えないが、その身に纏う気配は妖怪のものだ。俺は既に人ではないから判ったが、人間でこの違いに気付けるのは、妖怪退治や神仏に仕えることを生業とする一部の連中だけだろう。
こいつは危険だ。恐らくだけど人食いの類いだろう。人の姿である俺を目にして、明らかな喜色を浮かべれば簡単に予想がつく。
「……こんな時間に野宿なんて、よっぽどの命知らずね」
「……」
人食い妖怪の周囲が
「貴方は、どんな味がするかし、ら……?」
闇が、手のような形を取り俺を貫いた。余りにも呆気ないが、躱す必要がないため避けなかっただけだ。実際、俺は血も流れていなければ痛みも感じない。というか持ち物も一緒に霊体化出来るのか、今初めて知った。
人食い妖怪は仕留めた、という喜びを浮かべた後、手応えのなさに首を傾げ、最後に俺を見て訝しんだ。その様子に、まるで百面相だな、と場違いなことを思う。
「………」
二胡を奏でる。それに合わさるように、悪意―――
ただ悪意を具現化するのではなく、相手の心界へ入り、その世界を染め上げることで支配したりも出来る。言うなれば『心の闇を操る程度の能力』といったところか。
自分で言うのもアレだが、エグイ能力だな。少しの抵抗も許さず、相手の心に傷を与える…まるで、かつての俺が復讐しているみたいだ。
「……っと」
夜闇に紛れて、再び形ある『闇』が飛んできた。半歩引いて『闇』を躱し、先程妖怪を吹き飛ばした方ヘ向かう。次々と伸びてくる『闇の手』を自分の『闇』で迎え撃ち、撃ち落としていく。
何度目かの迎撃で違和感を感じた。どうも俺の『闇』と相手の『闇』は、互いに干渉しても反発はしないようだ。弾く時に大して抵抗を感じないのもそのせいだろう。
「あんまり効いてなかったか、流石妖怪」
「……貴方、本当に人間?」
「さぁな、答えるつもりはないんだ。お前にはしばらく寝ててもらうぞっと」
やって来た俺を見てあからさまに顔を
「上手くいったな。さっさと逃げるか」
崩れ落ちた妖怪はそのままに、俺はその場を離れた。こういうやつは放っておくのが一番だ。変に関わると面倒くさくなる。
相手が気絶しているのをいい事に、俺はまんまと逃げおおせたのだが…―――
「あら、目が覚めたのね」
「…………」
寝て起きたら、
卍卍卍卍
「はぁ………」
大して長くもない回想を終え、俺は息を吐いた。
後ろからは未だに金髪女の足音がする。よほどの暇人(?)なのか、ただ諦めが悪いのか……どちらにしても、シカトし続けるのは難しいな。
「……」
「あら?ようやく聞いてくれる気になった?」
「…………で、話ってなんだ?」
「そう難しい話じゃないわ。貴方旅でもしているんでしょ?私も連れて行って欲しいのよ」
金髪女の話は、ある意味予想していた内容だった。
ここまでしつこく食い下がってくるのだから、そこそこ面倒な頼みだろうとは思っていたのだ。
何でついてこようとするのかは全く分からないが。
まぁ、会話相手くらいは欲しかったし、そういう意味では断る理由はない。
「……いいぞ」
「あら、意外とあっさり聞いてくれるのね?」
「話し相手は欲しかったからな」
断られるとでも思っていたのか、呆けている金髪女に向かって手を差し出す。
「秋津麟祢。亡霊だ」
「私はルーミアよ。よろしく」
これが亡霊と常闇の妖怪の、奇妙なコンビ誕生の瞬間だった。