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幽々子は静かに俺の話を聞いていた。未来から来た辺りは俺も何でなのかは知らないので、
軽く流したが、俺の真意を知ってか、幽々子もそこには触れなかった。
俺が話を終えると、静寂が残った。
「ねえ、麟祢」
しばらくして沈黙を破ったのは幽々子だった。
「麟祢はやっぱり辛かった?」
「いいや、むしろ良かったと思ってる」
「あら、どうして?」
「死んでから幽々子達に会えたから」
俺がそう言うと、幽々子は嬉しそうに微笑んだ。
言葉だけ見たら誤解されそうだが、それは考えすぎだろう。
死んで幽々子達に出会わなければ、今の俺は無かった。
きっと、ただの浮遊霊として彷徨うだけだっただろう。
だから、今の言葉は幽々子への感謝の気持ちだ。
「へぇ、じゃあ麟祢はものすごい年上ってことになるわね」
「あら、来てたの紫」
「ええ今来たわ。麟祢も久しぶりですわ」
「それ止めろ紫、違和感が凄い」
「それより紫、今日はどうしたの?」
突然増えた第三者の声、正体は紫だった。紫は幽々子と楽しげに話していたが、幽々子のその問いに、俺の方を向いた。
「今日は麟祢がここに来た日でしょう?」
「ご飯をごちそうになりに来たんでしょう、紫?」
「……」
「ち、違うわよ……違くないけど」
「分かったから、普通に言えよ…」
確かに、俺が西行寺家に来た日は今日だ。だが紫の目的は、それを口実に昼飯を食べに来ただけだった。いつものことながら、来ない日はどうしているのだろうか?
妖怪だからといって、飲まず食わずでいるわけでは無さそうだが。
「今作ってくるから、適当に待っててくれよ」
「あら、悪いわね」
取り澄ましたように言う紫に、つい呆れた俺は悪くないと思う。
ともかく、俺は三人分のご飯を用意するために台所に向かった。
―――あの事は、いわない方が良いよな。
準備している時に、俺はふとそう思った。さっきの昔話の中で、俺は一つだけ幽々子に言わなかった事がある。それは、地獄での出来事のことだ。
元々俺は暗い性格ではなく、幽々子達と会った頃のあの性格は、その地獄での影響だった。
地獄では確かにヘカーティア以外の誰かと会うことはなかった。
無間地獄、最も重い罪を犯した者が落とされる地獄の最下層。そこに光はなく、暗闇が支配しているその場所で他者の悲鳴や、獄卒の気配だけが伝わってくる。
俺は罪人ではないので、獄卒が訪ねてくるとしたら三度の飯くらいで、後は軽く雑談する程度だった。だが、問題はそこではなく、別の所に有った。
―――違う!俺のせいじゃない!あいつが、……やめ、うああああ!!!!!?
ある日、聞こえてくる悲鳴の中に聞き覚えのある声が有った。
その声の主は、俺を殺したあの管理人の男だった。
あの男は、死んで地獄に落ちてからも、それを俺のせいにしてきたらしい。そして、その声が俺にはよく聞こえた。せっかく、その苦しみから逃れられたと思っていたのに、俺は数千年間ずっと心ない言葉聞かされ続けた。
管理人だけではない。孤児院関係の人や、元々住んでいた家の近所の人。生きていた頃の俺に関わった人全てがそうだった。彼らは世界が一巡した時に全員消滅したようだったが、それまでの間ずっと俺に対する憎悪を喚き続けていた。
それから俺の心が壊れるまでに、時間は掛からなかった。
「……これ以上はもう良いかな。飯が不味くなるし」
もう終わった話だし、俺自身、この事については吹っ切れている。
こんな醜い話なんて、幽々子には聞かせたくない。
聞いても不愉快な思いをするだけだ。
だから俺はこのことを誰にも明かさないと誓ったのだ。
「何がもう良いのかしら~?」
「んー?ああ、塩入れすぎたかなって」
幽々子の声に少し驚いたが、適当に誤魔化せた。
幽々子は少し味見すると、ちょっと薄くないかしら~と言って一緒に台所に立った。
「……ありがとな」
それを見て俺は、幽々子にギリギリ聞こえるかの声で、そう言った。
ハッキリとは聞こえなかったのか、幽々子は振り返って首をかしげる。
俺は何でもない、と返して作業を再開した。
―――この日常が、できるだけ長く続くようにと、祈りながら。
「ふふふっ、変わったわね、あの2人。妖忌もそう思わないかしら?」
「そうですな、幽々子様もよく笑うようになった。実に喜ばしいことだ」
「それはそうとして、あの2人、お似合いだと思わない?」
「……」
「あら、麟祢なら良いと思わないの?」
「……ふむ」
「幽々子は満更でもなさそうね」
「…以外と朴念仁なのかもしれませんな」
外野が何か言っている気がしたが、多分空耳か幻聴だろう。
前話でさらっと主人公の能力が出てきましたが、まだ名前だけです。