東方幽闇郷〜君の隣にあるために〜   作:面梟エッホエッホ

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六話です。

少し急展開に感じるかもしれませんが、もし苦手な方がいたら申し訳ありません……


第六話 贈り物(前)

 

「私のスキマで時空を超えられないか、ですって?」

 

俺の言葉に紫は驚き、目を丸くした。因みに、幽々子と妖忌は出かけている。

俺が一人で留守番をしていた所に紫が来たので、俺がスキマを使って未来に行けないか、と聞いたのだ。

紫は、しばらくの間考え込んでいたが、首を横に振った。

 

「無理ね」

「やっぱり無理かぁ」

「確かに私はあらゆる境界を操ることが出来るわ。でも時空、特に時間を越える境界は制御が難しいのよねえ。それでなくたって今の私じゃ力不足、そもそもスキマすら開けないわ」

「そっかぁ」

 

元々期待半分だったおかげで、そこまでショックではなかったものの、やはり残念である。

そもそもどうして俺がそんなことを頼んだのか。それは昨日の夕飯の時までに(さかのぼ)る。

 

卍卍卍卍

 

「え?幽々子の誕生日、今日だったのか?」

「えぇ、そおよ~」

「まじかよ…」

「麟祢?どうしたの?」

「いや、何でもない。それよりもおめでとう、幽々子」

「ありがとう」

 

朝、昼、夜と三回ともいつもより豪勢な食事が出て来たが不思議で、夕食の席に着くなり訊いた俺の言葉に返ってきたのは、肯定だった。

一応居候という形ではあるが、一緒に暮らしてる以上俺は家族も同然だ。だから幽々子と妖忌には、それぞれの誕生日に何かプレゼントでもしようと思っていた矢先にコレだった。

因みに、間の悪さに打ち拉がれる俺を慰めたのは、何と驚け、紫だった。

それとは別にご飯の後片付けをしている時に、妖忌にも肩をポンポンと叩かれたが、あれも慰めだったのだろうか?

 

卍卍卍卍

 

そして、慰められたついでに俺が相談を持ちかけて、冒頭に繋がる。

紫は俺の意図を知らないので、理由が気になったようだった。

 

「仮に貴方の時代に戻れたとして、何をするつもりだったのかしら?」

「なんかプレゼント買いに行けないかなって思ったんだよ…」

「ああ、それで。ところで何あげるつもりだったの?」

 

どうも根掘り葉掘り聞くつもりのようで、紫は質問の手を緩めようとしない。俺としてもどうしようか悩んでいるので別にかまわないが。

 

(かんざし)とかどうかなって思ったけど、幽々子は着けないし…現代のヤツはなぁ」

「決まってなかったの?情けないわねぇ」

「悪かったな」

「妖忌には何をあげたのよ?」

「帯金、刀留めるヤツ」

「ああ、アレね」

 

そう、実は妖忌の誕生日については、間に合っていたりする。幽々子が言っていたのを覚えていたし、人里に行けば帯金は売っているからだ。

店にはいろいろあったが、妖忌には飾りの少ない、実用的な物を選んだ。気に入って貰えたらしく、朝の鍛錬の時に見るとあげた帯金を使っていた。

因みに、だいぶ今更な気がするが、妖忌は長さの異なる刀を2本持っている。長い方を楼観剣、短い方を白楼剣と言い、それぞれ幽霊数十匹分の殺傷力を持つ刀、切った者の迷いを断ち切る刀である。どちらも魂魄家の伝家の宝刀らしい。

余談だが、俺のような亡霊は白楼剣で斬られると強制成仏してしまう。

妖忌を怒らせないようにしなくては。

 

「なら幽々子にも帯留めをあげたらどうかしら?」

「それ、お前からもう貰ったって聞いてるぞ?」

 

せっかくの提案だが、今言ったとおり幽々子は帯留めを紫に貰ったことがある。

最も、昨日ではなく数年前のことらしいが。

 

「あれはもう古いし、そろそろ新しいものが欲しい頃だと思うけど…」

「因みに、紫は何あげたんだ?」

「私?私はお茶菓子だけど」

「…湯呑みとかどうかな?」

「女の子にあげる物じゃないでしょう、それは」

「ん~」

「それに、湯呑みならもうあるでしょう?」

「そうだった…」

 

言われてみれば、確かに湯呑みはない。俺がこういったことにセンスないのは分かっていたが、ここに来てそれが仇になるとは思ってもみなかった。腕を組んで悩み続ける俺の隣で、紫がスキマから取り出した扇子で煽ぎだした。

それを見て、俺は唐突に閃いた。

 

「それだっ!」

「あら?今度は何を思いついたのかしら?」

「帯留めだけじゃ紫とかぶるけど、扇子あげれば良くないか?」

「とっさの思いつきにしては考えたわね」

 

今度は大丈夫なようだ。ようやく決まったことに喜んだが、俺はあることに気づいて再び落ち込んだ。それは…―――

 

「駄目だ、扇子と帯留め、両方とも市に出てないじゃん…」

 

―――…今日の市にそれらの店が出てない事だ。

これでは今日用意することは叶わない。それに気が付いた俺が軽く絶望を感じていると、紫があきれた様子で助け船を出してくれた。

 

「はぁ、仕方ないわね。私の知り合いに彫金とか得意なのがいるから、紹介してあげるわ

 よ。人じゃなくても良いならだけど」

「…妖怪って事か?」

「そうよ、因みに種族は鬼」

 

鬼、と聞いて思わず考え込んでしまったのは、仕方ないだろう。実際に会った事はないとは言え、昔話なんかをみると鬼は相当危険な存在だ。『泣いた赤鬼』もあるから善悪はおいておくとしても。

時間的にはまだ朝だし、スキマを使えば十分間に合うだろう。

行くなら今だ。と言うか、今しかない。

 

「で、どうするの?」

「その知り合いのとこに連れてってくれ」

「じゃあ決まりね」

 

紫はニヤリと笑うと、スキマを開いた。俺は屋敷の戸締まりを確かめて、紫と一緒にスキマをくぐった。一応幽々子達宛に書き置きを残してきたが、細かい所までは書いてないので、あまり意味はないかもしれない。

 

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