無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

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 バイトは無い代わりにサークルで忙しい春休みは終わりを告げて新学期を迎えました。

 お久しぶり、お待たせしました。トマトしるこです。

 ちょこちょこ書いていく毎日が終わって投稿しようとすればなんと前回の投稿から2カ月も経っていたことに今更ながら気づきました。申し訳ないです。

 そのくせに少ない? いえいえ、前回が多かっただけです。6000~7000が目安です。



24話 「それが分かっていないんですよ」

 当然というか、必然と言うか。とにかく、森宮は決勝に進んだ。妹の方……マドカとか言ったっけ? そいつだってかなりの実力を持っているのはこの目で見たし、まだまだ本気じゃないってことも分かる。それでも、森宮に勝つことはできなかった。

 

 そう、強い。圧倒的なまでに。

 

 かといって負けるつもりは無い。………勝つビジョンも見えないが。

 

「こら」

「いてっ」

 

 ピットへ戻っていく森宮達をモニターで眺めていると頭を小突かれた。

 

「また余計なことを考えていますね?」

「ええっと……ゴメン」

「まぁ分からなくもありませんよ。学校という養成機関に居る必要のない人ですから」

「確かに」

 

 ペアの皇さんは目の前に集中しようと言う。間違いじゃないし、むしろ正しいので反論する理由なんてない。でも、あいつが先に居ると思うと意識せずにはいられない。

 

 俺の中で“怖い”と“勝ちたい”が混ざり合ってる……。なぜか負けちゃいけない気がするんだよな……。

 

「次の試合は大丈夫ですか? ボーデヴィッヒさんのペアは篠ノ之さんですよ?」

「ああ、その辺は大丈夫。スポーツはそういうもんだって分かってるから。俺も箒も」

「そうですか……」

 

 いつものようににこりと笑わず、皇さんはラファールへ足を向けた。

 

「それが分かっていないんですよ」

 

 そう言われた気がした。

 

 

 

 

 

 入念にミーティングを重ね、ピットから出る。

 

「こうしてアリーナで顔をあわせるのは以前の模擬戦以来か」

「そうだな」

「あの時はいきなり襲いかかって済まなかったな。だが、私が貴様に吐いた暴言を撤回するつもりは無い。そうしてほしくば正々堂々と私に勝ってみろ」

「そいつはいいことを聞いた。何が何でもやってやる!」

 

 口では強気に構えているが、正直言うとラウラも若干苦手だ。強いとか弱いとかじゃなくて……うん、上手く言えない。湧き上がる謎の恐怖を理性と気合いで抑え込み、『雪片弐型』を物理刀の状態で構える。

 

 『雪片弐型』のモードは今の所3つある。展開した状態の物理刀のモード、刀身を真ん中から2つに割ってビームの刀身になるモード、そこからさらに“零落白夜”を発動させたモード。先に進むに従ってエネルギーの消費が激しくなる。というか物理刀の状態では消費は無い。

 

 今までの試合では即ビーム刀身の状態で速攻勝負に出ていた。専用機相手でも、懐に滑り込めば“零落白夜”で一撃必殺が決まるし、ペアになっている訓練機なら苦労しなくても余裕で決められる。

 

 ただ、それは相手がセシリア、シャルルと言った遠距離仕様だった場合。近づくまでが大変だが、俺の距離に入れば無理をしてでも一撃入れるだけでいい。相手には対抗手段が殆どないからだ。近接の場合は近づいてからが本番。射撃がメインになりがちなIS戦は、総じて近距離に弱いことが多々ある。そういう意味では、格闘戦が得意な鈴が別のブロックに行ったことはかなりの幸運だった。

 

 それに比べて目の前の2人は違う。

 

 姉さんが直々に仕込んだ現役軍人と、全中剣道大会優勝者。どちらも俺以上に近接戦が上手い。今までのように速攻勝負はまず不可能、耐えて耐えて耐えて“零落白夜”で逆転するしか勝ち目は無い。

 

 その為の作戦もしっかりと考えた。大丈夫、勝てる。

 

『試合開始』

 

「行くぜ!」

「来い!」

 

 まずは接近。ただし、お得意のAICがあるので気をつける。最初の1回でおおよその距離を測ってから、コイツの攻略を始める。

 

 ……つもりで近づくとあっさり捕まってしまった。おいおい、まだ10mしか前に進んでないんだぞ!?

 

「!? こんなに遠くまで届くのかよ!」

「この程度で驚かれては困るな。その気になれば、この狭いアリーナでは逃げ場は無いぞ?」

「なっ……!」

 

 それはつまり、時間を与えればどこに居ようがAICに捕まり、ほぼ確実に攻撃をくらうことになる。ラウラのIS『シュヴァルツェア・レーゲン』には一目で高火力だと分かる大型レールカノンが飛んで来るだろう。

 

「分かったなら、無闇な突進は控える事だな」

 

 来ると構えていたが、その言葉と同時に身体が軽くなって動き出した。と同時に頭の真横を何かが通って行った。そしてそれを避けるラウラ。

 

 大口径の弾丸じゃねーか!

 

「おいこら!」

「当たらなかったからいいじゃないですか」

「はぁ……」

 

 いい人で通っている皇さんだが、実は戦闘や勝負になるとかなりドライ……というか手段を選ばなくなる。今みたいに「当たっていたら……」なんて事になっても謝ることは無い。

 

(AICに無闇に突っ込んではいけませんよと言いましたよね?)

 

 そしていつものような優しさはなりを潜めてすげぇ厳しい。

 

(まずは分断からって話だったじゃん。適当に引きつけて、砂でも投げて射程を測りたかったんだよ)

(迂闊ですね、思慮が全く足りません。次は助けませんよ)

(なるべく早く箒を倒してくれよ。俺とラウラは相性が悪いし実力も差があり過ぎるんだ)

(善処しましょう)

 

 作戦、それはタッグマッチに於いては基本且つ確実と言える2対1の状況を作り出す事だ。遮蔽物のないアリーナでは相手を隔離することは不可能だし、そんな装備は俺も皇さんも無い。方法は自然と先に1人倒すことになる。

 

 “零落白夜”を決めるには近づかなければならない。だが、近づけばAICに捕らわれ今度こそ嬲り殺しにされる。

 

皇さんが箒を倒すまでの間、俺は少しでも多くのエネルギーを温存しつつ生き残らなければならないわけだ。

 

「逃げ足はそこそこあるようだな」

「そいつはどうも!」

「貴様等の狙いは分かっている。さっさと決めさせてもらうぞ!」

「うおっ!」

 

 さらに激しくなるワイヤーブレードの網をくぐりぬける。これに加えてマシンガンやライフル、ミサイルが混ざったらと思うとぞっとするぐらいの勢いだ。

 

「あぶねぇ!」

「ふむ、これならどうだ?」

「遊んでんじゃねぇ!」

「まさか。至って真面目だぞ、私は」

「ざけんな!」

「焦るだろう?」

「!?」

 

 痛いところを突かれた。

 

「気持ちの駆け引き――心理戦も重要なファクターだと知れ、新兵」

「がふっ!」

 

 油断したところを思いっきり蹴り飛ばされた。ワイヤーを足に絡められて鉄球のように振り回される。壁に、地面に、電磁シールドに叩きつけられるたびにシールドエネルギーが減っていき、怒りが増していく。

 

「好き勝手させられてたまるかっての……!」

 

 ワイヤーを切ろうと『雪片弐型』を振り抜く。流石に堅く、何度も何度もやってみるが切れない。

 

「こんのっ――」

 

 無我夢中で『雪片弐型』を地面に突き刺して踏ん張る。足のクローを地面に突き刺して、腰を低くして空を向く。綱引きの体勢から背負い投げのようにワイヤーを担いで――

 

「くっそがああぁぁぁぁぁ!!」

 

 投げる!

 

「面白いことをする奴だな……だが、ワイヤーは一本だけではないぞ?」

「それが狙いだっての!」

 

 当然足は止まる。AICか、レールカノンか、それともワイヤーか、正直賭けだったが……何とかなりそうだ。

 

 ワイヤーの先……ラウラから残りの5本が俺に向かってくる。そのどれもが独特な軌道を描いているが、最終的に俺を攻撃することには変わりない。完璧に読むのは不可能だが、ある程度の見当はつく。

 

 一本目、巻き付いていない方の足に絡みついた。

 二本目、肩を巻き込んで身体に巻きつく。

 三本目、背部のウイングユニットに直撃。

 四本目、右腕を庇って左腕で受け止める。

 五本目、心臓直撃コースだったのをギリギリでかわす。その代わり、首に巻き付いた。

 

 そこへ追い打ちのレールカノン!

 

「右腕さえ動けば……っ!?」

 

 ワイヤーを纏めてぶった斬る。だから敢えて避けなかった。ワイヤーを使うならAICは無いだろうと思ってたし、だから追い打ちのレールカノンは読めていた。その為に右腕をかばったんだが……後ろに引っ張られて動かなかった。見ればワイヤーが絡まっている。

 

「七本目!? 六本じゃねえのかよ!?」

「六本だぞ。よく自分の身体を見て見ろ」

 

 右腕、左腕、首、身体、両足に一本ずつ巻き付いている。最初からの分を引いて、それから………そうか!

 

「ユニットを破壊した三本目か!」

「そうだ。時間を置いてから拘束した。右腕を守ろうとしているのは見えたからな」

 

 これは……拙い。直撃したらどれだけのシールドエネルギーを削られるやら。そのあとに2対1に持ちこめても俺がやられたら負けが決まったようなもんだし……。

 

 身体は動かない。皇さんは来ない。射撃武器は無い!

 

 当たる………!

 

「世話が焼けますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さぁ、どうかわすのか)

 

 鍛えられた私の目から見ても、織斑秋介は決して弱くは無い。強くも無いが、学生の身分で考えるなら十分な実力を持っている。ISに触れてわずか数ヶ月で専用機があるとはいえ代表候補生と渡り合える技術を身につけた。腐ってはいるが、努力家で負けず嫌い。伸びるヤツに多く見られる傾向だ。戦闘に於いては、コイツをそれなりに評価している。

 

 私自身気付いていないが、この勝負を楽しんでいた。

 

「消し飛べ!」

 

 よく狙いを定めてレールカノンを放った。

 

 電力で超加速した弾丸は―――

 

「世話が焼けますね」

 

 ―――私のペアの篠ノ之に直撃した。

 

「うああああああああああああっ!」

「なっ!?」

 

 バカな!? 私達とは離れた場所で戦っていたはずだぞ! ついさっきまで対極の位置に居たことはレーダーで分かっていた!

 

「助かったよ。ありがと、皇さん」

「助けた? ……まさか。労せず効率的にダメージを与える方法がこれだっただけです」

「そうかい。でもまぁ、やられずに済んだ」

「よかったですね」

 

 この女……たしか皇と言ったな。……授業中は全く分からなかったが私と同じニオイがする。それに、こいつは織斑をペアとして見ていない。攻撃しないだけで、敵のように見ている。

 

 非常に冷めた目だ。裏の人間か。

 

(すまない篠ノ之、動けるか?)

(気にするな。まぁ、なんとかな)

(よし、織斑の相手はお前に任せたぞ。何の気兼ねも無く叩きのめせ)

(何? お前が皇の相手をするのか?)

(そういうことだ)

 

 未だにワイヤーを切り離せていない織斑をアリーナの端へ放り投げ、再び1対1の状況を作る。ただし、今度は相手が入れ換わっているが。

 

「おや? 選手交代ですか?」

「悪いか?」

「いえいえ、それも作戦なのでしょう。しかし訓練機相手に最新鋭の専用機ですか……」いささか私には荷が重い」

「冗談も上手いな、言葉に反して身にまとうソレは人を越えているぞ」

「あらあら」

 

 頬に手をあて、困ったようなふりをする皇。一見すれば天然系お姉さんの仕草だが、眼は鋭く、触れれば殺されそうな殺気を撒き散らしている。

 

「素直に“化け物”と仰ってもいいのですよ?」

 

 笑顔という仮面を貼り付けた皇はブレードを振りかざして接近してきた。

 

「異常な加速……速度特化か!?」

「これぐらいで驚かれては困りますわぁ」

 

 私のプラズマ手刀に合わせてショートブレードを一振り増やして正面から打ち合ってくる。性能で圧倒的に劣っているにも関わらず、ついてくるどころか私を上回る勢いだ。

 

 ……強い。

 

大きく右腕を振って距離をとり、左目の眼帯を外して眼を開く。

 

「“越界の瞳”でしたか?」

「知っているなら話ははやいな。出し惜しみは無しだ!」

「望むところです」

 

 全力を出さなければ、この女には勝てない。この後も考えると使いたくは無かったがそんなことも言ってられない……まずは勝つことが先決だ。

 

 今日一番の気合いを入れて、皇へと駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、やってるな」

「これで勝った方が次の相手なんだから、ちゃんと見てなさいって」

「わかってるさ」

 

 休憩と偵察がてらに俺とベアトリーチェは別ブロックの準決勝を見ていた。織斑が勝つのか、もしくはラウラか。客観的に見ても織斑が勝つ見込みは少ない。現役軍人の試験官ベイビーは世間が思っているよりも強いのだ。加えて『白式』には遠距離攻撃が無い。防戦一方は間違いない。

 

 そう思っていた。

 

「へぇ……専用機対訓練機なんだ。珍しいね。先に織斑がラウラのペアを倒す作戦かな?」

「いや……これは……」

 

 どちらも互角の戦いといったところか。

 

 剣道とISは全くの別物だが、剣道で鍛えた読みと勘で篠ノ之は織斑と対等に戦っている。織斑は攻めあぐねているようだ。なかなか踏み込めないらしい。

 

 ラウラの方はまったく別次元の戦いになっていた。何合も切り結んだかと思えばいつの間にか弾幕の張り合いになっている。戦況と戦場がコロコロと変わる中でも2人は決定的なダメージを与えることが出来ないまま、少しずつシールドエネルギーを減らしていく。

 

 明らかにただの学生とは思えない動きだ。

 

「あの動きは……」

 

 どこかで見たことがあるような……

 

「順調みたいね、一夏」

「楯無様」

 

 何かを思い出しそうなところで後ろから声をかけられた。先生と一緒に居ると思っていた楯無様だ。おなじみの扇子には「常勝」の二文字。

 

「機体の性能を半分以下にまで下げても、技術がとびぬけてたらどうしようも無いわね……」

「何の話ですか」

「んーとね、なんか一夏が負けてるところが見たくなってね。ちょっと噂を流して発破掛けて見たの。結果はこの通りだけどね」

「また面倒事を……因みに噂とは?」

「生徒会長権限で一夏と同室プレゼント♪」

「勝ってよかった……!」

 

 マドカが何をしでかすか分からないからな!

 

「ベアトリーチェちゃんも調子いいみたいだし、このままいけば優勝かしら?」

「まだチェックってところ。この後ダメ押しの一手を決めてきますよ」

「強気ねー。まぁ代表候補生はそれぐらいがちょうどいいわ」

「ペアがアレですから」

「……そうね」

「失礼な。ちょっとばかり戦い慣れしているだけです」

「そういうことにしておきましょうか」

 

 楯無様はくすくすと笑いながら視線をモニターへ戻して、顔をしかめた。つられて俺とベアトリーチェもそちらを向く。

 

 ついさっきまでは4機のISが動き回っていたのに、今は煙で何も見えなくなっていた。

 

「見えませんね」

「そうね」

「スモークにしては広範囲過ぎると思わない?」

「戦術としては非常に有効ではある。当然ジャミングもしているだろうから、織斑たちはたまったもんじゃないだろう」

「音は聞こえるんだけどね……」

「まぁ待ちましょうか」

 

 無理矢理煙を晴らすわけにもいかないので待つことに。その間も金属音が聞こえているので戦ってはいるようだ。

 

 待つこと数分。ようやく煙が晴れてきた。

 

 アリーナには――

 

『試合終了。織斑・皇ペア勝利』

 

 ――横たわるラウラと篠ノ之、傍らには片膝をついて息を荒くしている織斑と、何事も無かったかのように立っている織斑のペア――皇桜花がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かわかった?」

「さっぱりだ」

 

 あの後、ラウラが医務室に運ばれるのを見送ってさっきの試合の映像を見直していた。楯無様が来てからモニターを見ていなかったので、そこから煙一色になるまでの間何が起きたのかを視る為だ。

 

 結果、普通の煙幕だった。

 

「いきなり煙幕を張ったと思ったら勝負が決まってた、か。なんかつまんないなぁ」

「皇らしくはあるがな」

「そう言えば知り合いっぽい事言ってたね」

「ああ」

 

 皇桜花。おっとりとした性格で優しく平等、スタイルもよく、世の男性が描く女性の理想像といったところか。

 

 もっとも、それは彼女の一面でしかない。どんな人間にも裏の面はあるものだ。

 

「更識は多くの家や企業を従えているが、その中でも御三家と言われる家系がある」

「日本の国民的ポケットゲームみたいな?」

「それはよく知らん。で、その御三家が布仏、森宮、そして皇だ」

「本音と虚さん、蒼乃さんと一夏とマドカ、それとあの皇桜花って子の事ね」

「学園に居るのはな。御三家にはきっちりと役割が決まっていて、幼いことから仕事をこなしていくんだ。その中で、俺は皇……桜花と知り合った」

「仕事仲間の同僚みたいじゃん」

「その通り。それでまぁ色々とあってな……」

 

 あー思い出したくも無いな。

 

《情けは人の為ならず、と言いますが、あの一件はマスターにとっていいことなんでしょうか?》

(しらん)

 

 昔の俺にあったら殴ってでも止めてやる。それぐらい桜花はメンドクサイ。

 

「それで、実力の方はどうなの?」

「見ての通りだ。まず今のベアトリーチェより数倍強い」

「うげぇ」

「狙いは俺だろうからな、何が何でも俺の方に向かってくるはずだ。厳しいだろうが織斑を頼む」

「りょーかいっと」

 

 モニターを閉じて、ちびちびと飲んでいたコーヒーをゴミ箱に投げ入れる。空き缶は綺麗な放物線を描いてゴミ箱に入った。ベアトリーチェは俺を真似てジュースの空き缶を投げた。

 

 カーン。

 

 ………。

 

「何故俺の頭に投げる?」

「て、手が滑って……てへ♪」

「ヘタクソ」

「うぐ……も、もう一回!」

 

 しゅっ。

 

 スコーン。

 

「………」

「……もう一回!」

 

 10回ほど投げ続けた結果、俺の頭に8回、ゴミ箱とは正反対の方向へ1回、自販機へ1回投擲した。

 

 結論。イタリア代表候補生ベアトリーチェ・カリーナさんはノーコンのようです。

 

「……行くぞ」

「……うん」

 

 なぜか俺まで沈んだ気持ちで決勝戦を迎えることになってしまった。

 


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