無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

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 ※注意!!

  今回は飛ばしても問題ない内容になっています。それと同時に分からない人には非常につまらない回になっている可能性が高いです。アンタ何やってんの? 感が満載となっております。ご注意ください!!

 用語を最後に載せておりますが、非常に見づらいです。説明が難しいです。


30話 「36000――大三元だ」

「わあ……」

「綺麗……」

「マドカ、窓にぺったり張り付くんじゃない。簪様、口にお菓子のかすが付いたままですよ」

「はーい」

「ふえっ……!」

 

 前日の夜までかなり騒がしく、問題ばかり起き続けたので正直言って疲れている。買った水着が無くなったとか、夜中は何で遊ぼうかとか、香水何にしようかしらーとか、最初は兎も角としてどんどんどうでもよくなっていく事に、流石の俺も若干苛立った。

 

 一応言っておくが、これは遠足ではなく課外授業の一環である。誰一人としてそう言った雰囲気が見られないのは女子だからか。俺としては国語や数学のような一般高校でも習う教科をしなくて済んでいるから文句は無い。そもそも授業を真面目に受けるつもりもない。

 

「あれが泊まる旅館か?」

「そうみたいね」

「さて、どうなることやら」

 

 今回もまた面倒なことが起きるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然だが、同じ部屋になったのはマドカではなく織斑だった。さっさと荷物だけおいて水着を片手に海へ向かったようだ。都合がいい、俺はここでぐっすり眠るとしよう。

 

「なんだ、お前は海へ行かんのか?」

「……織斑先生」

 

 目を閉じた瞬間にふすまが開いて人が入ってきたと思ったら織斑千冬だった。傍にはいつぞやのメガネをかけた先生もいる。

 

「何故こちらに?」

「ここは私の部屋だからに決まっているだろう」

「は?」

「私達としても男子二人にしておきたかったが、以前の模擬戦もあるし、夜中に女子共が群がってきて他の部屋に結構な迷惑がかかるだろうからということで、私がこの部屋で寝る事になった。私ならお前たちも女子共も、手を出そうとは思わんだろう?」

「……まぁ、そうですね」

「そういうことだ、すまんが少し我慢をしてくれ。もし二人にしても大丈夫だと判断できれば、今日からでも私は他の部屋に移る」

「どうぞお好きに。気にしませんので」

 

 これ以上は興味ありません。という態度を示して、俺は入口の二人に背を向けた。目をもう一度閉じて今度こそ寝ようとした時に、またしても呼ばれる。

 

「もう一つ、お前宛に大場先生から伝言がある。『荷物を部屋に置いたら私の部屋に来い』だそうだ。伝えたぞ」

「………はぁ」

 

 面倒くさい。どうせ何か相手をさせられるんだろうな。先生も海へ行けばいいのに、生徒引っかけて何が楽しいんだ。

 

「確かに聞きました」

「私は職員会議があるから部屋は開けておく。時間を守って好きに使え」

「はい」

 

 今度こそ織斑千冬はどこかへ行った。口にした通り、職員会議があるのだろう。だったら大場先生は一体何の用だ? 意外に会議よりも真面目な内容だったりするのか?

 

「夜叉」

《ここから………右に四つ、角を曲がって左へ八つ目の部屋ですね》

 

 大分遠いな……旅館の部屋がある区画の端から端へ行くぐらいの距離がある。遠いとも言えないし……地味な距離だ。グチグチ言っても歩かなければ1cmも縮まらないので、ため息交じりに歩く。

 

 ふすまをノックするわけにもいかないので、外から声をかけて先生を呼んだ。

 

「大場先生、森宮です」

「おお、入ってこい」

「失礼します」

 

 中に入ると、そこに居たのは呼び出した本人の大場先生、いつも一緒に居る古森先生、そして意外………そうでもないな、清水がテーブルを囲んでいた。これで真面目な話という線は消えたな。俺一人ならともかく、清水がいる時点でどう考えてもマトモな事もマトモじゃなくなる。

 

「お前を呼びだしたのは他でもない……頼みがあるからだ」

「……何でしょう」

 

 あまりにも暇なので、すこし茶番に付き合うことにした。

 

「その前に、一つ聞いておきたい」

「はい」

「お前……麻雀(マージャン)できるか?」

「………」

 

 ゑ?

 

「私と清水を呼んだのは四人で打つ為ですか」

「おお。清水が出来るのは知っていたからな、後1人はどうしようかと悩んでいたところでお前を思い出した。まあできるだろうと思って呼んだんだが……出来るのか?」

「一通りは」

「そうか、なら座れ。やるぞ」

 

 麻雀って……意外すぎる。

 

 ルールは知らなくても名前ぐらいは聞いたことがあるんじゃないかと思うが、麻雀は中国発祥のテーブルゲームだ。萬子(マンズ)筒子(ピンズ)索子(ソウズ)字牌(ツーパイ)(一般的には字牌(ジハイ)と言われる)の四種類の牌を四人が順に一つずつ山から取って(ツモと言われる)切り、役を完成させる。

 手牌は13枚、自分がツモるか、他人が切った自分のアガリ牌を含めた14枚を集める。出来あがった役や手牌の形で点数が決まり、点数を多く稼いだ者が勝つというのが大まかなルール。実際はもっと色々とあるしローカルルールも多い。

 

 これが存外面白く、昔の俺にしては珍しくするっと覚えた。楯無様が入学する前は、楯無様、簪様、虚様、俺でよく打っていたもんだ。懐かしい。

 

 ………ってそうじゃなくて、この人はまったく……。

 

「職員会議があると聞きましたが?」

「ああ、あれ? 職員会議という名を借りた千冬からの説教だ。まああいつは学年主任でもあるし、気にするのは当然なんだけどな。あたしらはお咎めを受けるようなことしてないからパス」

「はぁ……」

 

 こう見えてかなり優秀なのがこの二人だ。学園では織斑千冬に次ぐナンバー2とナンバー3と噂されるぐらいには。

 

「んじゃ、やるぞー。京子」

「ういうい」

 

 古森先生がマットを敷いて、その上に牌をばら撒く。清水が点数棒を全員分振り分ける間に残った三人で牌をよく混ぜて山を作った。

 

 サイコロを三回振って親決め、大場先生からだ。

 

 ちなみに並びは大場先生から()時計周りに古森先生、清水、俺。麻雀は逆時計周りにツモって切る。

 

「いやー久しぶりに打つなぁ。学園じゃあ打てる先生なんてそうそういなくてな、あたしは好きなのに出来なくってね。前は卒業生や今の三年生とやってたよ」

「いつからやられているんですか?」

「あたしは中学から、京子は幼稚園から」

「幼稚園!?」

「私の家、麻雀一家」

「そ、そうですか……」

 

 意外な事実に驚きながらも清水は冷静に切る。まだ一巡目では全く相手の待ちは読めないので、捨て牌を軽く確認する程度で流す。

 

 俺の番だ。お、入る入る。とりあえずこれはいらないから切ろう。

 

 そういえば俺も久しぶりだ。楯無様が入学されてからは全く牌にさわっていない気がする。暇つぶしには丁度いいし、何だかんだで早速楽しんでいるので、これはこれで良かったかも。

 

「呼びだしておいて言うのもアレだが、海にはいかないのか?」

 

 今日は授業のじの字もない。完全な自由時間で、大体はみんな海に行って遊ぶ。学園は海に囲まれていても砂浜は無いし、プールがあるので海へ行くという言葉は夏に入ってもまったく聞かない。偶に魚釣りをする人が何人かいるくらいか。あれだけ近くに海があるのにまったく反応せず、ここに来てからははしゃぐのはよくわからない。というか、島の外縁部には近づいてはいけないんだっけ?

 

「夏が嫌いなので」

「海が嫌いなので」

「……おう」

 

 聞いちゃいけないこと聞いちゃったかなー、みたいな気まずい顔をしながら大場先生は牌を切る。ドラを切ってきた。

 

「こんな序盤にドラ切りですか」

「まあ見てなって」

 

 ドラ、というのは持っているだけで点が高くなる牌の事。山が無くなるまで打って流れるか、誰かがアガるかする度にドラは変わる。ただし、ドラのみではアガれない。

 持つだけで点が高くなる為に基本切る事はあまりない。こんな序盤では尚更、ドラ表示牌を見ていなかったとかいう凡ミスならまだしも意図的に切った。

 

 それだけ自信があるのか……染め手か?

 

「清水はいつから?」

「小学校、かな。友達から教えられた」

「友達、か」

「とっても強い子でね、イカサマを疑うくらいよ」

「へぇ」

「友達の打ち方、真似てあげましょうか?」

「そんなことが出来るのか?」

「100%再現は無理だけどね。他人の打ち方を真似るの、結構得意なのよ」

「なるほど、お手並み拝見といこうか」

 

 しばらく雑談しながら牌を切って行く。そろそろ捨て牌から手が見え始めるころだ。おもった通り、大場先生は染まっている様だ。ソウズが一枚しか切られていない。大場先生は字牌を切っていない。無いのか、既に字牌を絡めた手が出来つつあるのか。清水は、よくわからん。まだ出来あがっていないのか? 友達の打ち方がなんとなく気になる。

 

 欲しいのこないかなーと考えながらアガリ方を考えている時に、それは起きた。

 

 ぶわっと、風が吹いたような感覚。左側、清水の方からだ。窓は無い。

 

 ………空気が変わった。

 

「カン」

 

 一つの牌は四枚まである。カンはその四枚全てを使ってドラを増やす。

 

 カンした牌は三元牌の白。字牌を四枚抱えていたのか……。

 

 そうして新たに嶺上牌というカンしなければツモれない牌をツモる。

 

 普通にツモするのとは違って結構特殊と言える。これでアガルことも難しい為に嶺上牌でツモアガリすると役が付く。役満ほどではないにせよ、十分珍しいアガリだ。

 

 触れる事の出来ない頂に光が差すような美しさ。

 

「ホンイツ、三暗刻、チャンタ、白、嶺上開花。8000/4000です」

 

 嶺上開花(リンシャンカイホウ)という。

 とあるアニメの主人公は馬鹿のようにこの役ばかりでアガっている。実際はそんなに何度もアガれる役ではないので、どう考えてもありえないとしか言えない。作品中では牌に愛された子と言われていた。とある界隈では白い悪魔とも言われるらしい。

 

 アニメ大好きな簪様は強い影響を受けてカンばっかりする時期があったりする。無闇にドラを増やすだけでアガれなかったが。

 

 しかしいきなり倍満か。親じゃなくて良かった。

 

「それがお友達の打ち方って奴か?」

「はい。嶺上開花がとても好きな子なんです」

 

 いるんだな……リアルでそういう奴が。

 

「早速点棒が悲しい……」

「なぁに、巻き返せばいいのよ。あたしなんて8000マイナスだぞ」

「始まったばかりですからね、まだ巻き返しもできますよ」

 

 さて、親が流れて古森先生へ。

 

 次はどういう手で行こうかな……さっきの満貫手も中々良かったんだが……。

 

 ふむ、これはこれは。狙うしかないな。

 

 

 手牌: 二 二 4 7 8 9 ④ ⑦ 白 白 發 中 中

 

 

 最低でも小三元、染めてホンイツでもいいし、上手くいけばトイトイも付けられそうだ。勿論、大三元を狙うが。

 

 役満手が早速見えるのは心が躍る。

 

 鳴くと警戒されるのでできればツモって揃えたいところだが……。

 

 

 ツモ牌: 發

 捨て牌: ⑦

 

 

 ……おう。

 

 二巡目。

 

 

 ツモ牌: 發

 捨て牌: 4

 

 

 三巡目。

 

 

 ツモ牌: 白

 

 

 ………おわかりだろうか? 三巡目で小三元聴牌である。無駄ヅモ無し。このままリーチをかけてもいいが、大三元でアガれない可能性があるのでここは普通に切る。まだまだ序盤だ、時間をかけてじっくりと行こう。

 

 

 捨て牌: ④

 

 

 こうすると、中をツモろうが鳴こうが数牌の手を変える必要がある。フリテンだからな。そんな凡ミスで役満を台無しにしたくない。

 

「あー、進まねえ……」

「俺はスパスパ入りますがね」

「ムカツク奴」

「さっきはなんだったんですか?」

「チンイツ四暗刻のイーシャンテンだ」

 

 ………化け物ばっかりだな。この部屋。古森先生もヤバい人かもしれない。

 

 お、清水が中を切ってくれた。

 

「ポン」

 

 当然鳴いて確保、二を切った。

 

 

 手牌: 二 7 8 9 白 白 白 發 發 發  中 中 中

 

 

 これで大三元が確定したわけだな。あとは二を他の牌に変えて待つだけだ。

 

 十巡目。

 

 今までのツモ牌は全て今までに切った牌ばかりだったので差し替えずに切り続けたが、ここでようやく来た。

 

 5か。出にくいところだ……。まあこの後も当てやすい牌がくれば差し替えればいい。

 

 

 手牌: 5 7 8 9 白 白 白 發 發 發  中 中 中

 

 

「ポン」

 

 清水が6で鳴いた。誰も切っていないからあと一枚残っている状態だな。ここで鳴いたって事は……またカンして嶺上開花ねらいか? ふむ……ピンズは危なくなった。

 

 ……いや、いいことを思いついた。賭けじゃないし、しくじってもアガれる自信はある。少しばかりやってみようか。

 

 十三巡目。

 

 

 ツモ牌: 8

 捨て牌: 9

 

 

 槍槓狙いなら絶対に6で加槓するはずだ。なんとなくだが清水は6をツモる気がする。

 

「カン」

 

 やっぱりな。

 

「「ロン」」

 

 うお。

 

「あ、やっぱり分かりましたか?」

「まあ、俺は直感だよりだったのと、手牌が良かったからな」

「そのつもりでポンさせた」

「うん、お強いですね」

 

 ダブロンだ。待ちが重なっていたら同時にロンされる事がままある。その場合は二人に点数を支払う。

 

 古森先生は平和、タンヤオ、槍槓、自風牌の満貫か。親だから清水が12000点を渡した。

 

「それで、森宮君は何点?」

「36000」

「「「え?」」」

「大三元だ」

「………トんだ」

「だろうな」

 

 まだ東場も終わってないんだけどな。まぁアレは狙いたくなるし、役満でアガれたのは久しぶりだし満足している。まだしたいなら最初からやり直せばいいだけだ。

 

「お前等結構やるのな。よし、夕飯前にあたしをトばせたら平常点やるよ」

「不純ですね」

「嫌か? お前は普通の授業点無いに等しいぞ」

「やらないとは言っていませんが?」

「そう来ないとな」

 

 悪い顔をしながら下衆な笑いを滲ませながら、山と手牌を崩して牌をかき混ぜる。

 

 夕飯までなら丁度いいか。こっちは何のリスクも無いし、勝てば成績が上がる(かもしれない)なら文句も無い。いっちょやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 初日の自由時間を海で堪能した私は一夏を探していた。

 

「ねえ、一夏は?」

「うーん、見てない。私も探しているところだ」

 

 海嫌いな一夏は予想通り浜辺に顔を出す事は無かった。折角の新しい水着だったのに……着ているところを見てほしかったし、たくさん遊びたかったな……。上手くいけば溺れた振りをして遠く離れて見えない浜辺まで流されて、二人っきりで探検して、そのまま草陰で……きゃっ。

 

「簪、何かやらしいことを考えていないか?」

「な、何にも!」

「どうせ二人っきりになって兄さんとイチャイチャできるかもーとか思ってたんだろう」

「………な、なんで」

「私も同じことを考えていたからだ!!」

 

 胸を張って言える事じゃないよね……。

 

「と、とにかく、一夏を探さない?」

「そうだな。私は温泉と売店を見てきたが居なかった」

「じゃあ、あとは部屋?」

「だろうな。行くぞ」

 

 マドカはぱたぱたと歩きだしたので追いついて隣に並ぶ。着替えた浴衣は、温泉で火照った身体に程よく風を入れてくれるし寒くならないのでとても快適。ある一点を除けば。

 

 浴衣などの和服はお腹にあたる部分で帯を締めるので、どうしても身体のラインが浮き上がってしまう。私の親しい人達はみんなプロポーションが良いから、周りを見ても自分を見ても敗北感を突きつけられたような気持ちになって落ち込んでしまう。

 和服は胸の小さな人の方が良く似合うって言うけど、男の人が注目するのはやっぱり胸なわけで、小さいとインパクトに欠けるし、並ばれたらもう最悪。もぎとってやりたくなる。

 

 今とか。

 

 マドカの胸でぷるぷる揺れる柔らかな塊は、私の心を黒く濁らせるには十分すぎるくらい大きかった。

 

「~~~♪ ~~~~~~♪」

 

 鼻歌を歌いながらスキップまで………。もっと激しく揺れるソレは更に私を黒く染めていく。

 

 嫌がらせ? 私への嫌がらせなの? もしかして虐められてる?

 

 黒い何かの正体――怒りが頂点に達したので我慢するのを止められずに、両手が勝手に動いてしまった。

 

ガッシリと マドカの胸を わしづかみ   更識簪

 

「わわわわ!? 何をする簪!?」

「マドカが悪いの!」

「私が何をしたと言うのだ!?」

「スキップ!」

「何故悪い!?」

「浴衣!」

「服を着るなと!?」

「おっきいマドカが悪いのーーっ!!」

「わけがわからんぞーー!?」

 

 叫びながら逃げ出したマドカを追って走り出す。走っちゃいけないとか言われてた気もするけど忘れる。何としても捕まえて成敗する!

 

 角を曲がってまた角を曲がる。織斑先生との関係を疑われないようにつけたウィッグはこんな時に意外と役に立つ。旅館の壁紙は茶色だから、私と同じぐらいの髪の長さでも軌跡を描いていくそれが道しるべになった。

 マドカの身体能力はずば抜けて高いけれど、一夏ほどじゃないし、私も同年代のなかじゃ高い方だって自信がある。インドアな私だけど走るのは得意。

 

 だから何とか追いつけた。

 

「今度は逃がさない……!」

「だ、だから止めてくれ! 何か気に障ることをしたのなら謝るから……んっ」

「気が済むまで許さない……」

「そんな……あっ、んあっ……こんなところ、兄さんに見られたら――」

「俺がどうした?」

 

 ………あ。

 

 私達の後ろにある部屋から一夏がひょっと顔を出していた。

 

「二人とも、そんな趣味が……」

「ち、違うの、これは……マドカが悪いの!」

「簪がいきなり胸を揉んできたんじゃないか!」

「あー、落ちつけマドカ。簪様もです」

「「むぅー」」

 

 そのまま部屋から出てきた一夏によってマドカと引き離される。……手に柔らかい感触がしっかり残っているのがムカツク。私だって……もう少しすれば……。

 

 諭されるように事の顛末を最初から話す事にした。こういう時の一夏はとっても怖い。しっかりと怒ってくる。一度だけ叩かれた事もあった。痛くはなかったけど、その後の一夏の落ち込み様と言ったら言葉にできないくらい酷かったから、揉めた時は何も言わないと決めた。小言やお説教もちゃんと聞く。というかまず私が悪い場合が多いから言い返せない。

 

「マドカ、とりあえず簪様の前でスキップするのは止めろ」

「え、そんなこと?」

「いいから」

「わかった」

「簪様、お気持ちは分かりますが、マドカに悪気が無いのはご存じでしょう? ただの八つ当たりなど、もっての外です」

「………うん」

「ちゃんと謝って、仲良くしてください。誰かに嫌われる簪様など見たくはありません」

「………ごめん」

「いや、うん、私も何かしてしまったようだし、スマン」

 

 ……だんだん頭が冷めてきた気がする。怒りは収まらないけど、マドカにあたるのは違うってことぐらいは分かるぐらいには冷めた。

 

私の悪い癖……だよね。気をつけなきゃ。

 

「兄さん、もうすぐ夕飯だよ。一緒に食べよう。私と簪はそのために探してたんだ」

「ああ、時間をみて俺も切り上げたところだ。腹も減ったし、食べるとしよう」

「新鮮なお魚が、沢山出るんだって」

「海鮮ですか、楽しみですね」

 

気分を切り替えて、楽しくご飯を食べよう。学園の食堂だと生物は出ないから楽しみ。学園御用達ならきっと凄く美味しいはず。

隣に座ってあーんとかしてくれるかな……?

 

「早くいこうよ!」

「こら、引っ張るんじゃない。慌てなくても行くから」

 

一夏の右腕に抱きつくように、マドカは身体を絡めている。いいな、やってみようかな……。

左腕にそろそろと両手を伸ばした時、またしても気づいてしまった。

 

腕に抱くつくマドカの……胸が!?

 

「ううっ」

「簪様?」

「もーーーっ!! マドカーーっ!!」

「わあ!?」

「………はぁ」

 

食堂に着いたのは一番最後だった……。

 

 

 

 

 

 

 用語

 

ツモ…………山から牌を取る動作。

ドラ…………持っているだけで役がつく牌。毎回変わる。

ポン…………鳴きの一種。同種の牌を三枚揃える。

カン…………鳴きの一種。同種の牌を四枚揃える。ドラを増やす。

ロン…………他人が捨てた牌で上がること。

平和…………自風牌・場風牌を持たず、全て連番、鳴かない、両面待ち(聴牌の時、連番の両方でアガれる状態)でつく役。

タンヤオ……1・9・字牌以外の場合付く役。

槍槓…………他人が加槓した牌で上がること。

加槓…………ポンした後に、自分で四枚目をツモったとき、カンすること。

嶺上開花……嶺上牌(カンしなければツモれない牌)で上がること。

混一色………字牌とある一種類の牌で作った役。

清一色………一種類の数牌のみで作った役。

暗刻…………同じ種類の牌が三枚そろっており、鳴いてない状態。

三暗刻………暗刻が三つ手牌にある状態。

四暗刻………暗刻が四つ手牌にある状態。役満。

チャンタ……字牌、数牌の1と9が絡んだ役。

満貫…………子は8000点、親は12000点。

倍満…………子は16000点、親は24000点。

役満…………子は32000点、親は48000点。

三元牌………白、發、中の三つの字牌のこと。

小三元………三元牌の内、二種類を三枚揃えて、一種類を頭にした役。

大三元………三元牌を三種類とも三枚揃える役。役満。

対々和………頭以外を全て三枚揃える役。

リーチ………聴牌の状態でかけられる。役が無くても、、リーチが役になる。

フリテン……アガリ牌を既に切っていること。

聴牌…………後一枚でアガれる状態。リーチがかけられる。

一向聴………聴牌まであと一手の状態。

 




 嶺上開花に成功した喜びがここまで影響してしまうとは……申し訳ない。
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