無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

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 8月は提督業に専念します。


32話 「君だよ。愛しの箒ちゃん♪」

 叫び声を上げながら海面を爆走していった何かを追いながら、リペアフィールドの実験を行っていた。

 

 リペアフィールドが正常に作動しているのを確認しつつ、装甲を眺める。模擬弾とペイント弾を使った為そこまで損傷しているわけではないが、ぶつかった時などに小さな傷やへこみが出来ていたので、これで実験してみることにした。これ以上の傷をつけるとなると、やはり学園のアリーナでなければ許可が下りないので、続きは帰ってからだ。

 

「うわー、これすごいねぇ」

「かすり傷が治ったぐらいじゃ、ISではあまり意味が無いだろ」

「それでもだよ。待機状態にして長時間展開を控えてようやく修復が始まるんだからさ、ただ武装を展開するだけで見る見る直るなんて、今までじゃ考えられないよ。それに、車や戦闘機、戦車みたいな他の機械は自分で勝手に直ったりなんかしないでしょ」

「これはISの武装なんだから、ISの損傷でちゃんと機能しないとダメだ。他の機械を比較に出しても意味は無いよ」

「うーん、それが一つの商品として売り出せればいいのにね」

「仕方ないさ」

 

 コアからエネルギーを受け取って、フィールドを展開するこの装置は、ISコアありきとなっている。勿論これだけじゃ無く、IS関連のエネルギー武装は殆どこのタイプだ。例えば打鉄弐式の荷電粒子砲、サイレント・ゼフィルスのビット、俺のUAD-レモラやLZ-ヴェスパインなどが挙げられる。

 もう一つ別のタイプがあって、武装そのものに専用のバッテリが内蔵されているものがある。ACはどちらかと言えばこちらに分類され、ステラカデンテに搭載されている新武装『ラーヴァ(溶岩)』も相当する。今回の模擬戦ではエネルギー武器のため使えなかったが、いつか使ってくることもあるだろう。簡単に言えば、ラーヴァはマガジン式のエネルギーライフルだな。

 

 ステラカデンテの新武装と言えば………。

 

「アレには驚いたな」

「アレ?」

「背中のガトリングガン。背面をカバーするのは想像できたが、まさか腕に変形するとは思っていなかった。背中に隠し腕とは、いやはや、イタリアも中々やるな」

 

 装甲の裏側や、通常存在しない場所に取り付けられるアームを『隠し腕』と呼んでいる。用途は様々で、特に武器を持たせたり不意をつく事に適しており、レーザーブレードがいきなり現れて斬りつけられた、などよく聞く。実際にコレを使用しているのはごく少数……というか望月と関連のある機体しかいない。元々これは俺のアイデアから生まれた。そして手紙にも出てきた飯田明美は、元々望月技研の研究員だった、というわけ。

 

 それを言うつもりは無いので、シラをきる。飯田さんも俺もベラベラと必要以上の事を話す趣味は持ち合わせていない

 

 余談だが、夜叉には無い。

 

「ああ、『オンブラ』のことね」

「『オンブラ』?」

「影、という意味よ。まあ見てなさいって」

 

 クルリと俺に背を向け、翼を広げたステラカデンテ。すると、内側の二枚の翼と大きく特徴的な背部装甲が切り離され、ガシャガシャと音立てながら変形した。

 

「『オンブラ』は人型のビット……ISビットとでも言うべきかしら。独自の学習機能付き高性能AIを搭載した支援機よ」

 

 姿は一回りISに比べて小さいが、人型をしたマシンだった。オンブラは右腕を水平に持ち上げ、腕部に格納されていたガトリングを見せてくれた。加えて、左腕は翼から取り出したナイフを握っている。

 なるほどね。隠し腕の正体は隠しISってか。

 

「コアは無いんだな」

「一体のISに二個もコア乗せられるほど、イタリアは裕福じゃないよ。それもあるから小型なんだしね」

「こいつも速いのか?」

「ステラカデンテや歴代のテンペスタにはどうしても劣るけど、見ての通り立派な翼があるからね。スピードは問題なし。ついでに言うと、オンブラを支援機モードで展開している間もステラカデンテは速いままなんだからね」

「へぇ?」

「これは……見てのお楽しみだね」

「そうしよう」

 

 丁度いいタイミングでピピッという音が鳴った。修復完了のアラームだ。

 

「装甲はどうだ?」

「問題なし、新品みたいだよ。シールドエネルギーも満タンになってる」

「よし」

 

 実験成功、と。あとはどれだけの損傷まで修理できるのか、距離も測っておきたい。この二泊三日じゃあ無理だろうな。今日のデータと実機だけ送り返そう。こんなものを使わせるなという手紙も添えておこうか?

 

《大☆賛☆成!!》

 

 文字の間に星が見えるが気のせいだ、きっと。

 

 ワイドスマックは……戻ったらでいいか。

 

 そう言えば旅館になんか走って行ったんだよな。面倒事が起きなきゃいいが……。

 

《無理でしょうね》

(だろうな)

 

 数秒で俺は諦めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピンク色の長い髪とコスプレの様な服を着たウサ耳が、織斑先生にアイアンクローをされて悶絶していた。ミシミシとか人体から聞こえてはいけない音がしているにも関わらず喜んでやがる。

 

「きょ、今日も元気そうだね!」

「今日も、とはなんだ。まるで毎日見ているような口ぶりだな」

「衛星なんて束さんにかかればちょっと画質の良いテレビさっ!」

「程々にしておけよ」

 

 はぁ、と呆れたように溜め息をついた織斑先生は手を離した。束と呼ばれた女性は何事も無かったかのようにぴょんぴょん跳ねている。

獲物を見つけたかのように、今度は織斑の所へスキップしていった。

 

「やや、久しぶりだね! いつ以来かな?」

「昨日会いましたよね、旅館のど真ん中で」

「そうだよねー。でで、しゅーくんお願いがあるんだけどぉ………」

「シュークリームみたいな呼びかた止めてくださいって言ってるじゃないですか!」

「わーいありがとー!!」

「全力でスルー!? しかもお願いの内容聞いてませんよ!?」

「ちょっと白式見せてくれるだけでいいんだよー。あとは……解剖?」

「断固拒否させていただきます」

「ぶーぶー」

 

 タコのように口をすぼませながらも手は解析装置の準備を怠らない。一本のコードを伸ばしてガントレット形態の白式へ差し込み、データ収集を始めた。織斑は言っても無駄だという事を経験から理解しているに違いない。見たばかりの俺でも分かるぐらい、自我と欲に忠実なやつだ。

 

 コメディが繰り広げられる中で、俺とリーチェは戻ってきた。多分、海面走行をしてきたのはあの女だろう。そして専用機持ちもそうでない生徒も皆がここに集まっている。

 

 事情が呑み込めない俺達はマドカに一連の出来事を聞いてみた。

 

「マドカ」

「…………」

「マドカ、どうした?」

「え、あ、いや、なんでもないよ。何?」

「誰なんだ、あの人」

「篠ノ之束。ISの生みの親だって。さっき海を走って来たんだよ」

「何をしに?」

「さあ? 奇人変人で知られてるから、私には分からない」

 

 どこかそっけないマドカの返事を聞きながら、篠ノ之束という人物について思いだしていた。

 

 わずか数年で世界をひっくり返したパワードスーツ、IS。これを作りだしたのは一人の天才科学者らしい。驚くことに、当時は高校生だったそうだ。何故女性にしか操縦できないのか、なぜコアの数を増やさないのか、どうやってISを作りだしたのか、何者なのか、ありとあらゆる疑問を抱えて篠ノ之束は失踪した。

 世界からの評価は“異常”の一言尽きる。学生の身分で核を越える脅威を平然と生みだし、世界中が捜索しても数年間足どりがまったく掴めないまま、言動や行動は常人には理解不能。もしかしたら人間じゃ無いのでは? という説が生まれるほどに、篠ノ之束は異常なまでに“天才”で“天災”だった。

 

 目の前で繰り広げられる光景が示す通り、織斑千冬と織斑秋介、妹の篠ノ之箒に対して非常に強い親近感を持っている様子。ご近所だったそうだ。織斑と篠ノ之が幼馴染みならば、二人の姉が友人関係にあることも不思議じゃない。

 

 そしてもう一つ。

 

「わぁ~。篠ノ之博士なんだって~」

「ええっ! さ、サインとかもらえたりしないかな?」

「握手とか写真とか……!」

「あー。うっざーい。ちょっと黙ってくれない。というかちょっとじゃなくて永遠にでもいいけど」

「「「…………」」」」

 

 大の人間嫌い、と聞いている。見た限りだと本当らしいな。そりが合わないとかもはやそんなレベルを超えている。嫌悪感すら催しているようだ。まるでゴキブリやムカデなどの害虫を見るような目で、沸き立っている女子たちを見下した。

 

 理想とかけ離れた現実に、生徒を含め教員までもが唖然としている。元から知っていた織斑姉弟と実の妹である篠ノ之だけが、呆れかえっていた。

 

「箒ちゃんは久しぶりだもんねー!」

「……そうですね」

「そんなにぷにぷにしないでさー、もっとスマイリィにだねぇ。じゃないとしゅーくんはころっといかないよ?」

「か、関係ないでしょう!?」

「それにしてもおっぱいおっきくなったね! 何カップ? やっぱ束さんの妹だよー! 束さんはねーFぐらいあるから、きっと箒ちゃんもFぐらいにはおっきくなるから安心してね!」

「そういうのはいいんです!」

 

 わーお。この温度差、すごいね。

 

 篠ノ之の後ろに回り込んで胸を鷲掴みにしながらサイズを測るアレは紛れも無く評判通りの人間だと理解した。世界中の変態や変人を濃縮しても彼女がいる次元には到達できないだろう。

 

 うしろから感じるおぞましいほどの殺気と、念仏の様な呟きはこの際無視しておこう。俺にはどうしようもできない。話しかけたら俺がやられる。

 

「箒ちゃんにはあとでプレゼントがあるからねー」

「はあ……はぁ……」

 

 芯から疲れ切った篠ノ之は息を切らしてへたり込んでしまった。織斑の白式からコードを抜いて嬉しそうに解析作業に入っている。自前のキーボードらしいモノを使って、ピアノを弾くがごとく叩き始めた。ただし、あまりの力強さにカタカタという音ではなく、ガガガガと何かを削るような音が鳴り続けている。

 

「うーん、これはこれは……」

「えっと、束さんはここへ何をしに来たんです?」

「おうっ! そうそう、忘れてた!」

 

 頭の上に豆電球が灯る。作業の手を止めずにここへ来た目的とやらを思い出した篠ノ之束は笑いながら口にした。

 

「なんかね、とーっても珍しい機体と、束さんも気になる現象を起こした機体がここにいるんだよ。面白そうだから見に来たんだ」

 

 目を細め、にたりと口を歪めた篠ノ之束と一瞬目があった。

 

「          」

 

 バラしてみたいなァ

 

 ぞわりと背中から全身へ巡る寒気とおぞましさ、日常では生みだせない負の集合が篠ノ之束から滲みでていた。

 

「い、一夏?」

「へぇ……」

 

 無意識、反射といった思考を飛ばした行動を身体がとり、いつの間にか簪様の前に立っており、目の前には右手を伸ばした篠ノ之束が。そしてその右手を握りつぶす程の握力を込めて掴んだ俺。

 

 目の前の女は、簪様を殺そうとした。

 

「………殺すぞ?」

「君と後ろのこの機体をちょーっと見せてもらおうとしただけじゃん。そんなことも分からない?」

「それが他人へモノを頼む態度か?」

「じゃあどうしたらいいのかな? 天才束さんに是非とも教えてよ」

「服を脱げ」

「い、一夏!?」

「わ、変態だったんだ……」

「服を脱いで、身体中に仕込んである解剖器具と解体器具、刀剣類、銃器、機械類、その他を全て破壊した上で手錠をかけ縄で縛った状態でなら、俺の機体を見せてやらないことも無い」

「うぐ……わかったよ……諦めるよ……」

 

 うえーと言いながら右手に込めた力を抜いて、だらんと垂らして去っていく。

 

「あーもう一つ」

「なにさ。もう諦めたって。変態にはつきあってられないよ」

 

 一度話した右手をもう一度掴んで、グイッと身体を引き寄せる。驚いたような表情を見せるが無視だ。顔を耳元へ近づけ、そっと呟く。

 

「人前へ姿を出すなら、自分で来い」

「何の話?」

「マナーがなってないと言っているんだ。よくできているが、分からないわけじゃない」

「そんなの分かる君の方がおかしいって」

「身代わりに爆薬を満載している天才程じゃないさ」

「………お見通しって自慢したいわけ?」

「釘を刺しているんだよ」

 

 次は無い。

 

口に出さずとも意図は伝わった筈だ。握っていた手を開放して、マドカと簪様の元へ戻る。

 

「マドカ、どうだった?」

「爆薬の反応あり。砂の沈み具合からしてダミーだってのも間違いなさそうだったよ」

「ねえ、どうしたの? なんだったの?」

「あの篠ノ之束は偽物という事です」

「え?」

 

 非常によくできた人形だった。触った感触は人間とまったく同じで、強く握らなければ人工皮膚や人工筋肉の更に内側にある堅い何かに気付くのは難しかっただろう。すぐに夜叉を起動させ、機体を展開せずにセンサーを作動させた結果。最低限の機能を搭載した機器と、少量の爆薬、そして大部分の人工皮膚と人工筋肉で構成された偽物だと看破できた。

 

 さらに、保険のつもりでマドカに詳しい情報を手に入れるようにプライベート・チャネルを使って頼んだ。正直、最後のアレはハッタリに近い。

 

「結構いいね、この追加パッケージ」

 

 ブルー・ティアーズの姉妹機、サイレント・ゼフィルスは中距離戦闘を想定して作成されている。たとえば、シールドビットは自分を守るためという意味もあるが、本来は後方で狙撃するブルー・ティアーズを守るものだったりと、BTシリーズには個々に意味と特徴を持つ。

 ただし、搭乗者のスタイルも無視はできない。現状でもマドカは100%以上の性能を引き出していると言ってもいいが、本来得意とする距離はもっと近づいた近距離。そこで、今回BBCに依頼して作成されたのが、今日インストールしたばかりのパッケージと言うわけだ。

 

 『ホロウ・フェアリー』。バランスを近距離へ傾けたパッケージ。近距離特化の単独行動に比重を置いている。本来のコンセプトと真逆の思想になるこのスタイルは、まさに虚実(ホロウ)

シールドビットを全て繋げて一枚のシールドにして左腕部に接続、速度が落ちないギリギリのラインまで装甲を強化、メイン武器を『星を砕くもの(スターブレイカー)』から『道を切り開くもの(バリアブレイク・ローマロード)』へ換装、等々かなり仕様が変更された。

加えて索敵能力も強化を施されていたため、見抜くことができたのだ。

 

「偽物、だったの?」

「俺も注意深く見ていなければ分かりませんでした。見た目、質感、体温すべてが生きている人間を限りなく再現しています。流石に中身までは真似できないそうですがね」

「何でだろう?」

「流石にそこまでは分かりません。常識的に考えるならば、世界中から逃げるため、でしょうね。どんな理由があるのか知りませんが、アレは危険です。不用意に近づきませんよう気をつけてください」

「う、うん。一夏がそういうなら……」

 

 自分が狙われているというのに安心などできるはずが無い。相手はあの篠ノ之束で、今日目の前に現れた彼女は爆薬を積んだ偽物ときた。ここで不安を感じないのは相当の猛者か、極端に馬鹿な奴ぐらいだろう。

 いかに安全を確保して安心させるかが、従者としての腕の見せ所。マドカもついているし、余程のことが無い限りは対処できるはずだ。

 ただし、気は抜けない。ヤツは底が見えなかった。正直に言うなら俺ですら不安を感じている。

 

 篠ノ之束はこう言っていた。

 

『なんかね、とーっても珍しい機体と、束さんも気になる現象を起こした機体がここにいるんだよ。面白そうだから見に来たんだ』

 

 面白い機体、気になる現象を起こした機体、か。簪様へ接近してきたということは打鉄弐式を指していることになる。同時に、夜叉へも興味を示していた。

 恐らくどこかで見ていたに違いない。或いは、全てのコアは篠ノ之束へ常に情報を送信し続けているとか? ………考えただけでも恐ろしいな。

 とにかく、幾つかある目的の内一つは理解できた。

 

 珍しい機体は夜叉の方だろう。リミッターをかけている状態で現行の最新型を圧倒する第二世代型。俺の素性含め謎が多いことが琴線にふれたのか。

 珍しい現象を起こした機体は打鉄弐式。建造中に倉持技研へ見学に行った際、襲撃を受けた時に、打鉄弐式は自らパーツを引き寄せ組み立てた。全システムも全て調整済み、すぐに実戦投入できる状態でだ。確かに前例が無いだろう。流石の篠ノ之束も疑問を感じたはず。

 

 世界中から追われる天才科学者に目をつけられるとは……。幸か不幸か……。

 

《高速で接近する機影あり。今度はISみたいですね》

(ほっとけ)

《よろしいので? 未確認機ですよ?》

(どうせここへ来たもう一つの理由とやらに関係があるのさ)

 

 夜叉からの報告を聞いて上を眺める。そんな俺の動きを横目に見ていた篠ノ之束はにやりと心底嬉しそうな表情を浮かべ大声を上げた。

 

「さぁ! 皆々様上空をご覧くださ~い!」

 

 という声に教員と生徒が上を見る。

 

 最初は太陽の真中に現れた小さな点だった。それが次第に広がっていき、影を落としてくる。空を割く音が大きくなって、気がつけば轟音と共に落ちてきた物体は砂を巻き上げていた。

 

 落ちてきたのはIS一機(・・・・)がすっぽり収まりそうな灰色のコンテナ。

 

「君たちは実に運がいいねぇ。これから見せるのはこの束さんが自ら手掛けた完全プロデュースの最新型さっ!」

 

 ぽちっという音がすると同時に、コンテナの上部が少しだけ動いた。そのままゆっくりと上部が開いてゆき、続けて四方の壁が倒れていく。徐々に姿を現して、日の光りを浴びて輝く装甲は赤。白式とどこか似ているフォルムで、ここ最近のISにしては大きな方だ。特に目を引くのは背中の独特なユニット、翼には見えないし、細かったり大きかったりとアンバランスでブースターにも見えない。

 

「これは世界でも初の第四世代型(・・・・・)IS『紅椿(アカツバキ)』!!」

 

 えっ!? と驚く一同。織斑先生ですら動揺を隠せていなかった。

 

 世界のIS事情だが、ようやく第三世代型の開発に成功したばかりである。それも主要国のほんの一部だけ。第三世代型はまだ実験機の域を出ておらず、第二世代型は未だに主流を譲っていない。たったの数年でもう三回も世代交代が行われていること自体が凄いのだが、この天才はあっさりとそれすらも凌駕した。

 

 世界がまた荒れるだろうな。あの『紅椿』とやらを巡って。

 

「そして! これに乗るのはーーー!」

 

 右手を高く掲げ、人差し指をピンと伸ばし、勢いよく振りおろして、突きつける。

 

 その先は――

 

(ユー)だよ。愛しの箒ちゃん♪」

 

 覚悟と戸惑い、多分の喜びを浮かべている篠ノ之箒だった。

 


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