無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

41 / 80
 ちょっと長々な文が続きます。
 本当は会話文に段落をつけたくはないんですけどね………


第二章
41話 私一人には、広すぎる。


『こんばんは。司会を務めます、伊藤です。今日の内容は先日発表された、一人目の男性操縦者である森宮一夏さんの死についてです。今まで上がってきた証拠や証言をもう一度整理した上で、真実はなんなのかを探っていきたいと思います。様々な方面のプロフェッショナルの方々に、お越しいただいております。今日はよろしくお願いします。では、熟練のジャーナリストである田中さん、現状整理をどうぞ』

 

『では、今まで出揃っている証拠などを整理していきましょう。

 数日前、彼が登校しているIS学園の一年生は課外授業を行うということで、少し離れた場所にある毎年利用している旅館まで二泊三日のプランで実技授業を行う予定でした。初日は自由行動で、二日目を丸々実技授業に充て、三日目に帰る。詳細は学園側の事情により後悔されることはありませんが、これが課外授業の大まかな内容です。毎年この時期に一年生向けに行われる“臨海学校”という行事です』

 

『利用される旅館は毎年同じだと言われておりますが………』

 

『厳密に言えば違います。固定化されるようになったのは、かのブリュンヒルデである織斑千冬が教職員として就職した年からと聞きます。彼女の紹介と推薦により、この旅館を毎年利用するようになったのでしょう。近くには海があるため生徒には受けが良く、少し歩けば実習に適した場所もあるため学校側も納得したと』

 

『なるほど』

 

『初日は自由行動……旅館と傍にある砂浜で遊べるようにスケジュールが組まれています。英気を養う、入学から今までの疲れを癒す、目的は色々とあると見られ、教員も一緒になってリラックスするそうですよ。

 そして事件が起きたのは二日目。アメリカ・イスラエル共同開発されていた軍用IS『銀の福音』が何者かによって暴走し、行方不明に。予想進路と戦力的な問題を考慮したうえで、IS委員会は学園生による作戦を指示。今年度は専用機が多かったことからこうなったと思われます』

 

『このことを、軍事産業にお詳しい畑中さんはどう考えられますか?』

 

『常識で考えるのならばありえませんね。どれだけ専用機が集まっていようが、学生の身分を持つ子供たちに作戦を与えるなど異常の一言に尽きます。各国の技術が詰め込まれた結晶を国防とはいえ使用するべきではないと考えます。本来ならば自衛隊所属のIS部隊が行うべきです。

 百歩譲って日本代表であるIS学園三年生の森宮蒼乃さん、この臨海学校に参加していた代表候補生の更識簪さんが妥当ではないでしょうか?』

 

『国防という面から見れば、日本所属のお二人が行うべきだったという事ですね。それはIS委員会も考えたことだと思いますが、結果的には学園生が対処することに決まりましたが、そこに至る経緯はどう推測されますか?』

 

『専用機の数でしょう。十機もの専用機が一ヶ所にあるのです。戦争だってできる戦力ですよ。

そして実力者が多かったことも上げられます。織斑千冬さん本人がおり、そして彼女の後を受け継いだ森宮蒼乃さんの弟であり、亡くなられたと考えられる森宮一夏さんと、その妹である森宮マドカさん。この二人の実力は既に国家代表レベルにあり、学生でありながらブリュンヒルデに最も近いパイロットの一人として数えられています。そして二代目零落白夜と言われれる織斑千冬さんの弟である織斑秋介さん、かの天才篠ノ之束博士の実の妹であり、当日に最新型の第四世代機を受け取った篠ノ之箒さん等々……。

最もIS研究が進んだ各国のエリートが集っている事実。正直に申し上げるなら、日本自衛隊のIS部隊の何倍も強いでしょう』

 

『単純に作戦を成功させるだけの戦力が学園生にあったということでしょうね。では、引き続き田中さんより現状の整理をお願いします』

 

『はい。銀の福音は非常に速い機体であり、亜音速に到達するほどだと言われております。織斑千冬さんがとった作戦は、並走できるだけの速度を出せる機体で追いつき、一撃必殺の攻撃で撃墜する。というものです。専用機を所有する学生は、この臨海学校で新型の換装パッケージのテストを行う事が目的です。幸いに高速機動パッケージを送られていた生徒や、それ以上の速度を有するメンバーを送りだし、無事作戦が終わります。

 そして日付が変わった翌日の午前二時を過ぎたころ、誰にも気付かれることなく再暴走した銀の福音は、拘束されていた旅館を抜けだしてしまいます。これに気付いた森宮一夏さんは単独でコレを追い、それを目視した織斑秋介さんがさらの後を追いました。

 再度銀の福音を止めて捕獲した後に、何処からか現れた無人機体が大量に襲いかかってきたそうです。足止めには向かない織斑秋介さんは銀の福音を抱えて旅館に戻り、応援を呼ぼうとし、森宮一夏さんは旅館を襲わせないため、銀の福音をとり返されないためにその場で足止めする為に残りました。

 途中で織斑秋介さんは襲われましたが、第二形態移行したことで倒し、事前に旅館で就寝していた他の専用機を持つ学生に助けを求めていたメンバーと合流します。この旅館から助けに向かうメンバーは織斑さんの元へ向かうチームと、森宮さんの元へ向かうチームの二つに分かれていました。織斑さんは無事を確認できましたが、森宮さんの方は残念ながら間に合わず、森宮さんのISのパーツや装甲の破片が幾つも見つかったそうです。血痕がべっとりと付着していたことから相当な出血があると見られ、最悪の場合腕や足を失っていることも考えられました。

 必死に捜索が行われましたが、周辺の海域や海中もそれ以上の手がかりになるものは見つからず、亡くなられたと判断されています

 これが、当日の流れですね。ここを含めて様々なメディアで論議が行われていますが、公開された以上の情報は手に入らず、憶測を出ない推測ばかりが生まれては消えていくのが現状ですね』

 

『ありがとうございました。非常に多くの情報を口頭で述べていただいたわけですが、より分かりやすくしていただくために、こういった詳細を書き込んだボードをご用意しております。こちらをご覧ください。

 では、これらの情報を踏まえた上で、考えてみたいことがあります。それは“森宮一夏さんが生きているのか、死んでいるのか”ということです。様々な意見に目を通されて来た記者である黛さんに、お話を窺って見たいと思います』

 

『はい。事前に今まで目を通してきた記事を纏めてきています。それらを集計した結果、生存説が全体の2割、死亡説が8割となっていました。

 公開されている情報によれば、戦闘空域一帯の海には撃破した敵マシンの残骸が無数に広がっており、その中にぽつぽつと森宮君のISの装甲が発見されました。それだけの激戦だったことが分かりますし、尋常じゃないダメージを負ったこともまたはっきりとしています。実力者で知られている彼ですら、無視できない損傷を負ったわけですね。特に、メットバイザーと左腕が酷い状態で発見され、血痕も見られます。これだけの情報がそろっていれば、死亡説が有力であることも分かります。

 一方で生存説が囁かれているのは、主に三つの理由が絡んでいます。

 一つ目、オーストラリアに本社を構える某企業の所属ISとパイロット共々音信不通になった数時間がありました。それが若干ではありますが、戦闘が行われていた時間と重なるのです。このパイロットや企業と森宮君の関連性は不明ですが、委員会側からの指示や、企業の思惑があっての行動では? というものです。

 二つ目、この臨海学校では篠ノ之束博士が実地に赴いていたそうです。実の妹である篠ノ之箒さんに専用機を手渡しし、作戦立案にも一役買ったとも考えられます。もしも、そのまま旅館周辺で夜を越したのなら、篠ノ之博士が彼を回収したのではという意見も出ました。しかし、ご存じの通り他人に興味を示さない上に、当日険悪な雰囲気になったそうで、助けるだろうか? とも言われています。

 三つ目、姉である森宮蒼乃さんの存在です。一部では有名な話ですが、弟である森宮君と、妹の森宮マドカさんを溺愛しています。目に入れても痛くないと素で言うほどだとか。特に森宮君への愛情は行き過ぎており、人前で腕を絡めて歩いたりキスしたりとまるで恋人のように付き添っているそうです。こんな彼女がピンチに駆けつけないはずが無い。学園を飛び出して救援に向かったはずだ、と。これが最も生存説の中では有力で、裏付けるのが愛情と彼女の専用機の特徴である、“イメージで物質を形成する”という科学を越えたような武器です。森宮蒼乃さんをよく知る人物は、彼女なら自分のダミーを作りだして学校に置いて自分は助けに行くぐらい軽くやって見せるだろう、と仰られました。

 割合は偏っていますが、裏付ける内容はどちらも現実味のあるものだと思いますよ』

 

『なるほど。少し気になったのですが、森宮一夏さんと篠ノ之束博士が険悪な雰囲気になったという話は聞いたことがありません。どこでそれを知ったのでしょうか? それは事実なのですか?』

 

『えーっとですね……実は妹が学園の生徒でして、妹から聞いた話なんです。妹は二年生なので臨海学校に参加していたわけではないのですが、同じ部活動で仲の良い一年生がそれを目撃し、妹に話してくれたのを又聞きした次第です。

 私に似てうわさ話やスクープ、スキャンダルが大好きな子で、そういう部活動をしているものですから、信じるに足る情報だと判断しました』

 

『身内の方からお聞きされたわけですね。流石と言うべきでしょうか。

 さて、次は―――――』

 

 ブツン。

 

 何度も何度も、耳にタコができるほど聞いてきた会話に飽きてテレビの電源を落とす。リモコンを机に置いて、ベッドに倒れ込んだ。ごろりと寝転がってうつ伏せになり、枕を抱きしめて顔をうずめる。

 

「………」

 

 臨海学校から一ヶ月と少しの時間が経った。あっという間に夏休みに入り、そしてあと数日で終えようとしている。最低限の行動と訓練だけをするだけで、無駄に毎日を消化して高校生活初の長期休業は終わるだろう。

 

 兄さんがいない。

 

 理由はそれだけだ。それだけで十分すぎた。お釣りがいくらでも溢れるほどに。

 

 それからの日々は全て灰色と呼ぶにふさわしかった。世界はモノクロで、誰が何を言っているのかも碌に聞きとれず、何を話して、何を食べて、何を学んで、何をしたのか記憶にない。この一ヶ月だけくっきりと記憶喪失になった気分だ。

 

 それでもまだマシな思考を維持できているのは、姉さんと簪の存在が大きい。そして、一度経験をしていることもある。

 

 今の簪はまるで壊れた人形と大差ない。返事も無く、手をとって促さなければ立つことも食べることもしない。目はうつろで焦点がぼやけたまま。まるで世界を認識していない。学校では私が、寮では本音が常に付き添って世話をしていた。正直に言えば感情を表に出さずじっとしている上に考えが読めない今の簪は、下手なガキや赤ん坊よりも扱いづらい。

 私も全てを否定したい。だが、放っておくわけにもいかない。簪は私にとって大切な友人であり、更識である以上は主なのだ。自分の思いを隅に置いて世話に没頭することで考えることを拒否していた。

 

 姉さんは一度も姿を見せることはない。ルームメイトや姉さんの友人曰く「姿は見かけるがまるで別人のようだ」「面影が全くない」などなど、ダメージは深刻だ。元々感情を見せる人じゃないから、それが普段の様子に現れたり、誰が見ても分かるほどに異常な状態だとわかる現状は最悪と言える。想像していたよりはかなりマシだ。

 部屋から出ることはまれで、食事はルームメイトが食堂から運んでくれているようだ。食材を持ちこんでいたりするそうだから自炊もしているだろう。そして絶対に私達と顔を合わせようとはしない。

 

 二人が特に際立っているだけで、他にも親交の深かった面子がそうでないかというわけじゃない。

 

 楯無やラウラ、リーチェは辛さや悲しさを押し込んで心配させまいと普段通りに振る舞うように努めている。それが傍目から見れば痛々しいだけなのに、聡明な三人は気付かない。影で泣いていることも、助けられなかったと悔しがる様も見え見えなのに。

 

 桜花は学校を休み続けている。どうやら寮にもいないようだ。学校には無断で皇本家へ帰って生存情報を得るべく寝る間を惜しんで端末にかじりついていると聞いた。ヒステリックを起こして手がつけられなくなると思っていたが、想像以上に強い精神力を持っていたようだ。

 

「待っていてくださいね、今度は私が助けて見せますから……。だから、マドカも諦めてはダメよ?」

 

 生きていると微塵も疑わないその姿は眩しかった。

 

 私は……どうだろう。信じてるさ、どれだけの苦境にあっても兄さんは死なない。あの時だってそうだった。

 

 でも、私は見てしまった。戦場を、そこに散らばる夜叉の破片を、血がべっとりと貼りついたメットバイザーと左腕を……!

 

 絶望の底に突き落とされるには、これもまた十分すぎた。

 

 右を見る。窓から現れる侵入者を想定してと、私を入口側のベッドに寝かせていつも腕枕をしてくれた場所には、誰もおらず、匂いも薄れてきている。

 

 二つのベッドの間には仕切りがあったが、初日にそれを取っ払って二つのベッドをくっつけた。二人で使うにしてもかなりの大きさがあるそれは、兄さんと私だけの安らぎの場所だ。偶に姉さんが泊まりに来るけど、それでも十分な広さがある。ごろごろと三回転半ほど寝転がってしまえるだろう。

 

私一人には、広すぎる。

 

 兄さんの机も私物も全て学園を出たあの日のままだ。掃除する時に少し動かす程度で、部屋の模様は少しも変わりない。それでも兄さんがここに住んでいるという気配が薄れてきていた。

 

 私は一人に慣れてきている………。

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

 

 夏休みは過ぎて二学期が始まった。

 

 教室に集まった四組は、また始まる授業の毎日に張り切る姿はなく、休みが過ぎ去ったことを嘆く者もおらず、本国から戻ってきて友人たちとの再会を喜ぶわけでもなかった。

 

 誰一人として、兄さんの死から立ち直れていなかった。

 

 男性操縦者という希少性から浮いていたり、近寄りがたいところもありはしたが、全ては時間が解決してくれた。もともと慣れ合うつもりはないと言っていた兄さんも、次第に打ち解けてクラスの一員として一年四組に馴染んだ。笑顔もちらほらと見れていたことから、表面だけの付き合いじゃ無かったことは私には分かる。

 

 だからこそ、失ったものは大きい。少なからず関係があり、等しく対等に接してきたのだから、誰もが悲しみを覚えた。

 

 大場先生も、古森先生も、晴れない表情でHRを始めた。

 

「あー、これから体育館に行くように。全校集会あるから」

「全校集会?」

 

 普通の学校ならともかく、このIS学園では珍しい。勉強の時間を多く取るために、よほどの事情が無い限りは全てHRで済まされる。始業式や終業式等もそうだ。延々とありがたくも無い言葉を聞き続けるだけの行事など何の意味があるのやら、だ。

 

「来月の頭に学園祭が開かれる。この一ヶ月はその為に色々と準備しなくちゃいけなくなるし説明もあるから、この時期は毎年行われるのさ。さ、話す事はもう無いからさっさと行け。あー、清水。お前が代理(・・)クラス委員だ、並ばせたり報告は任せた。解散」

「あ、はい」

 

 ……そうか。今まではそれも兄さんがやってきたことだったっけ。ダメだな、信じるなんて言ってこのザマだ。心が諦めかけている。

 

 本当に言うことはないようだ。先生達は教室を出ていき、それを見届けた後ぞろぞろと立ちあがって講堂へ向かう。いつもなら私も波に呑まれて動くが、そうもいかない。

 

「簪」

「………」

「行こう」

「……うん」

 

 御覧の通り、だ。荒事に気が向かない簪に、甘えるなときつく言うこともできず、余計に傷つけてしまいそうで手つかずのまま。時間に任せてもいいものか……。恐らく、楯無が何らかのアクションを起こすだろうから、何があっても私は支えるだけだ。

 

 だらりと垂れている簪の手をとって、そっと立ちあがらせる。そのまま優しく手を引いて歩くが、足取りは頼りなく力が抜けている。小石でも置けば勝手に躓くだろう。実際にこけたこともあるのでその辺りにも気を配らなければならない。今の状態では碌な受け身も取れずに大怪我をしてしまいそうだ。

 

 ペースを合わせてくれた他のクラスメイト達と一緒にゆっくりと歩きながら講堂についた。席は八割方埋まっており、早いクラスは点呼も終えているようだ。少しだけ急いで清水にすまないと伝えて席につく。簪は隣に座らせた。

 

 全クラスがそろったようで、早速全校集会が始まる。

 

「やあやあ、一年生諸君ははじめましてかな? 生徒会長の更識楯無よ、よろしくね」

 

 挨拶もそこそこに、現れたのは楯無だ。忘れてはいないが、こういうことも生徒会長という椅子を護るためにやらなければならない。兄さんと楯無の関係を知る人ならはっきりと分かるほどの不調を押して、前方のステージに立っていた。

 いや、更識楯無を知る人物なら誰でもわかるだろう。その笑顔は無理矢理といった感じが見てとれる。

 

「毎年この時期は学園祭を行います、先輩達は知ってのとおりね。各クラスは各々で展示や模擬店を企画して、お見えになる外部からのお客さん方からの投票や、生徒自身の投票によってランキング付けを行い、相応の景品を用意する。言っておくけど、自分のクラスへの投票はできないからね。でもまぁ、それだけだと部活動が寂しいじゃない? そこで、今年はとある企画をご用意しております、ってわけよ」

 

 閉じていた扇子を開いて顔を隠す。その動作や癖はまさに更識楯無だが、恐らく扇子の向こう側にある表情は硬く、見せられないほどガチガチの笑みだろう。それでいて口調を崩さず平常だと見せる姿は流石としか言えない。

 

 そして背後にあるディスプレイの画面が、校章からライブ映像に切り替わる。

 

 織斑秋介のどアップ。

 

「ズバリ! “各部対抗! チキチキ織斑秋介争奪戦!”よ!」

 

 ドーンという効果音すら聞こえてきそうな迫力ある声だったが、今一状況が呑み込めない。分かったところでこの雰囲気ではリアクションのしづらいこと。

 

 察したのか、それとも滑ったと思ったのか、楯無はさらっと解説を加えた。

 

「要するに、一位を獲得した部活動には織斑君が入部します」

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

「わぁっ!?」

 

 流石の私も飛びあがりそうだった。それほどの歓声が講堂内に響き渡る。もう歓声じゃない、戦を前にした兵士の鬨の声だ……。

 

「生徒と来場者には二つの投票権が配られます。一枚は各クラス対抗ランキングで、もう一枚がさっき言った各部対抗ランキング。言った通りだけど、自分のクラスは勿論自分が所属している部活動に投票はできないからね。正々堂々と、客足が伸びそうな企画を練って票数を稼ぎなさいな」

「ねぇ、何する?」「やっぱり飲食系の模擬店じゃない?」「射的とか、そんな感じの娯楽系も中々良いと思うんだけど……」「工作系なら家に帰っても形に残るじゃん」「うぐぐ……どれもかしこもいい案ばかりで捨てがたいわ……」

 

 楯無の注意事項を聞き届けた生徒は早速何をするか決め始めていた。あちこちから意見が飛び出し、聞くだけの者からすればごちゃまぜだ。

 

「はいはい、ここからが重要だから最後まで聞いてねー」

 

 ワイワイガヤガヤ。

 

「あー、なんだか各部対抗とかどうでもよくなってきたわー。止めようかしら。私としては仕事が減るから助かるのよねぇ……」

 

 しーん。

 

「よろしい」

 

 なんというか……そこらの軍隊より統率がとれているんじゃないだろうか……?

 

「各部対抗に関してはさっき話した通りよ。敢えて言っておくけど、彼は部活動によっては選手として大会には出られないから、基本マネージャーとして扱うようにね。剣道とか、テニスとか、卓球あたりの個人競技なら何とかなるんじゃない? それは置いといて……もう1つのクラス対抗で、皆さんに重大なお知らせがあります」

 

 ごほん、とマイクにも入るようにわざと息を整えて言葉を続ける。

 

「場合によってはこっちの方がやる気が出るんじゃないかしら? おそらくだけど、こんな機会は一生巡って来ないわよ?

 

 

 

 クラス対抗ランキング戦で見事優勝に輝いたクラスは、篠ノ之束博士が直々に教鞭を振るってくれるそうよ」

 




 さて、第二章の幕開けです。

 一章は1話から前話の40話まで。原作三巻とアニメ一期も終えた丁度いい節目ではないでしょうか?

 とりあえずは話を進めていきます。設定等を纏めて上げるとも書きましたが、もうしばらく先になりそうです。

 さて、第二章は何話になることやら。書き溜めたものを読み返していくと、結構なハイペースになりそうです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。