無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

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42話 これが……”こすぷれ”かっ!

「どういうことだ、楯無」

 

 放課後、ノックも無しに生徒会室に押し入った私を迎えたのは、平然とお茶を出してくれる虚とニヤニヤした楯無だった。本音は簪に付き添っている。

 

「それは“どういう意味の”どういうことだ、かしら」

「織斑など私の知ったことではない。部活動には入っていないし、入るつもりも無いから好きにやれ。私が聞きたいのは篠ノ之束についてだ」

「そうね……順を追って説明しましょうか」

 

 虚が音も無く楯無の前に淹れたてのお茶を置く。ありがとうと短く礼を告げると、湯気が出るそれを冷ますことなく口をつけてずずずと飲み始めた。夏は過ぎたとはいえ、まだまだ暑さは残るこの時期に熱いお茶とは……。私に出されているのは冷えた麦茶であるあたり、楯無は虚の熱いお茶が好きなのだろう。彼女が淹れるものはコーヒーだろうが紅茶だろうが美味しい。

 

「いつも通り作業をしてると、急に織斑先生に呼び出されたのよ。珍しく参ったという感じの声でね、断るわけにもいかないから応じたんだけど………。内容がまたすごくってね……」

「篠ノ之束が来る、と」

「そ。紅椿のデータ収集とメンテナンス、白式のデータ回収とか、その他諸々を含めて週に三回ほど学校に来るんだってね。しかも条件付きで。これもまた酷くってね……。使えそうな奴がいるクラスは? って聞かれたそうよ。教師からそれを言えば格差に繋がるし、二年生以降はコースが決まってるから一概には決められないもの」

「だから、ランキングで一位を取ったクラスに篠ノ之束を紹介させると。奴は恐らく自分の駒にするためだろう。アレが才能を感じた後輩に教えるなど想像ができない」

「それ以外にも目的はあるでしょうね。むしろそっちが本命と考える方が自然だわ。……そう言えば、マドカ、あなた面識あるの?」

 

 ……それは、織斑マドカだった頃の話だろう。

 

 よく冷えた麦茶を喉を鳴らして一口飲む。潤った喉でこう返した。

 

「ある」

「なんて呼ばれてた? 親しい人はあだ名で呼ぶんでしょ?」

「まどっち、まどちゃん……そんなところか。織斑千冬によく似たからな、そういうわけで、それなりに可愛がられたよ。兄さんにはきつく当たっていたから嫌いだったが」

「覚えているのかしら……?」

「アレを人の尺度で測るなよ。ぶっ飛んだ思考回路に脅威の記憶力、織斑千冬と正面から殴り合える力も秘めている。このウィッグに新しくカラコンをつけてもバレるだろうな。今更変装を変えようも無いし、髪を切ろうが整形しようがやり過ごせる相手でもない」

「本音から聞きましたが、あなたは一度臨海学校で篠ノ之博士と会っているのでしょう?」

「あの時の篠ノ之束は終始兄さんと簪にご執心だったよ。とても人を乗せたまま出せるスペックじゃない夜叉と、謎の完成を遂げた打鉄弐式はかの天才も興味津津と言った様子だ。まぁ、兄さんが拒んだんだが」

「ですが、先の言葉が本当なら敢えて何の行動も起さなかった可能性もありますよね? その時は紅椿のお披露目を優先したと考えれば、或いは」

「そうねぇ……」

 

 あの時をもう一度しっかりと思いだしてみる。

 

 海を走って突如現れた篠ノ之束は織斑千冬達旧友との再会を喜んでいた。そこへ演習に行っていた兄さんとリーチェが戻ってきて、簪に迫る篠ノ之束を兄さんが抑える。二言ほど何かを話して離れた後に紅椿の最適化処理(フィッティング)と慣らし。そして福音戦の作戦会議。乱入もありながら知恵を絞ってだした作戦を実行し、紅椿が単一仕様能力を使用できることを確認した後姿を消した。

 

 あの女、自重や遠慮、TPOといった言葉とは縁遠い。気になることがあれば場や立場をわきまえずに明かそうとするだろうし、研究のアイデアでも浮かべば速攻でラボに戻って機械を弄るだろう。

 

 そう考えるなら、私に気付くことなく去っていったのだろう。行方不明となった織斑千冬の妹がなぜか変装して傍にいるのだから。

 

 虚が言った通り、分かっていながらも知らないフリで通したという可能性もまた残る。だとすれば私には以前の様な価値が無くなったのか、別のタイミングで接触するつもりだったのかのどちらかだ。

 

 実際のところ、あの場にいた篠ノ之束はただの爆弾人形だったわけで、カメラ越しに兄さんや簪を見ていたはずだ。数歩離れて観察していた私が見えなかったというのも分からない話じゃないが、ISを作った科学者にカメラの範囲がどうのこうのと言ったところで今一理由としては信憑性に欠ける。

 

 考えてもさっぱりだ。

 

「それで、私と篠ノ之束がどうした?」

「……本当はね、私が行くべきなのよ。なぜなら、あなた達は森宮で私は更識楯無なのだから。ただ、私が行ったところで恐らく意味はない。なぜなら、相手は篠ノ之束だから。興味も無いそこらの凡人が会いに行ってまともに取り合ってくれるとは思えないわ」

「だから、面識のある私が行くということか」

「ええ。さっきの話にケリをつけられない現状では可能性の話だけどね。少なくとも何らかのアクションは起こすでしょうし、会話にならないなんてことは起きないんじゃない?」

「なるほどな……確かに、それができそうなのは私ぐらいだ。姉さんなら面識ぐらいありそうだが、今それを頼もうにも会うことすらできないのではな。それで、何を聞いてくればいい?」

「あの日の真実と、一夏の行方」

「何?」

 

 それはまるで、篠ノ之束は福音が暴走を起こした原因と、兄さんがどこかへ行ってしまったことと、その先を知っている。ということか?

 

「マドカさん、考えてみてください。何故、一夏君は再暴走した福音を追ったのでしょう?」

 

 虚の言葉に、もう一度思考を巡らせる。

 

 兄さんはただ「外に出てくるから、簪様を頼む」と言って旅館を出て行っただけだ。それは「風にあたってくる」「散歩してくる」といった気分転換的な意味合いだと思っていたが………。「福音が暴走したから追い掛ける」と言ったわけではない。むしろ気付いたのならすぐに織斑千冬や大場ミナトに知らせるだろう。その上で、単身追い掛けるはずだ。何より簪の護りを預かる私に知らせないのはおかしい。散歩の途中に見かけたからだとしても、やはり連絡ぐらいは寄越すだろう。

 

 ということは、私を含めた周囲の人間に知らせることができなかった? そして、このタイミングで切り出すということは篠ノ之束が絡んでいるに違いない。

 

 兄さんと、篠ノ之束。この二人の接点は、対面した時の海岸での一幕だ。

 

 ………いや、ある。もっと前にあるじゃないか。

 

 織斑一夏と篠ノ之束!

 

 福音の暴走を仕組んだのか、それとも察知していたのかは分からないが、分かっているなら事前に策をとればいいし、子供に任せるのではなく親友である織斑千冬に話を持ちかければ良かったんだ。そうでなくとも、自分で何とかできる範囲だろう。

 

 にもかかわらず敢えて兄さんを名指しで利用した。篠ノ之束が兄さんを織斑一夏だと気がついて、一悶着あった時に時間と場所を指定して呼びだしたのなら。自分は君の過去を知っているとか言えば恐らく応じるだろうし、誰にも言うなと言われればそうするだろう。となれば、あれはただの外出ではなく篠ノ之束からの誘いに応じて密会していたと考えられる。

 

 そこで条件でもつけたとしよう。知りたければこれから起こることを解決してみせろとでも言ったとして、同時に誰にも言わずに単独でやれと言われたのなら、連絡は来ないはず。織斑秋介がなぜかいたのは、単に移動の途中で見られたとかそんなところだろう。同室だから異変を感じたのかもしれない。

 

 とすれば、しっかりと条件を守っているか、達成できるのかを見届けるはずだ。あれほどの天才ならば小型のカメラを付着させて監視していたり、衛星を乗っ取ったりもできるだろうし、不可能ではない。

 

 ………なら、兄さんがどうなったのかも知っているはずだ。

 

「ああ、なんとなくわかった。とにかくそれを聞きだせばいいんだな?」

「ごめんなさいね」

「私からも一ついいか?」

「答えられることなら」

「簪と姉さんはどうするんだ?」

「………今は私も自分のことで手一杯だから、しばらくは何もできないわ。皇への指示と支援もそうだし、気持ちの整理と覚悟も、ね」

「そうか」

 

 どうやらただ悲しむだけでは無かったようで安心した。楯無が崩れると更識全てがバラバラになってしまう。私も馬鹿ができそうだし、腹も括れる。

 

「楯無」

「?」

「思いっきり泣くなら今のうちだぞ、すぐにでも見つけ出してくるからな。ひょっこり現れた兄さんに泣き顔見られたいのなら話は別だが」

「あら、マドカはいいのかしら?」

「私はこれで三度目だ」

「………」

「織斑の両親に無理矢理連れられて、施設で再会したにもかかわらず共に逃げることは叶わなかった。少し、慣れてしまったのかもしれないな。だが、同時にまた生きて会える事も知ってる」

「……強いわね」

「ふん、何を当たり前のことを……。私は森宮マドカ、姉さんと兄さんの自慢の妹だ」

 

 入ってきた時のじめじめした気持ちをすっぱり斬り捨て、私は生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後になり、学園祭の準備が始まる…………前に、まずはクラスで何を企画するのか決めなければならない。

 

 山田先生が授業を行うコマを貰って、織斑は前に立ってクラス委員として全員の意見を纏めようと電子ボードに文字を書いていく。

 

 企画の流れとしては、クラス全員の意志を確認し整理したうえで書類を担任の教員に見せて許可を貰い、話を進めつつ役割分担や備品リストを作ったり、衣装や必要なものを買いそろえていく。十分な予行演習と試行錯誤を繰り返して、これからの一ヶ月を過ごしていくのだ。

 

「で、これが候補に残ったわけだが……はぁ、却下」

『えええーー?』

 

 このクラスにはかなり希少な男性が一名いる。一夏が行方知れずとなった今、限定的(・・・)に世界で唯一の男性操縦者だ。まあ、確かに酷い有様だったが一夏が死んだとは到底思えなかったので、限定的とする。

 

 真っ先に夜叉の装甲を見つけた時は全身が冷えた。指先まで凍りつくような感覚で、ピクリとでも動かせば根元から指が折れてしまいそうな、そんな寒さ。心まで死んでしまう前に拾い上げた腕には血がべっとりとついていて、耐えきれずに涙もこぼした。

 

 疲れ果てて泥のように眠って起きた時、何故かさっぱりとしていた。気付き、直感する。一夏は死んでなどいないと。キチガイになったわけでもない、何故か湧く確信はすっと身体に染み渡って暖かさを取り戻した。同時に、篠ノ之束が関与している事も理解する。

 

 偶然なのか、仕組まれたことなのか、その篠ノ之束が定期的に学園に来るだけでなく講義までしてくれるそうじゃないか。思惑までは分からんが、これはチャンスだ。質問があると一対一で話せる状況を作って聞きだせばいい。

 

 その為にも、絶対にクラス対抗ランキングで一位を勝ち取らなければならない。マドカ達四組とリーチェの六組とも共同戦線と行きたいところだが、他クラスよりも一夏個人と関係がある為に悲しみも深く、生きていると諭しても信じてもらえるかどうかは分からない。少なくとも、簪があの状態では無理だろう。一組に投資して、勝つしかない。

 

 出会いこそ悪かったものの、今ではそこそこに馴染めているし、親近感もある。ルームメイトのシャルロットには特に。仲間と言える皆のために頑張るのも悪くはない。

 

 真剣に考える。だが、私にはてんで分からないことばかりだ。何が客受けが良いのか、どうすれば客足が伸びるのか、一日の間にどれだけの客を受け入れ回転させるか、リピーターでも来れば御の字だがはたしてどうすればいいのやら。

 

 だがしかし、諦めることはない。私には優秀な部下がいるのだから。

 

『受諾。こちらクラリッサ・ハルフォーフ大尉』

『ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ。時間はあるか?』

『ええ、そろそろではないかとお待ちしておりました』

 

 学生であるが、それと同時にドイツ軍少佐であり、IS特殊部隊“黒ウサギ(シュヴァルツェ・ハーゼ)”隊長でもあるのだ。部下を頼ることは恥ずかしいことではない。むしろ、そういった各人の長所を知り、最大限に伸ばして活かすことこそが隊長の役目だと思っている。

 

 クラリッサは日本の文化に詳しい。人気のある漫画などを愛読しているようで、その影響で調べたり旅行で実際に足を向けたこともあると言っていた。言ってしまえば黒ウサギ隊随一の日本通なのだ。

 

『学園祭でのクラス企画でしょう?』

『うむ。よくわかったな』

『この時期は世界各国でも取り上げられますし、メディアのいいエサですからね。何より私はOGですから』

『ああ、そうだったな』

 

 ISの歴史はとてつもなく浅い。そしてIS学園はもっと浅い。まだ設立から十年も経っていない。私達が卒業する年がちょうど十周年だったはずだ。羽ばたく雛――OGは世界各国にて活躍をしており、大体は企業へ就職するか軍や自衛隊へ志願する。クラリッサもその一人だった。

 

『私の経験を語ることも大事でしょうが、恐らく通用しないでしょう』

『織斑の存在か』

『まさしく。一目見ようと来るでしょう。そして同じクラスである隊長はモロにその影響を受けます。加えて後にも先にも類を見ないほどの専用機が集まっていることから、様々な方面から人が押し寄せることも想像が容易い』

『そのとおりだな。故に、それを逆手に取り、大幅な収益が見込め尚且つ客を満足させて返すだけの企画を催さなければならん。絶対にクラス対抗ランキングで一位をとらなければならんのだ』

『ふむ、今年もデザートパスでしょうか?』

『いいや、篠ノ之博士直々に講習を受けられる特権だ』

『な、なんと………! それは負けられません!』

『そうだ。技術で一歩先を行くだけではなく、一夏の手がかりにもなる重要な人物だ。何としても接触できるだけの関係が欲しい』

『一夏君まで絡みますか………ならば、アレしかありません』

『ほう? 言ってみろ。お前が自信を持って言うのだからそれは素晴らしいアイデアなのだろう』

『IS学園はいわゆるエキスパートの集まりです。知識と体力だけでなく、ルックスやスタイルのレベルもそこらのエリートハイスクールでは太刀打ちできないほどに。今年も粒揃いですし、専用機持ちは雑誌にも載ることがあり認知度が高く、客寄せのプロパガンダには持って来いでしょう。展示などというものは当然ありえず、サービス業が良いでしょう』

『うぐ、接客か……愛想良くやるのは苦手だな。それで?』

『来客は学園生がもつ招待チケットでしか入場できません。殆どは家族や友人になります。バランスが偏りはしますが、男女が入り乱れるのです。一位を狙うのであれば、どちらにも需要があり、回転効率が良く、女子としての魅力と織斑君という特権を最大限生かせるものが望ましい。ここまでは隊長もたどり着くでしょう』

『ああ。だが、そんな条件を全て満たす理想的なものがあるのか?』

『あります』

 

 何のためらいも無くクラリッサが断言する。言葉だけだがはっきりと自信が伝わってきた。

 

 織斑とクラスメイトの嵐の様な騒ぎも余所に、ごくりと生唾を飲み込んで言葉を待つ。

 

『ズバリ――』

『ズバリ?』

『“コスプレ”です。営業は喫茶店形式が良いでしょう。学園祭であることを除いても、喫茶店であれば多少高い値段設定でも問題はありません』

『こ、こすぷれ? とはなんなのだ?』

『仮装ですよ。漫画やアニメの様なキャラクターが着る服だったり、医者が着る白衣やナース服、サラリーマンやOLのスーツ、成人した大人が学生服を着たり等々、例を上げればキリがありません』

『そ、それはどういった効果があるのだ?』

『そうですね…………一夏君がいます』

『うむ』

『いつもの学生服ではなく、我ら黒ウサギ隊の制服を着て、隊長は一夏君の直属の部下として可愛がられているとします』

『おお……!』

『そしてこう言うのです「ラウラ、今日も頼りにしているぞ。背中を任せられるのはお前しかいない」と』

『ごふぁあっ!!』

『た、隊長!?』

 

 ……くっ、な、なんだ今のは!? クラリッサが話したはずなのに、勝手に一夏の声で聞こえてきたぞ! それに、あの一夏が私にそんなことを言うのか……。

 

『だ、大丈夫だ。続けてくれ』

『え、ええ。先の例は隊長のために特化したコスプレと言えるでしょう。しかし、今回の喫茶店に軍服は似合いません。故に、私は執事を推します』

『執事というと、貴族が召し抱える使用人の様なものだったな』

『一夏君で例えるならば………「お嬢様」とにっこりほほ笑みながら隊長を崇め、一つ返事で全てをこなしてくれる自分だけの騎士でしょうか』

『ぐわああああああああああああああああぁぁっぁぁぁっぁぁ!!』

『た、隊長おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 な、なんという破壊力だ……想像しただけでも、死ねる! いや、濡れるッ! 今のは零落白夜よりも恐ろしい一撃だった。

 

 これが、これが“こすぷれ”かッ!!

 

『どんな兵器よりも鋭く、それでいて柔らかく暖かい。これが、“こすぷれ”というものなのか……!』

『そう、多くの者が知らない故に知られることのない秘密兵器。それがコスプレなのです!』

『流石だ、クラリッサ。お前の上官であれることを誇りに思う』

『光栄です』

『男子……織斑への対処は分かったが、女子はどうするのだ?』

『それは一概には言えませんね。コスプレの数は星の数に及ぶほど多く、道は長くつらく険しいのです。各々にあった服を身につけ、なりきることが一番大切なのですよ』

『相性もあるという事だな。そのあたりはクラスメイトの方が詳しそうだ』

『でしょうね。ファッションに多感な年ごろの娘は、着せ替えたり着たりと、服装に対して大きな関心と興味を抱くのです。後は仲間に任せて、隊長も己が纏うにふさわしい服を探してみてはどうでしょうか?』

『うむ、実に参考になった! これからもよろしく頼むぞ!』

『はっ!』

 

 それで通信を終えた。大きな衝撃とダメージを負いはしたが決して無駄ではない。これは大きな風を吹き起こすだろう。

 

 ………しかし服か。私も着飾る方がいいのだろうか?

 

 まあいい、それは後だ。この一年一組を一位に輝かせるべく、私は切り札(ジョーカー)を切る!

 

 丁度、膠着状態になった今なら私の声も通りやすく、行き詰った感の漂う雰囲気ならば、新たな視点からの意見は取り入れやすい。

 

 ボードには………語るのは止めておこう、織斑のために。

 

「織斑」

「ん? なんか良いアイデアがあるのか?」

「“こすぷれ喫茶”はどうだ?」

『え?』

 

 ………なんだ、私がそんなことを言うのはおかしいか? ……まぁ、そうだろうな。

 

「各々が好みで似合う服を着て、接客をすればいいだろう? 好ましくないならば厨房で調理などをすればいいし、宣伝がてらに校内を練り歩いて他企画の偵察もできる。注文を聞いて運ぶだけの簡単な仕事だ。我々でも十分にこなせる」

「うーん………コスプレねぇ。ガスとか食糧とか備品は聞けば良いとして、服はどうする? 多分、学校は用意してくれないから、予算で布とかを買って縫う事になると思うけど」

「私やるよ!」「私も!」「裁縫とか得意だよ~」

「そっか、とりあえずは何とかなるのか。じゃあ、コスプレ喫茶でいいか?」

「むむむ、出来レース王様ゲームも捨てがたいけど………コスプレでゴスロリラウラちゃんを見るのも一興か」「猫耳メイドしてくれる子がいるならね」「スライムに服を溶かされて危ない感じのメガネ系委員長を誰かがやってくれたら考えなくもない!」

「そ、その辺は話しあって決めてくれ……。じゃ、俺達はコスプレ喫茶で通してみるよ」

 

 こうしてあっさりと一組の企画が決まった。

 

「ラウラ」

「む?」

「ありがとう。お前のおかげで俺は生きていられそうだ」

「そ、そうか………」

 

 かなり真剣な目で礼を言われた。

 

 まあこれでランキング一位へ大きく前進したな。あとは我々がどれだけ努力するかにかかっている。篠ノ之束の授業のために、一夏捜索のために。できることをやるしかない。

 

 あとは………

 

(簪……蒼乃さん……)

 

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