だいぶ悩みました。だってこの二人原作じゃ強いほうじゃん?
「くっ……」
これで二十連敗か。織斑先生の凄さを感じるものの、今の目的にそぐわない結果に頭が痛いな。
キャノンボール・ファストで使用するパッケージは、姉妹機に使われていた高機動型をそのまま使う為、特に慣らす必要はない。開発テストには私もよく付き合ったものだ、癖や特性など熟知している。
シュヴァルツェア・レーゲンは白式や夜叉のように素早く動き回るタイプではなく、どっしり構えてじっくり戦うコンセプトの元に作製された機体だ。その為その他の機体に比べれば重量もあり、そんなレーゲンを他機と同等の速度を出させるこのパッケージの出力は並のそれとは訳が違う。そして火力まで強化出来るのだから、我がドイツ研究者はよくやってくれている。
ただし、まだ届いていない。その為、変に身体を動かすよりも、基礎的な戦闘力向上に努めることにした。シュミレーターを使って、全盛期とも言える第二回モンドクロッソ時の織斑先生を相手にしてみたのだが……結果は見ての通りだった。
学園には様々な最新機器が導入されており、このシミュレーターもその一つだ。実戦では到底使えない様な試作段階の武装等の仮想実験装置として、実際に作成する前の武装をデータで再現してからテストするのが本来の目的である。作ってから試した場合に行う修正の時間とコストを削減する為だ。
そのついでとして、仮想模擬戦機能も付随している。あくまでも“ついで”であるため、高性能なものではないし現実の様に思い通りに動かす事はできないが、それを補って尚あまりあるプラスの要素がある。
それが、過去の公式戦や記録された機体データと搭乗者情報を入力すれば、様々な組み合わせの敵と戦う事が出来る、というものだ。
私の場合は、全盛期とも言われた織斑先生と愛機『暮桜』。
だが、この機械に一夏や織斑秋介の情報を入力すれば、暮桜に一夏や織斑秋介を乗せて戦うことも可能になる。しかし、大体の組み合わせは失敗になるが………。当たり前の話だが、機体を熟知し、コアとの絆があってこその実力なわけで、それを別人にすりかえたところで同じ実力が出せるはずが無い。そんな芸当が出来るのはそれこそ織斑先生か、一夏と蒼乃さんぐらいだ。見ての通り、本当にオマケである。
それもこれも要は使い方だ。現役を退き始めた第一世代、第二世代の専用機で活躍した搭乗者達と戦える機会はもう訪れることは無い。先生方にも企業や国家所属だったという人は多いが、誰もISには乗らない。彼女らの仕事は乗ることではなく授業の内容を考え、正しく次世代の子供たちを教育することだから。少し前に山田先生がラファールでちょっとした訓練をしたそうだが、ソレ自体がレアである。織斑先生などもっての外。
使い方次第ではかなりお得なこのシミュレーターだが、実は殆どの生徒は存在すら知らない。私も軍でそう言うものがあると聞いていた程度で、実物を見たのはここが初めてだ。学園は仕入れたことを一応掲示板や生徒専用のサイト等でお知らせを出しはするものの、誰もそこまで見てはいないので認知されないまま稼働し続けているとううわけである。おかげ様でいつ来ても貸切状態で気兼ねなく使えるから私は満足だが、勿体ないな。
説明はさておき、キャノンボール・ファストに一年専用機所持者が参加すると発表があった日以来、ずっとここに籠っては過去のエース達相手に挑戦しているわけだが………勝ち星は一つも無い。織斑先生だけでも今日だけで二十、通算で見れば軽く百は負け続けており、他にもヴァルキリー――モンド・グロッソ部門最優秀賞受賞者――にも挑んでは居るがやはり勝てない。私は最新の第三世代で、相手は旧型の第二世代だというのに、である。
良いところまでは行くのだが………という言い訳もできないほどに、私は叩きのめされていた。
「私が弱いのか、それとも相手が圧倒的に強すぎるだけなのか?」
「そんなおもちゃで遊んでいるからだ」
「き………織斑先生」
休憩がてらに席を離れてドリンクを飲んでいると、いつの間にか洗われていた先生に声をかけられた。相変わらず謎の竹刀を握っている。
しかし、これをおもちゃと言いますか。
「なぜそれを使っている?」
「これは戦うことのできない相手との戦闘を経験することが出来るからです。現に、先生方の様な引退された方のデータも入っているため、便利であると考えます」
「その通りだが、それでもやはりそれはおもちゃだよ。私から見ればだがね」
竹刀の先でこつんと機械をつつく。コン、と音が響くだけで特に何か起きるわけでもない。
「実戦と訓練が全くの別物だということは、お前なら言わなくとも分かるだろう?」
「はい」
訓練はとにかく体力をつけて、技術の向上をはかり、知識を深めるために毎日行い続けた。一日休めば三日の遅れをとると耳にタコが出来る程酸っぱく言われている。
実戦は訓練とは何もかもが違った。誰かが教えてくれるわけでもないし、決められた通りに事が進む事も無い。現状を把握するだけで精一杯だし、死なない事ばかり最初の頃は考えていた。いわばイレギュラーの塊。
「これが勝てないと判断すれば、百回やろうが千回やろうが結果は同じだ。決められた通りに事が運び、定められた結果に集束する。それに、全く感覚の違うもので何時間かけようがただのゲームでしかないぞ? モデルガンを使って実銃が撃てるようになるか?」
「……なりません」
「そういうことだ。これは私個人の考えだが、あながち間違っているとは思わない。実機を動かす事だけが訓練じゃない、もっと色々やってみるといいぞ。折角の
「なるほど」
実戦で培ってきた感覚が損なわれるのは勿体ないし、自分に弾丸や刃が迫る緊迫感も無いのでは確かにおもちゃだ。有能な機械ではあるが、今は使いどころではないらしい。これはこれで良い経験を積めたので後悔は無いが。
「もう少し自分で色々と考えてみようと思います。ありがとうございました」
「ん、そうか」
少し寂しそうな表情を一瞬だけ見せたが、考えを改めたように笑顔になると踵を返して去って行った。
先生を見送った後、手に持っていたドリンクをゆっくりと飲んでからもう一度シミュレーターを起動させた。さっきまではこの機械内にあるレーゲンのデータを使用していたが、今度はコアを直結させて最も新しいレーゲンのデータを使ってもう一度織斑先生と模擬戦を行う。
今の私では到底過去のエース達には届かないだろう。それこそ千回やったところで勝つのは不可能に近い。だが、千回やってダメなら万回やるまで。
その為にも、現状の実力と今までに比べてどれだけ成長したのかという伸び具合を知る必要がある。自己暗示に近いものがあるが、明確なプラスの結果は人を伸ばす作用があることを経験したからだ。
「………ふむ。なるほどな」
結果は先程と変わらず負け。連敗記録を更新しただけだが、得た物はある。むしろさっき以上に大きい。
第三世代型。織斑先生はここを強調していた。
オールラウンドな第二世代に比べて第三世代は尖った性能を持っている機体が多い。格闘戦機動戦に特化した白式や、速度を追い求めたステラカデンテはいい例だろう。第二形態へと進化した白式は短所である防御面と悪質な燃費を改善するのではなく、更に長所を伸ばし短所を伸ばした。
万能機とは程遠い第三世代は、各々の特徴を上手く活かさない限り先は無い。私のシュヴァルツェア・レーゲンの場合だとAICの他ない。得た物は、ここにある。
シミュレーターに記録されている私のデータは、編入したばかりの頃のタッグマッチトーナメントがベースになっているはずだ。VTSによって外されたレールカノンがあることからして間違いない。今とは重量も違えば武装も違う、似ているようで違う機体で今まで戦っていたわけだ。勝てなくて当たり前だな。
さて、編入したばかりの私と、現在の私とで違いを比較してみたわけだが………。
「やはり、範囲が広がっている」
機体に関しては大きな変化は無い。整備中に勝手に弄るほどの技量は無いし、他人に任せたことも無いので、違いと言えば先のレールカノンの有無だろう。
広がっている、と言うのは勿論AICのことだ。これの処理はコアに頼る部分もあるが、大半は搭乗者である私が行う。未熟であれば発動までの時間は長く、効果範囲は狭い。熟練者であるほど、発動までの時間は短く効果範囲も広がる。
機体が完成してから一年と経たないが、私はこいつが誕生してからずっと共に戦い続けてきた。かけた時間とAICの扱いならば誰にも負けない自信がある。カッコ良く言いかえれば情熱だ。それがこの結果をもたらしている。
約半年、この間で発動までの時間を短く、効果範囲を広げることに成功していた。私自身これの扱いづらさはよく知っているので、理論上では慣れれば上手く扱えるようになるとは聞いていたものの、半ば信用していなかっただけに驚きと喜びが湧き上がる。
そうだ、鍛えれば伸びるのだ。特訓しない手は無い。
いつの間にかズレが出ていた訓練メニューに修正を加えつつ、私はアリーナへと向かった。
*********
「うぐぐ………」
「だ、大丈夫?」
「も、問題ない。ドイツ軍人はこの程度の疲労に屈しな、い…………」
「突っ込みどころが多すぎて困るんだけど」
アレだけ長時間AICを使ったのは、何だかんだで初めてだった。今までは扱いに慣れる程度の訓練しか行わなかったツケがここに回ってきている。ワイヤーブレードや、レールカノン等の最新武器を如何に上手く扱うかに執着し過ぎたか……ぐぅ、痛い。
発動には雑念を払って集中しなければならないのがAICの弱点とも言える部分だ。戦闘中にそんな悠長なことはしていられないので使いどころが難しい。だが、使いこなして短くとも三秒未満で出せるようになれば戦術はグッと広がるし、その頃には効果範囲も今とは格段に向上しているはずなので、以前ハッタリをかけたように本気でアリーナの端から端まで届かせる日が来るかもしれないな。
「何してたのさ、ラウラ」
「CBFに向けての特訓以外に何がある?」
「でもラウラがこんなに疲れるって相当だよ。無理のし過ぎはダメだからね」
「勿論だ。人間は身体が資本だからな」
「もう! そう言うこと言ってるんじゃないってば」
「分かっている」
「本当かなぁ?」
「私を誰だと思っているのだ、全く」
ため息をついて、シャルロットは最近本棚に増えた工学系や銃火器系のマニア向け雑誌を読む作業に戻った。
………そう言えば、シャルロットはどのような訓練をしているのだろうか?
……気になる。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓
自室でティーンズ向け雑誌を読みながらラウラとおしゃべりしていると、電話が掛かって来た。
「シャルロット、電話が鳴っているぞ」
「あ、うん」
ベッドから降りて携帯電話片手に部屋を出てから画面を見る。
「………本社から? CBF関連の事かな」
相手先はデュノア本社からだった。夏休みもそろそろ終わりだし、学園に専用機を出している国や企業は専用パッケージやら何やらの総仕上げの時期に入っている頃だろう。ウチの会社も例にもれず、高速機動パッケージが出来あがっているはず。
「もしもし、シャルロットです」
『日本では……こんにちはかな?』
「お父さん? 久しぶりだね。うん、こんにちはだよ」
『そうか』
てっきり技術部の人かと思ったけど、社長である父だった。最近はメールでのやり取りしかしていなかったから、声を聞くのは久しぶりかも。
『新しいパッケージが完成したから、早速そっちに送ったぞ』
「ホント? どう?」
『それは見てのお楽しみだ。そいつは凄いぞー、何せイタリアのテンペスタや日本の白紙だって目じゃないからな』
「ええっ!?」
ヨーロッパ各国で活発的なIS研究国と言えば、ドイツ、イギリス、イタリア、フランス、オーストリアが代表的だ。不動の最速記録を持ち続けているイタリアは、特に浮いた国であり、テンペスタは黎明期から確立された一流のブランドと言っても過言じゃない。おいそれとテンペスタは目じゃないなんて欧州人は言えないんだけど………冗談じゃなさそうだ。
それに加えてあの森宮先輩まで目じゃないと来た。織斑千冬を超える天才だとか、次期ブリュンヒルでとか色々と彼女を称える噂話は絶えない。それに、あの森宮君や妹のマドカ、さらには生徒会長までもが尊敬する人物だっていうのに。
「一体何を作ったのさ、本当に大丈夫だよね!?」
『多分』
「多分!?」
『まぁそんなことを言えるのも今のうちだ』
「喋れない身体になるとかいうオチ!?」
『違う違う、出来の素晴らしさに感動するだろうと言ったのさ』
「………ふぅん」
『さては信用していないな?』
「そりゃ、まぁ」
娘である自分が言いたくは無いが、今のデュノア社は落ち込んでいる。第三世代型の専用機を開発できていない事が何よりの証拠だし、それを言いかえれば技術力が低いということ。いきなりテンペスタを越えるようなパッケージを作成できるとは信じられない。
『それもこれも見て実感してからだ。届いたら早速感想をよこしてくれよ』
「分かったよ。いつ頃になる?」
『そちらの時間で今日明日だろうな』
「うん。期待しないで待ってるよ」
『そうするといい。アレは、ラファールの完成系であり終点でもある』
*********
ラファールの特徴と言えば何を思い浮かべるだろう?
量産機として大ヒットしたラファール・リヴァイヴは、同時期に開発され同じく量産機として定着した打鉄と大きく違う点は、汎用性の有無とそこからくる構造の違いだ。
ラファールのウリはその汎用性の高さにある。性能を五段階で評価するなら全てC(平均、標準)といったところか。これといった主な目的が無い分、自分の思うままに手を施す事ができ、用意次第ではあらゆる状況に対応できる。そのかわり、当然だが尖った性能の機体相手には及ばない。口の悪い言い方をすれば器用貧乏かな。
発祥国日本製の打鉄は、日本の文化や思考が強く反映されている。片刃のブレードではなく刀を作成していることや、装甲が武士然とした鎧だったり等々。近接戦に重きを置いて守りを固めた分、射撃等に難ありとされる。
量産機として軍配が上がったのはどちらか、答えは明白だ。
そして、ラファールの汎用性を引き上げるために幾つか追加武装やパッケージが直ぐに開発、販売された。機動型、砲戦型、近接型、支援型、工作型……まぁ、たくさんある。後続含め、あらゆるパッケージとの互換性を持ち、問題なく運用できる利点は現存する機体の中ではラファールだけだ。
言ってしまえば、これらがラファールの……デュノア社の武器である。万人に合うモノ、それを実現するだけの効率の良い拡張領域の使用方法、これならばどこにも引けを取らない。森宮君の夜叉だけは謎だけど。
今から新しい分野を開拓する余裕はウチにはない。元々僕がここへ送られた理由を思い出せばわかるけど、今こうしている間にも会社は苦しんでいる。手を加えるならここだろうけど……。
「なるほどね……確かに。これは完成系だよ」
専用機として使用するのであれば、人に対する汎用性は必要ない。そこに割く容量すら全てを一点に集中し、行きつく先まで辿りついた形。
「《
電話のあった日から一晩明けると、会社一の技師と馴染みの研究者がぞろぞろと現れて僕に割り当てられた整備室まで連れ去られた先に、このラファールは居た。
お父さんが送って来たのはパッケージなんかじゃない、デュノア製第三世代型ISだった。
極限まで軽量化された橙の装甲は見ただけでも分かるほど薄く、酷く脆そうな外見をしている。電話で聞いたような凄い性能が出せるような機体にはお世辞にも見えない。全体的に華奢で頼りない感じた。
それもそのはず。セ・フィ二に搭載された唯一の機能を最大限に活用するにはこうするのがベストだから。
「見ての通り、セ・フィ二には一切の武装を搭載していません。というか出来ません。いえ、そもそも−−−」
「必要ない、よね。これ」
「搭乗者の実力が伴えばですが」
「全くだよ。高速切替ができるていっても程があるんじゃないかなぁ」
今目の前にあるセ・フィニは相当弱い。ラファール・リヴァイヴに若干届かない程度の弱さだ。
ただし、新機能を上手く扱えれば話はガラリと変わる。どんな相手だって、どんな場所だって、たとえどれだけ過酷な環境であっても常に100%の性能を引き出せるんだ。
『クレアシオン』。母国フランスでは創造という意味を持つこの機能の名前の通り、全てを創り上げなければならないらしい。
スーツに着替えてセ・フィニを装着する。最新のカスタムⅡのデータは常に本社へ送っていたので、コアを移植するだけで手間を踏まずに起動することが出来た。
「気分はどうですか?」
「違和感は無いけど、慣れるには時間がかかるかなって感じです」
「ふむふむ、では早速クレアシオンの起動を」
「はい」
武装欄は空。クレアシオンは武器ではなくシステムとして組まこまれているようだ。苦もなく立ち上げる。
「うわぁ………」
これは……。
「もう一度聞きますが、気分はどうですか?」
「一気に負荷が掛かったような……若干身体が重たいし、いつものクリアな感じがしない」
「なる程。システムのオンオフは出来ていると」
「オンオフ? これって仕様なんですか?」
「ええ」
話しつつクレアシオン起動後に増えたタブの一つを開くと、そこには無数と言ってもいい文字と数字の羅列が。一行の幅は狭いくせにスクロールバーは小さすぎて見えない。
「この沢山入っているのがパーツってことですか?」
「ええ。何か何種類入っているのかを読み上げれば日が暮れる程度には入っていますよ」
「えぇ…」
「それで大体容量の三分の一で、実際はまだまだ詰め込めます」
「………」
もう返事したりリアクションするのも面倒というかバカみたいに思えてきたよ。
「このクレアシオンは領域内にある部品で作れるものであれば何だって作れます。家電から榴弾砲、理論上は核弾頭や衛星砲も」
「そんなところまでは聞いてないけど……じゃあ、例えば建設用具を積めばビルが建てられるし、消火装置を積めば消防だってできるってこと……ですよね?」
「勿論」
「つまり、何でもできると」
「ええ。ラファール・リヴァイヴを含めた現行の機体は主な使用用途がある程度定められ、状況や環境に応じた装備換装のパッケージを事前にインストールしておかなければなりません。しかし、それでは戦局がコロコロと変わる場面において適切なパッケージへ換装する暇も領域に空きもないはずです」
銀の福音事件を思い出す。授業の内容が内容だけに、僕らは各々のパッケージを使って福音と戦った。上手な作戦と、森宮君という圧倒的な実力者のお陰で捕獲することはできた。もしも、森宮兄弟が居なかったら何らかのアクシデントに対応できず負けていたかもしれない。例えば、第二形態へと移行してタイプががらりと変わるとか。そうなれば作戦もめちゃくちゃだし、せっかくの追加装備も役に立たず邪魔な鉄くずになることだってあり得ただろう。
「セ・フィニは違います。部品だけを積み、クレアシオンを使いこなすことによって戦況が変わろうと目的が変わろうとも即時に対応することができます」
「装甲も、ブースターも、武器も、レーダーも、すべて自分で作り上げ、最も現状に適した装備へと即時対応。部品とシールドエネルギーが尽きない限り活動し続ける、か。どこかで聞いたことあるような……」
「イメージとしては、森宮蒼乃の白紙です」
「あー」
言われてみればそうだ。白紙唯一の武装、災禍は無数のナノマシンとクリスタルを結合して思い描く物を想像するというもの。これが及ぶ範囲を拡大して、ナノマシン代わりに現存するパーツを積み込んだのがセ・フィニってところかな。白紙は確かに万能機と言える機能を備えていたけど、あれは搭乗者の能力に依存してしまっているために真の意味で専用機だ。
「そこで、です。セ・フィニを乗りこなす上で求められるものとは?」
「……創造するだけの知識かな」
「まったくその通りです。けったい名前を付けましたが、クレアシオンは創造するというよりも組み立てる機能なんですよ」
銃がほしい、こんな装甲を装備したい、そう思ったところでぱっと理想の物が現れるわけじゃない。領域内に武器そのものがないからだ。状況に応じた装備を部品で組み立てる。これがクレアシオンの仕組み。
だから、銃が欲しいなら銃の詳しい内部構造を知り尽くさなければならない。ネジ一本、バネ一つ掛ければ機械は正常に作動しなくなるのだから。
「組立自体は簡単ですよ。必要な部品のリストアップ、組立はコアのサポートを受けられますからそこまで時間はかかりません。なので、これからはこれから使用することになるであろうモノそれぞれに精通すること。言った通り、ここに入っているのは部品ばかりなので、これを怠るととんでもない結末しか待っていませんので」
「え、ええ。確かに」
要するに、クレアシオンで作れそうなものは全部頭に入れておけってことだよね。作り出すものによっては確かにステラカデンテも白紙も超える性能を出せるかもしれない機体だ。
「じゃあ、カスタムⅡはどうするんですか?」
「十全なメンテナンスの後に解体。すべてのパーツを余すことなくセ・フィニへと搭載します」
「……そっか」
これからも一緒に頑張ってくれるんだね。
「やる気に火が付きましたか?」
「うん」
「ではこれを夏休み期間中に熟読しておくことです」
「ファッ!?」
そうして渡されたのは日本で有名な国語辞典や法典書並みに分厚い本。少なくとも十冊以上はありそうなんだけど……。
残り三分の一の期間で、これだけの量を読むなんて流石に無理があるんじゃないかなぁ。
「いいですね?」
「え、ちょ……」
「い い で す ね ?」
「ハイ」
どちらにせよ、頷くしかない僕だった。