無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

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伏線回収を数回に分けてやっていきたいと思います。


65話 三姉妹

翌日。久しぶりに賑やかな朝食を終えた俺達は桜花と本音様、虚様を連れてとある一室に集まった。更識の人間のみとなれば学園では生徒会室しかない。集まった理由は勿論、今までとこれからについてだ。

 

夏の銀の福音事件の際に俺は失踪と見せかけて亡国機業へ一時的に加入。そこには姉さんやオーストラリア代表のフラン、そして主犯である束さんの意図があったからこそ承諾し、学園とは敵対関係に。地道な調査と従順な一パイロットであると擬態を徹底し、そしてようやく日の目を見たわけ。

 

これからについてもある程度は共有している。今日束さんに集められる前に話しておこうと思った。

 

全員分の飲み物とお茶受けを用意して、パイプイスに腰を下ろす。会長の札が立てられた机には楯無様が座り、傍には虚様が立つ。応接用のソファの上座に簪様が座り、同じようにマドカが立つ。姉さんは簪様の隣に腰掛け、桜花と本音様が空いた場所に座り、俺は少し離れた場所で落ち着いた。

 

「じゃあ順序良く、説明してもらえる?」

「はい」

 

借りたプロジェクターに夜叉から情報を転送し投影する。俺がまず映したのは、無人機戦の終盤からだ。

 

「まず、篠ノ之束博士から依頼を受けた俺はマドカに伝言を残して銀の福音を追いました。回収に来ていたBR十二機と交戦し、鹵獲機を除いた全機を落とし帰還しようとしたところで織斑が追って来たらしく合流。そのままとんぼ返りする途中で待ち伏せた部隊に捕まったので、私が殿を務め福音を担がせた白式を先に逃がしました」

「そこで白式がセカンドシフトか。襲ってきた薔薇って機体は?」

「あれは私と同じ施設で改造を受けた子供の一人の様です。かなりの薬品を投与されていたはずですが、見ている限りでは正常に成長できたようです」

「BRって亡国機業の機体だったんでしょ? それまでに面識は無かったの?」

「所属が違いますから。スコールチームは実働IS部隊として存在し、所謂切り札的存在でした。世界各国を転々としていたことと、BRの存在自体が伏せられていたので……」

「そもそもなんだけど、どうして束博士の依頼を?」

「当時はBRの存在を知らなかった私は、アレがISとは別系統の技術で動いていると考えていました。丁度無人機から頂戴したコアがあったので、その技術を活かした機体が造れるのではないかと。まぁ、それは桜花の刻帝に使用されていますから、その後に色々と聞いた結果成功してもあまり意味は無かったんですが」

 

まだ出だしの部分だと言うのにあっちからこっちから声が飛んで来る。

 

「そこでの戦闘で私が撃墜されそうになった時、助けてくれたのが姉さんとオーストラリア代表のフランでした。大破寸前でなんとか凌いだ私はそのまま二人に従って海中に潜んでいた束さんのラボに回収してもらい、束さんと話した末に提案に乗ることにしたのです」

「提案ね……蒼乃さんはずっと前から知っていて、協力していたわけ?」

「そう」

「いつから?」

「代表候補生から」

「……じゃあ桜花は?」

「蒼乃さんが夏休みからあまりにもそわそわしているので問い詰めたらぽろっと話してくれましたわ」

「え?」

「……」

 

すっ、と顔を背ける姉さん。楯無様や簪様からのジト目が突きささるが知らぬ存ぜぬを突きとおす振りを続けた。いや、そう言う時の姉さんの表情マジでわざとらしいから。分かるんだって。汗かいてるし。

 

「私も知ってたよー」

「ほ、本音まで……?」

「私と一緒に問い詰めたので」

「ええっ!? だ、だってあの時……」

「嘘言ってないよ? 大丈夫ってちゃんと言ったよ?」

「……それはそう言うでしょ」

 

思わぬ伏兵に驚くが、この人ならありえるなと心の中で頷く。ケーキのフィルムに着いた生クリームを丁寧に舐める様な子供っぽい性格だが、子供らしく直感がとにかく鋭い。もう超能力じゃないかってくらい鋭いのだ。姉さんは多分、桜花の理詰めよりも本音様から図星をくらって見破られたと見た。この一族、とにかく侮れない。

 

「じゃ、じゃあ目的を聞いてもいいかしら?」

「あとで一夏が言う」

「そ、そう」

 

けんもほろろ。楯無様が立場上偉かろうが姉さんの前では大体こうなる。姉さんと同い年の虚様にはかなりフレンドリーなんだけどな。

 

「蒼乃」

「今言っても分からない」

「あなた三言くらい足りないのよ」

 

しかし当の最年長二人はこのように仲良しなのだ。人間関係の複雑さが学べる環境だなぁと中学生のころは思っていたっけ。

 

このままだと脱線しそうだったので強引に話を進める。

 

「で。束さんの目的なんですが……その前に"エイジェン"という組織について話しておきます」

「"エイジェン"?」

「亡国機業の母体です。昨日束さんがあのセイバー……隊長機を宇宙人と呼んでいたことを覚えていますか?」

「そういえばそんなことを……。じゃあそのエイジェンは宇宙人達のことを言うんだ」

「どうでしょう? 一枚岩とは言えませんから。一先ずBRを持って敵対している勢力を総じて呼んでいる、そう理解してもらえれば結構です。彼らは今からおよそ百年前に月へ追放された元地球人の子孫です。人種も言語も様々で当時は各々の政府から疎まれて―――」

「ちょちょちょっとまった!! 百年前に宇宙進出だって? 兄さん、今の技術でも衛星を打ち上げるのが精一杯なんだよ? それに百年前って言ったらロケットの試作機が開発されたばかりの頃じゃないか」

「ああ、マドカの言うとおりだ。だが現に彼らは百年前に地球上から一斉に消えた。どれも死亡扱いにされて、それら一族全員が宇宙に放り出されたんだよ。というのが束さんと姉さんの推測なんだ」

「姉さんの?」

「……この島には、立ち入り禁止の森林地帯がある。簪とマドカは見ているはず」

「う、うん」

「何があった? 教師も立ち入りを認めず、近づくだけで罰則を与えられるそこに」

「篠ノ之束のラボ……じゃないか。古びた看板とか、注連縄が巻かれた御神木とか、ある程度整備された道や階段。無人島を開拓したって聞いていたのに、どこもかしこも人の手が入っていて、その全てが風化していた」

「そう。まるで百年放置された様な、寂れ」

「つまり、ここに住んでいた日本人の種族が当時の政府によって間引かれ、無人島へと姿を変えたというわけですわ」

「……そういえば、確か簪が『間引かれた』とか言ってたな」

 

ああ、簪様の予感めいた力か。しかし本当にすごいな。そこまで口にしてようやく多少は信じてもらえた。それだけ簪様の予感は当たるし、更識が信頼を置いていることの証左でもある。俺だったら絶対にそう言われるまで信じない。一番突っ込まれそうな部分が上手く運んだ事に胸をなでおろした。

 

「そのエイジェンの先祖たちは世界中から集められ、秘密裏に打ち上げられたシャトルに詰め込まれて宇宙に放り出されました。地球から離れていくにつれて電波は届かなくなり、交信が切れたことで死亡として処理されたのですが、驚くことに彼らは生き残っていたのですよ。自力で月面へ到達し、自力で居住スペースを確保し、たくましく生きていた。そんな彼らは、地球への復讐を誓っています」

「当然」

「まぁ、確かに」

 

なぜその人達がロケットに乗ることになったのか、束さんは語ってくれなかった。だが、事実として彼らは纏めて宇宙に放り出されている。裏切られたのか、それとも無理矢理だったのか、なんにせよ恨むには十分過ぎる状況だろう。

 

「その動きを掴んだ束さんが動いたんです。彼らの技術力の吸収と、復讐と言う名の征服を防ぐために。自分の研究が~とかちーちゃんの為に~って具合に動機は超個人的な理由ですけど、一応地球を守る為に動いてくれています」

「それが、束博士の計画ってことね」

「ええ。今まではその為の準備段階でしたが、昨日のあの瞬間から実行段階に移行しました。地球上の亡国機業全支部で対エイジェンのクーデターが起きていることはもう耳に入っているかと思います」

「朝からひっきりなしに電話が鳴ってるわよ、まさかの内部分裂だーって。そういうことね」

 

「制圧開始」という束さんの宣言が合図だった。それまではただの時間稼ぎで、束さんがあの時連絡を取っていたのは学園外の部隊と言うよりは全支部の味方への合図を送る準備だったってオチ。

 

「というわけで、現在亡国機業は実質束さんとスコールの私的な武装集団となっています。少なくともエイジェンの問題が解決するまでは対立することはありません」

「じゃあ兄さん、奴らは味方と見るべきか?」

「利害関係の一致で組んでいるだけだ。過度の信頼は良くないだろうな」

「わかった」

 

俺らからすれば少々複雑だ。聞けば施設を破壊したのは亡国機業と聞いているしマドカを養ったのも彼らだが、俺の腹に穴を開けたのが連中というのも事実。だが、その一幕が無ければこうして夜叉に乗っていることも無かったしここまで正常な人間に近づくことも無かった。マドカとの再会もありえなかっただろう。

 

「亡国機業で一つ聞きますが、よろしいですか?」

「はい」

「なぜ彼女らは篠ノ之博士に協力するのでしょうか?」

「ああ」

 

虚様の問いは絶妙なところを突いていた。

 

彼ら彼女らは世間一般で言うテロリストに当たる。一国の軍隊にも及ぶ人員と武器弾薬、そしてISを持ち月の技術まであるのだから戦力は計り知れない。そんな彼らがなぜたった一人の科学者に協力するのか。亡国機業という組織そのものが謎に包まれているからこそ、彼らの目的が見えないのだ。

 

「束さんの最終的な目標は宇宙進出と開拓にあります。その為にISが開発されましたが、社会をひっくり返すような大きな問題がありましたね」

「女尊男卑、ですか」

「そうですね。では宇宙開発に向けて性別の縛りがあるのは、とても無駄なことに感じませんか? それだけで作業員が全人口の半分に区切られ、さらにISを使うとなればもっと減ります」

「なるほど」

 

天災と言えども限界があることを束さんは理解している。ISの雛型を作製したのは彼女でも、それを普及発展進化させてきたのはその他大勢の人間で、彼女の言葉を借りるなら有象無象だ。

 

一つ、大きな道標を立てることで世界がその道を辿ってくるだろうと考えているのだろう。

 

「その言葉通りなら、何時かISに男性が乗ることが常識になる世界が来るってこと?」

「らしいですよ。確信した様子でした。ね、姉さん」

「束曰く、まだ小学生並だと言ってた」

「小学生並? ……あぁ、そう言うことね」

「お姉ちゃん分かるの?」

「まだISが開発されてから八年しか経って無いわ。人間で置き換えるなら、小学生って事」

「それで?」

「八歳っていったら小学二年生くらいかしら? その頃に男女という違いが分かってもどう違うのかなんてはっきりと理解してた?」

「どう、だろう……」

「つまりはそう言うこと。多分明確な区別が付いていない=男性と言う生き物を上手く理解できていないんじゃないかしら? 女性が造ったから人間と女性が一括りになっていて、男性が結びついていないのよ」

「じゃあ兄さんとアイツは?」

「それが例外でしょうね。男性が女性と同じ人間で、性別の違いを理解したコアが認識して乗れている、とか?」

「おぉー。じゃぁ博士に協力してエイジェンを追い返せば男性も乗れる日が来るってことなのかな」

「そうなんじゃない? 私の推測でしかなかったけれど、コレが本当なら博士は確信があって協力を迫ったのでしょうね。断る理由なんてないわ。ISの権威がそう言うのだから」

「おぉー。さすがお嬢様」

 

本音様がだぼだぼの袖を垂らして拍手を繰り返す。織斑は分からないが、俺の場合は最初から意思疎通が出来たからどうなんだろうと思っていたが、それっぽい気がする。

 

「じゃあ整理するとー、束博士は宇宙人に邪魔されるのが嫌で亡国機業と手を組んで、私情ガッツリで宇宙人達を倒そうってしてるんだよね? それに二人がお手伝いしてたってことだよね?」

「まぁ、そういうことです」

 

こんだけ長く話したのに、そんな二三行でまとめられるとなんかショックだな……。正しいし凄く伝わりやすいんですけどね?

 

「でもそれって更識が動く理由にはならないよね?」

「本音の言うとおり、私もそこが気になるわ」

「私も同意です」

 

話を蒸し返すように、自分でまとめたはずの本音様が、楯無様と虚様も加わり疑問をぶつけてくる。楯無様がそう返すだろうとは予想していたけど、ホント意外だな。

 

森宮とは、布仏とは、皇とは、更識御三家という括りにあるように更識に使える為の家だ。役割が各々あれどその行動の中心には更識の為という核が存在していなければならない。

 

俺が話した事を整理すれば、先程本音様が言った通りであり、終始一貫して篠ノ之束の私情という一言で言い表せる。地球を守るなんて言えば聞こえはいいし引いては更識の為と言えなくもないが、それだけならば隠す必要は無かっただろう? と言っているのだ。ひた隠し続けてきたその計画は、対暗部組織である更識が存分にその能力を振るえる領分なのだから。

 

「ええ。それに協力することを条件に、姉さんはある条件をつけていました。俺はそれに乗っかっただけです」

「条件?」

「そうです簪様。私が大事に抱えていたコンテナは覚えていませんか?」

「ああ、あれ?」

 

俺が夜叉でボロボロ(の振りを装ってわざと装甲を壊してもらったり追いまわす演技をして貰っていただけだが)になりながらもコンテナだけは必死に守りとおして学園までブッ飛ばしたのは、あの中身にそれだけの価値があったからだ。むしろ中身の為に、俺が潜入したと言っても過言じゃない。姉さんもその情報を掴んでいたからこそ、前から協力していた。

 

「ちょっくら迎えに行ってきます」

「その必要はねぇよ」

 

まるでタイミングを図っていたかのように綺麗に登場してきたその人こそが、コンテナの中身。実際中身と言うには失礼に当たるが許可は貰っている。

 

水色の髪が肩にふれるか否かのところで切りそろえられた少し癖のあるボブカット、透き通るような綺麗な紅の瞳、そこの低いミリタリーブーツを履いても平均より高めの身長、どことは言わないが簪様といい勝負のほどよいスタイル。

 

美少女と十分に言える美貌だが、中身を言い表すなら豪放磊落。今時の男性より漢らしい一面を窺わせる言葉遣いと風格を漂わせる。Tシャツの上にパーカーを羽織り、ホットパンツに茶のミリタリーブーツというファッションは彼女という活発な人間をよく表していた。

 

「う、うそ……」

 

知っていた姉さんと面識のないマドカを除く全員が、あの本音様がお菓子を食べる手を止めて唖然とするレベルで驚愕する。主二人に至っては目からぽろぽろと涙がこぼれている。

 

それもそのはず。

 

「よっ。久しぶり姉ちゃん達」

 

こちらのお方、誘拐の後死亡したとされていた更識三姉妹の末っ子(・・・・・・・・・)

 

「鍔女ちゃん?」「鍔女……?」

「おう」

 

更識鍔女(ツバメ)様。簪様の双子の妹君である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当時の亡国機業は日本攻略の際に更識を足がかりにする計画だったらしい。何故なら、更識一族がそれはそれは日本有数の名家であり、方々に強い影響力を持っていたことが理由に挙げられる。

 

故に将来の布石として誘拐された。

 

実際の標的は気弱な簪様だったらしいが……何かの手違いでたくましい鍔女様が拉致に合う。その後、高度な偽装工作の末に偽の死体が発見され、救出されることは無かった。あとは適当に活かしていざその時にチラつかせれば掌握できると踏んでいたのだ。更識は身内には情が熱く、次期当主の楯無様が妹達を溺愛する性格を逆手に取った作戦である。

 

もし、簪様が誘拐されていればその通りのシナリオだったかもしれない。

 

こうして鍔女様が立っていられるのは、幼さと女児に似合わないタフネスを持っていたからとしか言いようが無かった。使えると判断された鍔女様は更識としての手ほどきを受けていた最中であり、簪様以上に立場に伴う責任感というものを持っていた。彼女だから、囚われの身でも努力を怠らず、凌辱と屈辱を受け続けても、十年以上という途方もない長い歳月を耐えきったのだ。

 

こうして彼女はこれまでの忍耐が報われ、恥も外聞もなく涙に鼻水まで流しながら抱き合い、これから享受する幸せの一ページ目を飾った。

 

「ごめんなさい」

「いえ」

 

見ているこっちが感動するシーンでした。

 

では、気を取り直して。

 

「というわけです。一先ずの目標達成ってことで、お互いの協力関係は一旦リセットされたことになるんですが…」

「更識のとるべき選択は何なのか」

「ええ」

 

少々の脱線も見られたが一通り説明はさせてもらった。あの日の真実、なぜ協力したのか、束さんの目的。

 

更識も他の専用機達も、引いては全てのISも無関係ではいられない。

 

選ぶ必要がある。

 

「その話を信じるのであれば、協同しないわけにはいかないでしょう」

 

お嬢様が言うとおり、他の選択肢など無いに等しいのだが。

 

危険だが、篠ノ之束と関係を深められる良い機会と言える。ハイリスクハイリターンな仕事だ。上手くいけば日本にとどまらず海の向こうまで勢力を伸ばす足がかりとなろう。

 

そしてもう一つ。

 

「私は、付いて行くよ。だって弟子になっちゃったし」

 

簪様という本人ご指名の後継者までこちらにはいるのだ。勝手に数に入れられている。

 

 

「半ば強制」

「姉さんの言うとおりだな」

「決まりですね、お嬢様」

「ええ」

「頑張ってね、かんちゃん」

「うん」

 

元々やる気だったかのように意見は一つにまとまった。

 

「なぁ、アタシどうすんの?」

「学校に行きたいなら通わせてあげられるけど……」

「なんだよココダメなのか?」

「倍率がアホみたいに高いのよ。試験と適性検査が合格点ならいいんじゃないかしら」

「無理なら?」

「実家から通える範囲の高校なら」

「任せろ絶対合格してやる」

 

その日に編入願書を提出して試験までの一週間楯無様と簪様がベッタリ貼りついてなんとか編入するとか言う奇跡を見せるんだが、少し先の話か。マジでおかしいから、倍率四ケタ超えてるんだぜ? 因みにリーチェのクラスだった。

 

 

「ねね、そういえばさ―――」

「ちょっと待ってください本音様」

 

問題も解決したところで話しかけられたが、丁度いいタイミングで電話が鳴る。

 

相手は……束さんか。

 

「もしもし」

『あ、いっくん? 今そこに更識家の人みんないるんでしょ?』

「ええ、まぁ」

『じゃあ連れて来て。ラボで会おーね』

「わかりました。というわけで束さんから呼ばれたので行きましょうか」

「どこ?」

「ラボ」

「知ってるの?」

「………」

 

簪様とマドカに道案内してもらいました、はい。

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、なんかみんな腰とかおなかとかさすってるけど大丈夫なのかな? 強く打ったりお腹壊したりしてるのかな?」

「こら、そう言うこと言わないの」

「なんでー?」

「何ででもよ」

「本音、察してあげなさいな」

「おーか悔しそう?」

「……察してください」

「分かった、さすってくるー!」

「ちょ、本音お腹押さないで!」

「「………」」

 

 


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