無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

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トマトしるこです

秒読みはいりまーす。
しかしドルフロ楽しいですねぇ。


74話 決戦前夜

無事に大和へと帰還し、全員で格納庫に鎮座するデカブツを見上げる。

 

デカイ。思っていたよりもデカイ。

 

格納庫では直立する程の高さが足りない為に片膝をついたポーズで佇む鉄の巨人。敵BRを蜘蛛の子を散らすように容易く蹴散らした火力と、ISと比べても遜色ない速さを併せ持つ兵器。ついさっきまで操っていたマドカとオルコットも含めて、ただ見上げながら待っていた。

 

「おつかれさんごくろうさん」

 

ウサミミをぴこぴこと揺らしながら、待ち人はやって来た。

 

「博士、約束通り説明を要求しますわ」

「全くだ」

「まーまーそうカッカしないで」

 

にへらと笑った束さんは、脇に抱えたタブレットをじっと眺め始める。再生されているのは、音や声からしてさっきの戦闘らしい。

 

到着早々にBRの壁に風穴を開けた強力な標準装備(・・・・)のエネルギー砲。どうやら操縦しているらしいマドカはそれをバンバン撃ちまくるし、機体に追随していたビットはオルコットの操作でこれも撃ちまくるし、囲まれそうになったらレーザーブレードでなぎ払うし……。規格外なのは傍から見ても分かった。

 

十を超えるISが連携して押しとどめていた戦線をたったの一機で維持するどころか、逆転し殲滅せしめたのだ。援護の必要なんてまるで無かった。

 

夜叉の物量も大概だが、これは規格外なんてものじゃないぞ。

 

「カンタンに言うとだね……IS専用IS、かな」

 

……ん?

 

「コレそのものにコアは存在しないし、製作背景や目的も全く違うから、厳密に言うとISではないんだけどねー。拡張や後付けとは理論や規模が別、パッケージでもない。ISを所持した搭乗者二名が、各々のISを介してコレを操る。ざっくりISと言っても差支えは無いからそう識別してる」

 

視線を束さんからその背後に佇む巨人…IS専用ISとやらへ移す。

 

六メートル程度と思っていた巨躯は間違いなく十は超える。胸部の開いたハッチ…恐らくコクピットからは計器やレバ―、縦に並ぶシートが二つ。

 

見ただけで分かる豊富かつ強力な武装……肩のガトリングや背部の長い砲身、腰から抜いたレーザーブレードや、整備用ラックに掛けられたあのライフル。見える範囲には無いが、ビットもあったな。

 

確かに本人が言う様に、規模が既存の装備やパッケージとは異なる。身に纏う様な展開では無くレバーや恐らく足元にあるペダルで操作するアナログ式。何よりISコアを二つも必要とする不便性。

 

宇宙開拓を目的としたISとはベクトルが違うというのも頷ける。

 

「インフィニットストラトス・エクステンション・アームズ。通称IEXA(イクサ)。今回のためだけに急造した純粋な大規模殲滅兵器だよ。これが、戦いのカギになる」

 

そう言い放つ束さんの顔はあまり澄んだものじゃなかった。

 

きっと……というか絶対こんなの作りたくなかっただろうに。紅椿を臨海学校で披露した時のような輝かしさを微塵も感じない、遠い目だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長くなるから場所を変えよう、という束さんの案によりいつぞや集まった部屋に腰掛ける。

 

もちろん、あのIEXAとやらの説明だろう。まさかマドカとオルコット専用というわけではあるまい。それはそれで別にいいけど、せめて正確な情報は味方として欲しいよな。

 

全長はおよそ十五メートル。格納庫で膝をついて十メートル前後といった印象を受けたのは間違いないらしい。大きさや重量もそれに追随する数値。出力に関しては化け物としか言えないものだったが、実際は途中で組み立てを重視したため変更点が多く、カタログ通りの出力は出せないとか。それでもISや従来の通常兵器とは隔絶したパワーを誇るのでやっぱり化け物である。

 

「今現在も格納庫の奥では組み立て作業が続いてる。ほんとの格納庫はもっと広くとってたんだけど、組み立てる場所が他になくってね。防火シャッターを下ろして無理やり仕切ってる」

「……ということは?」

「あと二機追加されるね」

 

現在進行形の話に疑問を持った織斑がまさかといった表情のつぶやきに、束さんが何でもないように答える。

 

あれが合計で三機? 三機もあるのか……。

 

「IEXAの話だったね。月まで到着のおよそ一週間。それまでに三機を完成させて、全員が慣熟を終えてもらう。今まで送り込んできた数から予測して計算したけど、どう頑張っても物量では負ける。だから本丸の攻略にはIEXAが欠かせないんだ。やってもらうよ。物量で負ける以上、物量をねじ伏せる個で対処するしかない。そのためだけに作ったんだからね」

 

部屋の照明が落とされてモニターがこうと光る。全員が食い入るように、流れる情報を睨んだ。

 

「じゃあまず―――」

 

コアから受け取ったエネルギーを、コクピット周辺の増幅装置が拾って機体各所へ拡散することで動力を得るらしい。補助バッテリーは無し。必要分を搭載しようとするととんでもないデッドウェイトになるからだろう。シールドエネルギーもこの増幅装置を介して効果を発揮するようだ。

 

ただし、コア一つでは十分なエネルギーを確保できないこと、電源としてコアを使用するため情報処理能力が格段に落ちる。この負担軽減と操作性を考慮した結果が複座式。前座が主に機動制御、後座が火器管制と分業させることで戦闘力との両立が実現した。役割の入れ替えもシステム変更で即座に可能らしいが、これはあまり多用しないだろう。前座が気絶した時の緊急処置として覚えておく。

 

武装はISとは異なり、量子化して武器変更といったことはできない。まぁ、量子化しているのがそれぞれの機体に合わせた武器とサイズだからな、こんなデカブツの武器量子化したらあっという間にキャパオーバーだ。どれもが地に足ついたものばかりで、オールラウンドに動けるだろう。

 

機体に対して少々小型な二連装エネルギーライフル

牽制の腕部と肩のガトリングガン

実弾とニュードどちらにも耐性のあるスティールシールド

シールド内側内蔵のスプレッドガン

両腰のレーザーブレード

緊急時装備の大腿部内蔵アーミーナイフ

説明不要の超火力、背部大型荷電粒子砲が二門

 

これらが固定装備。本当はCIWSだったり、IS用のエネルギーパックや弾薬箱をわんさか載せる予定だったそうだけど、弾薬に余裕がないためあえなく断念。長期戦が予想されることも加味して、補給が容易かつ実弾系統の補給分が船の積載量オーバーという理由からエネルギー兵装が主武器になった。

 

そしてISで言うイコライザ…追加装備なら一種のみ積載可能らしい。重量やエネルギー供給、取り回しの面から一種が限界だそうだ。これでもかと固定装備がたんまりだってのにまだ載せるのかと思ったが、リストを見てなるほどと納得した。

 

それぞれが得意な武装が幾つか並んでいる。さっきのビットや、ライフルに刀などなど。

 

全ての武器を適切に使用するのは至難の業だ、武装が豊富な俺でも難しい。近接特化の織斑に銃を撃たせたところで掠りもしないだろうし、射撃が得意なオルコットがレーザーブレードやスプレッドガンで満足に戦えるとは思えないからな。

 

「――とまぁ、こんな感じかな」

 

いやいや、ちっともこんな感じじゃないでしょ。顎が外れるわ。苦笑いを禁じ得ないです。

 

なぜこれだけの物量差があるのにこれだけしか戦力を集めなかったのかがやっとわかった。

 

IEXAのデータをこの場にいる人間以上に漏らさないため、だろうな。

 

こんなのが地上で製造されて暴れまわったら地球がボロボロになる。やられたらやり返すだろうから、同じものが作られて泥沼の戦争が始まる。そうすりゃ億単位で人が死ぬ、というところまで容易に想像がついた。行き過ぎた考えかもしれないが、コイツを巡って大量の血が流れるのは間違いない。

 

各国から増員要請を蹴られたと聞いてはいたが、恐らく認可が下りても束さんが蹴るだろうと想像していた。一緒に来るなら最初から学園で訓練していたはずだからな。それとは別で何かあるかも、なんて考えてたがあながち間違いじゃないだろう。

 

「最後に。単一使用能力についてだけど、まだ実験してないけど使えると思うよ。だから――」

「使えるなら私の出番、というわけですね」

「ザッツライ」

 

名乗りを上げた妹にびしっと束さんが指さす。

 

もし篠ノ之が絢爛舞踏を発動させることができれば、主武装をエネルギーに依存しているIEXAはエネルギー切れを気にせず暴れることができる。小回りが利かないISといった印象のIEXAだ、面積が広い分被弾も免れないだろうが、幾分か楽になるだろう。

 

それに、機体が大きい分一度に多くのISへ補給が見込める。

 

篠ノ之の絢爛舞踏発動が上手くいって、直援のISを置いておけば、本来束さんが目指していたIEXAの仕様を満たせるというメリットもいい。たったの数機で完結できるし、それが複数あるとなれば蹂躙だってできるのではないか。

 

加えて織斑二人の零落白夜。ああ恐ろしい。俺いらなくね?

 

「ひとまず説明は以上。じゃ、宇宙にも慣れてきただろうし、今日からコイツ、乗りこなしてもらうからね」

 

簪様の目が輝きを通り越してトリップしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、と軽く一息吐いて首までぴっちりはりつくスーツを緩める。指を放せばまたぴったりはりつくが、その少しの時間だけで満足した。

 

「休憩する?」

「いや、もう少しだけやるよ」

「ん」

 

後座の姉さんの気遣いが疲れた身体に染み渡る。もう一度だけ息を吐いて、再度両側のコントロールシリンダーに手を突っ込んでグリップを握り、フットペダルに足を乗せる。

 

あれから更に数日。もうコクピットの窮屈さにも、フラグのように先に手渡しされていた強化装甲展開にも慣れたよ。

 

もっと複雑な操縦を求められるのかと思っていたら、そんなことはなくて結構ラクに動かせた。

 

シリンダー内部にあるグリップ、シリンダーそのもの、フットペダル、シートなど強化装甲と接している面から情報が送られてダイレクトかつタイムラグ無しにIEXAは動く仕組みだった。マニュアル操縦も一応可能らしいが、そんな状態に陥ったら廃棄してISで戦闘したほうがマシなレベルで難しいとか。

 

思考を走らせ、機体が動く。

 

現状、シリンダーは力勝負になった際の出力上昇装置兼ショック時の安全バー的なやつで、フットペダルは同じく推進系の出力上昇装置として扱っている。

 

ISと同じように全方位が脳に直接映し出されており、同時に訓練している他二機が飛び回るのがよく見えた。コクピット内部は俺が見ている景色が映し出され、後座の火器管制はそれが視界そのものになる。視界の共有はできなくもないらしいが、恐らく酔う(・・)為、また試した凰と織斑が尊い犠牲になった為、使用しないと全員が心に誓った。

 

急上昇から姿勢制御スラスターを半身だけ点火し、数コンマ送らせて相殺すべくもう半身のスラスターが火を噴く。ピタリと反転し、再度メインスラスターが推力を吐き出してデブリを置き去りにしていく。蛇のように滑らかな曲線を描いては、彗星の残骸であろう石を踏み台にして直角に駆け抜ける。

 

隕石を敵に見立ててブレードを振りぬいて上部を削ぎ落とし、抜き様に向けた腕部のガトリングが空転する。弾を込めていれば、今頃あの隕石はガリガリと削られるかハチの巣になっていただろう。

 

次いで背中の荷電粒子砲を起動。安全装置が解除され、マウントされた肩の付け根あたりを中心に半月を描いて、丸太を担ぐように二門構える。全身の排熱機関が作動し、両手でそれぞれのグリップを握りしめてトリガー。いつかBRの大舞台に穴をあけた閃光が射線上の障害物をかたっぱしから蒸発させていった。

 

「よし。姉さんどうする」

「帰る」

「わかった」

 

後座から大和の位置を受信、マーカーが設置されそれに従ってゆっくりとペダルを踏む。何も考えなくても、ちょいと力を入れれば勝手に動いてくれるってのはいいね。

 

「明日ね」

「うん」

 

毎日決まった時間に模擬戦やら連携強化の訓練をしたり、それからIEXAを交代しながら慣熟訓練をして。気づけば月がよく見える距離まで近づいていた。昨日には粗方解析が終わって、進行ルートやら突入の手筈を煮詰めている最中だろう。

 

今は日本時間で午後の三時。これだけ近づいて、明日には決行という段階に来ても未だに情報が回ってこないのはどうかと思うが、それだけ安全と確実に配慮してもらっていると思えば気も楽になった。何より家の仕事と違って、後ろから撃たれたり騙して悪いが…(お約束)の心配をしなくてもいいというのは、精神安定上たいへんよろしい。気分はるんるんだった。

 

視界の隅には同じく訓練を切り上げてゆったりと帰路につく二機。あの装甲色は…織斑篠ノ之と楯無様簪様か。黒と光点しかない宇宙で紅白と水色は遠くからでも分かりやすい、装甲に専用機のカラーを反映させた更識のスタッフはいい仕事してるよ、ほんと。

 

「一夏は」

 

ぼそり、と姉さんが呟く。

 

「帰ったら何をするの?」

「何を、か」

 

言われたままに考えてみる。

 

が、帰ったところで何かするわけでもない。ただいつも通りの生活に戻るだけだと思う。起きて飯食って、適度に主や妹の世話をしつつ、クラスメイトと談笑して寝る。簪様のアニメではよく最後の戦い前にそんな会話をしてるし、夢や希望を語る場面なんだが、生憎と無趣味で閉鎖的な人間なもんで、期待されるようなセリフは出てこない。

 

っていうかね、フラグって言うんじゃないの。

 

「特には」

「そう」

 

だから素直に無いと返す。姉さんも特に何か期待していたわけじゃないのか、返事はそっけなかった。それはそれでなんか寂しい。

 

もしかして実は何か展望が聞きたかったとか? いやまさか。でも、これだけ大きなきっかけを手に入れても何もしませんは拙いのかも。いやね、全くないわけじゃないんだ、でもあまりにも些細すぎるというか……それでもやってみたいことには変わりないんだけどさ。

 

「あえて言うなら、だけど」

「?」

「料理はしてみたい、かも。あと勉強」

「何作るの?」

「余った野菜の炒め物、とか」

「ふふっ」

 

昔を思い出したのか、姉さんがほほ笑む。ああ懐かしき暗黒時代。楯無様と簪様が手を回してくれなければ今頃もっとすり減っていたか殺されていただろう、そんな世界。それでも身体が持ってくれたのは、そんな無茶でも耐えきれるヤク漬けと姉さんの料理があったからこそだ。まだ味覚が朧げな時だったけど、姉さんのごはんだけは別だった。いつぞやの満貫全席の時もそうだったが別格なんだよ。

 

恩返しってわけじゃないけど、お礼はしたい。練習してきちんと食べられるものを提供するぞ、桜花にできて俺にできないことはない、はず。

 

「勉強は?」

「これといっては。でも、せっかくコアも定着して覚えも良くなったし、今まで理解できなかったことも含めて色んなことを知りたい。迷惑かけた分は返済しないとさ」

「……そう」

 

今度は嬉しそうに答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、明日の伝達をする」

 

教壇のように出席簿よろしく資料を構える織斑先生と束さん。二人とも一応ISスーツを着用している。明日は先生も実機に乗ると聞いているので、ウォームアップでもしていたのだろう、どっと汗をかいていた。

 

「作戦開始は日本時間の午前八時。今が午後九時なので、およそ半日後になる。各自で食事や睡眠を十分にとりコンディションを整えておくように。今までも散々言ってきたが食い過ぎだけはヤメロよ、IEXAをゲロまみれにしたやつは月に置いて帰ると束が言っている」

「そこまでは言ってないよ! ただちょーっと肉片を削らせてもらうくらいで」

「良かったな、地球には帰してもらえるらしいぞ」

 

全く喜べません。何にせよマーライオンはしたくないのでちゃんと言う事を聞く。

 

「私は今回学園から借用してきた打鉄のカスタムタイプで戦列に加わる。直接指揮を執るが、全体への指示は束と山田先生が行うので基本二人の指示に従え。では後を頼む」

「ほいほーい。じゃあ早速。作戦は主に四段階、目標達成の時点で次フェーズへ移行するよ。まず――」

 

一、大和を待機位置まで前進。周囲の安全を確保し、敵機を減らしながら基地内部への侵入口を探る

二、突入班が内部へ突入。基地内部を掌握し、機能を停止させる。他は突入班の退路を確保しつつ、大和の護衛。

三、突入班から更に工作班を選出し基地爆破とデータ採取。突入班は指示に従い完全制圧。主格を捕える。

四、突入班は工作班と合流し、起爆と同時に脱出。大和が全機収容次第、即時反転し離脱する。

 

「――って感じ。第一フェーズでは兎に角数を減らすのが目的。IXEAの高火力、広範囲砲撃で一気に蹴散らす。程よく撃ち尽くしたらローテーションでIXEAは補給、全機終了したら全体で前進し、大和を所定の位置に固定する。ある程度の安全確保ができたら、今度は侵入口の確保。IEXA一機を矢面に立たせて一点突破し、後続の道を作って突入班が侵入。この時、IEXAには突入班を乗せるからパイロットを交代して、IEXA二機目が来るまで侵入口を守る」

「誰が乗るんです?」

「出撃から侵入まで、突入班は森宮姉弟…あおにゃんといっくんね。入れ替わりで乗るのが箒ちゃんとドイツの眼帯」

「私……ということは絢爛舞踏が必要な時があるということですか」

「そう。だからそれまで体力を温存してね。タイミングは指示する。難しいと眼帯が判断したらそちらで勝手にしてもいいよ」

「ふむ、了解した」

 

ここまでが第一フェーズ、と束さんはモニターに当てていたポインタをしまう。

 

「第二フェーズは内部に侵入した突入班が基地全体を掌握するまで。具体的に言うと、私がクラックするための端末を基地内にあるマシンにセットしてほしい。そうすれば防衛システムも停止できるし、地図が手に入ればなるべく安全かつ最短のルートで奥まで進められる。突入を援護した残りの全員で突入班の退路を確保しつつ、大和の護衛ね」

 

武器とか無いから、と束さんが付け加える。

 

そう、大和とかいう超弩級戦艦の名前をしてるくせにこの船、CIWSの一つも積んでいない。技術的に不可能ということはないはずだが、それをしなかったのは直掩にまわすゴーレムやらIEXA製造にリソースを割いたからなのか、あるいはそうしたくなかっただけなのか…。

 

「基地内部を私が掌握したら第三フェーズ。突入班の中から更に工作班を選出して別行動をとる。工作班は引き続き基地内部を探索しデータ回収と、爆破物の設置を行う」

「ば、爆破? だ、大丈夫なんですそれ?」

「さぁ? 必要以上持たせるつもりはないけど、大丈夫なんじゃない? 地球で核弾頭使ってもクレーターが増えるだけだし」

 

それは今更月にクレーターが増えても良くね? ってことですかねぇ。質問した織斑も眉をひくつかせている。

 

「んで、突入班は継続して基地内部の制圧。首謀者というか、親玉を捕えるないし殺害ね。最後は――」

「合流して脱出する」

「そーゆーこと。突入班と工作班は私が、他全部はこの……乳牛先生が担当だから」

「ヒドイ!?」

 

この場の大半が被害者と同じ感想を抱いたのだけども、それと同時に「あー」と納得してしまう自分達がいた。天災の親友が苦い顔で納得している時点で誰もフォローなんてできるはずもなく、乳牛先生は隅のコンテナに腰掛けて固まってしまった。キノコ生えそう。

 

まぁ、桜花曰くやるときはやってくれる人…らしい。公私共にブリュンヒルデの相棒を務めるとも聞く。桜花がそう言うなら信じるに値するし、今までの航海中も常に的確なアナウンスには助けられたのだから大丈夫だろ。

 

「おっとこれを忘れてた。班分け」

 

それ一番大事な奴、と突っ込んだのは俺だけではないはず。

 

突入班

森宮蒼乃 一夏 マドカ 皇桜花

工作班

スコール オータム

 

IEXA1

森宮蒼乃 一夏 → 篠ノ之箒 ラウラ・ボーデヴィッヒ

IEXA2

織斑秋介 シャルロット・デュノア

IEXA3

更識楯無 簪

 

「以上」

「なんというか……」

「偏り、激しいね」

 

デュノアの呟きには激しく同意するが、妥当な人選とも言える。

 

突入班は明らかに殺人を考慮した構成だ。直接手を下したことのある更識実働部隊と裏社会筆頭と言えなくもない亡国機業の二人。工作班として二人をセットにし、更識と亡国機業で綺麗に分けられるところまで含めてベスト。連携の確認をする必要も無いときた。工作班の二人からすれば、情報抜き取りと爆破なんて朝飯前だろう。

 

IEXAも恐らくこれが最良。ワンオフを発現している二人…しかも例を見ないほど強力なのだから使わない手はない。エネルギー供給の絢爛舞踏、エネルギー削除の零落白夜はセットでなんぼだ。パートナーも万能タイプ、コミュニケーションも円滑に行えるだろう。

三機目については……ふむ。中国の凰同様、水分の無い宇宙では動きや攻撃を限定される楯無様は先の一戦でやりづらさを感じたのか前に出ないと言っていたが、あと一機余裕があるならと抜擢されたな。どちらを乗せると問われればそりゃ安定して強い代表を乗せる。となれば相性のいい簪様がパートナーに選ばれるのも自然な流れだ。

 

しかしながら、顔を見渡すと多少の不安というか…懸念はある様子。

 

「これが最も成功率が高く被害も抑えられると判断した。異論は認めん、というよりタイムアウトだ。今から再編してはIEXAと装備の調整が間に合わん」

 

気持ちは分らんこともないが…と付け足した先生はそのまま解散を宣言し、半ば強制的に部屋から追い出された。腑に落ちない、といった様子が大半を占めていたが、たむろしていてもどうせ怒られるだけだとこの一年で学んだ学生一同はまばらに解散していった。

 

さて、俺はどうしたものか……。




実はIEXAが書きたい、というのが今作の動機およそ三分の一を占めていたわけですが、どうしてこんな終盤に登場してしまったんでしょうかね。私はそれで満足できるのか?

ところで、ダブルエックス好きですか? DX。間違ってもWXとかXXではない。

いやーエックス好きなんですよ、高木さんじゃないと満足できないですね。んでもってティファ大好き、超好き。ガンダムシリーズのヒロインで一番好き。化粧してた回とか鼻血でたんですよ、まじで。

だから(?)ダブルエックス大好きでしてねぇ。

コルレルをハチの巣にしたマシンキャノンとか
ちょー分厚くて鋭いディフェンスプレートとか
ぶっといハイパービームソードとか
説明不要の超火力、ツインサテライトキャノンとか
排熱で前身各所が展開するの、興奮しますわぁ

ところで、IEXAはどんな外見してるんでしょ(すっとぼけ)

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