無能の烙印、森宮の使命(完結)   作:トマトしるこ

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トマトしるこ、です。

ハロウィーンが近いですね。皆さん仮装とかされるんでしょうか?
私は仕事と人間関係に疲れてビールで潤うおじさんの仮装をしますよ。

…つまり毎日がハロウィーン?


76話 AM1034~

AM1034

 

視界に表示した時計が、作戦を開始してから三時間以上経っていることを教えてくれる。IEXAを篠ノ之・ラウラと交代して、本丸に侵入してからおよそ三十分程度。

 

敵と呼べる存在はほとんど見当たらなかった。

 

「どうなってる」

「知るかよ」

 

オータムの愚痴に、半ばやっつけで返す。珍しく、本当にコイツにしては珍しく十割の疑問だけが先の言葉に込められていた。態度にこそ苛立ちが現れているが、頭の中はハテナマークが浮かんだ傍から弾けていることだろう。安心してほしい、俺もそうだ。

 

内部の地図についてはまだ入手出来ていない。プランでは基地内にあるマシンに端末をセットして情報を抜き取るまでが第二フェーズで、端末を経由して束さんが全体を掌握した後は第三フェーズに移行して、いよいよ深部で待ち構えているであろう大将を討ちに行く……んだが。基地は俺たちの想像を超えるレベルだった。

 

何が、と言うと広さが。もうめちゃくちゃ広い。かなりの距離を進んだはずなのに、目的の場所は未だ見つからないままだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM1002

 

僅か三十分前のことを思い返す。

 

侵入口……形状からしてドックと言うべきか。ドックから入った俺たちは、まず管制室へ向かった。地球で言う港の役割を果たしているなら、それを制御している部屋が近くに無ければおかしい、という束さんの指示だ。が、これは意外な結果で徒労に終わる。

 

管制室は直ぐに見つかった。だが、何者かが争った形跡がそこかしこに見受けられ、室内は漂う血液とこと切れた死体。彼らの手には銃器やべっとりと血液が付着したナイフといった凶器が握られており、殺しあったことだけは理解できた。服装も同じようなデザインばかり。つまりは内輪揉めということになる。

 

死体や飛散物を払いのけて目的の端末に手をのせる。ダメもとで適当に幾つかのスイッチを触ったり、ディスプレイをタッチしてみたが反応は全く無し。それもその筈、端末やドックを除くガラスなどなど、室内の至る所に銃弾が抉った痕が見られるのだ。端末もここで行われたであろう殺し合いの犠牲になったらしい。

 

「……だめだ。ぶっ壊れてる」

「電気は通っているみたいだけどね」

「まぁ、これだけ損傷していては。生憎と死体の状態から何時頃なのかも判別がつきません」

「え、検死できんの?」

「ええ、まあ、多少は。ですがそれも地球上であればの話ですわ」

 

桜花の意外な特技に驚くオータム。そして桜花の多少のレベルがお前の想像以上に高いことも推して知るべし。

 

照明はまだ生きているので電気そのものに問題はないことは見ればわかる。単純な破損による故障だ。ただし、遡っていつ殺し合いが行われたのか、そもなぜ身内で殺しあう必要があるのか。ここ以外にも同じようなことが起きているのか。なぜ片付けられずそのままなのか。再利用されずに残されているのか。そのままにしていながらこのドックを使い続けるのか。

 

疑問が次々と湧き上がってくるのも仕方のない事だと言えた。そしてこの場で考えるのが無意味であることも。

 

「束」

『うーん、そっち側が壊れてると私もどうしようもないなぁ。端末に修理機能も積んでおけばよかったーって言っても仕方ないね』

「他をあたる」

『よろぴく』

 

姉さんの簡素なやり取りで方針が決まる。というよりそれ以外無い。直ぐに管制室を出た。道はまぁ、適当だ。先頭の俺が気まぐれに道を選んでそちらへ進む。ソナーは大気が無いので機能しないから反響で内部構造も探れないし、手探りしか手段がない。

 

頭の中で地図を描きながら、進路上にあるすべての部屋を覗いていく。だが、どこも大して変わらない。

 

休憩室の様な部屋があった。机に突っ伏した姿勢のまま殺されていた。

食堂の様な部屋があった。調理器具を突き刺して自害していた。

娯楽室の様な部屋があった。ビリヤードのキューが二人ほど眼窩を貫いて壁にはりつけていた。

仮眠室の様な部屋があった。紐で絞殺されていた。

浴場の様な部屋があった。枯れたシャワーヘッドを口に突っ込まれて漂っていた。

医務室の様な部屋があった。劇薬であろう液体で頭を半分溶かされていた。

喫煙室の様な部屋があった。くりぬかれた腹には吸い殻が詰め込まれていた。

談話室の様な部屋があった。死骸が土嚢の様に積まれ、爆発の後が幾つも残っていた。

食糧庫の様な部屋があった。冷凍室には首を吊るされ肉を削がれた死体があった。

倉庫の様な部屋があった。衣服を剥ぎ取られた何人もの女が汚れたまま放置されていた。

 

……。

 

と、冒頭に戻る。

 

オータムの愚痴もよく分かるというものだろう。

 

死体ばかりしかないのだ。このあたりが居住区として、基地根幹にかかわる設備がない事はよく分かる。ただ、生者がいないという、それだけの、明らかな異常事態。居住区で死人しかいないのなら、いったい誰がどこに生き残ってどのような生活を送っているというのか。

 

はぁ、とため息を吐く。伏せた視線には……数回目の動体反応を示すアラートが。

 

データリンクでそれが伝播し、全員が脳内スイッチを切り替えて武器を構える。陣形はそのまま、俺はシールドを前面に展開してゆっくりと歩を進めた。

 

生きた人間は全くいない。が、警備マシンはまだ問題なく動けているらしい。遭遇したのはどれも成人男性を参考にして作られたであろう骨格に、跳弾を誘発する装甲を纏い、室内での運用を前提とした取り回しやすいライフルを引っ提げている。重心の先にはナイフの光沢、腰にはグレネードとちっとも警備目的じゃない。ここで起きた殺し合いの為に作られた人形なのは明らかだ。

 

そして、シールドの隙間から曲がり角の様子を窺えば……来た。

 

見慣れたと言って差し支えない銃剣の切っ先。それを認識した瞬間に身体が動いた。シールドを全て背面に配置しなおして全ての内蔵ブースターを点火し爆発的に加速、半身が角から現れてこちらに顔を向けた時には既にその首が宙を舞い、胴体は粉砕されている。ジリオスで首を撥ね、ティアダウナーで砕いただけだ。

 

周囲を再度警戒し、センサーに異常がない事を確認してから武器を下ろす。それを見た仲間もまた緊張の糸を緩めた。

 

「頻度が増したね、兄さん」

「ああ。スコールの読みが当たったな」

 

守りたいものがあるから警備マシンなんてものが闊歩しているわけで、だったらこいつらが集中している場所が目的地の可能性があるんじゃない? という意見は今のところ的外れでは無さそうだ。特に反対意見も無かったのでマシンが歩いてきた方向へ進んでいるが、遭遇する頻度は上昇中だ。俺の勘は間違いないと叫んでいる。

 

大量殺人が起きた時間については不明のままだが、ここ数年以内ではないはずだ。破壊した警備マシンは所々ガタが来ているのがよくわかる状態だった。ただ、定期的にメンテナンスを受けていることも証明しており、事実としてかすりや凹みは全身に見つかっても錆だけは無い。磨くまではされてなくとも、簡単な清掃と油差しは続けられていると思われる。

 

というわけで、生きている人間が確実に居る筈と分かっていながらちっとも遭遇しないには不審しか積もらない。流石にそれらをオートメーション化する技術は無いと信じたいな。

 

通路ど真ん中で爆散したマシンを端の方へ寄せて、こいつが来た道を辿る。

 

その先には左の曲がり角のみ。センサーはその奥にマシンの反応を二つ拾った。

 

「行き止まりですわ」

 

桜花の読みは恐らく間違いない。

 

二つの反応は横並びに不動のままである。今までの傾向からしてマシンは一定の与えられた距離や範囲を巡回することが分かっている。さっきの奴は出会い頭に破壊したが、最初こそ慎重に慎重を重ねてじっくりと行動を観察していた。五分程度しか様子見に使えなかったが、そのたった五分でも決まったルーティンを三度繰り返していたあたり間違いではあるまい。

 

さて、どうしたものか。距離はおよそ五十メートル。ISの加速でも流石にマシンが認識する前に潰せる距離ではない。何より角の向こうがどういう状況なのかがさっぱりわからん。夜叉の加速に任せて突っ込んでもいいが、明らかに防戦を意識した広さと長さの通路にトラップが全く無いってことはないだろうし。かといって銃撃や爆発物を使うと、その先にあるかもしれない目的のブツが壊れるかもしれない。

 

「正面突破」

「……はぁ」

 

ごー、と気の抜けた姉さんの指示にため息をついてしまう。折角いろいろと考えていたのにね……行けと言われれば行くさ。姉さんが言うなら、俺が悩んでいたのは余計な心配なんだから。

 

しょうがないなぁ、といったジェスチャーを大げさにとって見せて踵を返す。獲物はそのままに、一歩踏み出して九十度ターンし一気に加速した。

 

『!!』

『!!』

 

思っていた通り。視界の先は行き止まりで、二体の警備マシンが扉を背にして銃をこちらへ向けた。銃も素体も、屠ってきたマシンと全く同じ型。だから同じように撫で斬りにして粉砕してやれば物言わぬガラクタになるはず。

 

機械らしく、微動だにせず構えたライフルから弾丸が雨の様に吐き出される。流石の俺も雨の中を濡れずに歩けるか、と言われるとノーと応えるので傘をさす。ISのシールドを抜けるほどの火力など出せるものかよ、弾丸は雨粒の様に弾かれるばかりで無駄でしかない。

 

まっすぐに通路を抜け、懸念していたトラップなどどこにもなく、あっさりと一振りずつで決着はついた。

 

特にそれ以外の障害は無さそうだ。ここまで来たら色々と気にしても仕方がない、吹っ切れた(諦めたとも言う)俺はうんともすんとも言わない扉をティアダウナーで豪快に引き裂いた。電磁ロック付きの扉は恐竜映画でよくあるような爪痕を残してその役割を終える。

 

中を覗いて誰もいないことを肉眼とセンサーで確認してから合図をして仲間を呼び寄せた。

 

「スコールの読みは半分正解半分外れってとこだったな」

「残念。ま、ガタが来てるしぃ」

「何言っても失敗を認めないタイプだコイツ」

 

正解した半分は、マシンを辿れば目的にたどり着けるかもしれない、という推測。乗り込んだこの部屋にはデカい端末が一つと、繋がれたモニターがずらりと壁に掛けられている。移されているのは見覚えのある部屋の映像……つまり監視カメラだ。ここならシステム掌握も実行できるだろう。

 

外れたもう半分は、マシンに感知された時点で基地内の防衛設備が一斉に起動して襲ってくる、という懸念。警備マシンに感知された段階で警報が鳴るのでは、と溢してそれもあり得るというのが全体の意見だったので、見敵必殺してきた。が、どうやらこうやって見ていれば既にカメラでバッチリ写されたりしてるので意味のない行動だったらしい。

 

何食わぬ顔で拡張領域から四角い箱を取り出したスコールがそれをデカい端末の上にそっと設置する。それ以上特に何かすることも無く後ろ脚で距離を置いて通信を開いた。

 

「博士、ボックス設置したわ」

『はいはいー。少々お待ちをー』

 

束さんの返事が返ってきてたっぷり一秒後、箱が開い……四本足の何かに変形した。

 

どうやって収まっていたのか教えてほしくなるような姿に変わった箱はガシャガシャと音を立てながら端末の上を歩き、ふと動きを止めると全身からケーブルを伸ばして解体を始める。ケーブルの先端にはドライバーを始めとした工具が煌めいて、鮮やかな手際で部品に変えていく。そうやって伸ばしたケーブルが奥へ奥へと入っていくと……モニターの映像が見慣れたものに切り替わる。

 

『お、繋がったね』

 

大画面の束さんはゴーグルとゴツイグローブをはめて手をわきわきと動かしていた。それに連動して四本足の何かもダンスを踊る。どうやら遠隔操作で解体していたようだ。

 

『これで、吸出し終わり…っと。ご苦労様』

「データを頂戴」

『もう送ってるよ』

 

束さんが言い終わる前に欲していたものが視界を埋める。マップだ。現在地を光点で知らせてくれる便利機能付き。

 

ともかく、これで第二フェーズは終了か。これさえあれば大将の首まで一直線も同然。あとは俺達突入班がどれだけ素早く敵をぶっ飛ばして外に出られるかのスピード勝負になる。工作班の二人はそれまでに出来る限りの爆薬設置と情報収集をするだけ、明確なタイムリミットは無い。

 

「第三フェーズに移行する。ここで別れる」

「了解。達者でね」

「ちゃんと合図出せよ」

「どうしよっかな」

「おいこら」

 

マドカとオータムのいつも通り? なやり取りだけでその場を締めて、突入班こと更識は素早く退室してスラスターを点火した。

 

今の時間はAM1128。突入してから一時間半も経過している。今までは警報が鳴るかもしれない、という懸念があったからこそ慎重に動いていたが、そんなものが無いと分かればこそこそする必要もない。とっとと片付けて出るのが吉だ。

 

ご丁寧にも最短ルートをマップに表示してくれているので迷うことも無ければ減速もしなくていい。直角に角を曲がって、時折見かける警備マシンを轢きまくって、最奥へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM1130

 

山田先生が第三フェーズに移行したことを知らせてくれた。作戦開始が0800なので、開始から三時間半も経過していることになる。集中しているときにありがちなことだが、そんなに戦っているのかと自分の強化されているはずの脳を疑ってしまう。

 

「篠ノ之、下だ」

「応!」

 

機体を預けている篠ノ之の動きは良い。最初……去年の夏は本当に大丈夫かとちょっと思っていたが、情けなさは面影も無い。というのはIEXAに乗り込んだ時の一幕で既に分かっていたことだ。しかし、分かっていてもここまで変われるのかと感心してしまうもの。

 

一夏達が入っていく場面を背にガトリングを撒いて空にした後、ブレードを抜いてひたすらに斬り続けている。織斑もこの一年でエネルギーを気にする立ち回りを覚えたらしく、零落白夜を時折放っているが困った様子は見られない。篠ノ之はそもそも使う武器が限られていて省エネ運転せざるを得ない。よって、絢爛舞踏の出番はまだお預けである。

 

そう頻繁に使えるものでもないし、温存はするに越したことはない。きっちりと役割をこなしておけばいい。

 

『大和、さらに前進します。ゴーレムを更に多方面に展開するので、ISはフォローの範囲を広げてください。データリンク』

『データリンク受信。げ、流石にこれは無理じゃない?』

『あら、弱気ですわね鈴さん。先生、鈴さんは見せ場が要らない様ですので私にすこしばかり譲ってくださいません?』

『はぁー? 誰もそんなこと言ってないでしょ。アンタこそ、さっきからちょいちょいベアトリーチェがカバー入ってんのにそんな余裕あるわけ?』

『なんですってぇ!?』『何よ!』

 

「まったく、ぎゃあぎゃあと喧しい……。こんな時くらいは自重できんのか」

「それが難しいのはラウラも分かってるんじゃないか?」

「ああ。言ってみたくなっただけだ。どうにかしようともできるとも思わん…」

「そうか」

 

いやいや、そんなかっこよさげにしても変わらんぞ。普段ならお前もあの中で騒いでいる側だからな? この間、織斑の部屋の扉をとうとう木刀で両断したばかりだろうに。鮮やかな断面と技量には私も感嘆したものだが、磨く腕が違うだろう。女を磨け、女を。私が言える義理じゃないが。

 

『IEXAも見直します。(篠ノ之・ラウラ)は一度補給を受けに来てください。(織斑・デュノア)(更識姉妹)で開いた分をカバーします』

「IEXA1了解した。だそうだ」

「一先ず、秋介が来るまでは待機だな」

「ああ」

 

今現在の配置はこうだ。月に最も近い場所に私達、遠い場所には大和とIS、それを繋ぐ線上に等間隔で残ったIEXAが奮っている。一緒に突っ込んだ手前、織斑とシャルロットの2はこちら寄り、大和にはISもいるので3がそちら寄りだ。

 

まず何としても大和は守らなければならない。そして同様に一夏達が潜入した帰り道も確保しておく必要がある。故に少々戦力的に無茶がある二ヶ所で戦闘を展開している。そんな無茶苦茶を叶えてくれるIEXAの恩恵は計り知れない。コイツが無ければ今頃どうなっていたのか、考えたくもないな。

 

道を塞ぐBRを切り伏せながら、白と橙のIEXAがこちらへ迫ってくる。それを発見した篠ノ之は大和へ向けて移動を始めた。すれ違いざまに二、三言ほど言葉を交わすだけに留め、推進剤を使い切る勢いでスラスターを噴かし、シールド代わりに一夏を真似てブレードを回転させる。

 

途中の水色IEXAの横も通り抜け、見慣れたISと武骨なゴーレム軍団に手厚く出迎えられた私達は大和後方の搬入口へ頭から突っ込んで、中で膝をついた姿勢で接続を解除した。装甲の色が私達の専用機からグレーへと戻っていくと同時に、脳に送り込まれてくるデータもなりを潜める。コクピットはただの箱に様変わりして、ハッチから流れ込む光と新鮮な空気が肌を撫でていく。

 

「お疲れ様です。再出撃は十五分後ですので」

 

ジャンパーからして更識から派遣された人員だろう、ドリンクを篠ノ之へ渡して最低限の情報だけ言い渡すとすぐに引っ込んだ。前から回ってきたドリンクを受け取り、ベルトを緩める。

 

外は見えないが、恐らくあらゆる場所が点検されてはエネルギーと推進剤を補充しているのだろう。整備スタッフの怒号やら重機の音で騒がしくて、久しぶりに兵役中の頃を思い出す。懐かしく、恋しくもあるが、今の平穏さを味わった後では思うところがある。

 

「申し訳ないな……秋介達は戦っているというのに」

「そう思うならしっかり飲んで寛げ」

「違いない」

「それでいい。授業とは違って実戦は何が起きるかわから――」

『ラウラ、聞こえるな、直ぐに再出撃だ』

「……教官」

 

実戦は何が起きるかわからないから、休めるうちに休むのも立派な兵士の務めである。と言おうと思ったところで教官からの通信が挟み込まれる。いやーな予感だ。簪流に言うならば“ふらぐを立ててしまった”のだろうか。篠ノ之の苦笑いが背中越しでも見て取れるように浮かぶぞ。

 

『だから先生だと……まあいい、増援が出てきた。ISでは対処しきれん、IEXA三機で大和が射程に入る前に破壊しろ』

「その増援とは」

『デカブツ、だな。IEXAの数倍はあるぞ、さしずめ母艦とでも言ったところか』

「は。駆動系の整備とエネルギー、推進剤の補給が完了次第出ます」

『任せた。聞いたな更識、1が戻るには時間がかかる。適当に相手をして時間を稼げ』

『はい。こっちで解析したデータ、あげるね』

「助かる」

 

そこで通信が切れるが、その代わりに簪から送られたデータを閲覧する。

 

「なんだ…」

「……これは確かに、デカブツ、だな」

 

篠ノ之も私も、抱いた感想はそう違いはあるまい。

 

本当にデカい。例えるなら、城だ。円状の基盤から聳え立つ城。中央から伸びた幾つもの柱をパイプが繋いでいる。下部に取り付けられた筒からは大量のBRが吐き出されると同時に大小種類様々な砲門がぞろりと並んでいた。




超久しぶりのボダブ要素な気が

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