かつてゼントラーディとの戦争の末、滅びの危機を経験した人類は、種の存続のため新天地を求め大宇宙へと進出する。西暦2059年。数えて25番目となる巨大移民船団マクロスフロンティアは、銀河の中心宙域に向けて、大航海を続けていた。
そして今、星の海を越えて、一人の歌姫がこのフロンティアに舞い下りようとしていた。
アナウンス「ーー当機は間もなくミリア・ジーナス宙港に到着いたします」
グレイス「シェリル。ほら、起きて」
シェリル「ん……」
シェリルはグレイスに促され窓の外に目をやる。
グレイス「あれがツアー最終目的地、フロンティア船団よ」
数ヶ月前、銀河音楽アカデミー賞の授賞式の場で、シェリルはある大々的な声明を発表した。
シェリル「銀河の妖精シェリル・ノームの伝説はまだ始まりに過ぎないわ!あたしは今ここで皆さんに、今まで誰も成し得なかった銀河横断ツアーを成し遂げることを宣言するわ!」
インプラント化せず、生身の身体である彼女にとって他船団への移動は身体的負担が大きく、危険なものであったが、なによりも銀河中の多くのファンに自分の声を直に聴いてもらいたいという強い思いがあった。
ツアーは着々と成功を収め、フロンティア船団でのライブを残すのみとなった。そしてこのツアーにはもう一つ目的がーーー。
グレイス「覚悟はいい?もし、ここにもターゲットが見つからなければ、あなたは…」
シェリル「ふふ、グレイス、シェリル・ノームはいつだって、どんな時でも、全力で歌う。それだけよ」
シェリルの耳を飾るイヤリングが煌めいた。
ーー超時空飯店 娘々
ランカ「ホントに⁈シェリルのチケット取れたの⁈」
この店でアルバイトをしている少女、ランカ・リーは仕事中にもかかわらず、興奮して机に身を乗り出すカタチになっていた。
アルト「あ、ああ。ライブのパフォーマンスでミシェル達と飛ぶことになってな、そのツテだ。少し遅くなって悪い。俺からのバースデープレゼントだ」
ランカ「わああ!」
彼女の喜びに呼応するように深緑の髪が動く。それは彼女がゼントラーディの血を引いているためである。
チケットを受け取ると、クルクルと回り、全身でも喜びを表現した。
ナナセ「良かったですねランカさん!」
ランカの親友である松浦ナナセは、まるで自分のことのようにランカと共に喜んだ。
ニュースではちょうど銀河の妖精シェリル・ノーム来訪の様子が映し出され、明後日のライブに向けた意気込みが語られていた。
ランカもこのライブを見に行くつもりであったが、チケットはゼントラ級の速さで即完売。もう行けないものだと諦めていたのだ。
ランカ「もう絶対無理だと思ってた…。ありがとね!お礼に特製マグロ饅サービスしてあげる!」
ランカが蒸籠を開けると、マグロ饅が二つ美味しそうに並んでいた。
アルト「おう」
アルト「…って、ランカ!その持ち方止めろって前にも…!」
ランカが掲げる位置や形状的にマグロ饅がバストに見えてしまったアルトは慌てて目をそらす。
ランカ「あ…ご、ごめんね」
アルトの反応を見て、ランカは自分のしたことに気づき、恥ずかしさでいたたまれなかった。
店長「二人ともいつまで油売ってるの!早くこっち手伝って!」
厨房からランカとナナセを呼ぶ声が聞こえる。
ランカ「は、はい!今行きます!
…じゃあアルト君、チケットありがとね!パフォーマンスも頑張って!」
去り際にウインクをしてランカはまた仕事に戻っていった。
--ライブ会場 星道館
シェリル「だからそこの照明の色はブルーにしてちょうだいって言ったでしょ!それからそっちはもっと明るく…ああ、違う!その色じゃなくて…!」
ライブを1日前に控え、シェリルは自ら会場へ赴き照明や音響の指揮をとっていた。その少し離れたところではアルト達が明日のパフォーマンスの段取りを確認している。
アルト「(銀河の''妖精"か…あれじゃ妖精というより女王様だな…)」
そう内心呟いていると、シェリルとバチリと目が合ってしまった。
シェリル「ちょっとグレイス、ステージ裏にファンの学生なんて入れないでちょうだい!まったく…警備も何をやってるんだか…」
グレイス「あら、彼らは今回のステージでアクロバット飛行をしてくれるパイロット候補生の子たちよ」
シェリル「あっそう、要するに素人ってワケね」
アルト「なっ…!」
突っかかろうとするアルトをミハエルが抑えつける。
シェリル「せいぜい私の邪魔にならないよう、控えて飛ぶことね。まあ…ファンには私以外、目に入らないでしょうけど」
アルト「なんなんだよっ!アイツ…!」