この物語はふと思いついて放置していた一発ネタに気が向いたので練習がてら続きを加筆したものです。
その為最初の1話がある意味クライマックスみたいなものです。また私の趣味を反映して居る為多くのテンプレとご都合主義による俺TUEEや無双の他、文章力、語彙力の無さや描写不足による強引な巻き展開などが存在しています。
あまり過度な期待はなされないようご注意ください。
なお批判、指摘などは随時募集しておりますのでよろしければお願いします。
牛が草を食む草原。
この地に住む人々が創り上げた広大な畑。
古ぼけたような、しかしどこか温かみを感じる家屋。
それも今日までの話。今では全て火の海の中。
下手人は今話題のレコン・キスタ、アルビオン新政府からの使者だった筈の者たち。
騙し討ちの形で進行してきた彼らの手でラ・ロシェール上空に停泊していたトリステイン艦隊は既に全滅。
彼らレコン・キスタは上陸場所にラ・ロシェール近郊のタルブを選択した。招かれざる客に対して打って出たタルブ領主とその軍勢も多勢に無勢、あっけなく全滅した。タルブの村に住んでいた人々は森に隠れ無法者共にただただ恐怖していた。
そんな中に響き渡る爆音。
濃い緑に染め上げられた装甲に翼と胴体には真っ赤な日の丸。
この世界、ハルケギニアでは完全な異形。
零式艦上戦闘機。通称、ゼロ戦。
風竜すら遥か後方に置いてけぼりにするその速度。
これに乗る少年の生まれた時代の地球では型落ちもいい所ではある物の、産業革命すら成し遂げていないこの世界では何者も追いつくことは出来ない。
当初雲霞の如く宙を舞っていた竜はゼロ戦の機関銃に撃ち落とされては次第に数を減らしていく。
その中で一騎。
風竜に速度で劣る火竜に乗って雷撃の如き恐るべき一撃を紙一重で回避していく竜と騎士。
竜の名はレッド。
いささか安直すぎる名前を送った竜の主である騎士はウルドという。
ウルドことウルダール・シュヴァリエ・オブ・ウィーバーは転生者である。
テンプレの様に日本の何処かでトラックに轢殺されこの世界に転生。
平民として生まれたかと思いきや実は平民の母と貴族の父の間の子で、その母が流行病で死に途方に暮れていた所を偶然墓参りに現れた父に引き取られるという如何にもテンプレな展開に巻き込まれ。これまたテンプレ的に魔法、剣術、槍術、棒術を叩き込まれ盗賊討伐にも参加。
ついでと言わんばかりに13歳にしてスクエアメイジになった挙句にその翌年にはデカい火竜、レッドを召喚、使い魔とするテンプレ。
ゲのつくアレが崩壊しそうになるくらいテンプレに塗れて生きてきた今世。
そんな彼がどうしてお先真っ暗なレコン・キスタに参加しているかというと。
ウルドは、この世界が「ゼロの使い魔」の世界だということに全く気付かず、さらに言えば内容どころかタイトルすら殆ど忘却しているからである。
神様が面白くないというテンプレ的な理由で忘れさせたのか或いはテンプレ的な師匠に課せられたこれまたテンプレ的な地獄の特訓で余計なことを考える余裕がなかったのか。
どちらかは分からないがとにかくそれが致命的だった。
彼は、アンドバリの指輪の力で操られているのである。
彼はレッドを召喚した後に竜騎士となりアルビオン空中騎行隊という遊撃部隊に配属されていた。
アルビオン各地を飛び回り反逆者との戦いに明け暮れる毎日。
駐屯地に戻り束の間の安息を得ようとしていた時に部隊長に呼び出され、そこでクロムウェルと邂逅。
スクエアメイジでありこれまたテンプレ的に優秀な竜騎士となっていたウルドはクロムウェルに目を付けられており、協力を要請されるもウルドはこれを拒否。
あえなく洗脳されてしまい、部隊ごとレコン・キスタに寝返ることとなった。
そんなこんなで参加したレコン・キスタで図らずも色々功績を立ててしまいアルビオンを掌握したクロムウェルによってシュヴァリエの位を貰い晴れて貴族の仲間入りを果たした直後のタルブ戦。
次々と撃ち落されていく竜騎士たち。
何処かうつろな表情でゼロ戦を見つめていたウルドは感情の窺えない声で部下に命令を下す。
「纏まっていれば鴨撃ちだ、いつも通り2騎一組の分隊で敵に当たれ。直線なら奴の方が速いが機動性ならこちらの方が上だ。くれぐれも奴の前には出ないようにしろ」
正体不明の強敵に動揺する竜騎士たちであったが上官であるウルドの冷静な姿を見て平静を取り戻す。
「行くぞ」
疾風の如き敵騎に追いすがらんと竜と騎士は空を駆けていく。
上空からブレスでゼロ戦を狙うも舞い散る木の葉の様にひらひら避けられお返しと言わんばかりの銃撃で次々撃墜される僚騎。
恐るべき敵を前に何の気負いも無くウルドが躍り出る。
損耗を避けるべく自分がゼロ戦を引き付けるためにである。
ただレコン・キスタの尖兵として、立ちはだかる眼前の敵を叩き潰すために。
そこにウルドの意思は存在しない。
急降下からのすれ違いざまの射撃で一騎がミンチとなる。
機銃の恐るべき弾速、長い射程と威力にもウルドは動じることなく分隊を組んでいた騎士と共になんとかゼロ戦の尻に付けるように追いすがる。
『レッド、ブレスはいらない。飛ぶことだけに集中しろ』
「グルォオオオ!」
レッドはただでさえ速度に劣る火竜なのだ。
それをウルドが不満に思ったことは一度も無いが下手に攻撃すればそれが隙になりかねないとフラットすぎる思考で判断。
レッドが了解の唸りを上げる。
不意にゼロ戦の機首が右上を向く。旋回しつつ高度を取りその高度を速度に変えるシャンデルと呼ばれる機動にて旋回してこちらの後ろに付こうとしているのだろう。
そうは行くものかと言わんばかりにウルドは魔法衛士隊もかくやというほどの速度で詠唱、『ファイアー・ボール』を発生させ、更にそれを分裂させ小さな火の玉を創り出して、タイミングを窺う。。
ゼロ戦がこちらの後方に付こうとして円を描くかの様な機動で旋回してきた丁度その時に、発生させた火球を後方に向かって散弾のようにやたら滅多らばら撒く。
牽制弾である。
それと同時にレッドに風を受けるように翼を広げさせて急減速し、ブンと尻尾を振るわせその勢いでその場で後方宙返りのように、くるん、と一回転し翼を折りたたませて急降下する。
回転してる時についでにもう一発、今度は『火球』をお見舞いしてやった。
急降下を始めた時にゼロ戦は機銃を使ってきたが、ばら撒かれた『ファイアー・ボール』と『火球』に驚いたのかあらぬ方向にそれる。
ウルドとコンビを組んでいた竜騎士は難を逃れたものの、離れた位置に居た1騎が流れ弾にあたり撃墜されてしまった。
急降下でスピードに乗りつつレッドに態勢を戻させて、徐々に高度を上げていく。
ついでとばかりにウルドは風を起こして速度を上乗せさせる。
ウルドが狙っているのは機銃の弾切れである。ゼロ戦の特徴たる2200~2500キロにも及ぶ長大な航続距離から考えてガス欠を狙うのは現実的ではないからだ。
性能で劣る竜に弾を回避されるという状況で相手は焦り、判断力を削がれて無駄弾が多くなっていくだろうが、何かの拍子にあたってしまう恐れがある。
ただでさえこちらは、乗ってるのも飛んでるのも生き物であるから疲労がどんどん蓄積されていく。
避ける為には相手の動きを先読みしつつアクロバットな機動で避けざるを得ないのだから更に疲労は加速する。
数以外は不利なチキンレース。
しかしウルドは焦りを感じない。感じられない。
レッドの飛行を風を生み出して補助し高度を回復、更に上昇していく。
味方は当初の命令通り2騎ずつゼロ戦に当たっていた。
遠い星ではロッテ戦術と呼ばれる、単機戦闘をさけ相互支援の元に格闘戦にて優位を保つことを目的に編み出された戦術である。
片方が援護・哨戒を行うことで片方が攻撃・追撃追撃に専念する。
無線機のような気の利いたものはこの世界にはない為聊か不完全なものではあるが精強無比と謳われるアルビオン竜騎士団の名声を更に上げる筈「だった」。
レコン・キスタに吸収されたため悪名を轟かす要因の一つになっていたものが今は見る影も無く無残な有様に成り果てていた。
風竜でも最大でも時速にして200キロ程の速度なのに対してゼロ戦は巡航速度ですら同じ程度の速度を難なく出せ最大速度に至っては機種にもよるが約560キロ程。
風竜も瞬間的にはもっと出せないことも無いがそれでもなお竜と戦闘機の間に存在する絶望的な速度差。
速度が出る風竜に乗る竜騎士たちが追い立て火竜に乗る者達が自身の魔法や竜のブレスで撃墜しようと試みるも、エンジンが唸りを上げて風竜すら追いつけないほどの速度で戦闘機動に入るゼロ戦。
対応しきれない竜騎士たちを情け容赦なく真正面から分隊ごと打ち砕いていく濃緑の悪魔。
ゼロ戦の素早く軽快な戦闘機道に対応しきれずに次々と撃墜されていく。20騎はいたであろう竜騎士団はすでにその数を半分程に減らしていた。
まだ戦闘を開始してから10分もたっていないのにもかかわらずこの惨状である。
もはや敗走といっても過言ではないこの状況でもウルドは諦めない。
ウルドに気付いたのかゼロ戦は猛然とした勢いで旋回しながら下降してくる。
そうはいかない、とウルドは詠唱を開始する。
使うのは風のスペル。
ウルドはあらかじめレッドには少し痛いぞ、と謝罪した。レッドからは訳が分からないという意思が飛んできたが無視した。
ゼロ戦との距離はかなり近づいている。敵機の機首がレッドの方を向く直前にウルドは遅延していた呪文を開放する。
グオ、と下から押し上げてくる衝撃。『エア・ハンマー』だ。ウルドはこの呪文で無理矢理レッドを押し上げ機銃を避けようと考えたのだ。
遅れてすぐ下方から聞こえてくる機銃の轟音。間一髪間に合ったようだ。
火系統ほど得意ではない風系統の魔法。
ぶつけるのではなく、押し上げるように『エア・ハンマー』を発動するのは流石のウルドにも骨が折れたが成功したのだから問題ない。
レッドは一瞬態勢を崩しかけたが即座に復帰し、怒りの思念を寄越してきたがこれが終われば牛を好きなだけ食わせてやるから我慢しろ、とウルドが平坦な思考を飛ばすと渋々引き下がった。
ウルドの後方に居た僚騎を行き掛けの駄賃とばかりに撃ち落としゼロ戦はそのまま下降していったため高度的にはこちらが有利だ。
大したアドバンテージでは無いがこれを利用し速度を上昇させる。
ウルドはレッドに翼を畳み身体を一直線にピンと伸ばすようにさせ、自身も態勢を低くして空気抵抗がなるべく少なくなるようにした。
一人と一匹は砲弾の様にゼロ戦に向かって急降下していく。
ゼロ戦もこちらに対抗しようと向きを変え機銃を撃ってくる。
ウルドはあらかじめ詠唱しておいた呪文で、風をおこしてレッドの機動を補助している。
レッドの背を内側に円筒の内壁をなぞるように螺旋を描きながら急降下していく。真っ直ぐ視界に捉えたゼロ戦がクルクルまわっていく。
機銃は掠りもせず距離が近づいてくる。
ウルドは手にしたハルバードを構え、ゼロ戦と丁度すれ違おうとするその時に力の限り振りかぶった。
ガキィン!
耳をつんざくような激しい音が鳴り響く。
コックピットに当てることは出来なかったが、コックピット後方の装甲にぶち当てることができ、その部分には亀裂が入っていた。
このまま追撃したい所だったがそうはいかなかった。
急降下とウルドの補助によって増したレッドの速度は時速にして300キロを越えていた。
対するゼロ戦は上昇しながらである為速度が落ちている。
およそ7、800キロ程であろう相対速度による衝撃はハルバードを取り落すには十分であり、それだけでなくウルドの右肩は外れ、右腕は嫌な音を立てて折れ曲がり、手に至っては恐らくは骨が粉々になっているだろう。
あまりの激痛に意識が遠のく。
激痛によってかウルドの感情が一瞬呼び起こされる。
痛い。痛い。なんでこんな。このファンタジー世界でゼロ戦とか反則だろ。
まだ死にたくない。機銃掃射でミンチなんて嫌だ。
でも、俺は、レコン・キスタで。
そうだ、レコン・キスタはハルケギニアを統一するのだ。ここで負ける訳にはいかない。
苦痛に歪み涙すら流していた表情が次の瞬間にはそれまでの無表情に戻る。
操られる前からもしものためにと心配性である父親から渡された秘薬。それまでの習慣からか操られた後も常に持ち歩いていたものを使う。
即効性の麻酔効果を持つ水の秘薬をがぶ飲みする。
痛みが無くなってきたところで肩を入れ、折れ曲がった右腕を真っ直ぐにし、手と合わせて形を整える。
ここで漸く回復効果のある水の秘薬を使う。
水魔法の心得が殆ど無いからかゆっくりと治っていく骨に違和感を覚えるも無視。
低空を飛びゼロ戦から身を隠し漸く戦線復帰したころに戦況が変っていた。
ふと上空を見上げてみると、竜が一匹も見当たらない。
もう自分以外は全滅してしまったのか。
ウルドは最悪の状況を思い浮かべつつも、さらにくまなく探していくと、ようやくゼロ戦と、生き残りの竜騎士を見つける。
ゼロ戦が一騎の竜騎士と戦っている。
あの速度から考えて恐らくは風竜。アルビオンの竜騎士団で叩き込まれるものとは違う、しかし卓越した竜捌き。
ワルド子爵か、とあたりをつける。
風竜を巧みに操るワルド子爵がぴったりと後ろにくっついているせいで、ゼロ戦は機銃を撃てていない。
なるほどハルケギニアには自信が操れぬ獣などいないと豪語するだけのことはあるらしい。
漸く勝ち目が見えてきた、とウルドは笑った。久しぶりに笑った気がした。
動きの悪い体に鞭をうって、レッドを上昇させる。ゼロ戦に気付かれないように、フネの影に身を隠しつつ、慎重に。
ドクン、とフラットだったものが波を打っている。
一時的に感情が呼び起こされた影響だろうか。
本人は気付いてはいなかったものの、ウルドには久しぶりに恐怖と闘争心が芽生えていた。
死の気配が知らず知らずの内に感覚を鋭くしていく。もっと速く。もっと熱く。
それは迫りくる死によって目覚めさせられた本能が、アンドバリの指輪によって封じ込められていた感情を呼び覚ましているという証だった。
火竜は嬉しかった。
今までまるでガーゴイルかなにかと疑うほどに感情が殆ど動かなかった主が、久方ぶりに感情を発露させたのをルーンを通して知ったからだ。
チャンスだと思った。
水精霊の魔力によって歪められた主を取り戻せるかもしれないからだ。
主の精神を破壊してしまうのを恐れ、ほんの少しずつ自身の誇る火精霊の魔力で水精霊の魔力を中和するも全く先が見えない状態。
この土壇場で漸く、漸く見えてきた光明。
あの異形の竜に感謝してやっても良いとすら思っていた。
しかし、主の生命を奪わせはしない。
今は生き残れるように最大限の力を出して見せよう、と竜は神経を研ぎ澄ませていた。
うまい具合に雲に隠れられたウルドはゼロ戦とワルドの戦闘を観察していた。
レコン・キスタ旗艦たるレキシントン号の上空に行きたいゼロ戦と、そうはさせるかといわんばかりのワルド。
彼らは壮絶に尽きる鬼ごっこの真っ最中で、虚を突いてゼロ戦がワルドを機銃で撃てば、ひらり、と本職の竜騎士顔負けの機動で器用に避けていく。
また、ワルドが隙をついて、呪文―恐らく『エア・ニードル』だろう―でゼロ戦の濃緑の機体装甲を穿とうとすれば、先ほどのウルドのようにバレルロールの機動を取って、側転するかのごとく機体位置を横にずらして避けてみせる。
間違いなくゼロ戦パイロットの技量は先ほどよりも向上しているとウルドは確信した。
下手に動くと墜とされかねない、そんな戦闘を前にウルドは精神を必死に集中させていた。
先ほど使った麻酔薬の効果で少しボーっとした感じがしている。
右腕はまだ動かせないので、取り落したハルバードの代わりに抜き放った愛用の剣は左手に持っている。
精神力も先ほどの大盤振る舞いで心もとない状況だ。
それでも、と機を窺っていた。
ゼロ戦はワルドとのドッグファイトに夢中でこちらには気付いていない。
今だ!
とレッドを駆って、矢が放たれたように雲間から飛び出していく。
速度は重力の力を借りてぐんぐん上がっていく。
今度こそはと心に決めて敵機に向かって突撃する。
不意に、ゼロ戦が急に失速しワルドを追い抜かせた。
これは不味い、と思いウルドは牽制代わりの『火球』を詠唱してワルドを援護しようとした。
しかしゼロ戦は一向に機銃を撃たず、遅れて現れた火球を避ける為に回避機動をとった。
絶妙なタイミングだった。撃っていれば今頃、ワルドは地に墜ちて居たかもしれないほどに。何故、撃たなかったのか?
ウルドにはすぐに見当がついた。
撃たなかったのではなく、撃てなかったのだ。
弾切れだ。待ちに待った弾切れが漸く今ここで到来したのだ。
レッドに今まで使うなと言っていたブレスを解禁させる。
「出し惜しみなしだ、全力で行くぞ」
ウルドが言うと、レッドは心得たとばかりに低く唸り声を上げた。
一段階上がる速度。
回避することを放棄した捨て身の全速力。
レッドの口が開き三連発でブレスを打ち出す。
突如として現れた狼藉者に狼狽える素振りを見せる敵騎。
すかさずウルドによって雨霰と打ち込まれる火の玉のシャワー。
恐るべき技量。
失速、加速、反転。
ありとあらゆる業を持ってして必死に避け続ける濃緑の機体に遂に一撃が突き刺さる。
当たり所が良かったのか爆発炎上はしなかったが失速し高度を落としていく機体。
此方の速度は全く落ちておらず徐々に距離が近づく。
後方からワルドも追い上げてくる。
ワルドの『エア・ニードル』で更に機体に穴が開いていく。
不意にゼロ戦の涙滴型風防が開きピンクブロンドの少女が顔を出す。
突然の奇行に面喰う。
しかし此方にとっては都合がいい。
更に下がるゼロ戦の速度。
それでも、ウルド、ワルドの魔法にレキシントンからの砲撃を避けきるパイロットに敬意を送りたい。
ついでにアクロバットな機動に異様な体勢で難なく耐える少女にも。
もう少し、もう少し。
遂にレッドがゼロ戦を追い越したその時ウルドは鞍から延びる体を固定していたベルトを切り裂きレッドの背から飛び出した。
ごく一瞬のフライの魔法を発動させ滞空。
右側の主翼の端っこに未だ感覚の鈍い右手で如何にか掴まる。
突然の凶行で驚くレッド、パイロットの少年を尻目に残り少ない精神力で『ブレイド』を発動。
「ぬぅうんん!」
雄叫びのままに放たれた一撃は、片腕でしかも安定していない体勢だったからか翼を断ち切ることは無く。
しかし、致命的な歪みを与えたことでゼロ戦が制御を失い始める。
レコン・キスタの前に立ちはだかる強敵を何とか墜落させることができると確信し、使い過ぎた精神力の反動で意識が落ちる直前。
ウルドは見た。
「
高らかと謳い上げられたルーン。
直後膨れ上がる閃光。
白一色となった視界の中に少しだけ見えた、見えてしまった。
所々爆発炎上し高度を下げていく艦隊。
(……負け、た?)
その思考を最後にウルドは意識を失いふき飛ばされた。
超簡単オリキャラ紹介
ウルド
オリ主。竜騎士。洗脳済み。
レッド
オリ主の使い魔。火竜?