古い銃身後退式散弾銃を持ったおっさんが走る
ひいひい言いながらも走る
希望が残っていると信じて
パンデミック
ゾンビがそこかしこにいる
絶望的な状況
やさしい少女を守るために
慣れない高級散弾銃を撃つ
重くて反動の強い銃を撃つ
失われた日常
消えゆく文明
そんな中
ドングリクッキーでほっこりしつつ
彼はなけなしの勇気を振るって撃つ
終わりゆくセカイを認識しながらも
なにか美しいものは見えますか
なにか素敵なものは見えますか
「大井さん! 大井さん! 死なないで!」
嗚呼、北上さんの声が聞こえる。
球磨さんと多磨さんが、彼女をトラックの中へ押し込もうとしていた。
私はのろのろと起き上がる。
最後のトラックはまだ発進していないようだ。
猟友会のご老人たちは既に確認出来ず、決死隊の自衛官たちもどこにいるのか分からない。
不味い、命の源が枯渇しつつある。
他のトラックは、『感染者』の包囲網を突破出来たのだろうか?
木曾二尉は上手くやったのだろうか?
嗚呼、生命力がどんどんと流水の如く失われてゆくのを感じる。
北上さんを逃がさなくちゃ。
彼女はまだ中学生なんだし。
私のような、先の無いアラフォーなおっさんとはまるで異なる存在だ。
「北上さん、多磨さんたちについて早く逃げなさい。」
「どこへ……どこへ逃げろっていうんですか、もう日本は……いえ、世界は……。」
「それでも、貴女に生きて欲しいのですよ、私としては。」
「大井さん!」
最後の気力を振り絞り、私は駐屯地へ迫りつつある『感染者』たちへ発砲した。
ははは、撃ち放題じゃないか。
トラックの発進する音が聞こえて来る。
自己満足的な達成感さえ覚えながら、私は手持ちの散弾をどんどん『感染者』たちへ撒き散らした。
やさしい死神たちへ、無情な鉛弾を叩き付けてゆく。
それが生きてきた証と信じて。
最初に医療機関がヤられたらしい。
風邪かインフルエンザなどで倒れたと思われた『感染者』たちは意識を取り戻すと、笑顔で医師や看護師などに近づいて『接触』したという。
まるで、ゾンビ映画のような展開だ。
ゾンビのようなモノたちは、それまで語られてきたゾンビとはかなり異なる存在だった。
腐っている訳でない。
狂暴な顔も見せない。
笑顔で近づいてくる。
それだけなのだった。
ゆっくりゆっくりやって来るのはゾンビ的だったが、『彼ら』は別に噛んだり引っ掻いたりするでなく、ただただ他者に『接触』してきたと逃げ出してきた人は語った。
『接触』された人間は生命力をなんらかの形で吸い取られ、潜伏期間を経て同業の『感染者』化するそうだ。
私は蒸し暑ささえ感じる日がちらほら出だしたある日、『球磨てつほう店』にいた。
家の裏手にある畑の鳥獣害が洒落にならなくなってきたので、空気銃か散弾銃を持とうと思ったのだ。
周囲の家でも困っているが、彼らは総じて高齢者たち。
行政に訴えてもぼやかされる日々だ。
罠を設置してもダメ、エアガンで撃ってもダメ、矢で射てもダメ。
ダメダメ尽くし。
やってられない。
そうだ!
鳥獣による被害者である私が、同時に駆除する側となってしまえばいい。
それが、私の銃砲所持目的だ。
昔のように無免許で空気銃を持てる時代ではないから、やや病的で面倒極まりない手続きの後に銃火器を所有するしかない。
周囲に猟友会の人はいないし、互助団体というよりも同好会めいた彼らがあらゆる負荷を背負う現状は政府と警察の共謀による仕打ちだから、環境省と農林水産省とが猟師を募集する事態はマッチポンプにさえ見える。
しかも、免許皆伝……いや免許取得後に放置プレイときた。
それでなにかやらかしたら、他の免許取得者に多大な迷惑をかけてしまう。
なんてこったい。
不合理非合理な仕打ちに耐え、それでもケモノたちと戦う。
不条理系小説みたいな展開だ。
権力者側の印象操作は実に狡猾で、警察へ文句を堂々と言うような人へ彼らが銃砲所持させる訳も無いから、卑怯千万な振る舞いにさえ思われる。
だが、大抵の人は警察を支持するだろう。
汚職や腐敗や隠蔽や天下りなどが、目白押しであっても。
庶民はたぶん愚かしい存在なのだろう、警察にとっては。
皆、よく訓練されている。
大本営発表方式は、現在進行形で有効活用出来る方策だ。
人は歴史から学べないのだろう、たぶん。
店主の球磨さんはとても穏やかな感じの人で、銃器に造詣のある人物だった。
頂き物ですが、とドングリクッキーを出される。
素朴で歯触りがサクサクして旨い。
好みの味だわい。
木の実の恵みだ。
森の香りがした。
実に素晴らしい。
雑談をしている時に、大学生らしき若者たちが我が物顔で店内に入って来た。
彼らは五人いる。
散弾銃を渡せボルトアクションライフルを渡せ空気銃でもいいから寄越せ金は出すからと、盗賊だか強盗だかなんだかよくわからない感じで彼らはとんでもないことを言い出した。
無論、店主がそんな暴言に応じる筈もない。
私も、狂人たちがやって来たのかと思った。
彼らは意外と紳士的だったのか、一人が手に持った携帯端末を操作し、我々に動画を見せる。
それは、ニューヨークと呼ばれる場所の繁華街だった。
昔行ったことのあるその場所は、阿鼻叫喚渦巻く戦地のように見える。
映画の撮影でもしているんじゃないかとさえ思えるほどの、それは地獄に思えた。
所々火災が発生していて、時折発砲音さえも聞こえる。
悲鳴が複数聞こえ、祈りや断末魔ではないかと考えられる声さえ聞こえた。
カメラがぶれている。
持っている人間が震えているのだろう。
ゾンビ、というにはあまりにもキレイでやさしいモノたちが、人間に近づいては『仲間』を増やしているように見える。
彼らは噛みもせず、引っ掻きもしない。
そして、もう一人が違う動画を見せた。
どうやら、テレビ局の生中継のようだ。
それは、東京にある新宿駅らしかった。
人々が逃げ惑い、惨状が広がっている。
倒れている人も画面のあちこちにいた。
こちらも、なにかの撮影風景に見える。
続けて三人目が、政府発表の動画をこちらに見せてくれた。
やり手らしき官房長官が、淡々と政府見解をマスコミに発表している。
ゾンビのようなモノは、『感染者』と呼ばれていた。
政府は緊急事態宣言したとのことだ。
不用意に外を出歩かないようにと、彼は発言をそう括(くく)った。
普段のったりこったりして対応が後手に回っている感のある政府が、意外にも素早く適切に対応しているように見える。
報道機関の人々の一部もそう思ったらしく、そうした質問をしていた。
のらりくらりと質問をかわしながらも、彼は素早く質問を締め切った。
球磨さんが警察へ電話を掛ける。
現状把握するためにだ。
確認することは大事だ。
警察署は市民からの問い合わせや出動要請などで、てんやわんやらしい。
警察官を二名、今日中に銃砲店へ派遣すると向こう様は請け負ったとか。
まあ、そうなるな。
不用意に人を店内へ入れないようにとの、『お願い』があったみたいだ。
彼は苦笑いをしている。
学生たちは以降もなんやかんやと理屈を並べて粘っていたけど、警察官たちがやって来て無情にも勇者たちを追っ払ってしまった。
まあ、ああいう英雄願望のある子たちが銃を暴発させたり人間を撃ったりしても、責任問題は銃砲店店主に行きそうな感じがする。
若手とおっさんによる二人の警察官たちも、それを指摘した。
彼らはとっても仲がよさそうに思える。
どっちが攻めで……いや、こんな不謹慎なことを考えてはイカンイカン。
銃の事故は人が死ぬ可能性も高いしな。
更に状況は悪化する。
なんと、医療機関の多くが『感染者』たちの巣窟化してしまったとか。
倒れてしまった複数の患者を受け入れた病院から、順次機能不全に陥っていったという。
それは数日前から発生し出していたらしく、我々は知らない内にパンデミックのセカイへ突入したようだ。
幸い、まだライフラインは生き残っている。
その上、球磨さんは災害用に備蓄をきちんと用意していた。
銃砲店へ近づく人はちょこちょこ存在したが、制服姿の警察官を見て殆どの人が立ち去った。
店の前に白黒のパトロールカーがあるのだから、まともな判断力を有する人が喰ってかかることも無いだろう。
そう思っていた。
だが、そういう『良識』がある人ばかりでも無いようだ。
嘆かわしい。
中にはやたらと粘る人もいたが、なにも知らない素人に銃器は扱えないと追い払われている。
「その内、その素人が鉄砲を撃つ世界になるかもしれません。」
じわりと来るが如くに爽やかな笑顔で、球磨さんはそう言った。
私は一人暮らしをしている球磨さんの手伝い役にとなし崩しに警察から『お願い』され、まあ、緊急事態だからこういうのも致し方無いかと思ってそれを受け入れた。
『感染者』に銃器は有効らしく、球磨さんは警察の指導の元に猟友会の人や銃砲所持資格者たちへ銃器や弾丸を提供する。
後々事態が収拾されたら精算するとのことで、彼は帳簿にきちんと細かく記入していた。
「平和になった途端に御用、というのは勘弁してもらいたいですからね。」
近くにいた権力の猟犬たる人たちは、それを聞いて苦笑していた。
判断するのは、彼らではない。
お偉いさんたちなのだ。
罪を判断するのは、その座を得るために周りを蹴倒した人たち。
頭がよく、小さな頃から蹴落とすことばかりやってきた人たち。
そんな人たちが権力を有した時、庶民のことを考えてくれるか?
マスメディアの一員になった時、庶民のことを考えてくれるか?
庶民は無邪気に考えたりするが、彼らもそうだという保証はどこにも存在しない。
誠実な商売をしている店が大きくならない理由など、少しも考えようとはしない。
商売上手の意味さえ知ろうとしない。
実に不思議なことだ。
大衆は利用されることを己の安全策とし、いざ不要品と断じたら間断なく斬り捨てるのだろう。
それが庶民の知恵なのだとしたら、なんだか厭だ。
私たちのいる市は有能な人が多かったのか治安面ではかなりよかったが、他所から暴徒たちが徒党を組んでやって来た。
ユー・アー・ショック!
流石にモヒカンの人は見かけない。
「まさに人間の敵は人間ですね。」
球磨さんが冷ややかに言った。
世紀末な人々は独自の不思議論理を鼻高々と引っ提げ、我らのいる銃砲店を白昼堂々と襲ってきた。
彼らは、如何にも暴力が好きそうな風貌をしている。
殴ったり蹴ったりが大好きな人々なんだ、おそらく。
殴った後で、これが愛なんだとかお前のためなんだと真顔で言うのかもしれない。
既にここは平和な日本でなく、頭のイカれた人たちが闊歩する異形のセカイへと成り果てつつある。
結局、古い銃身後退式の高級な半自動式散弾銃を人間に向けて撃つ破目に陥った。
警察官の職務質問を鼻で笑って突撃してきた。
公務執行妨害という言葉も彼らには響かない。
私は天才設計者の生み出した銃を構える。
ブローニングのオート5という銃らしい。
操作自体は練習してきたが本番は初めて。
他の銃器は経験者たちに供与されている。
もう少しで廃棄される予定の銃だったのだとか。
かなりお高そうなのだけど、なんとも勿体無い。
日本の銃砲所持許可制度に於ける不条理不合理が、私には幸いしたのかもしれぬ。
ずしりと重たい銃を肩付けして撃ったら、ガツンとする反動が肩に伝わって来る。
鉛弾が容赦なく敵対者の皮膚に食い込み、肉体内部へ入り込んで彼の死を強いた。
バールのようなモノを振り上げた暴徒は、呆然とした顔つきのままモノへ変わる。
どさりと倒れた。
人のまま死んだ。
人のまま死ねてよかったのだろうか?
これで私は立派な殺人者だ。とほほ。
一応、正当防衛にはなるらしかった。
その晩、胃がむかむかして非常に気持ち悪くなり、私は何度も何度も吐いた。
球磨さんや生き残りの警察官たちと共に避難所の人々の元へ向かい、市の郊外にある自衛隊駐屯地へ落ち延びることになった。
既に電力は供給されていないため、連絡すら出来ない状況だ。
それでも希望を捨ててはならないと、警察車輌で暴徒たちへ立ち向かった。
人の敵は人、か。
古い散弾銃をぶっ放しながら、話し合いすら出来ない状況に悲しくなってくる。
ダブルオーバックな九粒弾が、容赦なく敵対者たちの肉体に食い込んでいった。
これも一種の害獣駆除になるのだろうか?
駐屯地の司令は冷静沈着な人らしく、自衛官たちは整然と行動していた。
一等陸佐、というから、旧軍でいうと大佐に該当するそうな。
流石の暴徒たちもここへは来まい。
大半の人がそう思っていたようだ。
私もそう思っていた。
だがしかし。
頭がイカれると、人は斜め上の行動を取るものらしい。
彼らは犯罪者という意識すら無いのか、銃器を寄越せと延々主張した。
そうしている内に、彼ら自身が呼び水になったのか『感染者』たちが暴徒たちへ『接触』を開始する。
やがて、正門の前には何人もの『感染者』たちが現れるようになった。
彼らはいずれもニコニコとしていて、時折吸い込まれそうにさえなる。
気持ち悪い、と言う人はいなかった。
そういう雰囲気ではないのだ。
まるで基地解放日にやって来た一般市民のように、彼らはそこにいる。
あれ程吠え猛っていた暴徒たちですら、やさしい顔立ちになっていた。
まるで別人だ。
「なんだかこわいです、大井さん。」
ぎゅっと私にしがみつく北上さん。
彼女は市内の中学校に通っていた。
家族と連絡が付かないまま、避難所暮らししていたそうだ。
彼女の微笑みが、子供たちを引っ張る原動力になっている。
とても眩しい存在だ。
北上さんが、拾ったドングリを使ってクッキー作りすると言い出した。
丁度先日、学校の授業で作り方を習ったらしい。
駐屯地は比較的安全な場所のようだが、こうした状況に苦しむ人は確実に存在する。
そういった現状打破の一環としてお菓子作りに挑戦するのだと、彼女は熱く語った。
いいなあ、若い子の情熱って。
彼女が作ったドングリクッキーはやさしい味わいで、自衛官たちにも好評であった。
もう、あの日には帰れない。
私はどうでもいいが、北上さんや子供たちが気がかりだ。
事態が悪化したと知ったのは、ある夜のラジオ放送が決め手であった。
手回し式の携帯型ラジオは、世界各地の政府が崩壊したことを告げた。
きれいな声。
やさしい声。
アニメに疎い私は知らないが、球磨さんと北上さんによると大変人気のある人が語っているそうだ。
尊いらしい。
東京は、既にどうにもならない程に壊れてしまったと彼女はそう語る。
泣きながら原稿を読んでいるらしい女性声優は、これが最後の放送になるだろうと言っている。
発電室がもうどうにもならないという。
放送局に残っているのは自身を含む三人だけだそうで、覚悟はしていたつもりだけど終わりが近づくのはとてもこわいと彼女は嗚咽(おえつ)を交えつつ言った。
これを聴いて、嗚呼このセカイはもうじき終わるのだと、すとんとナニかが下りてきた。
ならば、出来る限りのことをしよう。
北上さんや子供たちや生き残っている人たちのために。
そして、ラジオは不意にその音を発しなくなった。
女性が発する情報は急に途切れ、終末を知らせる。
どんどん『感染者』が増える。
やさしい笑顔を浮かべた死神。
勇者たちも仲間になっていた。
血まみれな服をまとっている。
駐屯地は完全に包囲網の中だ。
自衛官たちの表情はみな固い。
そして、異常事態がいきなり訪れる。
駐屯地の正門が何故か開かれていた。
わらわらと現れ、ぞろぞろと中に入ってくる『感染者』たち。
粛々と。
微笑みを浮かべながら。
やらせはせん!
やらせはせんぞっ!
発砲音が複数聞こえる。
先日知り合いになった多磨さんも、勇敢にポンプ式の散弾銃をガッシャンコガッシャンコさせながら撃っていた。
勇ましい女性だ。
しかし、多勢に無勢。
どんどん不利になってゆく。
なんとか押し返し、正門を再び閉じた。
このままでは、じり貧に陥るばかりだ。
次の日。
トラックで『感染者』の群れを突破し、他所の駐屯地へ逃げようという案が採択された。
そちらの方が防衛戦向きらしい。
そういう構想自体は以前からあったという。
確かに、このままではどうにもならないな。
木曾二尉率いる部隊と連携し、『感染者』を引き付けるための決死隊の募集が行われた。
私は挙手し、捨て石になることを選ぶ。
アラフォーのおっさんが命を捨てるには、いい頃合いじゃないか。
人のために死ねる。
いいじゃないか。
無意味じゃないかとさえ思っていた命を、最後に有意義に燃焼出来る。
それが、私が世界へ貢献出来る最後の仕事だ。
「馬鹿です。大井さんは大馬鹿者です。」
ぽろぽろ泣きながら、北上さんはそう言った。
女の子を泣かせてしまう私はなんて罪作りなんだとふざけたら、思いっきりグーで殴られた。
うん、いいパンチだ。
自衛官六名、民間人三名。
それが引き付け役の内訳。
三名の内、二名は猟友会のご老人たち。
もうここでいいと言い切った勇者たち。
さてと。
『感染者』たちよ、死に候(そうら)へ。
【四級管理神、メリケンのホームセンターへ行って買い物す】
あら、いらっしゃいな。
これ、プレゼントなの?
嬉しいわ、あなたが焼いたドングリ(エイコーン)のクッキーね。
これ、みんながオーガニックでおいしいって喜んで食べたのよ。
ニホンのジョーモンジダイに作られたのと同じ作り方なのよね?
一万年も昔から、お菓子(スイーツ)は食べられていたのねえ。
これ、お店で売ればいいのに。
あたしたち、みんな買うわよ。
また牧場(ランチ)にコヨーテが出たの?
小害獣(バーミント)駆除も大変なのね。
うちの店長(ボス)だったら、あなたの牧場へ喜んで駆除に行くわよ。
あの人、そういうのがとっても得意だし。
行かせよっか?
あはは、あの独特の冗談がねえ。
冗談が下手だから、ちょっと困るかしら。
今日はなにを買ってく?
弾(アモ)は全品二割引、レミントンなら三割引にするわ。
ほら、レミントンはダメになっちゃったでしょ。
店長がキレちゃってキレちゃって、そりゃあもう大変だったわ。
.22LRの五五〇発入りボーナスパックが在庫過剰になっちゃってね。
売れない小銃(ライフル)とか、どうしようって話になったの。
おまけに、かなり古い弾が倉庫からたんまり出てきちゃってね。
.475ウィルディなんてどうすんのよ、って感じだし。
そりゃあもう、変な弾もごろごろ出てきたのよ。
見たい?
あはは、あなたって面白い人ね。
前任かその前の店長が在庫管理をきちんとしていなかったのよ。
きっと、そうだわ。
ネットオークションにも出品したけど、なかなか売れなくてね。
どう?
あなたはよく買ってくれるから、五箱買ってくれたら古い弾をおまけするわよ。
全部あげてもいいわ。
あっても困るだけよ。
フェデラルやウィンチェスターのバリューパックも、三割引にするわ。
あら、なかなか交渉上手ね。
いいわ、ウィンチェスターの.38スペシャルのバリューパックも三割引にするわ。
ついでに、レミントンの在庫も買ってくれないかしら?
ちっとも売れなくてねえ。
広告を打っても、お客さんたちの反応は今一つ。
悲しいことだわ。
ええ、こっちよ。
ナイコン(ニコン)の望遠照準器は一割引ね。
じゃあ、買って欲しい商品の説明をするわよ。