NARUTO 六道へ繋がる物語   作:アリアンキング

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第十一話 戦いの終わりと見つけた答え

サチと朔麻の戦いが始まった頃。再不斬とカカシ、ナルト達と白の戦いも動きを見せる。

 その中で不利な状況を脱する為、サスケは今自分が出来る中で最大の威力を持つ術。火遁 豪火球の術を自分達を囲む氷に向かって放つ。

 

 

 しかし、特殊な術で生成された氷には、その術を持ってしても破壊する事は不可能だった。そんなサスケに白は容赦なく現実を突き付ける。

 

 

「無駄ですよ。その程度の火力では、僕の秘術は破る事は出来ません」

「なら、これはどうだ。影分身の術!!」

 

 単発で駄目なら数で押し通す。ナルトは複数の分身体を作り出し、四方八方へ散らせて氷の檻から脱出を計った。とりあえず、外に出なければこの状況は変わらない。その場合、サスケ一人を残す事を不安に思ったが、自分が一刻も早く姉かカカシと合流すればいいと考えていた。だが、そんなナルトの希望は白の冷徹な攻撃で打ち砕かれる。

 

 

「例え、数で挑んでも同じ事。実体を持つ影分身であっても、攻撃を受ければ消える。それ以前に君の自由を僕は、決して見逃さない」

「ちくしょう。一体、どうすりゃいいんだってばよ」

 

 

 

 打つ手の無い絶望的な状況に、流石のナルトも諦めかけていた。今になって、自分が取った軽率な行動に後悔するがあとの祭りだ。あの時、サスケが言ってた様に外に残っていれば…こうはならなかったかもしれない。

 

 

「いっその事、降伏してください。幸い、まだ戦いは始まったばかり。今、君達が引けばそれで終わります。無論、一人の命は消えるでしょうが…君達は助かる事が出来ますよ」

「何を…言ってやがる? 大体、そんな事を出来る訳無いだろうが。それを言うならお前達が引けばいい」

「そうだってばよ。第一、お前らはガトーとかいう悪党の手下なんだろ。何であんな奴の言う事を聞くんだよ」

「別に僕達はあの男の手下に成り下がった訳ではありませんよ。ただ、僕は大切な人の為に戦う。そして大切な人の夢を叶えて、その人を守り死ぬ。それが僕の行動理由です。それ故、君達が引かず立ちはだかるなら…僕は君達を一切の情けをかけずに殺す」

 

 

 何か策は無いか?と模索する二人に、白は降伏を要求した。いきなりの事に困惑するナルト達だが、当然そんな要求を飲む訳がない。すると白は…静かに己の行動理念を語った後、凍てつくような殺気を二人へぶつけた。

 

 

 

 

「クククッ…。白の奴、やっとその気になったか。あいつは甘い部分もあるが、それを補う冷徹さも兼ね備えてる。てめえが連れたガキ共には…無いもんだ」

「確かに…お前の言う様にあいつらには、忍として徹しきれてない。だがな・・それでも俺の大事な仲間である事は変わらない。悪いが、再不斬。この勝負は一瞬で終わらせてもらうぞ」

 

 

 嘲る様に二人を見下す再不斬の言葉を、彼は否定する事が出来なかった。だからといって、仲間を見殺しにする訳にいかない。カカシは隠していた写輪眼を出そうとした時、再不斬がそれを阻止するべく動いた。

 

 

「…ぐっ、口ではどう言っても‥やはり写輪眼は怖いか?」

「安い挑発だな。それに忍の奥義は何度も見せるもんじゃねえだろ」

「だとしたら、感謝しろ。普段は見せない物を二度も拝めるんだからな」

「ほう‥ それは光栄な事だな。だが、調子に乗るなよ。例え、俺を倒してもお前は白に絶対、勝てない」

 

 

 再不斬の攻撃を受け止め、得意とする挑発で相手を手玉に取ろうとするが…敵もさるもの。流石に同じ手は通用しない。それでも強気の姿勢を崩す事無く、カカシは再不斬に言葉を吐く。しかし、その言葉にも動じる事なく、再不斬はカカシに言葉を返した。

 

 

「そうかい。その分だと、あの子はお前らにとっては…特別な存在らしいな。だが、他人の自慢話を聞いてやる程、俺も暇じゃないんだ。そろそろ始めるとしよう」

「フン 釣れない奴だな。まあいい。言っとくが‥俺も写輪眼の対策をして来ている」

 

 

 自慢気に喋る再不斬の話をカカシはどうでもいいと突っ撥ねた。そんなカカシに少し苛立ったが、深呼吸してから再不斬は橋を覆う霧を更に深くした。それによって、すぐ目の前さえも見えなくなった。単純な策だが、この状況では最悪の一手である。これを利用して奴はタズナを狙う事もあれば、別に戦っているサチやナルト達を狙うかもしれない。また視界が悪い中、迂闊に動けば逆に自分が狙い撃ちにされかねない。

 

 

「どうだ? シンプルながら良い手だろう。どんなに優れた力を持つ写輪眼でも、相手が見えなければ意味がねえ」

 

 

 彼の言葉と同時に、濃厚な霧の先から無数の手裏剣が飛んできた。これに素早く反応したカカシは、手にしたクナイで手裏剣を打ち落とす。その手裏剣は全てカカシの急所を的確に捕えており、写輪眼を出していなければ…今頃自分は致命傷を負っていた事だろう。そして、彼の背後に音も無く姿を見せた再不斬が言葉を発する。

 

 

「よく防いだな。流石、写輪眼のカカシと行った所かね。だが、次の攻撃はどうかな?」

 

 

 声をかけられるまで、再不斬の存在に気付かなかったカカシは慌てて後ろに振り向いた。だが、振り向いた先で見た物に彼は更に驚愕する。カカシが見た再不斬は目を閉じていた。無論、こんな濃霧の中では目を開いても意味が無いとはいえ、これでは再不斬も碌に行動が出来ない筈。それなのに先程、仕掛けて来た攻撃は確実に自分へ向いていた。此処でカカシは、再不斬の得意とする戦法を思い出す。

 

 

「そうか…。お前は音で相手を察知するのが、得意だったな。どうりで目を瞑って攻撃が出来る訳だ」

「クククク…。ご名答、その通り。俺は僅かな音で相手の場所が分かる。つまりは…だ」

 

 

 ふいに遠くなった再不斬の声で、奴の企みに感づいたカカシは全速力でタズナとサクラの元に向かった。そして案の定、二人を狙っていた再不斬の前に、追い付いたカカシが前に躍り出て二人を庇った。再不斬もカカシがこうすると分かっていたのか、動じる事なく手に持つ大刀を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 片や、白と戦うナルト達は変わらず防戦一方であった。あれこれと手を尽くしても、こちらの攻撃は届かず、相手の攻撃だけが自分達を傷付けて少しずつ、体力を奪っていく。そんな中、白は戦いの中で起きたある変化に気付いていた。戦況は白に有利なのは変わらない。しかし、サスケは仕掛けた攻撃から仲間を庇いつつ、それでいて致命傷を避けている。当初、動きが読まれているのかと思ったが、それなら自分の攻撃を受ける事は無い。胸中に生まれた違和感に戸惑いながらも攻撃を開始した。

 

 

「…二人もそろそろ限界でしょう。次で終わらせてもらいます」

 

 

 悪戯に戦いを長引かせては、無駄に彼らを苦しめるだけだろう。それにサスケの動きも白は、気になっていた。今は有利であるが、万が一の事もありえる。その不安から白は勝負を急ぐ。

 

 

 だが、白の不安は見事に的中した。自分達を仕留めるべく攻撃に備えて、鋭く神経を研ぎ澄ませて凝視するサスケの目は、初めて白の攻撃を捕える。そして隣にいるナルトを抱えると、その場を移動して彼の攻撃を躱して見せた。

 

 

 

「…馬鹿な!? どうやって僕の攻撃を‥。その目、そうですか。君はあの一族の人間でしたか」

 

 

 まさかの出来事に白も堪らず取り乱した。何故、サスケは自分の攻撃を見切ったのか。それは彼の目を見て、納得した。驚く事にサスケの両目は、カカシと同じ様に紅い瞳へと変化していた。そう、此処に来てサスケは己の一族に備わる力に目覚めた。もう後が無い土壇場に追い込まれた事が、開眼する切っ掛けとなったのだ。

 

 

 

 そして白は内心、焦りを抱く。あの目が開眼したという事は、サスケが自分の攻撃を受ける事は無いだろう。ならばと…次に白が狙いを定めたのは、自身の攻撃で気を失っているナルトであった。サスケの後ろで倒れるナルトを仮面に隠れた冷たい眼で見つめると、千本を構えて氷から飛び出した。

 

 

 繰り出された白の攻撃を、サスケは自分を狙った物だと思って避けるが…本当の狙いはナルトだと知って、サスケは焦りの表情を浮かべた。そして、踵を返してサスケもナルトの元に駆けて行く。どうか間に合ってくれ。そう思いながら彼は足に力を籠めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朔麻との戦いに完全決着を着けたサチは、ナルト達の元へ駆け出した瞬間。辺りの霧が濃くなった事に警戒して、その場に立ち止まる。これが再不斬が使った霧隠れの術である事は、サチもすぐに分かった。

 だが、それでも今の状況までは分からない。一体、他の戦いはどうなっているのか彼女は不安を抱く。

 

 

 すると視界の先で薄らと動く二つの影を見て、サチは走り出す。あれが敵か味方は判断が付かないものの。此処でジッとしてるよりは、マシであると判断しての行動だった。見失わない様、影を追って行くとその先にタズナ達の姿を発見した。そして、二人を守ろうと前に出たカカシと大刀を振り下ろそうとする再不斬を確認したサチは、すかさず術式クナイを投げ付けて彼の元へ飛んだ。

 

 

 突然、目の前に現れたサチに再不斬は驚き、後ろに飛び退いた。思わぬ助太刀にカカシは、安堵の息を吐いた。彼女が此処にいるという事。それは敵である朔麻との戦いに勝利した事を意味する。また逆に再不斬は苦々しい顔でサチ達を睨みつける。

 

 

 

「…てめえ、朔麻と戦っていたんじゃねえのか? どうして…此処にいやがる!?」

「決まってるでしょ。彼女との戦いに勝ったからよ。それでカカシ、今はどういう状況になってるの?」

「悪いが…この霧で分からない。だが、あまり良い状況で無いのは確かだ。サチ、お前はナルト達の所へ行け。こいつは俺が引き受ける」

「…分かった。じゃあ、私は二人を助けにいくわ」

「ふざけるな。それを黙って、見逃す訳ねえだろう」

 

 

 カカシに言われ、二人の救援に向かうサチを阻止しようとする再不斬をカカシが止める。仲間を失い、戦況が変わった事で再不斬から、余裕が消えていた。朔麻が負ける事は、少なからず予想はしていた。それでもある程度の手傷を負わせるだろう。そう思っていたが、サチはほぼ無傷。このままでは、白であっても負ける可能性が高い。

 

 

 この戦況を再び覆すには、自分がカカシを討ち取って紅雷を消すしかない。だが、それはカカシも同じである。彼も再不斬との戦いに決着をつけるべく、隠していた切り札を出す事を決める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふとした時、意識を取り戻したナルトは目に入った光景に唖然とした。彼の前には、体中に千本が突き刺さり至る所から、血を流すサスケの姿があった。何故、こうなったのか。それは考えるまでもなく、自分を庇った為だとナルトは理解した。

 

 

 未だにその現実が受け入れられず、ナルトは震えた声で言葉を紡ぎ出す。そんなナルトにサスケは、弱々しい口調で返事を返す。

 

 

「知る・・・か・・よ。何せ…体が勝手に動い‥ちまったんだよ。あいつを… あの男を殺すまで…死ねないと思ってたのになぁ。此処で‥俺も終わりか。お前は…死ぬんじゃねえ‥ぞ」

「サスケェェェッ!! おい、返事をしろよ。おいってば・・」

 

 

 掠れた声でそう言い残すと、彼は力なく倒れた。その体が地面に触れる前にナルトは、受け止めて声をかけるが・・既に意識の無い彼は何の反応も示さない。そんな二人に向かって、白が静かに呟いた。

 

 

「彼は…君を守る為、僕の攻撃を受けて死にました。大事な仲間を想って、自分の命をかけた彼は尊敬に値する忍でしたよ。その様子では、大切な人の死を見るのは初めての様ですね。だとしたら、覚えておきなさい。これが…忍の道ですよ」

 

 

 白の言葉はナルトの心に深く突き刺さった。そして、同時に心の奥底から抑えきれない程の怒りがこみ上げてくる。それは彼の体にも大きい変化を齎した。ナルトからは紅い炎の様なチャクラが溢れ出し、辺り一帯に渦巻いていく。異様とも言える禍々しく膨大なチャクラに、白は言葉を失くして立ち尽くす。もしや、自分は開けていけない蓋を開いてしまったのかと感じていた。その直後、何かに捕まれたと思った瞬間。白は一瞬で距離を詰めたナルトに殴られて吹き飛んだ。

 

 

 

 その勢いは凄まじく、彼の体は氷を打ち砕いて外へ飛び出して地面を転がる。また衝撃によってか、白の顔を隠していた仮面は粉々に砕け散ってしまう。そして跡を追って、飛び出してきたナルトが更なる追撃を仕掛けようとした時、駆け付けたサチがナルトの頭を抑え付けて地面に押しやった。

 

 しかし、怒りで我を忘れている弟の力は強く。自分も力一杯抑えているが・・徐々に拘束を破ろうとする。そんな弟にサチは腹の中から出した声で一喝する。

 

 

「いい加減にしろっ!! 自分が何をしてるのかお前は、分かっているのかぁぁぁ」

「姉ちゃん… 一体、何を叫んでいるんだってばよ」

 

 その叫びが届いたのか。ナルトが纏っていたチャクラは、霧に溶け込む様に消えていき。怒りに染まった表情も元に戻ったの見て、弟の封印が完全に解けていない事にサチは心から安堵の息を吐いた。しかし、この成行きを眺めていた白は、何処か納得のいかない様子でサチに問い掛ける。

 

 

「何故、止めたんですか? 僕は貴方達の敵ですよ。そのまま放っておけば…敵を一人片づける事が出来たはずです」

「あなた…やっぱり、あの時の少年だったのね。それにこの子を止めたのは、怒りや憎しみで人を殺して欲しくないからよ。非情な世界で生きるあなたからしたら…甘い考えと感じるでしょうけどね」

「…そうですね。僕にとっては、再不斬さん達の言う事が全てです」

「分からないわね。どうして…そこまで彼らに肩入れするの? あなた自身。その気になれば、自分の道を進む事も出来たでしょうに」

「自分の道・・・ですか。そんなもの、僕にはありません。だって、僕の存在はこの世界には不要だったんですから」

 

 

 そして、彼はゆっくりと自分の生い立ちを口にする。白は水の国にある小さな村でその生を受けた。そこで彼は両親と仲睦まじく暮らしていた。雪が多い環境ゆえ、貧しい生活でも白は幸せだった。自分を愛する両親がいれば、そんなのは苦でもなかったから。

 

 

 しかし、ある日を境に彼の人生は一変した。ふとした時、母が隠していた秘密が父に知られてしまい、母は父の手で殺されてしまった。母が隠していた秘密、それは自身の血に宿る秘伝の術だった。幾度なく起きた内戦で水の国では、血継限界を持つ者を忌み嫌う風習が生まれていた。特異な血が齎す力は争いに利用され、国に絶え間ない災いを呼び起こすとされていたから。

 

 

 そして・・父は母だけでなく、自分も手にかけようとした。もしかすると、息子も母の忌まわしい力を受け継いているかもしれない。災いは全て取り除こう、村の者にそう進言された父は、血で汚れた刃物をゆっくりと振り上げる。だが、父は息子を殺す事に抵抗があったのだろう。振り上げた刃物を振り下ろそうとはしなかった。

 

 

 その一瞬の隙を突いて、白は父から刃物を奪った勢いで父の心臓を一突きする。死にたくない。それは幼な心で感じた必死の行動であった。その後、白は人知れず村を出て、外を彷徨っている時。再不斬と出会って、行き場の無い自分を拾ってくれた。誰もが忌み嫌い、必要としなかった自分を必要だと言ってくれた。

 

 

 それは白にとって、何よりも嬉しい言葉だった。そして、同じ時に出会った朔麻もその一人だ。彼女も自分の存在を認めて必要としてくれた。だからこそ、白はこの人達の為なら何でもすると心に強く誓ったのだ。

 

 

 

「僕は…あの人達に救われた。そして、再不斬さん達と一緒にいるには…強い忍でなくてはならない。君に負けた時点で、僕はもう用済みです。ですから、二人にお願いがあります。どうか、僕を殺してください」

 

 

 自身の過去を語り終えた後、白は二人に向かってそう言った。サチとナルトはその言葉に絶句する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、カカシも再不斬との戦いに決着をつけるべく、動き出す。ベストのポケットから一本の巻物を取り出すと、素早く広げた。それに加えて、自分の指を噛み切って流れた血を巻物に擦り付けると、カカシは印を組んで巻物を地面に押し付けた。するとまるで蜘蛛の巣の様に、巻物から術式が広がっていく。

 

 

 

「何をするつもりか、知らねえが‥所詮は無駄な事だ」

「そいつはどうかな? 無駄と決めつけるには、まだ早いぞ」

 

 

 

 その言葉を告げた後、再不斬の足元が揺れ出した。不思議に思い、視線を足元に向けると地面から犬が顔を覗かせて、彼の足に噛み付いた。しかも、それだけなく…複数の犬が彼を抑え付ける様に噛み付いたり、背に圧し掛かってきた。纏わり付く犬達を振り払おうとするが、その力は万力の様に強く、再不斬はなす術もない。

 

 

 

「お前こそ、無駄な事をやめろ。訓練されたその忍犬は、簡単には降り解けない。そして…来たるお前の未来は死だ」

 

 

 カカシの言葉に再不斬は、冷汗を掻いて彼を見つめた。そのカカシは更に印を組んで、右手に青白く光る雷を発現させた。これこそが、カカシの切り札である雷切という術だった。目で確認出来る程のチャクラに…再不斬は恐れ慄いた。並の忍ではこれ程の芸当は不可能だ。それは自分も同様であった。此処で初めて、再不斬は悟った。カカシは例え、対策を練ったとしても、己の手に余る力を持った忍だったと…

 

 

「再不斬。お前に恨みは無いが、お前の存在は他者に多くの災いを呼び起こす。だから、今日こそ…此処で仕留める」

 

 

 そう言い放って、カカシは地を蹴ると再不斬に物凄いスピードで駆け出した。当の再不斬はそれを見ている事しか出来ない。

 

 

 

 

 

 自分を殺せ。そう言った白に、やっとの事でサチは言葉を返した。

 

 

「一体、何を言っているの? 人を殺せだなんて、簡単に言うものじゃないわよ」

「簡単に言ってる訳では…ありませんよ。どの道、もう僕に後はない。此処で生き残ったとしても、裏切りを知った里が僕を許さない。奴らの手にかかるくらいなら、僕は二人に殺してほしい。それだけです」

「そう、分かった。それなら、私が貴方に引導を渡してあげる」

「姉ちゃんっ!! 本気で言ってるのか?」

「ええ。彼の決意は固いもの。もう言葉では‥どうも出来ない。これもある意味、救いでもあるわ」

 

 

 沈痛な顔で言葉を吐く姉に、ナルトは唇を噛み締めて黙り込む。そして、サチがクナイを白の首に刺そうとした時。彼は突然、その手を止めた。先程の穏やかな顔と違い、何処か焦った様子の白は…一言「申し訳ありません。どうやら、まだ僕は死ねない」とだけ言うとその場から姿を消した。

 

 

 

 

 そして、迫るカカシが右手で再不斬の胸を貫こうとした瞬間。突如、間に入った白が身を挺して受け止めた。それだけでなく、巻物に針を突き刺してカカシが口寄せで呼んだ忍犬達も消し去った。その早業には、カカシも驚いて目を瞠る。

 

 

 

 我に返ったカカシが、白を貫いた手を抜こうとするが‥その腕を白の手が掴んでいた。死に際の中、彼が取った行動を再不斬は好機と見て、無防備のカカシに向けて大刀を振り切った。しかし、その攻撃をカカシは白を抱えて飛び退いて躱す。自分の仲間ごと斬ろうとした、再不斬にカカシは鋭い目を向けた。仲間を大事にする彼にとって、その行動は許せるものではない。

 

 

 

「お前、今‥この子と一緒に俺を斬ろうとしたな。何故だ?」

「はっ、俺にとって、そいつは…只の道具だ。それが理由だよ」

「貴様…とことん、腐ってるな」

 

 

 躊躇なく、白を道具だと言い切った再不斬に冷静な仮面を放り捨てて、カカシは怒りを露わにした。そして今度こそ、止めを刺そうと再び雷切を発動させた時。橋の奥から大勢の破落戸を連れたガトーが姿を現した。

 

 

 

「おーおー 心配になって、見に来たら随分とボロボロだな。これは好都合だぜ」

「ガトー!? 何で此処に来た?」

「ふん そんなものは決まってるだろ。お前らを始末する為だよ。生憎、お前らに金を払うのが嫌になってね。お前達が争って消耗した頃合いを狙っていたのさ」

 

 

 

 嫌らしく笑って、言うガトーにカカシも眉を寄せて彼を見た。そして同じ表情で見ていた再不斬が、ぽつりと呟く。

 

 

「カカシ。お前との勝負はここまでだ。雇い主のあいつが、俺達を裏切った時点でタズナを狙う必要は無くなったからな」

「ああ。その様だな」

 

 カカシも再不斬の言葉に頷いた。彼の言う通り、タズナを狙う事を止めた再不斬と戦う必要はない。だが、問題はそれだけではない。高々に笑う彼の後ろには、50人を超える男達が立ちはだかっていた。普段なら大した事はないが、消耗している今では脅威の存在である。

 

 

 

 どうこの状況を乗り切るか、それを考える彼らの元にサチとナルトが駈け付けてきた。二人は目に入った光景にまたもや驚く。何せ、先程まで生きていた白は血塗れで倒れ伏し、その正面にはガトー達の姿もある。目まぐるしく変わる状況に、流石のサチも困惑する。

 

 

 

「ねえ…一体、どうなってるの?何故、ガトーが此処にいるのよ」

「見ての通りだ。奴は再不斬達を裏切ったのさ」

「そんな事より、何であいつが…死んでるんだってばよ。訳が分からねえぞ」

「うるせぇ餓鬼だな。今はどうでもいいだろうが…」

「っ…! どうでもいいって、何でそんな事が言えるんだってばよ!! あいつは…お前らの事を何よりも大切だって言ってたんだぞ。それは一緒にいたお前らだって、知ってる筈だろ。おい、何とか言えってばよぉぉ!!」

 

 

 

 敵である白だったが、何処か親近感をナルトは感じていた。立場が違えど、心の底に在る想いは同じだと知っていたから。だからこそ、平然とどうでもいいと言い切った再不斬がナルトは受け入れられなかった。

 

 

「うる・・せえよ。いいから、それ以上は…何も言うな」

 

 

 何も言わない再不斬に、ナルトが更に追及しようとするが、静かに涙を流す再不斬にナルトも口を閉じた。言葉では何と言おうと、彼にとっても白はかけがえのない存在だった。それは彼が流す涙が証明している。

 

 

 また別の場所では、サクラが物言わぬサスケを見て泣いていた。徐々に晴れ始めた霧を見て、サクラはタズナを守りながら橋を進んでいくとサスケを見つけて、堪らず駆け出した。だが、その体は氷の様に冷たく。既に彼が死んでいると理解した。戦いでは、十分に起こり得る現実であっても…それを認める事をサクラは出来ず、彼女はその場に崩れるとサスケに覆い被さり、大きな声で泣いた。その姿をタズナは切ない顔で見つめる。

 

 

 

 

 そして頬を伝う涙を拭うと、再不斬は傍にいるナルトへ声をかける。

 

「おい 小僧。お前が持つクナイを俺に貸せ。」

「え?ああ。ほらよ」

 

 

 再不斬の言う通り、手にしたクナイを渡すと彼はそれを口に咥える。すると再不斬は、ガトー達に向かって走り出した。それを見たガトーは、慌てて男達を再不斬に嗾けるが…ひらりと男達の攻撃を躱し、すれ違い様に一人、また一人と咥えたクナイで適格に相手の喉を裂いていく。その度に再不斬は血に塗れ、それでも攻撃の手を緩めない彼の姿はまさに鬼人と呼ぶにふさわしいものだった。だが、やはり多勢に無勢。四方から迫る攻撃で徐々に彼の体は傷付いていく。流石に不味い思ったのか、標的を男達からガトー一人へ絞ると彼は、男達の間をすり抜けて一目散にガトーへ迫ると迷う事無く、その首にクナイを突き立て切り裂いた。

 

 

 その勢いは凄まじく、喉を裂くに至らず‥彼の首を落とす程であった。ぼとりと地面に転がる首を一瞥した後、振り向いた再不斬に男達は身の毛がよだつ。しかし、そこで限界を迎えた再不斬も音を立てて地面に倒れた。

 

 

 それを見て、一度は怯んだ男達も平静を取り戻した。そして雇い主をやられた事で、報酬が貰えなくなった腹いせをしようと武器を手にカカシ達へ襲い掛かろうとすると、反対の方からイナリを筆頭に波の国の住人達が姿を見せる。数では男達が有利だが、何があっても自分達の住む場所を守ると決意した彼らの気迫に気圧されて男達は、我先にと逃げだす事を選んだ。それは何者に負けない勇気を示した住民の力が手に入れた勝利であった。

 

 

 

 全ての戦いが終わった頃、一つの奇跡が起きる。何と、死んだと思われたサスケが目を覚ましたのだ。どうやら、白の攻撃は急所を外れており、単に気を失っていただけだった。彼の体が冷えていたのは、死んだからではなく冷気によって冷やされていたからとあとで分かった。

 

 

 そして…カカシとサチは倒れた再不斬に近寄っていく。幸いにまだ息があるが…負った傷は深く、手当したとしても助かる事は無い。それを本人も理解しているのか、彼は小さい声で最期の望みを口にする。

 

 

「なぁ…一つ、頼んでいいか?」

「どうした?言って見ろ」

「俺と朔麻を…白の傍に運んでくれ。最後にあいつの・・顔が見てえんだ。それは朔麻も同じだろう・・からな」

「分かった」

 

 

 再不斬の願いを聞き入れ、カカシは彼の体を白の元へ運んでいく。サチもまた同じく朔麻の体を運ぶと白を挟む様に彼女の体をゆっくりと置いた。

 

 

「長い事‥ずっと傍にいたんだ。最期もこいつの傍で迎えたいと思ってた。出来る事なら・・・俺も朔麻もお前と同じ所に‥行けたらいいのに‥なあ。きっと‥俺達は地獄に‥行くから無理だろうけど・・よ」

 

 

 最後の力を振り絞り、自分を庇って亡骸になった白の頬に手を置くと彼は目を閉じて永遠の眠りについた。そして、突然降ってきた雪が三人の顔に落ちるとそれは水滴に変わって、頬を伝い流れていく。まるで三人の涙の様に見えた。

 

 

 

 大橋での戦いから2週間が過ぎ、ガトーの支配が終わった事に喜んだ波の国の住人はかつての活気を取り戻した。それにより滞っていた橋の工事も皆の協力を得て、予想より早く完成を迎える事となった。

 

 

 そして一行は、その大橋が見渡せる小高い丘へと足を運んでいた。その場所では、三つの墓が町を見下ろす様に立っている。これは勿論、再不斬達の墓であった。また朔麻の墓の前には、花と一緒に小さな壺が置かれていた。

 

 

 

 

 それは戦いが終わった後、朔麻がサチに託した願いを叶えた結果である。その願いは自分の死体を燃やして灰にする事であった。抜け忍である自分の遺体は当然、霧隠れの里に渡る。そうすれば、奴らは自分の遺体をバラバラにして処分するだろう。過去、己が妹にやった事は里の歪みが原因でもある。そしてこれ以上、あの里に良い様にされる事を彼女は嫌がった。傍から見れば、身勝手な言い分に聞こえるかもしれない。

 

 

 だけど、他人や里の都合で振り回される彼女の気持ちをサチは理解していた。何故なら…自分も同じであるからだ。

 

 

 そして再不斬と白の墓を複雑な顔で見ていたナルトが…口を開いた。

 

「‥なぁカカシ先生。やっぱり忍である以上、俺もこの三人みたいにならないと駄目なのかな?」

「難しい質問だな。確かに‥忍は国の為、敷いては里の為に己の心を殺して道具に徹する必要がある。それは何処の里も同じだよ」

「アンタも…そうなのか?」

 

 

 思う所があるのか。その言葉に反応したサスケも、カカシに問い掛ける。

 

 

「どうだろうなぁ。その答えは…今でも見つかってない。何せ、忍である前に俺も人だからな。忍の在り方に疑問や矛盾を感じる事はたたあるさ。だからこそ、その答えを探そうと皆必死になるんだよ」

「それが本物の忍になるという事なら、俺はやだなぁ。決めたっ!! 俺はそんなもんに縛られない自分だけの忍道をいってやる」

 

 

 唐突にそう叫んだナルトにカカシとサチは、嬉しそうに笑った。結局の所、探す答えは自分にしかだせないし、またそれは人によって違う。手探りでもそれを見つけたナルトの成長を二人は喜んでいた。

 

 

 

 その日の昼。出立の準備を済ませたカカシ一行は、波の国の門境にいた。そこでは五人を見送りにきたタズナ達の姿もある。役目を終えて、去ろうとする一行を見て…タズナは寂しそうな表情で呟く

 

 

「あんたらのおかげで、橋は無事完成したわい。だが、これっきりとなると超寂しいのう」

「そうですね。けど、会おうと思えばまた会えます。その時はまたお邪魔させてもらいますよ」

「おう そうだってばよ。だから寂しがる事なんてねえぞ」

「本当に‥また来るか?」

 

 

 ナルトの言葉に、イナリは涙を堪えてそう言った。そんなイナリにナルトは揶揄う様に言葉を返す。

 

 

「何だぁ イナリってば、お前も寂しいのかよ。だったら、泣いたっていいんだぞ」

「泣くもんかぁ! そういうナルト兄ちゃんこそ、泣いていいぞ」

「フンだ。俺がそう簡単に泣くかよ」

 

 

 想像した反応と違う事が詰まらないのか。ナルトは背を向けて歩き出す。しかし、その顔は涙で濡れていた。彼もまたイナリと別れるのを寂しいと感じていたのだ。だが、それを見せまいと彼は意地を張る事を選んだ。

 

 

 

 

 そうして波の国を立ち去った一行の姿を見続けながら、タズナはある事を口にする。

 

 

「所でよ・・ ワシは一つ決めた事があるんじゃ」

「決めた事? それって何?」

「ああ。それは橋の名前じゃよ。波の国と火の国を繋ぐこの橋は言わば、希望の架け橋じゃ。ナルトからイナリへ、イナリから街の皆へと勇気が繋がった様にの。それで…ワシはこの橋をナルト大橋。そう名付けようと思っておる」

「ナルト大橋ねぇ。うん、良い名前だね」

「僕もそう思うよ」

 

 

 自分の意見に二人は、快く頷いてくれた。その事にタズナは心から笑顔を浮かべた。そして、改めて去りゆく彼らにタズナは頭を下げたのだった。




今回のお話 いかかでしたでしょうか?



波の国での戦いを通して、成長したナルト達。手探りながら見つけた答えが自分の道を行く。このシーン、NARUTOの中でも大事な所なので、自分も気合入れて書きました。

それと個人的に書きたかったのが、漫画でもありましたが忍は力の無い人には恐ろしい存在だけども…忍の仮面を取れば同じ人。ここを一番伝えたいと思ってた部分です。漫画とは違って、文章だと伝わりにくいでしょうが(笑)

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