中忍選抜試験 前日の朝
急遽、呼び出されたナルト達は指定の場所で待機していた。案の定、呼び出した本人は遅刻して、未だに姿を見せずにいる。
「もうーー!! 何であの人は、いつも人を呼び出しておいて遅刻するのよ」
「全くだってばよ。しかも、今日に限っては姉ちゃんも来てねえし‥」
最早、お決まりの事となっているが、無駄に待たされる三人は堪らない。サクラとナルトはいつもの様に不満を洩らし、サスケも言葉にしないものの。内心では、遅れているカカシとサチに愚痴を溢していた。
それから1時間が過ぎ、3人の苛立ちも限界に来ていた頃。漸くカカシとサチの二人がやって来た。ナルトやサクラは二人の姿を見るや、勢いよく詰め寄ると凄い剣幕で不満の言葉をぶちまける。今までない迫力にカカシも気圧されるが、今回遅れたのはちゃんとした理由があると一緒にいたサチが三人を宥める。
「‥まぁまぁ、三人共。気持ちは分かるけど、落ち着いて。遅れたのはこれを用意してたからよ」
そう言って、サチは三枚の紙をナルト達に差し出した。受け取った紙には、中の文字と火影の判が捺されている。一体、これが何なのか。分からない三人は、首を傾げるだけだ。
「…実は明日。木ノ葉で中忍選抜試験が行われる事になってな。この試験にお前達を推薦しておいた。もしお前達が、試験を受ける場合。明日の午後4時までにアカデミーに来い。言っておくが…中忍試験は強制じゃない。自信が無いならやめてもいいし、自信があるなら受けるのもいいだろう。それはお前達の意思に委ねる」
「…私からも一つ忠告するわね。中忍試験では課題によって、大怪我や最悪の場合。死に繋がる事もある。だから、受けるつもりならば…よく考えてから決断してね」
二人の言葉をナルト達は静かに聞いていた。自分達が中忍になる。それを想像して、ナルトとサスケは体が疼くのか。緊張した面持ちの中、何処か楽しそうにしていた。だが、その二人とは対照的に、サクラは沈んだ表情で俯いている。
サクラの様子は気になったが、こればかりは本人が解決する問題である。サチ達も手を差し伸べたい所だが、此処は黙って見守る事を選んだ。そして用件を済ませたカカシ達は、解散を告げると立ち去った。残されたナルト達も続いて帰路に着く。
その道中、サスケは砂の忍の事を考えていた。昨日、出会ったあの忍…我愛羅も中忍試験に参加する為。木ノ葉の里へやって来たのだろう。他の忍にない雰囲気を纏う彼と、試験で戦う事もあるかもしれない。そうなったら、今の自分が何処までやれるのか? サスケは己の力を試す時が待ち遠しい。その思いを強く感じていた。
またナルトの方も、来たる中忍試験を楽しみにしていた。下忍として過ごす事、数ヶ月。波の国での事や木ノ葉で行ってきた様々な任務。無論、上手く行かない場合もあったが…それでも自分は確実に強くなっている。もし、試験を突破して中忍になる事は、火影に一歩近づいた証明でもある。
それに小さい頃から憧れていた姉の隣に並ぶ日も近づくのだ。彼が気合を入れる理由には、その事も含まれていた。
そんな中、サクラだけは中忍試験に参加する事を迷っていた。勿論、自分も参加して二人と並んで歩きたい想いはある。しかし、今の自分の実力では‥・試験に合格する所か。最初の課題すら、突破出来ないのではないか。そういった暗い考えが脳裏を駈け廻る。
その後、三人はそれぞれの想いを胸に抱いて別れた。
中忍選抜試験 当日
午後3時を回った頃、三人は受付会場のアカデミーに足を運んでいた。この場になっても、サクラは未だに悩んでいた。昨夜、参加するか否かを考えていたが…結局、答えを出せずに今日という日を迎えてしまった。
「思ったより、人が多いな。こいつらも中忍試験を受ける訳か」
「多分、そうだろうな。何だ? 今になって怖気づいたのか?」
「そんな訳ねえよ。只、皆がどんな忍なのか。それが気になるだけだってばよ」
「フン。それは何れ分かるさ。今は余計な事を考えず、とっとと試験の受付を済ませるぞ」
二人は周りを見渡して、そんな会話をしていた。そんな時、サスケはサクラの変化に気が付く。いつもなら、何かと騒ぐ彼女が、今日に限って元気が無い。此処でサスケは、昨日彼女に言った事を思い出した。もしかしなくても、あの言葉で落ち込んでいるのだろう。
自分としては、別に追い込むつもりは無く。彼女に発破をかけたつもりだったが…サクラは別の意味に捉えてしまったようだ。彼としても、出来る事ならナルトとサクラ。この三人で中忍へなりたいと思っている。折りを見て、何とか励まそうとサスケは心の中でそう考えていた。
受付の場所は、アカデミーの三階。用紙に記されている情報を頼りに、三階へ足を踏み入れると廊下は受験者でごった返している。そして何やら、揉め事が起きているのか。殴られたと思われる少年が床に座り込んでいる、その傍には、連れと思われる少女がおり。殴った相手に文句を言うと、今度は少女を平手で殴り倒した。
「はっ、こんな攻撃も避けも防げもしないで。よく中忍試験を受けようと思ったなぁ。悪い事は言わねえ、お前達は辞めておいた方が身の為だぜ。何せ、俺達も今回で三度目だが…難解な上に過酷でな。試験の中、死んでいった受験者を何度も見てる。そう、今のお前らみたいな奴だよ。だから、これは俺達の優しさだ。例え、他人だろうと苦しんで人が死ぬ所なんざ。もう見たくねえからな」
「こいつの言う通り、死ぬ覚悟が無いなら辞めておけ。中忍なんて肩書きの為に、死ぬのは馬鹿らしいだろう?」
受付場所となる教室の前に立つ男達の言葉に、受験者達は内心怖気づいてしまう。危険な試験であるのは、予め聞いてはいたが…死という言葉が彼らの覚悟に罅を入れる。
「成程な。しかし、俺達は通して貰うぞ。生憎、生半可な覚悟で受けに来た訳じゃない。くだらない幻で時間を取られるのごめんだからな」
だが、そんな受験者を掻き分け、前に出たサスケは恐れる事なく。堂々と二人の男へ言葉をかけた。
「ほう… お前は気付いたのか」
「ああ。初めからな。サクラ、それはお前も同じだろう? 何せ、幻術の事は俺達の中で一番伸びてるんだからな」
「勿論。だって、ここは二階じゃない。そんな子供騙しは、通用しないわよ」
サクラがそう言うと、301と記されていたプレートの数字が変化して元に戻る。まさかの事に受験者一同は驚くが、一部の者は平然としていた。彼らも当然、幻術が仕掛けられている事に気付いてようだ。
「中々やるみたいだな。だけど、それだけじゃ…試験は受けられねえよ」
そう言って、男の一人がサスケに向かって蹴りを放った。それに反応して、サスケも蹴りを繰り出すが…二人の間に割って入った人物が、二人の蹴りを受け止める。驚く事に止めに入ったのは、先程殴られていた少年であった。緑の全身スーツにおかっぱ頭という、特徴的な少年の元に別の少年が近寄ってきた。恐らく、彼も連れの一人なのだろう。
「おい お前は何をやってるんだ。下手に注目を浴びたくないと、言っておきながら目立つ事をしてどうする」
責める様に言う彼に対して、件の少年が返事をしようとした時、彼はサクラの方を見て頬を染める。それに同じ連れの少女が呆れた様に、首を振った。
その少年は、深呼吸した後。意を決した様な顔でサクラに歩み寄ってくる。
「あの… 僕、ロック・リーといいます。それで‥用件ですが。僕と付き合って下さい。貴女の事は、命を懸けて守りますから」
「嫌よ!! いきなり告白されて、付き合う女性がいる訳ないでしょ」
歯を煌めかせて、サクラに告白するリー。だが当然の如く、断られてしまい…彼は落ち込んでしまう。そんな二人を尻目に連れの少年が、サスケに声をかける。
「所で…そこのお前。名は何という? 見た所、ルーキーの様だが‥」
「さあな。あと人に名を尋ねるなら、まずは自分から名乗るのが礼儀だろうよ。先輩さんよ」
「ふん 生意気な奴だな。まあいい…試験で相見えた時は覚悟しておけ」
名を尋ねる彼に、サスケは不敵な笑みを浮かべて言葉を返す。言ってる事は、尤もだ。しかし、態度の悪いサスケに少しばかり、苛立ったのか。彼はきつく睨みつけ、脅し文句を残して去って行った。
その時、発した少年の威圧感。それを肌で感じて、サスケは冷汗を掻く。彼もまた只者では無い事が分かった。誰も彼も、飛び抜けた奴が多い。流石、中忍試験に挑むだけはある。内心、気圧されながらも集う強者たちにサスケは心を躍らせる。
そして去りゆく受験者達を陰から覗く者がいた。それは先程、揉め事を起こしていたあの2人組である。只、違うのは少年の姿ではなく、大人の姿に変わっていた。どうやら、変化の術で姿を変え、今年の受験者を篩いにかけていたのだ。
此処で自分達に臆さず、また幻術を見破った者だけが試験への参加を認められ、それ以前に立ち去った者や幻術を見破る事が出来なかった者は、試験を受ける事無く失格とする。それが二人に与えられた役割だったのだ。
「今回の受験者…。随分と活きの良い奴らが揃ったな」
「ああ。今年の試験、どうなるのか楽しみだ」
彼らはそう呟いてから、姿を消す。新しい風を吹かせるのは、どんな子達なのか。それを二人は大いに期待をしていた。
三人が改めて、受付場所へ向かう途中。後ろから追いかけて来たリーが呼び止める。一体、何の用だと…訝し気に彼を見つめると。彼は突然、サスケに自分と勝負する様、申し出てきた。
「勝負だと? 何故、俺がお前と戦う必要があるんだ」
「怖いですか? それならば、無理にとは言いません」
「…お前、俺に喧嘩売ってるのか?」
リーとの勝負。それには、少し興味が湧いたものの。彼の意図が読めず、サスケは冷静に問い掛ける。だが、彼から返って来た言葉に、サスケは珍しく激昂した。確かに勝つ自信があるからこそ、リーは勝負を申し出たのだろう。しかし、自分を臆病者と思われる事には我慢がならない。
「いいぜ。やってやるよ‥ うちはの実力、とことん思い知らせてやる」
「決まりですね。それと…改めて名乗ります。僕は…ロック・リー。天才と呼ばれた君の実力、見せてもらいます」
売り言葉に買い言葉。いつの間にか、勝負する流れになった二人へ、サクラが待ったをかける。
「待って、サスケ君。この勝負、受けちゃ駄目。だって、もう受付の時間が迫ってるのよ」
「心配するな。こんな奴、5分もあれば十分だ」
「大した自信ですね。ですが、僕もそう簡単にやられたりしませんよ」
それを合図に、二人が駆け出そうとした時。サスケの前にナルトが立ちはだかった。リーはそんな彼を睨んで、厳しい言葉を投げ掛ける。
「君は…何ですか? これは僕とサスケ君の勝負ですよ。邪魔をしないでくれ」
「うるせぇ。どいつもこいつもサスケの事ばかり。お前の相手なら、俺がしてやるってばよぉ」
そう言い放ち、ナルトはリーに向かっていく。誰もが注目するのは、サスケの事ばかり。確かに彼は強いのは、事実だ。しかし、自分をサスケの取り巻きにしか、見てない事に腹を立てていた。自分だって、サスケに負けて無い事を証明してやる。その想いを籠めて、拳を振るうが…りーはそれを意図も容易く、弾いてみせた。それなら次は蹴りだと、ナルトは体を捻って繰り出した。
「遅いですよ。蹴りはこうやるんです。木ノ葉烈風!!」
ナルトの蹴りが当たる直前、彼は素早くナルトの側面に回り込むと。最初の蹴りで足を払い、二の蹴りでナルトを壁の方へ吹き飛ばす。その早業に、ナルトは呆気なく気絶させられてしまった。何よりも驚いたのが、派手に飛ばされたにも関わらず、自分の身体にはダメージが無い。絶妙な力加減によって、怪我をしないよう手加減をされたのだ。
そんな芸当、やろうと思って出来る事ではない。想像以上の実力を持つリーをサスケは、静かに見つめていた。最早、さっきの怒りは既に無い。感情任せで挑んで勝てる相手じゃない事を、彼も悟っている。
何せ、力を籠めた蹴りを片手で受け止める奴だ。思えば、こいつの連れも只者では無かった。必然的にこいつもそれに分類されるだろう。自然と彼の足は、前に出ていく。サクラは止めようと思ったが、彼の表情を見て口を閉じる。サスケの目には、目の前のリーしか映っていない。恐らく、自分がどんなに叫んだとしても…戦いを辞める事はしない。彼女は…何事も無く終わって欲しい。只、それだけを祈っていた。
「次は俺だな。言っとくが、手加減はしないぜ」
「構いませんよ。どの道、君達は僕に勝てません。何故なら、今の木ノ葉で一番強い下忍は…僕ですからね」
「上等だぁ。だったら、それを今覆してやる」
思ったより、素早いサスケの動きにリーは驚いたが…すぐに冷静さを取り戻すと彼もサスケに向かっていく。
「木ノ葉旋風!!」
「っ!? くそっ‥」
先程と同じく、リーが繰り出す蹴りを辛うじて躱すが…続けて飛んでくる蹴りは避けれない。だが、サスケは慌てず、防ごうと左腕を上げた時。リーの攻撃はサスケの防御をすり抜けて、彼の顔面を捉えて吹き飛ばす。
「嘘‥。何で当たるのよ。 サスケ君は、ちゃんとガードしたのに…」
目の前で起きた出来事に、サクラは目を疑った。迫る攻撃を彼は確かに防いだ筈。それなのにリーの攻撃はサスケに届いたのだ。恐らく、仕掛ける直前に何かしらの術を使ったのだと、サクラは結論付けた。
それはサスケも同じで、口から流れる血を拭い立ち上がると隠していた奥の手を出す事にした。自身の両目を写輪眼に変化させ、再びリーに向き直る。次こそは、奴の攻撃を見極めてやると彼の強い意志がその目に宿っていた。
一方、リーも漸くサスケが本気になったのだと、心の中で喜びを感じていた。サスケは先程の攻撃に何か絡繰りがあると思っている様だが…それは違う。次の攻撃でも、彼の度肝を抜いてやろう。そんな事を考えながら、リーはサスケに攻撃を仕掛けた。また彼も迎え撃つべく、隙も見せず身構える。
だが、またもやリーの攻撃がサスケの顔面に直撃した。その光景にサクラは、何の言葉も出せない。相手の技や動きを見抜く力を持つ写輪眼でも、彼の攻撃を防げないのでは、最早サスケに勝ち目はない。今まで無い強さを持つ相手にサスケは、酷く動揺していた。
相手が使っているのは、忍術や幻術の類ではない。二度に渡って受けた攻撃でサスケは、それを理解した。リーがやっていた攻撃…それは只の体術であった。チャクラの流れや体の動きで術を見破り、真似る事が出来る。しかし、体術だけは別だった。例え、動きを見切れても反応出来なければ意味が無い。
恐らく、最初の攻撃もそうだろう。あの時は自分の防御をすり抜けたのではなく、当たる直前で軌道を変えたのだ。自分が反応出来ない速度で…
「その顔だと、僕の攻撃が何なのか。気付いたみたいですね」
「くっ…。まさか、只の体術で此処までやるとはな」
「驚いたでしょう。僕はこの力を努力のみで手に入れました。元は、僕の連れにいる天才を超える為。ひたすらに努力してきましたよ。そして…僕は証明する。努力で得た力は、どんな天才をも凌駕するのだと。その一人目が、サスケ君…君という訳です」
そう言って、リーは彼を宙へ蹴り上げるとサスケの下へ姿を現すと、手に巻く包帯を解き始める。そしてリーが次なる技を繰り出そうとすると、何処からともなく飛来した風車が彼の包帯を壁に縫い付ける。
一体、何だ?と風車が飛んできた方にリーが視線をやれば、そこにいたのは一匹の亀であった。
「リー!! お前、禁じ手とされる技を使おうとしたな。一体、どういうつもりじゃ?」
「い、いや。これには事情が…ありまして。それに裏の技を出す気はありませんよ」
「当たり前じゃろうが…。 第一、そう簡単に技を出す奴がおるか。しかも…大事な試験前に私闘をしおって」
「ご、ごめんなさい。僕が悪かったです」
「うむ。では、あとはガイ先生殿…あとは頼みましたぞ」
いきなり現れた謎の亀は、険しい顔でリーを叱りつけた。対する本人もその亀に逆らう事なく、素直に謝った。そんな光景を二人は、何とも言えない顔で見つめていた。すると傍にやっと目を覚ましたナルトが近寄ってくると、未だにリーを叱る亀を指さして二人に尋ねる。
「なぁ。あれって、何だってばよ? どうして、あのゲジマユは亀に怒られるんだ?」
「私が知る訳ないでしょ。多分、先生とか…?」
「いや、あの亀の口振りでは…そうでも無さそうだ」
ナルトの問いにサクラは、首を横に振って分からないと口にする。そして、思い付いた事を言うと…今度はサスケがそれを否定した。そんな会話をしていると、ボンと音を立てた瞬間。亀の上に現れた人物にナルト達は、驚き声を失った。
「よぉ…お前らぁ。陰から見てたが、随分と良い青春してるなぁ」
その男は、リーと同じく濃い眉に全身スーツを着ていた。リーと瓜二つなこの男を見て、三人が思ったのは、彼が非情に暑苦しい人間であるという事だった。その予想は当たっており、ガイと呼ばれた男はリーに歩み寄ると、彼は突然、リーを思いっきり殴り飛ばした。
「な、いきなり何をするんですかぁ!?」
「うるさい… 俺の言い付けを破った罰だ。だが、それをしても戦いたいと思うお前の気持ち。俺にはよく伝わっているぞ」
「が、ガイ先生ぇ!! ありがとうございます。僕は今、猛烈に感激してますぅ」
「俺もだぞ!! リー。我が弟子よぉぉぉっ!!」
そんなやり取りの後、二人はお互いを抱きしめると目から大粒の涙を流す。唐突に展開された二人の世界にナルト達は、全くついて行けずに冷めた目で見つめていた。
尤もガイは、三人が向ける視線に気付いている。当初、リーと彼らを戦わせるつもりは無く、すぐ止めようと思っていた。しかし、敢えて戦わせる事にしたのは、サチとカカシが受け持つ三人の実力が気になったからである。また彼らに対して、純粋に興味を抱いていた。
常に冷静なカカシと穏やか且つ熱くなりやすい一面を持つサチ。この対極な二人が育てた忍は一体、どういう子であるのか? 自分の目で見たくなったのだ。またこの戦いを通して、リーに欠けている物を見つけ出し。一段と成長して欲しいという想いもある。努力で実力を身に付けた彼だが、強くなるには才能や努力以外に大事な物が在るという事を…。
「所で…君達はカカシとサチの班だったよな? 二人は良い先生だろう」
「何だよ激眉先生ってば。姉ちゃん達を知ってるのか?」
「君、その態度はいただけませんね。ガイ先生に失礼じゃないですか」
ガイはナルト達を見て、そう言葉をかけてきた。その素振りからして、二人と知り合いの様であるが。一体、どんな関係なのか? それが気になったナルトが、ガイに質問を投げ掛ける。それに対して、リーはナルトの失礼な態度に腹を立てて、それを咎める。自分の恩師であり、尊敬するガイを馬鹿にした呼び方が、彼は許せなかった。
「まあ、落ち着けリーよ。それと質問の答えだが、俺とあの二人は知り合いであり、永遠のライバルだ。因みに俺はサチやカカシより…強いよ」
ガイはリーを宥めた後、一瞬にして三人の背後へ回るとナルトの問いに答えてみせた。それにナルト達は目を丸くする。彼らには、ガイが消えた様にしか見えなかった。
そんな彼が口にした二人より、強いという言葉は事実なのかもしれない。三人にそう思わせる程の説得力がガイの言葉にはあった。
「それよりもだ。リーも君達もそろそろ教室に行きたまえ。中忍試験、全力で頑張れよ」
「押忍。全力で頑張ります」
不意に時計を見て、ガイは少し慌てた様に全員を促してから、皆に激励の言葉を残して去って行く。
「そうだ。君達に一つ訂正しておきます。実は…先程、僕が一番強い下忍と言いました。けど、それは違います。本当に一番強いのは僕の連れですよ。彼こそが、一番強い下忍です。無論、すぐに追い越してやるつもりですけどね。サスケ君、そしてナルト君…でしたね。君達にも僕は負けません。試験で当たる時は、本気で行かせてもらうので覚悟しておいて下さい。では…」
彼は矢継ぎ早に言いたい事を言うと、こちらが口を開く前に姿を消した。だが、サスケは俯いたままリーの言葉に何の反応も示さない。何も言えずにサクラの変わりに、ナルトが彼に話しかけた。
「あいつに…負けた事が悔しいんだろ? それは俺も同じだってばよ。けどよ、それは仕方ねえと思うぜ」
「何が言いたい。第一、お前は何も出来なかっただろうが」
「ああ。それは言い訳しねえ。だけど、次は負けねえってばよ。お前だって、気付いたろ? あいつの手。相当、ボロボロだったよな。きっと、すんげえ努力したのが分かる。だったら…俺達も負けず努力してやろうぜ」
諭す様に言うナルトへ、サスケはイライラを隠さず噛み付いた。何より、何も出来ずに負けたナルトに言われたのが、余計に苛つかせる。しかし、ナルトは彼の怒りを静かに受け流すと、彼に自分が見て感じた事を口にした。
それには流石にサスケも言い返す事が出来ない。それでもナルトの言葉は、彼の中にあった揺らぎを消し去るには十分であった。まだ、自分達は弱い。ならば、もっと強くなればいい。三人の中に生まれた決意を胸にして、彼らは三階に向けて、踏みだした。
「よし、いくぞ。ナルト、サクラ」
「おう」
「ええ」
サスケの言葉にナルトとサクラは、気合が籠った返事を返す。三人の中忍試験への挑戦は、こうして始まった。
今回の話。いかがだったでしょうか。
中忍試験に挑む前から、悩むサクラや自分より強い敵に壁を感じ始めたナルトとサスケ。
それでも上に行くには、前に進むしか無いですよね。
それと連日の暑さ、堪えますよね。それで自分は少しダウンしてました。皆さんも熱中症にはくれぐれもお気を付けて…
また一言でも良いので、感想を残してくれると嬉しいです。