NARUTO 六道へ繋がる物語   作:アリアンキング

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第十六話 命よりも重いもの

 第一試験が始まった頃、ナルト達の担当上忍は待機所にいた。時計を見て、アスマがぽつりと呟く。

 

「あいつら、今頃は…試験に挑戦してる頃か…」

「何だ? お前が緊張するなんて、珍しいね」

「ああ。そりゃ、自分の教え子が中忍試験に参加するんだ。当然だろうよ」

「逆に二人は、平然としてるね。いつも通りの事だけどさ」

 

 

 普段と違って、緊張した様子のアスマが珍しいとカカシは、彼に話しかける。何処となく茶化す様な、カカシにアスマは一転して、呆れた顔で言葉を返した。自分が手塩を掛けて、育てた教え子達が難関の試練に挑むのだ。課題次第では‥忍として終わる所か、命を落としてしまう事だってある。無論、彼らがそう簡単にやられる事は無いだろう。

 

 

 それでも不安の気持ちは消える事はない。思えば、かつて自分を中忍試験に送り出した教官も、こんな思いをしていたのかもしれない。背中を押される側から押す側になって、初めて分かる事。どうやら‥自分もあの子達と一緒に成長していたのだ。大人になっても日々勉強だと、子供の頃にヒルゼンが言っていた意味も此処に来て、彼は理解した。

 

 

 それとは別にサチ達は、紅が言っていた様に平然としている。二人の場合、特に苦労する事なく…試験を突破したのは知っている。しかし、それでも中忍試験が危険な事に変わりはない。それなのに何故、サチ達は平然としていらるのか? それが腑に落ちないアスマが、思い切って尋ねた。

 

 

「なぁ、さっきも言ったがよ。どうして…お前らは平然としてるんだ?」

「いや、別に平然とはしてないよ。俺も心配はしている。だが、それ以上にあいつらを信じてるのさ」

「ええ。だからこそ、あの子達を推薦したのよ。例え、どんな結果になったとしても…ね」

 

 

 二人の言葉にアスマと紅は…何も返さなかった。いや、返せなかった。確かに自分達も教え子を中忍試験に送り出したのは、困難にぶち当たっても乗り越えてくれる。そう、信じていたからだ。

 

 

 

 

 

「そうだ。気になってたけど、最初の試験、これを担当するのは…誰なんだ?」

 

 

 部屋に漂い始めた空気を変えるべく、カカシが別の話題を振った。それを渡りに船と食い付いたアスマが、何処か楽しそうに話し始める。

 

 

「そっか。三人は知らなかったよな。今回の第一試験を担当。驚く事にあの森乃イビキなんだよ」

「…よりに寄って、あいつか。これは最初の試験すら、危ういかもなぁ」

「うん。信じてはいるけど…彼が試験官だとねえ」

「何よ。そいつがどうかしたの?」

 

 

 アスマが告げた名前に覚えがある二人は、顔を顰める。まさか、此処でその名を聞くとは思っていなかった。そんなサチ達の様子が気になった紅が、自分にも教えろとアスマに詰め寄った。

 

 

「…あいつは表に出ねぇから知らない奴も多いよな。実は…」

 

 

 煙草を吹かした後、アスマは紅に話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、試験会場では受験者達は筆記の問題に頭を抱えていた。

 何故なら、その問題は複雑な暗号の解読や複雑な数式等。大凡、解けそうにない問題が殆どであった。そして…最後の10問目。この問題が何よりも受験者達を困惑させていた。

 

 

 だが、全ての受験者が解けない訳では無く、中にはすらすらと問題を解いている者達の姿もあった。その内の一人が驚く事にサクラであった。元より勤勉な彼女は、多様な知識を吸収して蓄えていた。だからこそ、答案用紙の問題が異常である事もすぐに分かった。

 

 

 それぞれ専門の道を選ばないと、解く事が出来ない問題。答えを知るには、他者の答案を見ない限りは…。そこでサクラは気付いた。そうだ、カンニングをすれば解けない者も答えが分かる。初めからこの試験は、カンニングする事が前提となっており、受験者の情報収集能力を見る為のものだろう。

 

 

 ふと顔を上げると、前にいたサスケが目に入る。彼もまた自分と同じ結論に辿り着いたのか。密かに写輪眼を発動させて、周りを見渡していた。それで他の受験者の動きを読み取り、そこから答えを割り出していく。その行動から、試験に隠された意味を理解した様だ。

 

 

 

「サスケ君は…大丈夫そうね。問題は、ナルトか。あいつ、開始してから何もしてないわね。けど、このままなら点は減らない。いっそ、何もしないでよ」

 

 

 

 小さい声でサクラは呟いた。解けないならば、何も無理をする事はない。個人での試験なら致命的な問題ではあるが、これはチーム戦だ。私とサスケ君で点を維持しつつ、ナルトが大人しくしていれば、試験は突破する事が出来る。僅かに見えた希望にサクラの心は軽くなり、余裕が出てきた時。不意に監視官が動きを見せる。

 

 

「おい、そこの23番。これで五回目、お前は失格だ。連れの奴と一緒に出て行け」

 

 

 左側で監視していた忍が、彼の机にクナイを投げ付けるとそう言った。彼は立ち上がり、反論しようとするも。監視官の睨みで何も言えなくなり、三人揃って教室を出て行った。思わぬ出来事に、教室内は重い空気に包まれる。

 

 

 

 下手なカンニングをした者が辿る末路を見せられて、皆は一層の事、顔を険しくする。だが、それでも答えを知る手段は一つしかない。あとは如何に気付かれない様、行動を起こすかだ。

 

 

 

 

「…視覚が繋がったか。第三の目、開眼!!」

 

 

 砂漠の我愛羅は、砂を散らばせて自身の視覚へと繋げる。すると彼の掌に砂の目玉を作り出し、それを握り潰した。この術で彼が目を付けた受験者の元に砂を送ると、相手の答案を覗き見ると用紙に答えを記入していく。実に淡々とした、その行動にイビキは感心していた。周りの雰囲気に飲まれる事もなく、己がやるべき事をやる。それが何とも忍らしいと彼は思っていた。

 

 

 

 他の受験者もそれぞれの知恵や能力を利用して、答えを得ていく。中には堂々とトイレに行きたいと、申し出る豪胆な者までいた。しかしナルトだけは、未だに頭を抱える。隣に座るヒナタは、何度か視線をやった後。意を決してナルトに声をかける。

 

 

「ねえ…ナルト君。これを見て、私の答案を写させてあげる」

「え? 一体、どういう事だってばよ。何か企んでるのか?」

「別に…何も企んでないよ。私は…出来るならナルト君に残って欲しいから」

 

 

 頬を染めながら、そう告げるヒナタをナルトは静かに見つめていた。自分の答えを写させてくれる。その申し出はナルトにとっては、何よりも救いである。誘惑に負けて、ナルトが答えを写そうとした時。端にいる監視官の視線を彼は感じた。視線を感じる方を向けば、監視官が手に持つボードに何かを書いていた。それが何なのか分からないが、ナルトを我に返すには十分効果があったようだ。

 

 

 最初、それを見てヒナタは自分を嵌めようとしているのでは? そんな疑心が生まれたが、ヒナタの言葉がそれを掻き消す。余り話した事は無いが、ヒナタは誰かを騙す様な人でない。それだけは分かっている。正直な所、彼女の助けを借りて試験を突破しても意味が無い。絶望的な状況でも自分の力で突破してやる。

 

 

 

 諦めかけていた彼の心に、ふつふつと闘志が漲って来るのを感じていた。

 

 

 

「悪りぃヒナタ。お前の気持ちは嬉しいけど、此処は俺の力で乗り切ってやるってばよ。それに…答えを見せたらお前にも迷惑が掛かるだろ。それこそ、俺だって嫌だからな。心配しなくたって、俺はこんな所で終わりやしねえよ」

「…そうだね。確かに‥自分の力で乗り越えないと駄目だよね。ごめんね、余計な事しちゃって」

「なーに。別に謝る必要はねえってばよ。お前もこんな所で消えたりすんなよ」

 

 

 ナルトはヒナタの顔を真っ直ぐ見つめ、そう口にした。彼の決意を聞いたヒナタも柔らかく微笑むと、その想いを受け入れて、自分の軽率な行動を謝った。ナルトも首を横に振り、気にするなと返事を返して終わった。

 

 

 自分の行動に嘘はない。しかし、心の奥底では少しばかり後悔もしていた。

 

 

 

 

 

 結局、ナルトは1問も解く事が出来ず、時間だけが過ぎていく。そんな彼が唯一、期待をしていたのが最後の問題であった。そこには開始から45分後に出題をすると、そう記載されていた。そして…遂にその時間がやってくる。

 

 

 

「…全員、注目!! これより、最後の10問目を出題する」

 

 

 突如、大声を上げたイビキに受験者達は吃驚して顔を上げた。自分に集まる視線をものともせず、イビキは最後の問題についての説明を始めようとした時。教室の戸が開き、トイレに行っていた受験者のカンクロウが戻ってきた。

 

 

 

「すんません。遅くなりました」

「ふん。丁度よく戻って来たな。運が良い奴だ。くだらん人形遊びは楽しかったかな? おら、ぼさっとしてねえで早く席につけ」

「わ、分かりました」

 

 

 イビキの言葉に従って、カンクロウは素直に席に付く。まさか、自分が傀儡を使っていた事を見抜かれていたとは‥思っていなかった。冷静になって、周りを見ると他の試験官もニヤニヤと笑ってこちらを見ている。どうやら、初めから気付いていたが‥敢えて見逃したのだとカンクロウは漸く理解した。

 

 彼らがどうして自分の行動を見逃したのかは、分からない。だが、失格にならないのであれば、別段気にする必要はない。席に戻る途中、自分が傀儡を利用して得た答案を、無事にテマリへ渡して彼はホッと一息を吐く。

 

 

 

「では、改めて説明しよう。最後の問題…これは二択の問題でもある。まずは君達に受けるか、受けないかを選んで貰うとしよう」

「何だって!? もし‥選ばなかったら、どうなるんだい?」

「受けない事を選んだ場合、その時点で持ち点は0になって失格だ。勿論、連れの奴らもだ」

 

 

 イビキの言葉が気になって、テマリが手を上げて質問をする。その問いに彼は嫌な笑みを浮かべて、そう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「拷問と尋問のプロ!? あのイビキがそうだって言うの?」

 

 

 場所は変わって、待機所では‥紅はアスマから聞いた話に驚愕する。それも当然でだろう。もし彼の話通りなら、イビキは裏側の人間だ。そんな人物が表に出てくる事自体、無いからである。

 

 

「ま、驚くのは無理もねえか。あいつとは、余り接点が無いだろうしなぁ」

「そうね。余程の事が無いと、会わないもの」

「何よ。サチ、あんたはイビキに会った事があるの?」

 

 

 その様子から、サチはイビキを知っている様だ。それとなく、紅が聞いてみた。

 

 

「ええ。以前、里抜けした忍を捕える任務で一緒になった事があるのよ。その後、捕まえた忍の拷問に立ち合う事になってね。何というか、彼の拷問は…まあ、見事としか言えなかったわね」

 

 

 話ながら、当時の事を思い出したサチはそう呟くが、その言葉に紅や他の二人も顔を顰める。

 

 

「おいおい。まさかとは思うが、お前も実は拷問好き…何てことはねえだろうな?」

「だとしたら、俺はお前との付き合いを考えるよ。割と本気でね」

「私も二人と同感ね。こればかりは、受け入れられないわ」

「ちょっと待ってよ。そんな訳ないでしょうが…。只、イビキの拷問は相手を苦しめるだけの物とは違うのよ。責め苦を与えると同時に相手に優しい言葉をかけて、情報を引き出す手腕が凄いって事を言いたいだけよ」

 

 

 自分の言葉にドン引きする三人へ、サチは必死になって弁明する。無論、彼らも本気ではない。ただ単に彼女を揶揄って遊んでいただけだ。それに気付いて、少し不貞腐れるサチに謝った後、四人はまた談笑を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、受験者達はイビキの精神責めによって。心が押し潰されそうになっていた。最後の問題、これを受けない選択をすれば‥その時点で失格。ならば、彼らが選ぶ答えは既に決まっている。

 

 

「何だよ、そりゃ!! 受けないを選べば失格なら、当然受けるに決まってるだろ」

「まあ…悩むまでもないだろうな。だが、これにはもう一つのルールがあるんだ」

「な、何だと‥此処に来て、更に追加ルールだって…」

「ああ。受けるを選んで正解出来なかった場合。その者は今後、永久に中忍試験への参加資格を剥奪する。つまり、下手をすればお前らは…死ぬまで下忍として一生を過ごす事という訳だ」

 

 

 

 その言葉に…誰もが呆然とする。イビキが出した二つの選択肢。これはどちらを選んだとしても、自分達が地獄を見る羽目になる。当然、これに納得しない者もいた。その一人であるキバが席を立ち、イビキに食ってかかる。

 

 

 

「ふざけんじゃねえよ。こんな理不尽なルールがあってたまるかぁ!! 第一、此処にいる奴らだって、何度か中忍試験を経験してるんだぜ。どうして…今回に限ってこんな事をするんだよ」

「そりゃ、お前らの運が悪かったな。だが、理不尽とは酷い言い草じゃねえか。こちとら、ちゃんと引き返す道を与えてやってるだろうに…」

 

 

 

 そう言い返す、イビキにキバは無言になる。彼の言う通り、受けないを選べば失格になるが、中忍試験の参加資格を奪われる事は無い。だが、そうすれば自分以外の二人も失格になってしまう。他者を巻き込んで、難を逃れるか。或いは覚悟を決めて最終問題に挑むか。多くの者が悩む中、受験者の一人がそっと手を上げた。

 

 

「俺は…受けない。今回は諦める」

「いいだろう。自信が無いなら、懸命な判断だ。他に受けない奴はいるか? もし‥いるのなら手を上げて宣言しろ。その後、番号札を置いてすぐに立ち去れ」

 

 

 

 一人の受験者が苦渋に満ちた表情で、受けない選択を選んだ。その者をイビキは責める事はせす、寧ろ優しく慰める様に言葉をかけた後、イビキは受験者に呼び掛ける。すると、先程の受験者に続いて一人、また一人と手を上げて試験を諦める者達が続出していた。

 

 

 

 教室内で起こる光景を目の辺りにし、サクラは険しい顔でナルトを見つめる。彼女自身、最後の問題を受けるつもりだ。それは正解する自信がある故の選択であるが、ナルトはまた別だ。彼が受ける選択をして、正解出来なかったら…。サクラは嫌な想像が脳裏に過って、体を震わせる。

 

 

 彼女は内心、ナルトに残って欲しいが…手を上げてと声なき叫びを上げていた。その選択をすれば、サスケくんやカカシ先生達は情けないと、失笑するかもしれない。だけど…この選択が齎すものはナルトの夢を壊すのと同じだ。それに何かと真っ直ぐと己の忍道を進む彼は、手を上げる事などしないだろう。

 

 

 だからこそ、サクラは決意した。一途に夢を目指して直走るナルトを、こんな所で終わらせはしない。例え、自分が悪者になってもいい。彼女はゆっくりと手を上げ始めた時、目に映ったものにサクラは、思わず固まった。

 

 

 何とナルトが高く、手を上げていたのだ。その光景にサスケとサクラも驚きを隠せない。あの負けず嫌いな彼が、まさか自分から負けを宣言する等、到底考えられなかった。だが、この後‥ナルトは更に予想外の行動を起こす。

 

 

 

「…なめんじゃねえぞ!! 俺はぜってぇ逃げたりしねえ。例え、一生下忍で過ごす事になっても…意地でも俺は火影になってやるってばよ。こんな問題、何も怖くねえ」

「いいのか? お前の人生を賭けた選択だぞ。今なら‥聞かなかった事にしてもいい」

「まっすぐ言葉は曲げねえよ。それが俺の忍道だ!!」

 

 

 手を上げたかと思いきや、その手を机に叩き付けてナルトは、イビキに面と向かってそう言った。この啖呵を聞いていた同じ班の二人も、安心した様に僅かに笑みを溢す。やはり彼はこうでないと、調子が狂う。

 

 

 

 またイビキもナルトの言葉に、内心では称賛していた。彼の宣言を聞いて、迷いや恐れを抱いていた者達も決意を固めた様だ。周りの雰囲気を一瞬にして、変えた不思議な少年。彼は他の者とは、何処か違う。それが何なのかは自分でも分からないが、この少年は大きくなる。只、それだけは確信していた。

 

 

 

 教室内を見渡し、もう辞退する者がいないと判断したイビキは…静かに口を開いた。

 

 

 

「その様子だと、お前達も覚悟を決めたみたいだな。よろしい、ならば‥今此処にいる全員に第一試験合格を言い渡す」

「い、一体どういう事ですか? いきなり合格だなんて…それに10問目はまだですよね?」

「ああ。そんな物は初めからないよ。言わば、さっきの二択が10問目の問題さ」

 

 

 唐突な合格宣言。その言葉に受験者全員が狐に化かされた様な顔になる。それもそうだろう、出題される問題に向けて覚悟を決めた矢先に、これなのだ。一早く、我に返ったサクラが質問をする。彼女の問いにイビキはニコリと笑って、そんな物は無いと答えた。その事に全員は余計に混乱した様だ。

 

 

 

「…今回の第一試験。これは君達も気付いているだろうが、目的は受験者の情報収集能力を測る事だよ。皆が行ってきた任務は三人一組。だが、一人がヘマをすれば全員の足を引張る事は言うまでもない。それを筆記にも取り入れた訳だ。案の定、皆は大きなプレッシャーを感じた事だろう」

 

 

 この場にいる誰もが、彼の言葉を否定しない。確かにイビキが言う通り、自分達はプレッシャーを感じていたのは事実だ。一呼吸おいて、イビキは話を続けた。

 

 

「しかし、このテストは下忍では解く事は難しい。まあ、例外もいたようだが…他の者が点を取る手段は、カンニングと決まっているからな。だから予め、答えを知る者を教室内に紛れ込ませていたんだよ。あとは如何に答えという情報を盗むか。君達の力量を見ていたんだ。その中で無様にカンニングする奴らを篩いに掛けてな」

 

 

 すると彼は突然、被っていた頭巾を脱ぎ始める。今度は何をするつもりだ?訝し気に見つめる受験者達は頭巾の下から、現われた物に目を疑った。そこには釘で開けられた穴や切り傷、更には火傷など。多くの傷跡が見受けられた。それには堪らず、皆は息を飲む。明らかに拷問をされて出来たのは、一目瞭然であった。

 

 

「情報というのは、時に命より重たい物だ。戦場では特に重要となる。だが、敵や他者に気付かれた情報は何の価値もない」

「だとしたら、最後の問題で出した二択は全くの無駄じゃないか」

 

 

 それを晒しながら、イビキは受験者達に言い聞かせる様に告げる。しかし、この話でも納得しない者がいるようで、仕方無いと彼はより分りやすく教える事にした。

 

 

 

「…そうだな。仮に君達が中忍だったとしよう。その際、ある任務を君達は受ける事になる。それは秘密文書の奪取。しかし、敵方の情報は一切無い。相手がどんな忍なのか? その数や罠の有無すら不明。さあ、この任務を君達はどうする? 仲間が傷付くのが嫌だから、或いは己の命が惜しいと受けるか受けないを決められるか? 答えは否だ。どんな危険だろうと、決して逃げる事が出来ない任務もある。そんな時、求められるのが自ら、前に進んで仲間に勇気を示す事。これが中忍に求められる何よりも大事なものだ」

 

 

 

 だからこそ、最終問題を受けずに立ち去った者は中忍となる資格が無い。彼はそう豪語する。

 

「そして君達は、この難題を見事に突破した。次の試験も君達の前に大きい壁として立ちはだかるだろう。だが、それでも俺は乗り越えて先に行くと信じている。これにて、第一の試験は終了だ。皆の武運を祈っているぞ」

 

 

 イビキが試験終了を宣言したその時、いきなりガラス窓を破って何者かが飛び込んで来た。それは髪を後ろに結んだ女性であり、受験者達を見据えると彼女は声高々に叫ぶ。

 

 

「さあ次は私の番だよ。あんた達ぃ、次行くわよ!!」

 

 

 第一の試験突破の余韻に浸る暇もなく、次の課題が始まろうとしていた。




今回のお話、いかがだったでしょうか?


厳しい二択を迫られる極限の中で、出した答えが人生を左右する。
そう問われたら、迷って逃げるのも無理無い。だけど…逃げずに立ち向かったナルトは、本当に凄いですね。


台風が過ぎて、また暑い日も続く様ですから皆さんも体調に気を付けて下さい。

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