暗闇の中、声高々に笑う大蛇丸をサチは不気味に感じていた。正直な気持ち、即刻この場を去りたい気持ちに襲われるが、グッと唇を噛み締めて心に生まれた恐怖を押し殺す。そんな中、アンコは一歩前に踏み出すと静かに口を開いた。
「今更…この里に何をしに来た? 答えろ、大蛇丸っ!!」
「あらあら。久々の再会だというのに、随分と釣れないじゃない。それと貴女の質問に答える義理はないわ」
「そうか。だったら、何も言わなくていい。どの道、此処であんたを倒せばいいだけだもの」
「…私を倒す? 無理よ。貴女じゃ、どう足掻いても私の足元に及ばないわ」
強い口調で大蛇丸の目的を問い掛けたアンコだったが…当然ながら、大蛇丸はその質問に答える事はない。それが分かっていたのか、アンコは動じる事は無かった。寧ろ、逆に大蛇丸を倒すという決意が強くなる。その想いを彼女は口にするが、当の本人は鼻で笑い飛ばした。
その言葉によって、三人の戦いが幕を開ける。先に動いたのはアンコで、袖口から千本を抜き取ると大蛇丸に狙いを定めて構えた時、同時に彼も仕掛けて来た。口から伸ばした舌を得物を持つ手首に、巻き付けると凄まじい力で締めつけた。その痛みに堪らず、アンコは武器を手放してしまう。だが、彼女も只では転ばない。巻き付く舌をがっしり掴むと、更に潜影蛇手という術を用いて大蛇丸を地面に叩き付けた。
「サチ、今よ!!」
「ククク、中々やるけど…詰めが甘い」
一隅のチャンスにアンコが、サチに攻撃を促すが…それを許す程、大蛇丸も甘くは無い。彼は伸ばした舌を戻す勢いを利用して、自らアンコの方へ突っ込んでいく。そのまま背後の木に押し付けられた彼女だったが、僅かな隙を突いて、体を入れ替えると逆に大蛇丸を抑える事に成功した。
「はぁはぁ…。随分と手間を掛けてくれるわね。けれど…もう逃がさないわ。あんたは此処で終わりよ」
荒い息を吐きながら、アンコは大蛇丸にそう言い放った。そして彼女は大蛇丸の左手を握るや自身の手と合わせて、印を組み始める。この特殊な印に覚えのある大蛇丸は、驚いた顔を見せた。それはお互いの手を使って発動する禁術、双蛇相殺の術と呼ばれる自爆技であり、使用すれば互いの術者は死に至る。アンコは自らを犠牲にして、大蛇丸を倒す為、覚悟を決めて術を発動しようとした時。
「フフフ 貴女、自殺願望があるのね。生憎だけど、それは影分身よ。本物はここにいるわ」
「な…。いつの間に…入れ替わったの?」
「そんなの初めからに決まってるじゃない。それに使うのは私が教えた術ばかり。仮にも上忍のお前がそんな事でどうする!!」
「ぐ、ぐあああっっ!!」
木の陰から姿を現した本体の大蛇丸が、嘲笑いながら彼女へ声をかけた。それに合わせて、アンコの前にいた大蛇丸は煙と共に消えてしまう。予想外の出来事にアンコは、困惑の色を隠せない。一体、いつから分身と入れ替わったのか、震えた声で問い掛けるアンコに大蛇丸は、冷たい声で問いに答えた。そして左手を構えた途端、突然アンコは叫び出して蹲る。
「アンコっ!! 貴方、彼女に何をしたの?」
「さてね。所であなたはかかって来ないのかしら? 見た感じ、震えてるけど…もしかして私が怖いの?」
「黙れ。お前の目的は何だ? まさか…火影様が狙いか?」
「いーやいや。惜しいわね。それもあるけど、今は手札が少ないからね。まあ、今日は有望な子を見つけて、楔を打ち込んできた所よ」
彼は…半ば剥がれかけた顔の皮膚を破りながら、サチを挑発してきた。彼女も図星を突かれて焦り、それを誤魔化す様に大蛇丸へ怒鳴り声を上げるが、本人はニヤニヤと嫌な笑みを見せるだけだ。今一つ、この男の目的が分からず…もやもやとした気持ちの中、彼女は最悪な想像が脳裏に浮かんでくる。
それは三代目火影の暗殺。思えば、一週間前に大蛇丸の事をヒルゼンに伝えた時…珍しく取り乱していた。その事から大蛇丸が自身を狙っている事を悟っていたのだろう。また本人もヒルゼン暗殺をあっけなく認めた。そして…大蛇丸の楔という言葉。これが何を意味するのか、サチも分からない。だが、嫌な予感だけはひしひしと感じていた。
「…あんた、誰かに呪印を付けたの!? 一体、誰にやったんだ!!」
「クク、何をムキになってるのよ。まさか、嫉妬してるの?」
「ほざいてんじゃないわ。誰にやったって、聞いてるのよ」
「おお、怖い怖い。まあ、隠す事もないわね。呪印をプレゼントしたのは、うちはの子よ。まだ青い果実だけど、貴女よりも良質だからね。将来は私の世継ぎに丁度いいもの」
「…世継ぎですって、馬鹿言わないで。私の教え子に勝手な事をするんじゃないわ」
大蛇丸の言動にサチは怒りを露わにする。それも当然だ、彼が口にしたうちはの子で該当するのは一人しかいない。彼はサスケに呪印を付けたと言った。響きからして、良い物では無いのは確かである。先程まであった恐怖は既に無く、あるのは大事な教え子を傷つけられた。その怒りだけが彼女の心を支配する。
「ふーん どうやら貴女もやる気の様ね。いいわ。私も少し退屈していた所だし、楽しませてもらいましょうか」
「上等よ。私の教え子に手を出した事、存分に後悔させてやる」
そう言うと同時にサチは大蛇丸へ、クナイを投げ付ける。その攻撃に大蛇丸は一転して、冷めた表情へ変わった。紅雷の異名は風の噂で彼も耳にしていた。一体、彼女はどんな術を使う忍なのか。大蛇丸はそれを拝める事を心から喜んでいたが、繰り出された攻撃はアンコ同様に単調な物。サチに対して、強い好奇心を抱いていた分、落差は酷かった。
迫るクナイを軽く躱して、反撃をしようとした時。大蛇丸は驚きの余り、固まった。何せ、正面にいたサチが突然姿を消したのだ。自分は一切、目を逸らしてはいない。ならば、彼女は何処へ行ったのか。警戒して辺りを見回していると、不意に背後から殺気を感じて彼は咄嗟に身を寄せる。するとその横を拳ほどの火の球が飛んで行くのが見えた。
「ちっ、避けられたか。完全に気配を消してたのに…」
外れた攻撃にサチはぼやくが、大蛇丸は内心酷く焦っていた。火の球が当たった木を見れば、その箇所はぽっかりと穴が開いて周りは黒く炭化している。サチの言う通り、彼女の気配は完全に無かった。だが、僅かに感じた殺気のおかげで自分は、運よく難を逃れる事が出来たのだ。そして…大蛇丸はサチの評価を改める。彼女は好奇心だけで手を出すのは危険な相手だと。無論、負けるつもりは無い。しかし、現状では戦うのは分が悪い。先程、消えた術が予想通りであれば‥闇に包まれた森では勝ち目は薄い。
此処は退くのが先決だと、判断を下した大蛇丸は煙玉でサチの視界を遮った後。彼は一目散にその場を立ち去った。
「この‥逃がすかぁっっ!!」
攻撃かと身構えていたが、逃げの一手を取った大蛇丸にサチの反応が一瞬遅れた。それに激昂したサチが追跡をしようとするが、ドサリと音がして振り向けばアンコが力無く倒れている。奴を追いたい所だが、今のアンコを放置する訳にもいかない。彼女は大蛇丸の追跡を断念して、アンコの傍に向かった。
「大丈夫? 今も何処か痛かったりするの?」
「いや、痛みは収まったわ。それにしても、あんた意外とやるのね。あいつの焦った顔は初めて見たわよ」
「そうなの? まあ、私も必死だったからね」
サチの問い掛けにアンコは、平気だと言葉を聞いて安堵する。それに大蛇丸を圧倒した事を褒めるアンコだったが、サチとしては素直に喜べ無かった。結果的に追い払えたとはいえ、さっきの自分は怒りの感情任せで戦っていたからだ。もしこちらの火遁や飛雷神の術が通じなかったら、二人共やられていただろう。
「…ごめんね。あんたの教え子が巻き込んで…こんなんじゃ、試験官失格よね」
「いいえ。貴女の所為じゃないわ。それに…サスケなら大丈夫よ。何だって、私達の班はタフだもの」
「そうね。とりあえず、今の事を火影様に報せましょう。悪いけど、また一緒に来て頂戴」
再び同行を頼むアンコにサチは快く引き受ける。彼女の腕を掴み肩を貸して、森の外に向かっていった。
その頃、サクラ達は木の陰に身を隠していた。木を失った二人を何とか運んで寝かせた後、サクラは必死で看病をしていた。幸いにもナルトの怪我は大した事は無かったが、問題はサスケの方である。彼自身も怪我は無いようだが、酷い熱を出して魘されていた。今は呼吸も落ち着いてはいるが、まだ熱が引かず安心は出来ない。それに一番気掛かりなのは、敵の襲撃だ。大蛇丸が去る前に言った。三人の配下がいると言葉。恐らく、何処かで奴らは自分達を探しているのだろう。
もし見つかって、その三人と戦闘になれば…自分は当然として、この二人も殺されてしまう。だが、今動けるのは自分だけだ。何が何でもこの二人を守らないといけない。緊張の連続でサクラも疲労が溜まって、限界が近いものの。それを必死で堪えて辺りに注意を払った。
しかし最悪の事態は続くもの。この時、遠く離れた場所から件の三人がサクラ達を捉えていた。その一人が今すぐ仕掛けるかと言うが、別の者は冷静で夜が明けてから仕掛けると返した。数や戦力差では此方が有利だが、万が一もある。相手が誰であれ、油断は禁物だ。その言葉に二人も賛同し、彼らは静かに夜明けを待った。
一体、どれ程の時間が経ったのだろう?気になったサクラが不意に空を見上げると、木から漏れる光に気付いた。知らない内に夜が明けていた様だ。であれば、他のチームも活動を開始する頃だろう。木の陰とはいえ、此処にいたら発見される可能性もある。今以上に注意しなければ、サクラがそう思い警戒を強めた時。
「やあ…寝ずの見張り番。ご苦労だったね。だけど、もう必要はないよ。さて、後ろにいるサスケ君を起こしてくれないか? 僕達は彼と戦って見たくて、ずっと待っていたんだよ」
突然、声をかけられたサクラが後ろを振り変えると、驚き目を見開いた。そこにいたのは、音の額あてを付けた三人の忍。それにサクラは彼らの姿に覚えがあった。第一試験が始まる前、いきなり仕掛けて来た奴らである。
「な、馬鹿を言わないで。サスケ君が戦える状態じゃない事は、あんた達も知ってるでしょう?」
「どういう事だい? 君が何を言っているのか。理解が出来ないな」
「とぼけるつもり? あんた達の裏に大蛇丸がいるのは分かってるのよ。大方、あいつに命令されて襲いに来たんでしょう」
「…君は、いや君達はあの人に会ったのか?」
「そうよ。しかもサスケ君に変な痣まで付けて、一体どういうつもりなのよ?」
「痣…か。そうか、あの人は彼に呪印を施したのか。悪いけど、僕達もあの人の考えは分からないよ。だが、今の話を聞いて一層、引き下がる訳にいかなくなったよ」
彼らの用件はサスケと戦う事。そう告げたが、生憎サスケは戦いが出来る状態ではない。相手もそれを知っていると思っているサクラは、その要求を突っ撥ねた。そして…背後に大蛇丸が糸を引いている事を話すと、彼らは雰囲気が変化させ、殺気を出してゆっくりと迫り来る。どうやら自分は藪蛇を突いてしまった様だ。
こうなっては、戦いは避けられない。自分が奴らに勝てるか分からないが、やるだけやってやる。そう覚悟を決めてサクラは構えた。
「成程。サスケ君と戦うには、まず君を倒す必要があるようだね」
「ったく。雑魚が出しゃばりやがって…とっとと終わらせてやるよ」
「待て、ザク」
「ん? 何だよドス。お前がやるのか?」
「いやね。戦うのに邪魔なものがあるからさ。例えば、これとかね」
そう言って、ドスと呼ばれる男は地面に手を伸ばす。すると隠された罠が露わになった。ばれない様、草木に模した布で覆っていたが…相手には通用しなかった様だ。
「ふーん これで罠のつもり? 土の色もよく見れば違うし、石がひっくり返されたのがモロバレよ」
「これに引っ掛かると思ってたのかい? だとしたら、君は忍の才能が無いんだね」
「全くだな。こいつも俺がやっていいか? 見るとそこそこ、可愛い面だしな。甚振ってやるのも面白そうだ」
「ふぅ。君も物好きだな。僕は別にいいよ。キンはどうする?」
「ああ。私も構わないよ」
「決まりだな。まあ、なるべく時間は掛けねえよ」
ザクの言葉に二人も文句は無く、この場は彼に任せる事となった。嫌な笑みを浮かべて、こちらに迫るザクを見つめながら、サクラはある機会を狙っていた。あと少し…相手の距離を測り、ある地点に来た所でサクラが動いた。初めに手裏剣を投げて、三人の気を逸らした後。隠し持っていたクナイで背後にあった糸を切る。
その直後、三人の上から丸太が勢いよく迫り、一網打尽にするかと思いきや。ドスは右手を前に出し、迫る丸太を木っ端微塵にしてしまった。その事にサクラは唖然とする。それもその筈、他者に気付かれぬ様、細心の注意を払って仕掛けた罠がこうもあっさりと破られてしまったのでは、仕方のない事である。
「さっきといい、これといい。単純な罠では僕達は勿論。他の連中だって、倒せやしないよ。君は戦いを舐めている様だね。ま、此処で死ぬ君にはどうでもいいか」
冷酷な言葉を吐き捨て、サクラを仕留めるべく彼らが迫った時。間に入った何者かが、三人を吹き飛ばすとその者がサクラの傍に降り立った。
「言ってる事は尤もだ。しかし、僕がいる限り。サクラさんには、指一本触れさせませんよ」
「…君は何者です? 一体、僕達に何か恨みでも?」
「僕は木ノ葉の青き野獣。ロック・リーだ。因みに恨みはありませんが、怒りは感じてる。だから、此処で全員潰させてもらいます」
降り立った者。それは試験前に勝負を挑んできたリーであった。何故、彼が此処にいるのか?サクラは不思議に思い、リーに尋ねる。
「助けてくれて…ありがとう。でも、どうして私を助けたの?」
「前に一度、言ったじゃないですか。命を懸けて君を守るとね。それを成す為に駈け付けたんですよ」
リーの言葉を聞き、サクラはその事を思い出した。今まで色んな事があり過ぎて、それをすっかり忘れていたのだ。あの時、心無い事を言ったのに自分を助けてくれたリー。彼の後ろ姿をサクラは、申し訳なさそうに見つめていた。尤も、自分の言葉が決まった。そう感じてニヤリと笑っていたリーに気付かなかったのが、サクラにとっても幸いであろう。
「成程ね。君が立ちはだかる理由は分かったよ。仕方無いなぁ。ザク、サスケ君はきみに上げるよ。その代わり、この二人は僕にやらせてくれ」
「…分かったよ。まあ、お前の方があいつと相性良さそうだしな」
「すまないね。なるべく、時間は掛けずに終わらせるさ」
そう言うや、ドスは二人に向かって駆けて行く。それに対して、リーはサクラの前に出て身構えた。だが、サクラも只見ているだけでは無い。力及ばずとも、協力しようと彼女はクナイを投げるが…それは通用しなかった。ドスはクナイを飛び越えて避けると、右手を付き出してリーに迫るが、彼は地面に拳を突き立て、強引に引きずり出した木の根でドスの攻撃を防いだ。
「君の攻撃に秘密があるのは知っている。早々、馬鹿正直には受けない」
ドスの右手に注意を払い、僅かな隙を突いてリーはドスの真下に移動し、目に止まらぬ速さで宙へ蹴り上げた。無論、リーの攻撃はそれで終わらない。続いて背後に回り込み、両手の包帯で拘束すると回転しながら地面へと勢いよく落下していく。そして…凄まじい音を立てて、二人は地面に突き刺さる。
先に起き上がったリーを見て、やったのか?と思いきや。ドスも平然として起き上がってきた。それにサクラは動揺を隠せない。かなり高い所から、落ちた筈なのに何故無事でいられたのか。
その理由はすぐに分かった。離れた所から、ザクは地面に手を置いている。彼が何かしたとみて、間違いはない。
「ふー 何とか間に合った。危ない所だったぜ」
「…!! そうか、お前の土遁で地面を柔くした訳か」
「残念ながら…それは違う。僕達の術は音だよ。故に…君では僕に勝つ事は無理なのさぁ!!」
相手から土を付けられた事に、腹を立てたのか。ドスは血走った目で攻撃を繰り出してくる。一瞬、反応が遅れたが、大振りの攻撃だった為。幸いにも避ける事が出来たが…その瞬間、リーの視界がぐにゃりと歪む。それだけでなく、自分の左耳に激痛が走り、彼は堪らずその場に膝をつく。
「クク… さっき言っただろ。僕達の攻撃は音だとね。空気の震動を防ぐ事など、誰にも出来はしないのさ」
「成程。先程の攻撃は、震動の範囲を広げる為か。だから、態と大振りの攻撃を…」
「気付いても遅いよ。今の君は耳から伝わった震動で、脳が揺さぶられてまともに動けないだろう。さて、次はあの女だね」
自分の術で身体の自由が効かないリーを見下ろして、ドスは嘲りの言葉を投げ掛ける。相手の術中に嵌まってしまった悔しさから、リーは唇を噛み締める。次にドスは標的をサクラに変えた。厄介だったリーと違い、彼女は取るに足らない相手だ。一瞬で片が付くだろう。
「…っ! そうはさせません。木ノ葉旋風!!」
「な、まだ動けるのか。しかし、動きが遅いよ。さっきの攻撃は効いているようだね。これはおまけだ」
「くそ… 今度は受けない」
「無駄だよ」
「何を… うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
サクラを守ろうと傷付いた身体に鞭を入れて、ドスに攻撃するリーだが…またもや音による攻撃で彼は沈んだ。攻撃の瞬間。耳を塞いで音の侵入を防いだにも関わらず、それは再び彼の脳を大きく揺さぶった。
「忘れたのか? 震動は防げないと言っただろう。これで二度目、流石に動けないだろうが…万が一もあるし、此処で止めを刺すとしよう」
「…!? そうはさせないわ」
「そんな物は効かないよ」
「だったら、これでどうよ!!」
リーに止めを刺そうとするドスを阻止する為、サクラがクナイを投げる。これが通じない事は理解している。だが、彼女に出来るのはこれしか無いのだ。一つで駄目なら、大量に投げたらどうだ? やぶれかぶれの攻撃を仕掛けると、ザクが間に入って全ての忍具を跳ね返してきた。
それによって、自分の腕や頬に傷付き、怯んだ所をキンに抑えられてしまう。容赦なく髪を引っ張られ、痛みにサクラは顔を顰めるが…それを見ていたキンは、ある事を思い付いてその事を口にした。
「ねえ…二人共。そいつとあそこにいる奴ら。この女の目の前で殺そうよ。面白い余興でしょ」
「おおー そりゃ名案だな。よし、やってやろうぜ」
「やれやれ。余り時間は掛けるなよ」
「分かってるって…」
「く… そんな真似は「動くな!このメス豚が」うっ…」
残虐ともいえる行動をやろうとする者達を止めよう。サクラが動こうとすれば、キンが邪魔をする。一体、どうしたらいいのか?何も出来ずに皆が殺されるのを黙って、見てるしか無いのかとサクラが絶望した時。ある人の言葉を彼女は思い出す。
『いつかサクラも誰かを守る為に戦う日がきっと来るわ。今日出来なかった事は、その日にやればいいのよ』
そうだ。思えば、自分はいつも誰かの背中を見て、そして守られていた。このままじゃ駄目だ。いつまでも守られている訳にいかない。あの人が、言ったあの日とは今なのだ。
正直、傷付く事や死ぬ事を自分は恐れていた。だけど、もう私は恐れない。サクラはクナイを取り出すと強く握りしめる。
「ハッ 無駄よ。そんな物、私に通用する訳ないでしょ?」
「それは…どうしらね!!」
それを見て、嘲笑するキンだったが…次にサクラが取った行動に目を瞠って驚いた。何と彼女は、手にするクナイで自らの髪をバッサリ切り落としたのだ。思いも寄らぬ事に他の二人も驚きの様子を見せる。
そして、ゆっくりと立ち上がったサクラは強い眼で三人を見つめた。その視線に三人の身体に言い知れぬ緊張が迸る。そう…彼女は覚悟を決めて、戦う事を決意した。言うまでも無く、大切な仲間を守る為に。
今回のお話 楽しんでもらえたでしょうか?
仲間を守る為、強い覚悟を決めてサクラが遂に戦う事を選ぶ。
髪を切り落とした時のシーン、あれでサクラの見る目が変わった人も多いと思います。
また一言でもいいので感想の方をお待ちしています。