NARUTO 六道へ繋がる物語   作:アリアンキング

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最新話、お待たせいたしました。




第二十話 猪鹿蝶の奮闘! そして豹変した者

 緊張感が漂う中、サクラとドス達は睨み合っていた。その様子をリーは不安気に見つめる。だが、その顔に怯えは無い。凛とした顔で立つ姿は不思議と安心感が湧いてくる。しかし、変化があるのは相手も同じだ。先程と違って、今の彼らはサクラを敵として認識した。お互い、視線で牽制しあう中。先にサクラが動いた。立ちはだかるザクを見据えて、彼女は印を組み始める。

 

 

「…キン、殺れ!!」

 

 

 一体、何の術だ?と警戒したが…印の形から使おうとしてる術にザクは気付く。それが分かれば、恐れる事はない。ザクはサクラの後ろに立つキンへ、彼女を殺せと叫んだ。その言葉に従い、千本を手にサクラの背中に突進する。キンが仕留めたと思った瞬間、彼女の姿は丸太へ変わった。

 

 

 ザクの予想通り、サクラが使ったのは変わり身の術。それは背後のキンに対する牽制で、狙いは目の前にいる自分であった。恐らく、ドスよりも勝算があると思ったのか?これも作戦なのか?それは分からない。だが、前者だとしたら、自分は舐められている。そう考えると怒りが込み上げてきた。

 

 

「キン、離れろ」

 

 

 ザクは両手を突き出しながら、キンに叫んだ。彼女もザクの構えを見て、素早く移動する。仕掛けるのはさっきの衝撃波だろう。だが、そんな事はお構いなしとサクラは、彼に無数のクナイを投げ付ける。当然、それは跳ね返されて自分に返ってくるが…これも計算の内だ。

 

 

「バカが…。バレバレなんだよ。上にいるって事はよ」

 

 

 攻撃を受けたのは、変わり身で本体は上にいた。ザクがクナイを跳ね返す時。同じ印を組んでいたのを、ザクは見逃さなかった。その事でザクは警戒心を薄くする。何をやるのかと思いきや、取る戦法は逃げの一手ばかり…少しは楽しめると思っていただけに、些か落胆の色が見て取れる。

 

 

 こんな奴に術を使うのは勿体無い。ザクは腰のポーチから出したクナイをサクラに投げ付けた。どうせ、次も変わり身で防ぐのだろう。こうなったら、とことん遊んでから嬲り殺してやる。

 

 

 案の定、印を構えたサクラはその攻撃を避けずに受けた。さて、今度は何処に行ったとザクが辺りを見回した時、顔に何か落ちて来た。手で顔を拭ってみれば、それは赤い血であった。まさか… ある考えに至り、ザクは上を見て驚愕する。彼の目に映ったのは、傷付きながら向かってくるサクラだ。落下する勢いを利用して、彼女は両手のクナイをザクの右腕に思いっきり突き刺した。

 

 

 サクラの捨て身の攻撃に怯み、倒れるザクだが…すぐに平静を取り戻すと左手をサクラに向ける。しかし、ザクが術を放とうした時、驚く事に彼女はその手に噛み付いた。

 

 

 

「てめぇ… この野郎、離せよ。離せってんだ コラぁ」

 

 

 自分の想像が付かぬ行動をするサクラに、混乱してザクは彼女の顔を殴るが…サクラは食い付いたまま離れようとしない。

 

 

 

 

 

 

 そんなサクラを陰から見る者達がいた。それはアスマ班の三人である。朝になり、必要な巻物を奪うべく行動を開始した時、偶然にもこの場に出くわしたのだ。最初はすぐ加勢に入ろうとしたいのだったが、傍にいたシカマルが制止して様子を見る事になった。

 

 

 

 しかし、土壇場でやってきたリーがやられてしまい。頃合いだと、いのが割って入ろうとするが…髪を切り落とし、立ち向かおうとするサクラの姿を見て、彼女は思わず涙を溢す。それは過去のサクラを知っているが故の事だ。

 

 

 

 

 昔、アカデミーに入学して間もない頃。周りに馴染めず、森で一人泣いているサクラを見つけて、いのは声をかけた。

 

 

『あんた… 春野サクラだっけ? いつもデコリーンって、苛められてたよね?」

『うっ、何よ。私を笑いに来たの?』

「誰があんたを笑うって? 馬鹿言わないで。そんな事をする訳ないでしょ。おっと、私も自己紹介しないとね。私は山中いの。よろしくね』

『う、うん。よろしく』

『そうだ。明日さ、また此処へ来てよ。そうしたら良い物を上げるからさ」

 

 

 それがサクラとの出会い。初めは余り良いとは言えなかった。それでも何処か放って置けなくて、いのは彼女にそう言った。

 

 

 

 

 

 そして翌日。

 サクラはいのが指定した場所に来てくれた。もしかしたら来ないのでは?そう思っていただけにサクラの姿を見つけた時は、心から嬉しかったのを覚えている。いのはそんな彼女に自分が大切にしていたリボンを贈った。

 

 

『これでよし! バッチリ決まってるじゃない』

『ありがとう。でも…おでこが』

『いいじゃない。隠さなくてもさ。逆に隠そうとするから、デコリーンなんて苛められるのよ。あんたは可愛いんだから、堂々としてればいいのよ』

『いのちゃん…』

 

 

 

 その後、いのはサクラを自分の友達に紹介した。最初こそ、いのの背に隠れていたサクラだったが…次第に打ち解けてサクラは明るくなっていった。ある日、いつもの仲間と過ごしているとサクラが息を切らしながら駆けてくる。一体、何を慌てているのか?不思議に思った仲間に彼女は、顔を輝かせてその理由を口にした。

 

 

『ねえ、皆、聞いて。私、好きな人が出来たの』

『へえ…。それは気になるね』

『もしかして、サスケ君とか? あの子、女子の中で人気者だし」

『え? 何で分かったの?』

『案の定か。やめときなよ~ あいつの周りにいる子達。結構、血の気が多いしさ。また苛められるだけだよ』

『ううん。私は負けない。だって、心から好きになれた人だもん』

『だとさ、いの。こりゃ強力なライバル出現だな』

『フン。どうせ強がってるだけよ』

 

 

 口ではそう言うが…内心では、いのはサクラの変化を喜んでいた。以前であれば、自分には釣り合わないと即諦めていた事だろう。だが、それでも面白くないと感じるのもある。一人っ子であるいのにとって、サクラは友達であると同時に妹みたいな存在だったからだ。もしかして、サスケに夢中になってサクラは自分から離れていくのではないか?心の底ではそんな不安が渦巻いていた。

 

 

 それからだ。サスケが髪の長い子を好きという情報を知り、サクラが髪を伸ばし始めた。何処から聞いたのかは知らないが、自分がサスケを好いている。それを真に受けた彼女がいのに戦線布告してきのは。いつしか、仲が良かった二人は何かにつけて、張り合うようになった。だけど、それでもいのは楽しかったのだ。だから、あの子がもっと強くなれる様、もっと逞しくなれる様、いのも負けじと己を磨いていた。常に彼女の前に立って背を見せ、彼女の傍に並べる様に。

 

 

 

 そして…自分の大事な妹分であり、親友は仲間を守るべく必死に戦っていた。何度も殴られ、顔が腫れようとも、血が出ようとも構わず食らい付く姿は‥もう苛められていた頃の影はない。既にサクラは庇護の対象では無い。彼女は…自分のライバルだ。

 

 

 

 その時、ザクの一発でサクラは堪らず吹き飛ばされた。これをチャンスと見た、ザクが最大力の攻撃で仕留めようと、サクラへ手を向けた瞬間。草むらから飛び出したいの達がサクラの前に躍り出る。此処に来て、姿を見せた新手に遠巻きに傍観していたドスが愚痴を溢す。

 

 

「誰と思えば、また木ノ葉の羽虫たちですか。うじゃうじゃと湧いて来て、うっとしいなぁ」

「いの!? どうして…此処に?」

「決まってるでしょ。あんたばかり、サスケ君の前でいい格好はさせないわよ」

 

 

 サクラは突如、現われたいのに驚きの表情を浮かべる。そんなサクラにいのは、笑いながらそう答えた。そして…目の前にいる敵に向き合うと、彼女は強い眼で睨みつける。

 

 

「ち、ちょっと‥二人共ぉ~ こいつらと本気で戦うの? 勝てっこないって。それとシカマル。僕のマフラーをいい加減に放してよ。さっきから苦しいんだから」

「馬鹿言うな。放したらおまえは逃げようとするだろがっ!! 第一、女のいのが戦うってんだぞ。それなのに男の俺らが逃げる訳にいかねえだろ。覚悟を決めろ、チョウジ」

「ごめんね。二人を巻き込んでさ。だけど、私達はあの猪鹿蝶よ。三人の結束と力を見せてやりましょ」

「だな。まあ、偶には体を張るのもいいかもしれねえ」

「ふん。あの二人はやる気みてえだな。所で…そこのデブ。てめえはやる気ねえなら、逃げてもいいぜ」

 

 

 一見、大した事は無さそうな三人だが…先程のサクラよりは楽しめそうだと、ザクは残忍な笑みを浮かべる。その一方、ビクビクと青ざめた顔で此方を窺っていたチョウジに、侮蔑の言葉を言い放つ。だが、その言葉を聞いた途端、チョウジの様子が変わった。

 

 

「ねえ… あいつ、今何か言った?」

「あ!? 惚けてんじゃねえぞ。嫌なら消えろって、言ったんだよ。このクソデブ!!」

「…まれ」

「はぁ? さっきから何だってんだよ。このデブ、もっとはっきり言いやがれ」

「黙れって言ったんだぁぁぁぁ!! 僕はデブじゃない。ぽっちゃり系だ!! コラぁぁぁ」

 

 

 仏の顔も三度まで。自分が気にしてる事を言われ、彼は遂にブチ切れた。元より、一度でも言おうものなら、怒るチョウジだが…今回は三回も言われたのだ。それ故、チョウジの怒りは並では無い。

 

 

「シカマル、いの。これは木ノ葉と音の戦争だぜ。あいつらは生かして帰すなよ」

「分かってるよ。ったく、キレてやる気出したのはいいが、これが面倒だからな」

「面倒なのは、こっちの台詞だぜ」

 

 

 

 三対二の戦いに持ち込もうとしたザクだったが、逆に相手を焚き付ける形に終わってしまった。その事に少しばかり、彼は苛立ちを覚える。此処に来る前、自分の主から言い渡された命令は‥試験終了前にサスケを殺す事であった。まだ猶予はあるとはいえ、余り時間は掛けられない。こうなったら、さっさと歯向かう奴らを始末してサスケを殺してしまおう。ザクは…構えるのを見て、いの達も構えた。

 

 

「二人共、あのフォーメーションでいくわよ!!」

「「おう」」

 

 

 

 

 

 

 

 その掛け声と同時に仕掛けたのは、意外な事にチョウジだった。怖がっていても、やる時はやる。そんなチョウジを二人も信頼していた。

 

 

「倍化の術…からの肉弾戦車ーーー!!」

「何が戦車だ。ただ、転がってるだけじゃねえか」

 

 

 手足を体に引っ込めて、勢いよく転がるチョウジをザクは嘲笑い、チョウジに真空波を放つ。しかし、丸くなった事でザクの真空波は霧散し、チョウジには通用しなかった。

 

「な、俺の術が…」

 

 

 思わぬ事にザクは、呆然とする。まさか自分の術が破られるなど、想像もしていなかった。無論、チョウジを止める手を持ってはいるが、それをするには直に触れない発動は出来ない。しかし、それをすれば当然、ザクの両手は無事ではすまない。自由に体を変化させるチョウジは、ザクにとって天敵といえる相手だった。

 

 

 

 相性が悪いと悟ったドスが、ザクの救援に向かうが…その瞬間、彼の体は金縛りにあったかの様に固まった。

 

 

「てめえは自由にさせねえよ。生憎、一番厄介だと分かってるからな」

「君は…そうか。影で相手を操る術を使うのか。これは盲点だった」

「ドス。何を遊んでるのよ」

 

 

 シカマルの術で意のままに操られるドス。それは自身の影を操り、相手の影に繋ぐ事でその者の身体を支配する術である。遠くにいる為、それに気付かないキンが叫んだ時。彼女もまた動きを止めた。

 

 

「いのも上手くやったみてえだな。あとは…任せたぜ」

 

 

 倒れるいのを受け止めたシカマルは、一人呟く。いのがやった事。それは相手の体に、自分の精神を侵入させる山中一族の秘伝忍術 心転身の術である。これによって、キンの精神を支配したいのは、クナイをキンの喉元に突き付け、彼らに交渉を持ちかける。

 

 

「そこまでよ。この子の命が惜しかったら、今すぐ立ち去りなさい。勿論、巻物を置いてね」

 

 

 この時、いのはある思い違いをしていた。彼らがサクラを襲撃したのは巻物が目当てだと思っていた。だからこそ、彼女はキンの命と引き換えに巻物を要求した。だが、ドス達にこの脅しは無意味だった。その違和感にいのも気付いて冷汗を掻く。仲間を殺すと言われたら、多少なりとも動揺する筈である。寧ろ、二人はニヤニヤと笑みすら浮かべている。

 

 

 思惑が外れ、困惑しているいのへザクがゆっくりと手を向ける。何だ?やっぱり降参するじゃない。彼女が油断した時、相手がやろうとした事が分かったサクラが、いのへ叫んだ。

 

 

「止まっちゃ駄目よ。そいつは…」

「え? きゃあぁぁっ!!」

 

 

 だが、サクラの忠告が届く前にザクがキンの体を吹き飛ばす。そのまま背後の大木に打ち付けられ、彼女はどさりと地に倒れ伏せた。

 

 

「何なのよ…。あんた達、どうして平然と仲間を傷つけられるの?」

「簡単な事さ。元より、僕達はある目的の為に動いている。それは君達の後ろにいる彼。サスケ君だよ。それに正直な所、試験なんてどうでもいいのさ。だから、キンが死のうと関係無い」

「そういう事だ。目的の為、端から死ぬ覚悟をしている俺達に脅しなんざ、意味ねえんだよ」

 

 

 その言葉にいの達は愕然とした。そして自分達の見通しが甘かったと三人は思い知る。

 

 

 

「そこの彼女が使う術。キンが傷付けば、彼女も同様に傷付く様ですね。ククク…ネタが分かれば、大した事はないね。それに君の術も持って五分。こっちのネタも分かった。さて、此処から反撃といきますか」

 

 

 

 ドスの言葉を聞いて、シカマルの表情は険しくなる。いのや自分が使う術の事も知られ、更に横を見ればチョウジはザクに抑えられていた。誰がどう見ても形勢は劣勢だ。攻勢に出ようにも、唯一戦闘力があるチョウジは敵の手に落ち、かと言って自分といのでは相手を仕留める手段は持っていない。何とかして、この場を切り抜ける策を見出そうと頭を回転させるが、焦りから上手くいかない。

 

 

「フン 気に入らないな。田舎者が弱い者を嬲って、勝者気取りか!」

 

 

 万事休す。全員の死という最悪の展開を覚悟した時、新たに現れた者のおかげでそれは免れた。声の方へ視線をやると、そこに二人の男女が木の枝に立ち、全員を見下ろしていた。

 

 

「何者です? 額あてを見れば、木ノ葉の忍と見えますが…」

 

 

 しかし二人はそれに構わず、遠くに倒れている自分達の仲間に目をやった。ボロボロになり、傷付いたリーを見て、女の忍が彼の名を口にする。

 

 

「そこに倒れているオカッパくんは、俺達のチームメイトなんだが…やったのは誰だ?」

 

 

 そう言いながら、彼は音の忍達を強く睨みつける。その白い眼は相手の全てを見透かす様だと、全員はそう感じていた。

 

 

「やったのは僕ですよ。文句があるなら、降りて来たらどうです?」

「いや…どうやら、俺の出番は無さそうだ」

 

 

 憤る少年にドスが挑発の言葉を吐き捨てるが、彼はあるものを見て怒りを収めた。一体、どういう事だ?と少年の真意が分からずに訝しんでいると。一人の少年がむくりと起き上がって来た。

 

 

 

「…!! サスケ君、目が覚めた…の」

 

 

 その気配に気付いたサクラが、振り向いて声をかけようとしたが…異様な雰囲気を醸し出す彼にサクラは言葉を失った。サスケの体は黒い瘴気に包まれ、また右半身には呪文の様な模様が浮び上がっている。いつもと違って、殺気に満ちた姿にサクラは、恐怖を感じて震えていた。

 

 

「…誰なんだ? サクラ…お前をこうした奴は…」

「え?」

「何度も言わせるな。お前を傷つけた奴は、どいつだと聞いている」

「俺だよ。サスケ君よぉ~ お前が起きるまで、暇だったからな。少しばかり、遊んでやった訳さ」

 

 

 

 突然、尋ねられてサクラは困惑して言葉を返せずにいると、少し苛立った様子でサスケは再び尋ねた。それに答えたのは、サクラを傷つけた本人であるザクだった。そんな中、ドスはサスケの異常さに気付き始めていた。体中に蠢くあの模様。それは主である大蛇丸が授けた物と見て間違いはない。

 

 

「そうか。お前か…」

「さ、サスケ君。その体…大丈夫なの?」

「ああ。心配はない。寧ろ、力が溢れて気分がいい。思えば、初めから委ねるべきだった。俺の目的を果たすのに必要な力にな」

「…サスケ君」

「さあて。お前だったよな…仲間を甚振ってくれた礼は、存分にさせてもらうぜ」

 

 

 

 力強く踏み出して、サスケはザクを睨みつける。言葉だけを聞けば、仲間の為に戦うと思うだろう。しかし、残虐な笑みを浮かべる彼の顔からは、とてもそうは思えなかった。

 

 

 

「いの!! 早く戻れ。そのままだと、ちっとやばそうだ」

「え? う、うん。解!!」

 

 

 面倒な事になると踏んで、シカマルがいのに戻る様に言うと彼女もそれに従って、術を解いて自身の身体に戻った。それを合図であるかのようにザクとサスケの戦いが幕を開ける。だが、不意に見た彼の目にドスは、背筋が凍った。サスケが見せたあの目が、まるで大蛇丸の様だと感じてドスの身体を恐怖が支配する。

 

 

 

 

「ま、待て!! ザク、彼と戦ってはいけない」

「けっ、今さら何をビビってるんだよ。確かにでけぇチャクラだが、死に掛けだった相手に負ける訳がねえ」

 

 

 ドスの忠告を跳ね除けて、ザクはサスケに向かって真空波を飛ばす。最大力で放ったそれは地面を抉り、大木すら軽く倒す程の威力を持っていた。もうもうと上がる土煙を見て、ザクは思った以上に呆気ない奴だと笑った。

 

 

「へっ、バラバラになったか?」

「誰がだ?」

「な、ぐわぁっ!!」

 

 

 全力の攻撃で息を切らしながら、ザクが呟いた瞬間。彼は瞬時に移動したサスケによって、殴り飛ばされた。その速さは目に止まらぬ程で、しかもサクラとナルトを担いでの事にドスは唖然とする。だが、サスケの攻撃はそれだけで終わらず、彼は素早く印を組んで火遁をザクに向けて放った。

 

 

「この…図に乗るんじゃねえ。こんなもん、掻き消してやる」

「ふん、だったら、やってみろよ」

「舐めるんじゃねえぞ。火遁如きで俺が倒せると思ったら…!? ぐああああ」

 

 迫る火遁に真空波を放ち、炎を消す事は出来たが…次に迫る攻撃には反応が出来なかった。サスケは火遁を放つ際、その中に手裏剣を仕込んでいたのだ。無論、本来ならば火遁と共に手裏剣を吹き飛ばされてしまうだろう。しかし、サクラ達との戦いや先程の攻撃でザクのチャクラはかなり消耗していた。それ故、火遁を消す事は出来ても、中の手裏剣までは止める事が出来なかったのだ。

 

 

 

 そして…サスケは、それによって生まれた隙を見逃さない。体中に刺さる手裏剣の痛みに悶えるザクに、サスケは詰め寄ると無防備な彼の腹部に強力な一撃を食らわせた。それにより、倒れそうになるザクの両腕をガッシリと掴んだ後、背後に回ったサスケはザクの背中に右足を乗せる。

 

 

 

「この腕がお前の自慢らしいな。だが、それも今日までだ」

「な、何をするつもりだ? や、やめ…ギャアアアアアッッ!!」

 

 

 昏く笑った後、サスケは足に力を籠めるとザクの両腕を力任せに引張った。その途端、バキボキと骨を砕く音がザクの悲鳴と共に響き渡る。半端無い激痛に声なく悶えるザクを見て、サスケは残虐な笑みを浮かべていた。

 

 

 その光景にサクラは、知らず涙を流していた。違う…こんなのはサスケ君じゃない。彼は何でも軽くこなしていつも自信に溢れていたけど、それでも優しい一面や不器用な所もあった。だからこそ、サクラは彼に惹かれたのだ。だけど、今のサスケは全くの別人だ。先程の笑みは…まるで襲ってきた大蛇丸の様だと、サクラは感じていた。

 

 

 

「次は…お前だな。今度はもっと楽しませてくれよ」

 

 

 ザクを打ち破り、次の標的としてドスに定めたサスケが踏み出した時。駆け出したサクラが抱き付いて、その蛮行を止めた。

 

 

 

 

「お願い…もうやめてよ。こんなサスケ君、私は見たくない」

「…サクラ。俺は…」

 

 

 

 背に縋り泣きじゃくるサクラの声が届いたのか、サスケの半身に浮かんでいた呪印が消えていく。それを見て、助かったと思ったドスは…二人にある提案を持ちかけた。

 

 

 

「サスケ君 君は強い。悔しいが今の僕達では到底、敵わないだろうね。だから、虫の良い話かもしれないが僕達を見逃してくれないか? 無論、只とは言わない。手打ち料として、僕達が持つ巻物を置いていくよ。それと…次に会って、君と戦う時は僕は逃げも隠れもしない。それは約束しよう」

「待って!! 行く前に質問に答えて。あんた達の背後にいる大蛇丸って、何者なのよ? それにサスケ君に何をしたの?」

「その問いですが…答えは分からない。僕もあの方が何者なのか…測りかねている。それとあの方の命令はサスケ君を殺す事。だからこそ、僕達は君達を襲撃したのさ。しかし、呪印の事は一切知らされないままね」

 

 

 

 ドスはこの時、大蛇丸に不信感を抱いた。サスケを殺す命令を下しておきながら…本人は自分達に黙って、彼に接触していた。おまけに呪印まで施して。だが、考えても答えは出る事はない。今は…すぐに此処を立ち去るのが先決だ。そう気持ちを切り変えると、ドスは気を失い倒れるザクとキンを抱えて去って行った。

 

 

 

 思わぬ出来事で危機を乗り越えたサクラ達だったが、胸に残った靄は晴れぬままであった。




今回、猪鹿蝶トリオとサスケの奮闘でサクラ達は、難を逃れましたね。

しかし、最悪と思われる呪印が無ければ…本当の最悪が三人を襲っていたでしょうし…そう考えると大蛇丸の行動も非難出来ない所ですね。


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