EDFの務めも終わって、今は古代ギリシアの世界を探険してます。
過去の世界を再現する今の技術は凄いですね。
予選の第一試合が終わって、カカシと共に去っていったサスケをナルト達は心配そうに見つめていた。そんな二人を余所に次の対戦相手がモニターに映し出された名前を見て、ナルトとサクラは相手に視線をやる。一人は同じ木ノ葉の忍だが、自分達も特に話した事は無く…その者の事をよく知らない。もう一人の相手は、第二試験中に襲って来た音忍だった。彼の怪我は癒えてない様で、両腕にはまだ包帯が巻かれている。相手がそうなった理由を知っているサクラは複雑な気持ちになる。そして…勝ち目の薄い状態で戦う相手の神経を疑っていた。
「えー 第二試合、油女シノ対ザク・アブミですね。それでは降りてきて下さい」
ハヤテに呼ばれ、下に降りた二人は睨みながら向かい合う。すると、シノが唐突に口を開いた。
「この試合、今すぐ棄権しろ。そんな状態では俺と戦うのは無理だ」
「ああ!? てめえ…そりゃ、何の冗談だぁ? ちっとも笑えねえぜ」
その忠告にザクは勿論、上で見ていた者達も困惑する。言葉だけなら相手を気遣うものだが、付き合いのある者達は知っている。本人は本気でそう言っている。しかし言葉足らず故、それは相手を怒らせる結果となってしまった。
早くも臨戦態勢に入ったザクを見て、シノも身構えるとハヤテは試合開始の号令をかけた。
「おらぁ。てめえなんざ、片腕だけで十分なんだよ」
「無駄だ。生憎だが、片腕でやられる程…俺も甘くない」
「てめえぇぇっ!! いちいち癪に障る奴だな。少し黙りやがれ」
試合開始と同時に攻めるザクだが、片腕しか使えない以上。攻撃は単調になってしまう為、シノにあっさりと防がれてしまう。その際、口にした言葉に更に怒りを露わにしたザクは自身が得意とする術をシノへと放った。彼の術を知らないシノは、まともに食らって吹き飛ばされ床へと転がっていく。
勝負有りかと思いきや、シノはむくりと起き上がった。そして…ザクを睨みつけると彼の頬から黒い何かが這い出て来た。その正体は無数の虫であった。見た事のない術を使うシノに警戒して、ザクが一歩下がった時。背後に気配を感じて振り変えると目に入った光景に絶句する。
そう。彼の後ろにはシノの虫が群れを成して、床を蠢いていた。
「この虫は寄壊蟲と言って、チャクラを食らう蟲だ。一匹だけならまだしも…集団に襲われたらお前のチャクラはあっという間に底をつくだろう。そうなれば、再起不能になるのは明白だ。もう一度だけ言う。今すぐ降参しろ」
「降参だと…!? けっ、素直に言う事を聞くと思うか? こんな蟲如き、俺の術で吹き飛ばしてやるぜ」
「無駄な足掻きだ。例え、蟲を吹き飛ばしてもその隙を突いて、俺が仕掛ける。だが、俺に仕掛ければ…背後から蟲がお前を覆い尽くすだろう。どの道、お前に勝ち目はない。奥の手は取って置くものだ」
「くそがぁ…」
劣勢に立たされて、ザクは焦りを感じていた。そして脳裏に過るのは、大蛇丸と会った日の事。行き場のない自分を拾い、力を与えてもらった。彼の為、必死に修行を重ねて修羅場を潜り自信を付けて来た。だが、その自信はサスケに敗れた事で消え失せ、今は舐めてかかった相手に押されている。
状況からして、この戦いに勝ち目が無いのはザクも理解していた。しかし、彼は退く訳にいかない理由がある。あの方は何より失敗を嫌う。以前、失敗した者が容赦なく消される様を見た事がある。只でさえ、自分は一度任務した身だ。これで戦いに負けたら、役立たずの烙印を押されて消されるだろう。別に死ぬ事は怖くない。自分が何より恐れているのは、弱かった頃の自分に戻る事だ。
何も出来ずに良い様にやられる今の状況が…彼の忘れたい忌まわしい過去を呼び起こした。そして…呼び起こしたのはそれだけではない。
「くく 奥の手は最後まで取って置くか。そうだな。お前の言う通りだ」
「…!? 貴様…初めから両腕を」
ザクの奥の手、それは両腕による攻撃だった。開始直後、片腕だけで挑んだのは相手の裏を掻く為だ。無論、相手を侮っていたのもあるが…今のザクに慢心は無い。蟲とシノへ向けて、ザクは渾身の攻撃を見舞った。
しかし、事態は思わぬ展開を迎える。その攻撃で傷を負ったのは、驚く事にザク本人だった。術を放った途端、彼の両腕に衝撃が迸る。それで出来た傷はまるで鋭利な刃物で抉った様にズタズタだった。右腕に至っては衝撃に耐えきれず、破裂して落ちてしまった。
「ぐあぁぁぁぁぁっ!! な、何が起きたんだ。何故…俺の腕が!?」
「気になるか? さっき、降参を勧めた時…蟲に指示を出したんだ。あの厄介な風穴に入ってじっとしていろとな。真の奥の手はこういうものだ」
激痛に悶えながら、困惑するザクの背後からシノは全てを教えた。そしてザクが振り変えると同時に強力な券打を打ち込んだ。それによって、飛ばされたザクは倒れたまま動かない。いや動けなかった。打つ手を失くし、ザクの身心は限界を迎えていたのだ。
「此処までですね。第二試合、勝者は油女シノ!!」
事の巻末を見ていたハヤテは勝負がついたと確信して、勝者の名を口にした。
「流石ね。油女一族の戦いは…」
「サチ先生、あの一族の事を知ってるの?」
「ええ。彼らは有名な蟲使いよ。油女一族は子供が生まれると、赤子の体に蟲を寄生させる秘術を施すの。そうやって、蟲と共存してきたのよ」
「ふーん。だけど、体に蟲を入れるのは理解出来ねえってばよ」
「同感。体の中に蟲がいるって、想像しただけで鳥肌ものよ」
「まあ…一族の秘伝は想像を超える物が沢山あるからね」
その様子を上で見ていたサチの呟きが耳に入ったのか、ナルト達が話しかけて来た。二人の問いに答えた後、サチは音忍の傍にいた男が消えたのを見て、顔を顰める。此処に来て、何処へ行ったのか。それを考えてハッとある事に気付く。そうだ‥大蛇丸はサスケを狙っている。それにナルト達から音忍もサスケを狙っていたと聞いた。何故、音忍がサスケを狙うののか?考えてある答えに辿り着く。もし‥消えたあの男が大蛇丸の仲間だとしたら、サスケの元へ向かったに違いない。下忍では手が出せなくとも、上忍となれば話は別だ。傍にカカシがいるとはいえ、得体の知れない相手では苦戦を強いられるだろう。そうすれば…サスケは。嫌な予感が湧き上がりサチはカカシの元へ行く事にした。それを伝えるべく、サチはナルト達に声をかける。
「二人共、私はカカシの様子を見てくるわ。すぐ戻るから」
「あっ、姉ちゃん」
「いきなりどうしたんだろう? 何か慌ててたけど…」
「なーに。心配いらねえってばよ。どうせトイレでも行きたくなったんだろ」
「あんたねぇ。まあ…サチ先生なら心配いらないか」
サチの態度に違和感を感じたサクラだが、ナルトは特に気にしていなかった。それに些か苛立ちを覚えたものの。次の試合が始まるの見て、彼女も気持ちを切り変える事にした。
時間を遡り、第二試合が始まった頃。地下の一室にサスケとカカシはいた。
その部屋では、サスケに刻まれた呪印を封印する為。カカシは床に自身の血を用いた術式を施していく。術式の中央で座るサスケは若干、緊張した面持ちでカカシの行動を見守っていた。
「さて、準備はこれでよしと… それじゃ、お前の呪印に封印をかける。すぐ終わるから気を楽にしろ。少しばかり、きついかもしれないが…我慢してくれよ」
「フン 別に怖がってなんかいない。余計な気を回さず、早くやってくれ」
「はいはい。じゃあ、いくぞ…」
サスケの強がりを受け流すとカカシは封印術を発動させた。すると床の術式が光り、まるで生きてる様に蠢きながらサスケの体へと向かって行く。集まったそれは彼の体を伝って、呪印を円で囲むと更に強い光を発した。
「ぐ、うわぁぁぁっ!!」
「耐えろ、サスケ。時期に終わる」
封印に抗おうとする呪印と抑えようとする封印術。これによる負担は強く、サスケは堪らず叫び声を上げた。そんな彼を励ますカカシもまた負担を感じているのか。額には大粒の汗が大量に浮かんでいた。
その後。十数分に渡って続き、漸くカカシは呪印の封印に成功した。終わると同時に意識を失くしたサスケがドッと床に倒れる。それは無理もない。サスケの体は既に限界を迎えていた。その上、更に負担を強いたのだ。大人でも辛い事を最後まで耐えただけでも、十分である。
「やれやれ。完全にダウンしたか。さて、終わった事だし運ぶとしようかね。誰だ? そこにいるのは分かってるよ。大人しく出て来な」
静かに寝息を立てるサスケを運ぼうとした時、背後から迫る気配を感じてカカシは鋭い目を向けて、威圧する様に声を発した。すると闇の中からその者が姿を見せると、相手の正体にカカシは驚き目を見開いた。
「へえ‥私の気配を察知するとはね。それに封印術まで使える様になったとは…随分と成長した様ね。カカシくん」
「あ、あんたは…大蛇丸!! どうして此処にいる?」
「どうして? フフフ、おかしな事を聞くのね。貴方もそれは分かってる筈でしょ?」
「やはり、サスケか。何故、こいつを狙う?」
「貴方はいいわよね。既に私が欲しい物を持っているんだから…。その左目にある写輪眼。それを私も欲しいのよ」
大蛇丸の真意を測るべく、カカシは警戒しながら問い掛ける。なるべく刺激しない様に気を付けていたが、さっきの言葉に機嫌を損ねたのか。少し苛立った様子で大蛇丸は言葉を返した。
「写輪眼…。それがあんたの目的って訳か。その為に態々、木ノ葉まで来たって事か」
「ええ、そうよ。結構、大変だったのよ。木ノ葉に入る為に里まで作ったんだからね」
「里? まさか…音隠れか!?」
「ご名答。さあ、話はこれくらいでいいでしょう。早く、後ろの子を渡して貰いましょうか」
「…断ると言ったら?」
「そうね。私もはいそうですかと下がると思う? 無論、力づくでもいいわよ。貴方一人、取るの足らないもの」
「なら、二人ならどうかしら?」
一触即発の空気が漂う中、聞こえた声に振り変えるとサチの姿があった。思わぬ人物の登場に驚いた大蛇丸だが、すぐに冷静さを取り戻して彼女へ問い掛けた。
「あら、貴女も来たのね。一応聞くけど、何の用かしら?」
「そんなの決まってるわ!! 貴方からサスケと仲間を守る為よ」
「フフフ 仲間ね。そんな物の為に来るなんて、意外と勇気があるのねぇ。最初見た時は怯えていたのに…」
「…っ!! 貴方こそ、意外とお喋りなのね。今の状況、理解してるの?」
大蛇丸の挑発に怒りを覚えたが、それを押し殺してサチも挑発する様に言葉をぶつけた。
「安い挑発ね。だけど、此処は乗ってあげるわ。貴方達がいた所で大した問題じゃないもの」
「近寄るな!! あんたにサスケを渡す訳にいかない。例え、伝説の三忍と呼ばれたあんたでも俺達二人なら刺し違う事だって、出来るぞ」
「ええ。絶対にサスケは渡さない」
「私と刺し違えるね。クク、フフフハハハハハハハハッ!!」
二人の言葉に大蛇丸は高々に笑った。初めは唖然としていたサチ達だったが、その行動が癪に障ったのか。鋭い視線で睨みつけると、食ってかかる様に言葉を投げ掛ける。
「何が可笑しいのよ」
「全てよ。二人揃った所で私に勝てるとでも? それに貴女に対しての対策も今はあるわ。一つだけ忠告しておくわ。例え、呪印を封印した所で無駄よ。サスケくんは必ず私を求める。復讐者である以上、力を欲してね」
「サスケは渡さないわ。絶対に…」
「ならば‥此処で私を殺してみたら? 出来ればだけどね」
「っ…」
言いたい事を言った後、大蛇丸は踵を返して去っていく。その際、大蛇丸が放った殺気に二人は動く事が出来なかった。その瞬間、自分達の首が落ちる錯覚を味わったからだ。サチ達の脳裏に浮かんだのは勝てない。この言葉だけだった。
「フー どうやら、行ったみたいだな。所でサチ、お前も無茶するね」
「お互い様よ。それより、サスケを早く安全な場所に移しましょう」
「…そうだな」
乱れた呼吸を整えてから、二人はサスケを急いで運んでいった。
「次の試合、あの黒頭巾か。そういや、あいつの術。未だに謎だってばよ」
「見た所、背中の忍具に秘密がありそうね。あ、サチ先生とカカシ先生!! サスケくんはどうだったの?」
戻ってきた二人を見て、サクラはいの一番にサスケの事を尋ねる。余程、心配なのか。彼女の表情は暗い。それはナルトも同じで、彼も不安そうに二人の言葉を待っていた。
「あいつなら大丈夫だ。今、静かな所で静養してるよ」
「そう… 良かった」
「へへ、流石のあいつも今回ばかりは、へばってたもんな」
「サスケくんをあんたと一緒にするな。でも、そういう点じゃ‥ナルト。あんたは平気なの?此処に来るまで大分、消耗してたけど」
「おう。俺は大丈夫だってばよ。少し疲れてたけど、今はへっちゃらだってばよ」
カカシの言葉で安堵した二人は、ホッと胸を撫で下ろす。純粋に心配するサクラとは、対照的にナルトは照れ隠しからか、サスケを茶化す様な言葉を吐いた。それにサクラは食ってかかり、いつもと同じ展開になると思われたが…珍しくサクラはナルトを気遣う言葉をかけた。それが嬉しかったのか。ナルトは満面の笑みでサクラに答えた。
二人のやり取りを見てる間に第三試合が始まり、一同は真剣な表情で戦いに注目する。
対戦相手は木ノ葉のツルギと砂のカンクロウ。開始直後、ゴムの様な軟体という特異体質で有利に立ち、カンクロウに降参を勧めるが本人は拒否する所か…相手を挑発する始末。それに怒ったツルギはカンクロウの首をへし折ってしまう。思わぬ展開に息を飲んで見つめるナルト達だったが、驚くの此処からだった。審判が勝者の名を呼ぼうとした瞬間。首を折られたカンクロウがツルギに抱き付いた後、彼の全身の骨を砕いてしまった。
それに合わせて床に落ちた包みから、本物のカンクロウが姿を見せる。どうやら、彼が使う傀儡と本体を入れ替えていたのだ。この事に驚いていたのは、下忍でなく上忍だった。上忍達が目を瞠ったのは入れ替わった瞬間だ。背負った傀儡を置いた時、彼は傀儡と入れ替わっていた。目の前に相手がいるにも関わらず、それを悟らせない。しかも傍にいたハヤテすら、傍に気付いていなかった。
入れ替わった事に気付いたのは、ヒルゼンとカカシ、サチ、ガイの四人だけ。彼らが気付けたのは、真剣に見ていたからだ。何気なく見ていた者は当然ながら、ネタばらしまで気付けなかった。
森乃イビキもその一人だ。第一試験では、彼の傀儡を人形遊びと称していたが…此処に来て評価を改めた。この数日で彼の実力は確実に上がっている。もし‥この試合を見ていなかったら、自分は、彼を侮ったままだっただろう。子供の成長は早い。この言葉を今日ほど、実感した事はないとイビキは思った。
「なぁ。カカシ先生、あれってば良いのかよ。二対一は卑怯なんじゃねえの?」
「別に卑怯じゃないだろう。ありゃ、傀儡であって人じゃ無いんだし」
「カカシの言う通りよ。傀儡は忍具の一種。それにナルトの言い分だと、貴方もクナイや手裏剣を使うのは卑怯という事になるわよ」
「う、それを言われたら何も言えねえってばよ。けど、あれはどうやって動かしてるんだ?」
「そんなのチャクラに決まってるでしょ。糸の様にチャクラを傀儡に付けて、操作するの。あの時、何もない所で転んだのはそれだったのね」
「あいつ‥そんな事をやってたのか。人も操れるなら、ちっと面倒な奴だってばよ。しっかし、どいつもこいつも変な奴ばかりだなぁ」
「お前が言うの? それ‥」
「ハハハ 全くよ」
「だけど、サクラ。貴女も笑ってはいられないわよ」
カカシとナルトのやり取りに笑みを溢すサクラだが、サチは彼女の肩を叩いてある場所を指差す。その方を見ると…そこに移し出されたのは春野サクラ。そして彼女のライバルである山中いのの名が表示されていた。
運命の悪戯か、或いは宿命か。サクラといの。二人の対決の幕が開こうとしていた。
今回、シノの戦いとカンクロウの戦いが終わりました。
最初こそ、カンクロウの戦いもきっちり書く予定でしたが…端折りました。
何れ起きるカンクロウの戦闘はしっかりと書くつもりです。まだ先ですが、お楽しみに。次回はサクラといののライバル対決です。ライバル同士が戦う展開。結構好きなので書くのが楽しみです。