NARUTO 六道へ繋がる物語   作:アリアンキング

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最新話、お待たせ致しました。


今回はサクラといの。二人の対決です。



第二十七話 少女が咲かせた綺麗な花

 第四試合 春野サクラ対山中いの。

 モニターに浮かんだ自分の名をサクラはジッと見つめていた。そして…対戦相手のいのへ視線を向ければ、彼女もまたサクラに視線を送っていた。それは数秒だったが、お互いに戦う覚悟を固めるには十分であった。

 

 

 やがて二人は静かに歩き出し、下へ降りていく。中央で向かい合う二人は暫しの間。無言を貫いていたが…不意にいのが口を開いた。

 

 

「まさか、あんたとこうして戦う日が来るなんてね。言っておくけど、私は手加減しないわよ」

 

 

 強気な態度で宣言したいのだが、内心は複雑だった。だが、サクラはその言葉に反応する事なく、過去の出来事を振り返る。

 

 

 昔、私がいのと出会って間もない頃。彼女と何かと一緒にいる時間が増えていった。それは授業の時もそうだった。以前、生け花の実習をいのとやった時。私に絡んできた虐めっ子から守ってくれたのはいのだった。

 

 

 何でも知っていて、そして自信に溢れていた彼女が…とても眩しく見えた。その日、いのと交わした会話を今でも覚えている。二人で詰んだコスモスとふじばかま。生け花の主役がコスモスなら、ぶじばかまはおまけ…。当時の自分達を現している様に私はぽつりと呟いた。自分等、おまけの存在でしかないと。

 

 

 だが、いのはそんな私にこう返した。自分はおまけでなく、まだ蕾だと。この言葉に私は傷付いたけど、否定する事は出来なかった。いや、しなかったのだ。

 

 しかし、今は違う。お互い、自分の道を進み…目指す物がある。そして…蕾だった私が開花するのが今なのだ。だからこそ、言わなければならない。今から言う言葉はいのを酷く傷付けるだろう。そして…私から離れていってしまうかもしれない。それでも…私が変わる為にやらなくてはいけない。少し気持ちが揺らいだけど、深呼吸を一つして私は口を開いた。

 

 

「そうね。今となっては、あんたとサスケくんを取り合うつもりは無いわ」

「何ですって!? いきなりそんな事を言い出して、どういう訳よ?」

「決まってるじゃない。あんたじゃ、サスケくんと釣り合わないし…今は私の方が強いもの。正直な所、あんたは眼中に無いわ」

「…黙ってれば言いたい放題。誰に向かって口きいてんのよ。調子に乗るなよ!! 泣き虫サクラが」

 

 

 激情に駆られて叫ぶいのだったが、意外と頭は冷静だった。自分達が忍として歩み出した日。サクラと交わした約束を思い出したから。昔、彼女に上げたリボンを返された時…サクラの中にある蕾は開き始めた。そして蕾は完全に開いたのだ。ならば…応えなければいけない。

 

 今目の前にいるのは…泣き虫だったあの子じゃない。自分が認めた一人のくのいち、春野サクラと正々堂々、勝負する時だ。

 

 

 二人は髪に巻いていた額あてを解き、己の額に巻き付け向き合った。そして同時に走り出す。先に仕掛けたのはサクラだった。素早く印を結び、分身の術を使っていのを攪乱するが、それが通用する程、彼女も甘くない。すぐに本体を見つけて、攻撃に仕掛けるいのだが、次の瞬間。一瞬で距離を詰めたサクラの一撃がいのの頬を捉えると鈍い音が響かせ、彼女の体が吹っ飛んだ。

 

 

「どう。今の一撃で目が覚めたでしょ? 昔の私と思って甘くないわよ。だから、本気で来なさいよ」

「そうね。確かに甘く見てたわ。だけど、次から本気で行くわよ」

 

 

 切れた口から出た血を吐き出し、いのも漸く本気になった。そこからの戦いは激しいの一言であった。互いに組み合い、殴り殴られての激闘。髪が乱れようと顔が腫れようが、構わず想いを乗せた拳を交えては吹き飛び、そしてまた向かっていく。

 

 

 それは十分近く続き、一向に終わる気配が無い。それに痺れを切らしたのか、いのが叫ぶ様に言い放つ。

 

 

「…が。あんたが‥私と互角なんてある筈無いわよ」

「フン。此処に来て、泣き言? 生憎、見た目ばかり気にして浮ついてるあんたが…あたしに勝てる訳無いでしょ」

「…アンタァ、一体何なのよ!! 人を舐めるのも大概にしろぉ」

 

 

 度重なるサクラの挑発で堪忍袋の尾が切れたのか、いのは怒りの表情でサクラを睨みつける。そしてクナイを取り出すや、自身の髪を掴むとバッサリと切ると辺りに放り投げた。その行動にサクラは単純だと思ったが、戦いを見ていた彼女の師、アスマは何か狙っていると感じていた。

 

 

「次は奥の手を使うわ。さっさとこんな戦いにけりをつけてやる」

「その構え…心転身の術ね。だけど、それは無駄よ」

「うるさいっ!! これ以上、あんたに舐められて堪るかぁ。無駄かどうか、見せてやるわよ」

 

 

 そう言って、いのは構えた手をサクラに向ける。当のサクラは術の正体を知っている為、止まる事なく動いていた。それを見て、アスマも思わず唇を噛んだ。確かに奥の手である心転身の術を使えば、サクラとの戦いに勝つ事が出来る。しかし、この術には大きな欠点があったのだ。

 

 相手に向かって自身の精神エネルギーを放ち、相手の体に入り込む。だが、それには相当の精神エネルギーを使う為、外したら数分間は元に戻れない。しかも術は真っ直ぐにしか、撃てない。もし‥外してしまったら、いのは数分の間、何も出来ないのだ。

 

 

 だけど、いのに焦った様子は無く、淡々としてサクラに狙いを定めていた。そして…彼女の動きを捉えた瞬間。いのは術を放った。

 

 

 

 術を放った直後、いのの体は前屈みになって立ち尽くすと同時にサクラの動きも止まった。

 当たったのか?そう思った時、サクラは顔を上げて勝利の笑みを浮かべていた。

 

 

「残念だったわね。あんたの術は外れよ。さて、それじゃあ…終わりにさせてもら!?」

 

 

 決着を付けようとサクラが一歩踏み出した時だった。違和感を感じて足元を見て、彼女の表情は驚愕に染まる。何とサクラの左足にチャクラの縄が巻きついていた。床に散らばった髪を伝って伸びた縄は、いのの方から伸びていた。

 

 まさか…これは。この時、サクラが感じた嫌な想像は現実となる。何故なら先程まで気を失っていたいのが、微笑みながらこちらを見ていたから。

 

 

 

「やっと捕まえたわよ。どう? これなら流石に逃げる事は出来ないでしょ。何せ、私の髪に流し込んだチャクラの縄だもの」

「さっきの行動は‥ただの演技だったのね」

「そうよ。私としても、こうまで簡単に引っかかるとは思っても無かった。単純なのはあんたの方だったわね」

「くっ…」

「さて、今度こそ終わりね。これであんたにギブアップさせれば、私の勝ちよ」

 

 

 知らない内にいのの作戦に嵌まっていた事に、サクラは悔しそうに顔を歪めた。自分が優勢だと油断していた。彼女がしたたかな人であるのは、十分知っていた筈なのに。結局、己はいつまで経っても蕾のままなのか? 此処に来て、心の内に弱気な部分が顔を出す。だが、そんな事など、相手には関係ない。いのはサクラに向かって、心転身の術を放った。

 

 

 

「どうなったんだ?」

「サクラの精神は乗っ取られたな。まさか、こんな方法で心転身の術を成功させるとはね」

「じゃあ、今サクラさんの中にいるのは…」

「貴方の思った通りよ」

「くっそ…此処まで必死に頑張ったのに。てか、ゲジマユってばいつの間にこっちへ来たんだ?」

「ん? 彼ならこの試合が始まった時からいたぞ。それに気付かないとは…お前もまだまだ修行が足りんね」

 

 カカシとサチの言葉を聞いて、悔しそうな顔をするナルトだったが…自然と会話に混ざっているリーに気付いて驚いていると、傍にいたカカシがその質問に答えた。無論、冷やかす事も忘れずに。それにムッとしてカカシを睨むナルトだが、すぐに視線を下にやった。

 

 

 

 その場には、さっきと同じ光景があった。只、違うのはサクラの身体をいのが乗っ取っているという事実だけ。目の前で座り込む自分の身体を見ながら、いのは手を上げてハヤテに声をかける。

 

「すみません。私、春野サクラは…この試合を棄権「駄目だってばよ。サクラちゃん。こんな所で負けたら…サスケの奴に認めてもらうのが遠くなっちまう」あいつ‥」

 

 

 いのによる敗北宣言を掻き消す様に、ナルトは吼えた。その言葉に思う所もあるいのだったが、勝負は勝負。譲る訳にいかない。それ以前に乗っとったサクラの精神が彼の声に反応する事は無い。ナルト以外の誰もがそう思っていた。

 

 

 しかし、予想外の出来事は起きるもの。改めて、棄権を宣言しようとした瞬間。突如、頭を抑えてサクラが苦しみ出した。この時、精神の中ではサクラが入り込んだいのへ抵抗していたのだ。心転身の術で乗っとった体では、術が効いている間、相手は何も出来ない。なのに…サクラはこうして抗っている。一体、何故? 初めての事にいのは激しく動揺していた。

 

 

『成程。体の自由は効かなくても精神は自由みたいね。ま、ナルトが五月蠅く叫んだおかげでもあるけど…』

「そんな‥ありえない。こんな事で私の術が破れるなんて」

『現に起きてるじゃない。この術を食らうのは二度目だもの。ある程度の対処法は思い付いたわ。それはそうと、早く出て行きなさいよ。さもなければ、あんたの精神が此処で死ぬわよ』

 

 

 

 目の前の光景にいのは絶句する。己の支配下にあるにも関わらず、自分を追い出そうとするサクラを恐怖を感じていた。そして…巨大化したサクラに捕まれて、握り潰されそうなったいのは堪らず術を解いて、サクラの体から飛び出した。このままサクラの精神に留まれば、自分の精神がやられてしまう。下手をすれば、死ぬ恐れもある為。彼女は撤退せざるを得ない。

 

 

 

「はぁはぁ…。まさか、こんな方法で心転身の術が破れるなんてね。驚いたわよ」

「はぁはぁ…。だから、言ったじゃない。私を舐めてると痛い目見るってさ」

 

 

 息を切らしながらも、二人は引き下がる事Hない。だが、お互いに限界は近く。決着はすぐに訪れるだろう事は皆、理解していた。そう…戦っている二人も。

 

 

 

 当初、彼女は平凡な忍だった。優秀な成績を残していても、頭一つ抜けない子。それがサクラに感じたカカシとサチの評価だった。だけど、今は違う。波の国での事や過酷な中忍試験。これらを体験し、乗り越えた事でサクラも大きく成長していた。未だ甘い部分もあるが、今では二人も認める忍となりつつある。恐らく、彼女が此処まで来れたのは傍にいたナルトやサスケの背を諦めず追い掛けていたからだ。

 

 

 そして二人は駆けていく。限界を迎えている体を押して…先に進む為、負けられない想いを籠めてライバルに渾身の一撃を繰り出した。ゴツンと鈍い音と共に拳が交差すると、互いに吹き飛び床に転がった。審判のハヤテはサクラといの。交互に視線をやって、二人が戦闘不能であると判断して引き分けを宣言した。

 

 

 その二人をサチとアスマは労わる様に抱き抱えると、ゆっくりと歩いていく。ボロボロになっても、何処か満足そうな顔で眠るサクラを見て、サチは優しい笑みを浮かべる。それはアスマも同じ、彼もまた優しく笑っていた。きっと、思っている事は同じだろう。自分達の教え子が成長を感じた事が何よりも嬉しいのだ。

 

 

 

 

 サクラを運び終えて、壁に預ける様に座らせてからサチは異常が無いか調べていると、不意に視線を感じ、其方に目をやればいのが目を覚ましていた。

 

「まだ動いちゃ駄目よ。気絶する程の一発をまともに食らった訳だし、頭がボーっとしてる筈よ」

「はい。まだクラクラしてます。全く、このデコ助…まるでゴリラじゃない」

「吐き気とかは無い? あるなら医療班を呼ぶわよ」

「いえ、それは大丈夫です。あの…サチ先生ですよね? サクラ、忍としてちゃんとやっていけてます?」

 

 

 いのに具合が悪いかを尋ねれば、本人は平気だと答えた。目の焦点も合っているし、異常は無さそうでサチはホッとした。意地を張り合い、十分以上も殴り合っていたのだ。目に見えない異常も在り得る為、サチは不安だったがそれも解消された。それを余所にいのは。おずおずとサチに問い掛けてきた。それはサクラの事だった、先程と違って今のいのはまるで妹を心配する姉そのものだった。

 

 ライバル視して、いがみ合っていても…いのにとってサクラは大事な存在なのだろう。彼女の口から出た言葉が何よりの証拠だ。

 

「ええ。ゆっくりとだけど、サクラは…忍として成長しているわ。それは貴女が一番理解している筈よ。思う存分、この子と戦った貴女ならね」

「…そうですね。サクラの成長具合は、私の想像以上でした。だからこそ、安心しました。もう泣き虫だったあの子じゃないんだって…」

 

 

 そう言う彼女の顔は、とても優しかった。そして…再びサチに視線をやって、いのは言った。

 

 

「サクラが変わったのは…きっと、サチ先生のおかげでもあると思います。第二試験の時、敵に襲われた後で言ってました。今の自分があるのはサチ先生がいたからだって」

 

 

 いのから聞いた言葉にサチは、照れた様に笑った。それに釣られていのもまた照れ臭そうに微笑みを浮かべる。和やかな空気の中、気を失っていたサクラが目を覚ました。するといのが揶揄う様に彼女へ声をかける。

 

 

「何よ。やっとお目覚めの様ね」

「あれ? 此処は…。そっか。私、試合に負けたのね」

 

 目を覚まし、辺りを見て。サクラは状況を理解した。そして…自分の敗北を知って彼女は目に涙を滲んていた。

 

「…泣きたいのはこっちよ。私とあろうものが、あんたと引き分けだっただもの」

「え? それってどういう事?」

 

 

 いのが言った事が信じられず、サクラは唖然としていた。そんな彼女にいのは床に置いてあるサクラの額あてを手に取り、彼女に差し出すと一転して満面の笑顔でサクラにこう言った。

 

「つまりね。引き分けたという事はあんたが私に追い付いた証拠。昔と違って、あんたは咲かせたの。綺麗な花をさ」

「いの…」

「あ、だからと言って調子に乗らないでよ。今度は絶対に負けないからね。それにサスケくんだって、渡さないからね。覚悟しておきなさい、デコリン」

「ム。その言葉、そっくりそのまま返してあげるわ。このいのぶた」

「「フンだ」」

 

 

 売り言葉に買い言葉、褒めたり貶したり、それでもお互いを認めあう事が出来る。

 そんな二人を見て、サチはくすりと笑った。彼女達はまた一つ前に進んだ様だ。

 

 

 

 

 そして始まる第五試合。対戦者はテンテン対テマリ。

 ピリピリと両者の殺気がぶつかる中、木ノ葉と砂。同盟国同士のくノ一対決が始まろうとしていた。




サクラといの。二人の関係って、良いですよね。
ナルトとサスケ。この二人とはまた違う間柄に魅力を感じます。


次回はテンテン対テマリから始まります。


それと新たに評価を下さったメンマ46号さん どうもありがとうございます。
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