今回はナルトの戦いです。
予選の第七試合 うずまきナルト対犬塚キバ。
対戦相手に選ばれたナルトは意気揚々と下りていった。サスケやサクラ。そして他里の忍達の戦いを見ていた事で体の疼きが抑えられないと言わんばかりの様子である。それと同じくキバも意気揚々と下りていく。それもその筈、強敵揃いの忍が残る中、当たったのは落ちこぼれのナルト。自身の勝利が確定したとキバは思っているのだろう。
だが、この試合は皆を驚かせる事になる。今まで共にいたカカシはそう確信していた。それはサクラやサチも同様であろう。お前の成長をしっかり見せてやれ。カカシはナルトを優しい眼で見つめながら、胸の中で呟いた。
向き合う両者を見据えて、ハヤテは第七試合の開始を宣言すると同時に二人は後ろに下がって様子を見る。
「ひゃっほぉぉぉぉ!! 相手がお前とは俺もついてるな。この試合、既に勝ったも当然だ。な?赤丸」
「ワン!」
「…何言ってんだ。勝負は始まったばかりだろ。逆上せてんじゃねえってばよ。第一、さっさとその子犬を下がらせろ。試合の邪魔になるだけだ」
開口一番。挑発の言葉をぶつけたキバだったが、予想と違って彼は乗る事は無かった。思いの外、冷静なナルトにキバも表情を変える。今までとは違う。それを肌で感じたから…
「バカヤロー。こいつは只の子犬じゃねえ。俺の相棒だ。つまり、一緒に戦うってわけよ」
「何ぃ。ハヤテ先生。あれってば、いいのか?」
「ええ 忍犬や蟲…。これの使用に至っては…忍具と同じ扱いですからね。ルール上では問題ありません」
「そういうこった。しかし…赤丸と俺のタッグは完璧だ。お前なんて敵じゃねえ」
「フン。言ってろよ! ハンデとしちゃ丁度いいってばよ」
「…。けっ、落ちこぼれが偉そうな口きくじゃねえか。いいぜ。だったら、俺もハンデをやるよ。赤丸、お前は手を出すな。此処は俺一人でやる」
何気なく放ったナルトの一言。これがキバの闘争心に火を付けてしまった。格下と思っている相手の口から出た挑発。これにキバは敢えて乗る事にした。どうせ‥さっきの言葉は只の強がり。運よく第一、第二の試験を突破した様だが、それは他者の力があっての事。自分の実力次第で合否が決まるこの試合で、ナルトが口だけの奴だと思い知らせてやる。失敗続きで馬鹿にされていたナルトの過去を思い出してキバは目の前の相手を見て嗤う。
「情けをかけて一発で終わらせてやるよ」
「けっ、だったら俺もそうしてやるってばよ」
「この後に及んでまだ言うかよ。じゃあ、行くぜ…」
キバは四つん這いになるや、一瞬にして距離を詰めるとその勢いを利用して彼を吹き飛ばした。凄まじい音を立てて壁に衝突したナルトはばたりと倒れてしまう。この現実に見物していた者達は呆れたり、馬鹿にしたりと様々な反応を見せる中。第7班の三人は静かに見つめていた。この数ヶ月、一緒にいた事でサクラは知った。彼はもう落ちこぼれ等ではない。だから立って、キバや周りの皆に言ってやれ。そんな想いに呼応するかのように、ゆっくりと立ち上がったナルトはぽつりと呟く。
「俺はもう落ちこぼれなんかじゃねえ。俺を…舐めるなよ」
たった一言。だがこれだけで周りの者は表情を変えた。それ程までにナルトの気迫は凄みに満ちていた。何より驚いていたのがキバ本人だった。さっきの一撃、自分は手加減したとはいえ…手ごたえはあった。現に彼の口から流れる血を見る限り、ダメージを与えていたのも明白だ。
「だから…強がるんじゃねえよ。血ぃ流してる奴が言う言葉かよ」
「まだ分かんねえのか? 俺の方こそ、手を抜いてやったんだってばよ。お前の力がどれ程なのかよ」
「…このやろう」
「お前も強がってねえで、今度は赤丸とかかって来いよ。それでも勝つのは俺だけどな」
「…っ! 言うじゃねえかよ。だったら、そうさせてもらうぜ。大怪我しても後悔すんなよ。ナルトォォォッッ!!」
堂々と言葉を吐くナルトに、キバは怒りで顔を歪める。そして吼える様にナルトの名を叫びながらキバは赤丸と共に駆け出していく。キバの攻撃に備えて身構えるナルトに、キバは素早く煙玉を放り投げると彼の視界を塞いだ。その煙幕を利用して、キバと赤丸はナルトへ攻撃を仕掛けていく。視界が塞がれている為、防御も回避も出来ない。このままではやられてしまうとそう思ったナルトは、煙幕から抜け出した。だが、それを見越していたのだろう。抜け出した先で待ち構えていた赤丸がナルト目掛けて突進してきた。これ驚いたナルトはなす術もなく、赤丸の攻撃を受けてしまう。
そして煙幕が晴れた後、倒れて動かないナルトと傍に座る赤丸が姿を見せる。その光景を眺め、勝敗は決したと確信したキバは高々に笑い、赤丸を呼びせた。だが、勝利の余韻に浸るキバは気付いていなかった。自分へ駆け寄る赤丸がほくそ笑んでいる事に…。
「良くやったぞ。赤…ぐわぁ」
「ガウ。引っかかったな」
「な、てめえ!? 一体どうして? まさか…変化の術か。赤丸は何処へやりやがった?」
「ぺっ 犬臭いってばよ。慌てなくも赤丸は俺の分身が抑えてらぁ」
唐突の事に動揺したキバだったが、絡繰りを知って冷静になると今度は怒りながら赤丸の場所を尋ねる。本来なら答える必要は無いが、ナルトはあっさりと赤丸の場所を口にした。そして観戦者は驚嘆していた。ナルトを侮っていた者は評価を改め、落ちこぼれとしてのナルトしか知らない者達も同様である。中でも一番惹き付けられていたのが、姉のサチであった。隠す事なく嬉しそうな笑みを浮かべ、ナルトを見つめる彼女の姿に後ろにいたカカシとサクラは目を合わせると、二人も穏やかに笑っていた。
「…どうやら、本当に腕を上げた様だな。正直舐めていたが、もう油断も手加減もしねえ。こっからは本気でやらせてもらうぜ」
「やっとかよ。だけど、お前には負けねえってばよ」
戦いの中、キバは漸くナルトの実力を認めた。そして懐から一粒の丸薬を取り出すと、それを赤丸の口へと放り投げた。すると赤丸の白い体は次第に赤く染まり、唸り声を放つと凄まじい力で分身体の拘束から抜け出した。突然、変化した赤丸にナルトは呆然とする中、再び取り出した丸薬をキバが口にする。
「いくぜ赤丸。俺達の本当の力を見せてやろう」
「ワンワン」
キバの掛け声に応える様に吼えると赤丸はキバの姿に変化し、キバは歯と爪が鋭く伸びて獣の様だ仕草を取った。何が起きてるのか分からないまま、棒立ちになっているナルトへ両者は一気に詰め寄って攻撃を仕掛ける。そこで我に返り、攻撃を躱そうとしたが…予想以上の速さについて行けず、繰り出す攻撃を受けてしまった。
すかさず距離を取るもあっという間に詰められて爪や牙による攻撃で一つ、また一つと傷が出来ていく。形成が変わって、焦りを抱いたのか。ナルトの動きもキレが無くなり、単調になっていく。そして左右から迫る攻撃をナルトは飛んで避けたが、それはキバ達の作戦だった。
キバは赤丸に視線を送り、合図すると赤丸は頷いた。
「くらえ、獣人体術奥義!! 牙通牙!!!」
「ぐわぁぁっっ」
キバと赤丸は体を勢いよく回転させ、ナルトに突進していく。宙にいるナルトに防ぐ術は無く、相手の技を受けてしまった。回転に合わせ、牙と爪で相手を切り裂く。その威力は絶大で地面に叩き付けられたナルトは体中から血を流し、ぐったりしていた。
この凄惨な光景に観戦者も勝負が決まったと確信する。明らかに致命傷だ。当の本人は戦う事を諦めておらず、起き上がろうとするも立てずにいた。
「くそっ‥ 俺は火影にな‥るんだ! こんな‥所で負けられねぇ」
「ああ!? 俺より弱いお前が火影になんかなれる訳ねえだろ!! どうせ、本心じゃ火影になれねえって、分かってんだろうが…。心配しなくても火影には俺がなってやるよ」
ナルトの呟きを聞いたキバは失笑した。しかし、キバは気付いていなかった。かつてのナルトだったら、確かに彼の言った通りだったかもしれない。だが、今のナルトは昔とは違う。一度言った言葉は曲げない。何があっても火影になると決意した彼は…ゆっくりと体を起こし始めた。
「立てぇ、ナルト!! あんたはサスケくんと戦うんでしょうが!! だったらこんな所で負けるんじゃないわよ」
サクラの言葉でナルトは満身創痍の体を押して立ち上がった。そう 彼はまだ諦めていない。そして‥今はナルトを認める者が確かにいる。遠くから叫ぶサクラをヒナタは静かに見つめていた。彼女もまたその一人である。
「俺と火影を取り合ったらよ。お前が負けるぞ」
「っ…。言うじゃねえかよ。ボロボロの奴がよく吼えるぜ。その口、二度と叩けねえ様にしてやる」
誰が見てもナルトの言葉は虚勢でしかない。それなのに何故笑える?何故その言葉が吐ける?キバは目の前にいる相手に密かな恐怖を抱いた。否、認めるものか。状況は自分が有利だ。立つのがやっとの相手に何を怯える事があるのか。次で決めてやる。キバは心に巣食った感情を払う様に駆け出した。
向かってくるキバの牙通牙をナルトは辛くも躱した。だが、傷を負った状態ではやがては捕まるだろう。次にあれを食らったら、もう立ち上がるのは不可能だ。何か策は無いかと頭を捻るナルトは…ある作戦を思い付いた。キバの攻撃で舞い上がった煙を利用してナルトは印を組んで術を発動した。
隠れたナルトへ追い打ちをかけるべく、飛び込んだキバと赤丸は思わず動きを止める。何が起きてるのか?分からない観戦者達だったが、晴れた煙から見えた光景に状況を理解する。その場にはキバが三人。変化でキバに化ける事で一瞬の隙を生み出す事に成功した。
此処から反撃と考えていたナルトだったが、キバは躊躇いなく拳を振り上げて目の前の自分自身を殴り飛ばした。あっさりと破られた策にサクラは驚きを隠せない。何故、簡単に破られたのか?困惑しているとキバは喜々として語る。
「最初は引っかかったが、変化の術は二度と通用しねえ。姿を真似出来ても匂いだけは誤魔化せねえからな。俺の嗅覚に掛かれば、見分けるのは造作もねえのさ」
そう。犬塚一族は忍犬と共に生きる故、嗅覚に優れていた。その為、一度嗅いだ匂いは忘れず、例え変化で姿を変えても匂いで判別する事が可能である。倒れ伏すナルトを見て、改めて勝利を確信したキバだが、その表情は驚きに染まった。
「へっ 今度こそ…俺の勝ちだ・・!! な、あ、赤丸!? 馬鹿な‥」
変化が解けて現れた姿は弱々しく倒れる赤丸にキバは戸惑った。まさか自分が匂いを間違えるとは…あれが赤丸ならナルトは後ろにいる自分だ。素早く振り変えるとキバは再び拳を振り上げ、殴り飛ばした。
先程と同じく、地面に転がった相手の術が解けると…現わした者はまたもや赤丸だった。何だ?一体、何が起きている。両方が赤丸なら、ナルトの奴は何処へ行った?頭が真っ白になったキバは完全に隙だらけであった。それを突き、赤丸の姿から元に戻ったナルトの一撃がキバの頬へ突き刺さる。
この時、観戦者やキバはナルトの策を把握した。キバに殴られた瞬間、ナルトは再度変化の術で赤丸に化けていた。そうとは知らずに相手の数を減らすというナルトの思惑にキバは嵌まってしまった。
「術はよく考えて使えって、アカデミーでも習っただろ。同じ手は通用しねえって、言っておきながら二度もひっかかるとはな。お前って俺よりも単純だってばよ」
「や、ヤロォ!!」
ナルトの挑発で頭に血が上るが、倒れる赤丸の弱い声にキバはハッとした。そうだ。ナルトのペースに乗せられるな。自力では自分が上である事は事実。落ち着いて戦えば、勝機はある。冷静さを欠けば、次も足を救われかねない。二度ある事は三度ある。この言葉がキバを一層、冷静にした。
それはナルトも分かっていた。本当の意味で本気になったキバに、もう小細工は通用しない。ならば、自分も本気で挑むだけ。この試合で構想していた技を披露する。上手く出来るかは知らない。けども残る手はこれしかない。
(ナルトのあの面。何か企んでやがるな。そういや、あいつは変化以外の手を見せてねえ。恐らくは俺を倒す術を出すつもりだろうが、そんな隙を与えなければいいだけだ。逆に隙を作って一気に決めてやる)
足に力を入れ、ナルトへ踏み込むと同時にキバは目に止まらぬ速さで手裏剣を放った。その不意打ちは躱す際に生まれた隙を突いて、キバはナルトの背後へ回り込み止めの一撃を繰り出した。流石にこれを躱すのは出来ない。歯を食い縛り、迫る攻撃に耐えようと力んだ時、軽い音と共に彼の尻から響いた。思わぬ出来事に固まる一同だった。その数秒後、キバは表情を歪めると鼻を抑えて苦しみ出した。
人一倍嗅覚が利くキバには、何気なく出た屁は絶大な攻撃力を秘めていた。地面に蹲るキバを見て、今が好機と見たナルトは影分身を生み出し、一斉に攻撃を仕掛ける。多方向からの券打と蹴りの応酬、最後は宙からの踵落としがキバの頭部を捉え、容赦なく振り落とされた。
「どうだぁ。俺の新技、ナルト連弾!!」
影分身を利用した怒涛の連続攻撃をまともに受けたキバは横たわったまま、動かない。近寄ったハヤトがキバの状態を確認すると、彼は完全に気を失っており勝敗は決したとハヤテは勝者の名を上げた。
「第七試合 勝者はうずまきナルト」
この言葉を聞いて、ナルトは喜びに体を震わせた。自分は確実に強くなっている。そして…目標のサスケに一歩近づく事が出来た。これが何よりも嬉しかった。その成長をカカシやサチ、サクラ達もまた喜んでいた。
キバが優勢と思われた第七試合はナルトの勝利で幕を閉じた。
最新話いかがだったでしょうか?
落ちこぼれと言われたナルトが、殻を破って皆に成長した姿を見せる。
何があっても諦めない姿勢が皆を変えていく。こういう展開は良いですよね…。
次回は因縁ある日向一族同士の試合です。ヒナタの葛藤や一族への確執を抱くネジ。この二人の戦いもお楽しみに。
また一言でもいいので感想をお待ちしています。