NARUTO 六道へ繋がる物語   作:アリアンキング

30 / 31
 久しぶりの投稿。今回はネジとヒナタの一騎打ちです、



第三十話 変えられない運命

キバとの戦いで辛くも勝利を手にしたナルトだったが、その代償も大きかった。体中に出来た傷の為、歩く度に激痛がナルトを襲う。戦いの最中は必死故に堪える事が出来た。しかし、気が抜けた今は僅かな痛みにも敏感になって、体が硬直する始末だ。

 

 

 もしも第三の試験がトーナメント形式だったら、自分は確実に負ける。此処にはキバよりも強い忍達がいるのだ。今のままでは駄目だ。もっと…今よりもっと強くならないとサスケと戦う前に他の奴に負けてしまう。此処まで来たんだ。ナルトは弱気な考えを振り払う様に頭を振る。

 

 

 そんなナルトに一人の少女 日向ヒナタは歩み寄ると、小さな声で話しかけた。

 

 

「あ、あの…。ナルトくん。怪我の方は大丈夫?」

「ん?おう、ちょっと痛むけど…別に何ともねえってばよ」

「そう、良かった。あ、そうだ。これ‥良かったら使ってみて」

「何だこれ?」

「傷薬よ」

「紅先生…。へぇ~ だけど、何で俺に?」

 

 

 二人のやり取りに見兼ねた紅は思わず口を挟んだ。此処に至ってもヒナタが薬を渡す理由が分からないナルトは、首を傾げていた。やはりこうなったかと紅は更に助け舟を出す。

 

「いいから貰ってやりな。それともあんたはヒナタに恥を掻かせたいの?」

「え?そんなつもりはねえけど…。まあ、くれるなら貰うってばよ。ありがとなヒナタ」

「う、ううん。気にしないで。私がやりたくてした事だから…」

「そっか。お前も予選頑張れよ」

「うん。ありがとうナルトくん」

 

 

 自分が差し出した薬を受け取ってくれた。それだけでも嬉しいのに、彼は笑顔で激励までしてくれた。ヒナタはそれが何よりも嬉しくて、彼女は知らずに笑っていた。周りの紅達も珍しく感情を露わにするヒナタを優しく見つめる。

 

 

 しかし、それとは違い一人だけ氷の様な冷たい視線を送る者がいた事に誰も気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 ヒナタは続いて、医療班に運ばれるキバの元へ向かうと同じく塗り薬を医療班へ手渡した。

 

 

「あの…良かったら、これを使って下さい。怪我の手当てに役立つ筈です」

「へへ お前は相変わらず、お人好しだな。人の心配より、自分の心配をしろよ」

「う、だって‥キバ君は班の仲間だし…」

「そうかよ。一つ、言っておくぜ。残っている奴との試合。もし‥砂の忍と当たった場合、即座に棄権しろ。お前も第二試験で見ただろ。あいつは相手が誰であろうと、命乞いをしようと容赦はしない。それに実力も段違いだ。この試験では審判がいるから殺される事は無いだろうが、確実に大怪我を負うのは明白だ。あと…もう一人、ネジと当たった時も同様だ。この理由は言わなくても分かるよな」

「……」

「もういいかね? そろそろ彼の治療もしたいから我々は行くよ」

「は、はい。キバ君をお願いします」

 

 

 ヒナタは搬送されるキバを静かに見送りながら、ヒナタはキバが残した言葉の意味。それは自分も良く理解している。だが、運命は時に残酷である。次の試合に選ばれた名は日向ヒナタ対日向ネジ。この二名であった。まさかの対決に事情を知る者達は緊張した様子で下で向かい合う二人を見つめていた。

 

 

 

 

 その両者の間には重い空気が漂っていた。審判のハヤテすらもこの空気に言葉を発する事が出来ない。張り詰めた空気の中、日向ネジは口を開くとヒナタに言葉をかけた。

 

 

「まさか、貴女と戦う事になるとはね。何とも奇妙な偶然もあるものだ。ヒナタ様」

「…ネジ兄さん」

 

 

 ヒナタの言葉にナルトは驚愕した。苗字が同じ事から関係はあると思っていたが、詳しい事は知らなかった。

 

 

「あの二人が兄妹だったなんて…。何でヒナタは黙っていたのかしら?

「いや、実際の所。あの二人は兄妹じゃない。日向一族は少し特殊なのさ」

「ええ。同じ一族だけど、宗家と分家に別れているの。ヒナタは宗家の子でネジが分家の子よ」

「僕も聞いた事があります。何でも宗家は分家の者達が逆らったり、裏切る事の無いよう。分家に子が生まれるとある術を施すそうです。そうやって、分家は宗家に従い尽くして来たのですが…その分、奴隷の様に扱う宗家に恨みを抱く者達も大勢いたそうです。恐らく、ネジもその一人でしょう」

「…そんな事って」

 

 

 カカシ、サチ、リーの話にサクラもナルトも絶句して言葉を失った。そして審判の宣言で戦いが始まるとネジは重い口を開いた。

 

 

 

「ヒナタ様、試合をやる前に一つ言っておきます。貴女は俺には勝てない。今すぐ棄権しろ」

「……」

「それに貴女は優し過ぎる。非情な忍の世界で貴女の考えは通じない。調和を望み、葛藤を避ける故に他人の意見に抗う事をしない。それは自分が弱く、自信が無いからだと理解してるのでしょう。本当なら下忍のままでも良い。貴女はそう考えていた筈だ。大方、中忍試験を受けたのもそうだ。自分が参加しなければ、二人は試験に出れない。それを知った貴女は誘いを断れず、同意した。本当は嫌なのに…違うか?」

「ち、違う。確かに私は自信が無かった。でも、それでも…私は自分を変えたくて試験を受けた。誰でもない自分の意思で」

 

 

 

 ネジの容赦ない追及にヒナタは、か細い声で反論した。その言葉には、変わりたいと願うヒナタの意思が強く込められている。上から見ていたナルト達も感じ取っていた。それを一層、感じていたのは担当上忍の紅だ。数ヶ月、傍でヒナタを見てきた。一族からも出来損ないと心無い言葉を言われた時も、ヒナタは己の気持ちを隠して言い返す事はしなかった。

 

 

 だが、今はあの頃のヒナタではない。当初、ヒナタを中忍試験に出す事を不安に思っていた。しかし、今はそんな不安は微塵も無かった。彼女は変わる。紅は心の中でヒナタを応援していた。

 

 

 

「変わりたい…か。やはり貴女は世間知らずの甘ちゃんだ。いいか?人は決して変わる事は出来ない。落ちこぼれは落ちこぼれ。どれだけ努力しようと、無駄な努力だ」

「そ、そんな事は…」

「無いと何故言える。人は変わりようが無いからこそ、差が生まれる。エリートと落ちこぼれがその例だ。見た目や学力、才能など…他者と比較されて、価値が決められる。それに人は苦しみ生きていく。俺が分家で…貴女が宗家であるようにだ。それに強がっているが、本当は今すぐ逃げだしたいと思っている。俺の白眼は誤魔化せない」

 

 

 ネジの冷たい言葉は…ヒナタの心を抉っていく。いつもならヒナタは耳を塞いで逃げていただろう。だけど、この時ばかりは違った。彼女はネジに反論しようとしたが、その顔は恐怖に染まった。見れば、ネジは白眼を発動させ、殺気を込めてヒナタを睨む。その光景にナルト達も同様に恐怖を覚えた。目の周りは血管が浮き上がり、異様な姿にサクラは震えた声でカカシとサチに尋ねる。

 

 

「何なの?あれ?先生達は知ってるの?」

「ああ。あれは白眼だ。日向一族に伝わる瞳術でな。写輪眼と類を成すものさ」

「ええ。目にチャクラを籠めて、見えない物を見る力を秘めているわ。それは壁に隠れている者だけでなく、人の心も見透かす事も出来ると聞いてる」

「サチの言う通り。洞察力においては、写輪眼を超える瞳術さ」

 

 

 二人の話はナルトとサクラは絶句する。もし‥人の心を見透かすなら、己の手の内も知られるという事だ。そんな相手にヒナタはどう戦い、勝つのか。どちらにせよ、この戦いは一瞬も見逃してはならない。ナルトは‥真剣な表情で二人の戦いを見つめた。

 

 

 

 

 

 しかし、ヒナタはネジの放つ殺気に気圧されて身動きが取れない。冷や汗を流し、ただ震えていた。

 

 

「それ見た事か。この程度の殺気で怯える奴が、変われる訳がない。今さっき、貴女は視線を左上に向けたな。それは過去の辛い記憶を思い出した。そして次に右下へ向けた。これは肉体的な苦痛の想像をしたのだろう?過去の自分を思い浮かべ、自身の経験からこの試合の結末を悟った。そう 俺にボロボロにされて、負ける結果を…」

 

 

 ネジの言葉にヒナタは、何も言い返さない。いや 言い返す事が出来なかった。ネジが口にした事は全て事実であった。ネジの言う通り…自分は変わる事は出来ない。此処で戦っても無駄だ。完全に戦意を失い、諦めようとした時、空気を裂く様な叫びが轟いた。

 

 

「出来る!! 何も知らねえで勝手に決めつけんなバーカ。ヒナタ お前の力、その陰険野郎に見せてやれってばよ」

 

 

 それをしたのは案の定、ナルトだった。たった一言、それで彼は場の空気をガラリと変える。ヒナタはナルトを見上げて、心の中で感謝した。そうだ。私がこの場にいるのは昔の自分を変える為だ。それに彼は言っていた…真っ直ぐ自分の言葉は曲げない。それが自分の忍道だと。ならば、私も言った言葉を曲げる訳にいかない。

 

 

 ふつふつと心の底から湧き上がる闘志を胸にヒナタは、目の前にいるネジを見る。彼もまた、ヒナタの目に宿る光に気付く。

 

 

「…どうやら棄権はしないみたいだな」

「ネジ兄さん 私はもう逃げません。全力でいきます」

「いいだろう。この勝負、受けて立つ」

 

 

 

 お互い、白眼を発動して構えた。間合いを取り、二人は隙を穿っていた。張り詰める空気の中、傍にいたリーがポツリと語り始める。

 

 

 

「やはり同じ日向流。二人の構えは同じですね」

「日向流?体術にも流派があるのか?」

「ええ 勿論です。そして日向流は木ノ葉において最強!! 以前、僕は言いましたよね? 木ノ葉の下忍で尤も強い奴がいると…それが日向ネジ、彼の事です」

「…あいつが」

 

 

 

 リーの言葉にナルト達は緊張から息を飲む。その直後、二人は一斉に駆け出し攻撃を繰り出した。躱して受け流し。そして隙あらば攻撃を繰り出す。目に止まらぬ攻防に観戦者達は息を飲む。互いに引く事なく、二人の戦いは熱を帯びていく。やがて、僅かな隙を狙いヒナタは強烈な掌打を繰り出すが、僅差で躱され掠るだけに終わった。

 

 

「あー 惜しいってばよ。当たってりゃ、ヒナタが勝ってたのにな。掠っただけじゃ、意味がねえ」

「いや、効果はある。彼ら、日向流の武術は独特でな。俺やリーの様にチャクラを纏って、相手の外面に致命傷を与える剛券とは違い、日向の武術は相手の内面に致命傷を与える柔券なんだ」

「ええ。一見、地味に見えるけど…確実に相手の体へダメージを残すわ。それが後から効いてくるの。どうやっても人は内臓や心臓を鍛える事は出来ないから」

「サチの言う通り。掠っても効くんだ。一発でも決まった時点で勝負が決まる」

 

 

 三人の上忍の説明に、ナルト達は押し黙った。その中でリーだけが、険しい顔でネジを見つめていた。その様子をガイは複雑な心境で見ていた。彼にとって、ネジは仲間であるが同時に越えたいと思うライバルでもある。改めて見せる、ネジの強さに不安を抱いていると思いきや、彼は笑っていた。それを見て、ガイは口元を緩めた。そうだった。ネジが成長してる分、リーもまた成長している。どうやら不安を抱いていたのは自分だったようだ。ガイは大事な事を教えてくれた教え子に感謝し、戦いに目をやった。

 

 

 

 

「でも…先生。日向の武術が凄いのは分かったけど、経絡系を攻撃するのは無理じゃないの?」

「けいらくけい? サクラちゃん…それって何だってばよ?」

「あのねぇ… あんたはいつも勉強不足なのよ。少しは勉強を真面目にしなさいよ」

「まぁまぁ。僕が教えますよ。経絡系とは、血管の様に全身を廻っている管の事です。これはチャクラを送る役割を持っていて、チャクラを練る内臓と繋がっています。故に経絡系を攻撃されると内臓にもダメージが行く。そういう事です」

「へーそうだったのか。教えてくれてありがとよ」

「ナルト!! リー君は貴方の先輩よ。口の利き方に気を付けなさい」

 

 

 分からないと頭を抱えるナルトにサクラは呆れる中、リーは丁寧に説明をした。その彼に生意気な口を利くナルトにサチの一喝が入った。場が収まった後、サクラは改めてカカシ達に疑問をぶつけた。

 

 

 

「ねえ、さっきも聞いたけど… どうやって経絡系に攻撃を当てるの?経絡系は目で見ることが出来ないのに」

「普通ならね。だけど、日向が持つあの瞳術、白眼にはそれが見えるんだ。そして日向の武術は特殊でね。チャクラを纏い繰り出す当身は本来、当てることが出来ない場所にも攻撃が出来る」

「だから従来の当身と違って、防御すると却って自身の首を絞める。常に躱さないといけないから厄介なのよ」

 

 

 

 二人の話を聞きながら、サクラが下に視線を送れば…ヒナタが強力な一撃をネジに繰り出し、それは彼の体に吸い込まれる様に当たる。ナルトは勝利を確信して、叫ぶ中で他の者も緊張した面持ちで見つめていた。

 

 その瞬間、ヒナタは血を吐き出して苦痛の表情を浮かべた。何故、ヒナタが?困惑する一同を余所にネジは冷めたい目で睨み、静かに口を開いた。

 

 

「…この程度か?宗家がこれでは日向も先は無いな」

「くっ、まだ…終わってない」

 

 

 

 ネジの言葉はヒナタの心に鋭く突き刺さる。彼の言葉を否定する様に、ヒナタは掌打を繰り出すが容易く防がれ、その腕にネジの指が突き立てられた。それは攻撃というより、何かのツボを押しているかの様だった。ネジの真意が分からない下忍達は首を傾げる中、上忍達は顔を顰めて冷や汗を浮かべる。

 

 

 そしてネジは何かを確認すべく、ヒナタの袖を捲る。その下はまるで虫に刺された様な紅い点を見て、ヒナタの顔は青ざめた。これが何なのか?同じ日向のヒナタには理解して絶望が心を支配する。

 

 

「ま、まさか‥ネジ兄さんはこれを狙っていたの?」

「今頃、気付いたか。そうだ。俺は初めからお前の点穴を見定めながら突いていた」

 

 

 ネジの言葉をヒナタは受け入れたくなかった。これが事実なら、彼は不可能に近い事をやってのけた。自分の師である父や他の日向ですら、出来なかった事を…

 

 

 

「何だ!?ありゃ、ヒナタに何が起きてるってばよ」

「点穴を突かれたのよ。経絡系にある小さなツボでチャクラの流れを止めたり、増幅したりする事が出来る。だけど、それをやるのは実際にはかなり困難というより不可能に近い」

「ああ。それに的確に突かないと意味が無い上、戦闘中なら尚更だよ。宗家の現当主でも難しいだろうな」

「じゃあ、それをやってのけたあの人って…」

「ええ。間違いなく、日向で一番の才覚を持っている。それが下忍なのだから、正直恐ろしい所ではあるわね」

「全くだ。一つ言っておくが、点穴は写輪眼でも見ることは出来ない。そういう厄介な物なんだよ」

 

 

 

 サチとカカシの説明にナルト達は驚愕する。だとしたら、ヒナタには初めから勝ち目など一つも無い。戦う前から結果は決まっていたのだ。

 

 

「これが貴女と俺の差だ。最早、勝敗は決まっているんだ」

「ぐう…」

 

 

 ネジに突き飛ばされ、倒れたヒナタは絶望の中、彼の言葉を思い出していた。それは第一試験で言った一言『まっすぐ自分の言葉は絶対に曲げない。それが俺の忍道だ』 そうだ。彼は…ナルト君はどんな状況でも前を向いていた。正直な話、自分には出来ないと思った。いや、そう決め付けていた。だけど、今なら私だって‥

 

 

「これ以上は無駄だ。負けを認めて棄権しろ」

「私は…変わると決めた。まっすぐ自分の言葉は曲げない。それが私の忍道だから」

 

 

 

 ヒナタが放った静かな言葉は、会場に響いた。ボロボロでありながら、力強いヒナタの姿にナルトは惹き付けられた。そして素直な気持ちを口にする。

 

 

「ヒナタの奴。あんなに凄い奴だったんだな」

「そうですね。何処となく、君に似ています」

「ヒナタ、いつもあんたを見ていたからね」

 

 

 二人の言葉にナルトは、何とも言えない感情を抱いた。まだ自分では理解出来ないだろう。だが、ナルトの中でヒナタに対する何かが変化した。

 

 

 

 

 

「どうやら、本気の様だな。ならば来い」

「…行きます。グ・・ガハッ」

 

 

 ネジに仕掛けようとした瞬間、ヒナタは胸を抑え咳き込み血を吐いた。ネジの攻撃はヒナタの体は既に限界を迎えていた。それだけでなく、点穴を突かれてヒナタはチャクラを練る事も出来ない。誰の目から見ても勝敗は明らかであった。それを見越し、ハヤテは止めようと動いた時だった。

 

 

「諦めるなヒナタ!! お前の実力、そいつに見せてやれってばよ」

 

 

 ナルトの声援が飛び、ヒナタの目に闘志が湧き上がる。体中が痛く、チャクラも練れない。それでも…まだ体は動く。だから諦めない。私は変わるんだ。その想いを胸にヒナタは攻撃を繰り出す。

 

 

 しかし、ダメージを負った体では動きが散漫になり、隙だらけ。それを見逃す程、ネジは甘くなく強力な掌打を打ち込まれる度、傷が増えていく。何度倒れても立ち上がり、向かっていくヒナタの姿に紅はかつてのヒナタを思い返していた。

 

 

 

 日頃から自分に自信が無いあの子は、いつも諦めて逃げる癖が付いていた。その事にあの子は忍に向かないのでは?と思う様になった。このまま続けて命を落とす前に辞める様に言おうとヒナタの元を訪れた時、珍しく鍛錬に打ち込む姿があった。

 

 

 思えば、この頃からだ。私のヒナタの印象が変化したのは…それ以降、一人で鍛錬するヒナタに私は助言を与えて一緒に鍛錬に付き合ったりもした。少しずつ、成長するヒナタを見て私は中忍試験への推薦した。初めは困惑し、怯えていた様子からまだ早かったか?と思ったが、ヒナタはまっすぐ私を見つめて参加の意思を伝えた。あの時もヒナタの目は強い光が宿っていた。

 

 

 

 だけど、今のヒナタの目に宿る光はあの時よりも強い。痛みに耐えて戦う教え子の成長に紅の目が涙でぼやけた。駄目だ、まだあの子は諦らめていない。此処で泣く事はヒナタが弱いと言ってる様なものだ。

紅は指で涙を拭うと戦うヒナタを暖かい目で向けた。

 

 

 

 

 この時、ネジは少し困惑していた。何故、ヒナタは此処まで戦うのだろう。自身が突いた点穴でチャクラは封じられ、体に負った怪我も軽くはない。本来なら気を失っていてもおかしくはない。なのに何故立ち上がる?どうして立ち向かう?勝ち目なぞ、既に無いというのに。

 

 

 

 そう自問自答しながらヒナタの鳩尾に掌底の一撃が当たる。その衝撃に堪らず、ヒナタは崩れ落ちる。

 

 

 

「貴女も分からない人だ。俺には貴女の攻撃は通用しない。これ以上、戦うのはやめて棄権しろ」

 

 

 

 審判のハヤテも続行不可能と判断して止めようと声を上げた時、「止めるなぁっ!!」とナルトの叫びが轟いた。その行動にサクラは非難する。無論、ナルトも自分が無茶を言っているのは理解していた。だけども叫ばずにいられなかった。何故なら、あの姿が己と被って見えたからだった。

 

 

 

 どうしようもない事がある事はナルトも知っている。しかし、諦めない気持ちが奇跡を起こす事も知っている。あの言葉はそれ故だった。

 

 

 そして奇跡が起きる。気絶していて続行不能と思われたヒナタは再び立ち上がり、目の前に立つネジを強い眼差しで見据えた。その視線にネジは恐怖を感じ冷汗が浮ぶ。

 

 

 彼女は…本気で自分に勝つ気なのか?だが、これ以上は本当にヒナタが死んでしまう。ネジは呼吸を整えてから諭す様に彼女に言葉をかける。

 

 

 

「これまでにしよう。ヒナタ様、貴女の変わりたい。この気持ちは十分に分かった。宗家でありながら、力の無い貴女は己を呪った事でしょう。だけど、変える事が出来ないのもある。それが俺と貴女の力の差だ。これが運命。貴女ならいずれ、強くなって宗家として胸を張れる日が来るだろう。だから、もう棄権しろ。これ以上は苦しむ必要はない。楽になれ」

 

 

 

 

 ネジはそう言って、棄権する事を薦めた。初め、自分はヒナタを意気地の無い奴だと思っていた。少し痛め付けてやれば、あっさりと敗北を認めて引き下がる弱者であると。しかし、それは違った。過去のヒナタとは違い、何度も立ち向かう姿にネジは知らない内にヒナタを認めていた。変わりたい、この言葉が偽りでない事は自分も理解した。そして自分が言った言葉も偽りはない。本心からの言葉だった。

 

 

 

 只、この時…ヒナタは一つだけ過ちを犯す事になる。

 

 

 

「…運命か。確かにネジ兄さんの言う通りかもしれない。でも、それを言うならネジ兄さんだって、苦しんでいるわ。この戦いを通して視えたの。貴方が抱える宗家と分家という呪いに苦しんでる。ネジ兄さんはそれから目を逸らしてる。だから運命という言葉で蓋をして逃げてるのでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 何だ?今、ヒナタは…こいつは何を言った?俺が何から目を逸らしてるだと?誰が逃げてるだと…?ふざけるな。あの時、貴様がもっと強ければ、あの時…貴様がいなければ。あの人は……死ぬ事は無かったのに。ネジの脳裏に浮かんだのは、消し去りたい忌まわしい過去。それをヒナタが触れてしまった。しかも自分が憎み恨んでいる宗家の奴が…

 

 

「ッ。貴様あぁぁぁぁぁぁ」

「待ちなさい。試合は終了です」

 

 

 今までにない殺気を放ち、鬼の形相でネジはヒナタに向かっていった。それはハヤテも恐怖を感じる程、強い殺気であった。その為、駆け出すのが遅れてしまい、ネジの掌打がヒナタに繰り出される。間に合わない。惨劇を覚悟した時、ネジの動きが止まった。

 

 

「いい加減にしろ、ネジ。宗家の事で揉めるなと約束した筈だ。冷静になれ、お前らしくないぞ」

 

 

 ネジを止めたのは、ガイを始めとした数人の上忍。そしてヒナタを支えるサチの姿があった。我を忘れた自分を抑えてくれた事を内心、感謝すると同時にまるで逆賊の様な扱いをする上忍達に怒りを覚えた。

 

 

「何故、貴方以外の上忍が出しゃばる?宗家は特別扱いか!! もう落ち着いた。早く放せ」

「う、ゴホゴホ…ガハ」

「ヒナタちゃん!? まずいわね。医療班を呼んでくるわ」

 

 それを見て安心したのか、限界を超えていたヒナタは血を吐き倒れてしまった。サチが声をかけるが、気を失ったのか。返事は返ってこない。サチは焦って医療班を呼びに走った。

 

 

 ぴくりとも動かないヒナタの姿を見て、ナルトは一目散に駆けよった。青白い顔で横たわるヒナタに出来る事は無い。そんなナルトにネジは薄笑いを浮かべ、話しかける。

 

 

「お前も確か落ちこぼれだったな。ならば、二つ忠告しておいてやる。仮にも忍なら他者の応援など辞めろ。見苦しいだけだ。それと落ちこぼれは落ちこぼれ。どうやっても変われはしない。無駄な努力をいくら重ねたとしても運命には抗えない」

 

 

 ネジの冷たい言葉だけが、その場に響いた。誰もが口を閉ざす中、ナルトは立ち上がった。

 

 

「本当にそう思うのか?だったら、俺が証明してやるってばよ。本戦でお前をぶっ飛ばしてなぁ」

「…良い度胸だ。やってみろ」

 

 

 二人は火花を散る程、睨み合った。因縁が渦巻く中、第三試験の予選は佳境へ向かう。

 

 

 

 

 

 




今回のお話、いかがだったでしょうか?


宗家なのに落ちこぼれのヒナタ。分家でありながら天才と言われるネジ。
同じ日向でも対極な二人の戦いを見た時、ネジってば妹分に容赦ねえと思ったけど、後にネジの過去を知った時は悲しかったなぁ。

次の試合はいよいよ我愛羅とリーの戦い。これまた書くのが難しそうだけど、楽しみでもあります。


もし宜しければ、感想を下さい。それと誤字脱字等がありましたら、報告お願い致します。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。