NARUTO 六道へ繋がる物語   作:アリアンキング

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最新話 大変お待たせいたしました。


今回はリーと我愛羅の試合です。


第三十一話 立派な忍者 それを証明する為に

「アイツ、やっぱり馬鹿な奴じゃん」

「ああ。力の差に気付いてないね」

 

 

 テマリとカンクロウは嘲りの視線でナルトを見る。己の力量に気付かず、格上に威勢よく啖呵を切る姿は滑稽だと嘲笑していた。そんな中、カンクロウは化物が二人に増えたと焦りを抱く。その一人は自分の隣にいる我愛羅。彼は先程の戦いに影響されたのだろう。隠す事なく殺気放っていた。

 

 

(我愛羅のやつ、さっきの戦いで血を見てから疼いてやがるな。ちっ、殺気まで出しやがって居心地悪いったらねえな。それにネジとかいう奴も気になるし、情報収集を兼ねて此処から離れるとするか)

 

 

「ん?何処へ行くんだい?」

「情報収集。少し気になる奴がいるからな。調べておいて損はねえじゃん」

「あまり勝手はするなよ。面倒事は御免だからね」

「はいよ。ほんじゃ、行ってくる」

 

 

 

 忠告するテマリにカンクロウは返事を返すが、本人は何処吹く風で気にした様子はない。それに溜息を吐くテマリだが、それ以上は何も言わなかった。

 

 

 

 カンクロウが目を付けたのは先程、ネジに啖呵を切っていたナルトだった。他の忍よりも単純なナルトなら何かしらの情報が得られるだろう。そう思い、カンクロウは彼に近付き声をかける。

 

 

「おーい さっきの啖呵、見事じゃん。お前、面白い奴だな」

「あんだよ。黒デブ。お前は面白くないじゃん」

「……。まあ、そういうなよ。あと、黒デブはやめろ。俺はそこまで太ってない」

「あっそ。そんで一体、何の用だってばよ?」

 

 

 

 ナルトのもの言いに苛立ちを覚え、カンクロウは拳を握るが堪えて話を切り出した。

 

 

「ああ。実は…ネジって奴の事だが、お前はあいつをどう思う?」

「ムカつく奴。人を見下す所が気に入らねえってばよ」

「そうか。いや、他に言う事はねえのか?例えば、あいつの術とかさ」

「どうでもいいってばよ。俺はあいつをぶっ飛ばすって、決めてんだ」

「ふーん。それは勇ましい事で」

 

 

 求めた情報は得られず、カンクロウは別の忍に当たろうかと思った所で自身に向けられている視線に気付く。それは木ノ葉の上忍達からだ。見れば、サクラやシカマル等の下忍もこちらを警戒の視線を送っている。これではどう繕っても口を割らないだろう。己の情報収集は失敗に悟り、彼は大人しく引き下がる事にした。

 

 

「えー それでは次の予選試合を始めます」

 

 

 ハヤテの言葉で場に緊張が走る。残りは二試合。一体、誰とぶつかるのか。いまだに呼ばれていないチョウジは恐怖で震えていた。残った忍はどれも強敵ばかり。自分が勝てる見込みは無く、勝負の前から戦意を失っていた。

 

 

チョウジは固唾を飲み、掲示板を見つめる。そして…

 

 

「よっしゃぁぁぁぁぁっ セェェェェェフ」

 

 

 彼は大声で叫び、その声は部屋中に響き渡る。突然だった為、傍にいたシカマルやイノは耳を抑える暇もなくそれを食らい悶絶していた。唯一、アスマだけは耳を塞いで難を逃れていた。

 

 

 そして掲示板に目をやり、アスマは密かに安堵の息を吐く。選ばれたのがチョウジで無い事を。

 

 

 

「降りて来い。早くしろ」

 

 

 一陣の砂と共に姿を見せたのは砂の忍、砂漠の我愛羅だった。狂気を孕んだ瞳で我愛羅は自分の対戦相手に向けて言い放った。異様な緊張感が立ち込める中、ロック・リーは恩師のエールを背に下へ降り立った。

 

 

 

「早々と貴方と戦えるとは…嬉しい限りですよ」

 

 

 

 自身に放たれた瓢箪の蓋を受け止め、リーは我愛羅を睨んだ。既に臨戦状態の二人を見て、ハヤテは試合開始を宣言すると同時にリーは駆け出すと回転を利用した蹴りを繰り出す。だが、リーの攻撃は絶対防御の砂に阻まれてしまう。

 

 

 初めて見る類の術にリーは驚きに目を瞠る。瓢箪に何か秘密があるのは分かっていた。自分に迫る砂を避けながらリーは再び攻撃を仕掛けた。

 

 

 しかし繰り出す攻撃は全て防がれてしまう。フェイントを織り交ぜたり、持ち前の素早さを生かして死角からの攻撃等。様々な手段を取るが我愛羅には届かない。まるで意思があるかのような砂の動きにリーは徐々に追いつめられていくのを感じていた。

 

 

 

 一発。そう一発でも当たれば勝機はある。それは我愛羅が操る砂を如何に突破するかだ。

 

 

 

 

「…何だってばよ。ゲジマユの攻撃は全然通じてねえ」

「我愛羅の防御は完璧だ。我愛羅に物理攻撃は一切効かねえよ。だから今まで誰一人いない。我愛羅に傷を付けた奴はな…」

 

 

 

 カンクロウの言葉にナルトは押し黙る。仮にあそこで我愛羅と戦っているのが自分だとしたら、打つ手はあるだろうか?考えても対抗策は思い付かない。きっと手も足も出ず敗北する。そんな未来しか想像出来なかった。

 

 

 

 

「何でリーさんは体術ばかりで戦うの? 物理攻撃が通用しないなら忍術で攻める手もあるのに」

「それが出来ないからだ。リーは忍術を使えないんだ。あいつは忍なら当たり前の様に持っている忍術の才覚は無い。唯一、出来る体術だけがあいつの武器だ」

 

 

 

 サクラの疑問に答えた後、ガイはリーに向かって叫んだ。

 

 

「リー。俺が許可するアレを外せ」

「ガ、ガイ先生!? しかし…あれは大切なものを守る場合じゃないと駄目だって」

「構わん。俺が許す!! 思う存分、戦えリー」

 

 

 

 ガイの許しを貰い、リーは喜々とした様子で座り込むと両足から何かを取り外した。それはガイが修行の一環で付けさせていた物であった。一見すると只の重りにしか見えず、観戦していた者達は何かの茶番と思い、白けた目を向けていた。

 

 

 

 だが放り捨てた重りは床に落ちた瞬間、凄まじい土煙を巻き起こした。まるで巨大な岩が落ちたかの様に床に大きな穴が出来上がるのを目の辺りにし、皆は驚愕する。これ程の重りを付けてリーは素早い動きをみせていた。ならば…枷から解放されたらどうなるのか?それはすぐに明らかとなる。

 

 

 

 一瞬にして距離を詰めると、リーは高速の券と蹴りを次々と繰り出す。攻撃自体に変化は無い。しかし我愛羅の表情から余裕が消えていた。先程まで違い、リーの攻撃は砂の壁を徐々に突き抜けていく。

 

 

 

「忍術が使えないからリーは体術のみに磨きをかけてきた。それ故に他に劣る事は無い。俺が認める体術のスペシャリストだ」

 

 

 

 ガイの言葉と同時にリーの強烈な一撃が遂に我愛羅を捉えた。この事実にテマリとカンクロウは衝撃を隠せない。それもその筈、絶対防御を誇る我愛羅が他者の攻撃を食らう様を見た事は一度足りとも無かった。何より一番驚いているのは我愛羅本人だろう。無表情だった顔に些か困惑の色が浮んでいた。

 

 

 

 

 

「漸く攻撃が当たりました。さて、此処からが本番ですよ」

 

 

 

 そう言うや、リーの猛攻が始まった。後ろに気配を感じて視線をやれば、そこに姿は無く。右と思えば左から拳打が繰り出され、下かと思えば上から蹴りが振り下ろされる。四方八方、縦横無尽な攻撃に我愛羅は翻弄されていた。

 

 

 砂の防御も攻撃の速さに追い付けず、やがてリーの強力な一撃が我愛羅の頬に突き刺さる。凄まじい衝撃に我愛羅は堪らず倒れ伏した。手応えを感じたリーは勝利を確信するが、ゆっくりと我愛羅は体を起こし、リーは戦慄を覚えた。

 

 

 

 我愛羅の顔は至る所がひび割れており、一部がボロボロと崩れていた。何よりもリーが恐怖を感じたのはその表情だ。血走った目でリーを見つめるや、獰猛な獣を彷彿させる笑みを浮かべている。

 

 

 

 任務の中で忍を相手に命懸けの戦いを経験した。その度、死ぬかもしれないと感じた事は一度や二度では無い。しかし、目の前にいる相手は全くの別物だ。それは人の姿をした化物。我愛羅の威圧感に気圧されて、攻めているリーが追い詰められる形となった。

 

 

 

「ヤバイじゃん。今の我愛羅だと、アイツ…弄ばれて」

 

 

 殺される。この後、起きるであろう惨劇を予想してカンクロウはリーに憐みの視線を送った。どうでもいい相手だが、人が玩具の様に壊されて死にゆく惨劇をなるべくなら見たくはない。無論、最悪の状況になる前に試合は上忍達で止められるだろうが、不安定になった我愛羅が容易く止まるとは思えない。

 

 

 

 

「お、おい。あれは何だってばよ」

「ありゃ砂の鎧だ。予め身体全体に纏う事で攻撃を防ぐ術。自動で攻撃を防ぐ砂の障壁と合わせて使うからこそ、絶対防御を可能とするんだよ」

「な、何だよ。そんじゃあ、あいつには弱点が何もねえって事じゃねえか」

 

 

 

 そう呟くナルトを余所にカンクロウは別の懸念を抱いた。一見、隙がない完璧な防御術に思える砂の鎧。しかし世の中に完璧な物は存在しない。この術は自動で発動する砂の障壁と違い、我愛羅自身が発動してる為、通常の忍術同様にチャクラを消費する。また全身に覆う特性から身体にかかる負担も並ではない。

 

 

 故に我愛羅が砂の鎧を使う。それは我愛羅が劣勢に立たされた時。カンクロウはリーの実力を素直に評価するが、逆に言えば我愛羅を本気にさせた。手を抜いた状態でも我愛羅は敗北した事はない。全力を出したなら尚更だろう。この勝負は我愛羅の勝利で幕を閉じる。

 

 

 

 カンクロウはそう予想した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (砂の鎧ですか…。砂の障壁だけでも厄介なのに困りましたね)

 

 

 速さで翻弄し、砂の障壁は突破する事が出来た。だが、砂の鎧による防御で防がれては意味はない。ならばどう対抗するか?方法は単純だ。鎧の上からでも通用する攻撃を仕掛ければいい。

 

 

 厳しい修行の末、会得した己の十八番 蓮華。過強力な連続蹴りで相手を宙に飛ばし、そこから地に叩き落す二段構えの体術奥義。この技であれば、決定打を与える事が出来る。

 

 

 

 決まれば即行動。しかし、砂の鎧を纏う我愛羅は容易く蹴り上がらない。一発で駄目なら二発、三発と何度も強力な蹴りを浴びせた。怒涛の攻撃に流石の我愛羅も堪らず、その体は宙高くに舞い上がる。

 

 

 

 しかし、蓮華は技の特性上…使用者への負担が大きい。会得したとはいえ、リーの肉体は蓮華に耐えるには未熟過ぎた。技の影響で迸る激痛にリーの動きが一瞬だが、鈍くなる。

 

 

 だが、痛みを堪えてリーは我愛羅を捕獲すると床目掛けて思いっきり叩き付けた。防御も回避も出来ず、もろに技を受けた我愛羅はぴくりともしない。その光景にテマリとカンクロウは冷汗を掻き、言葉を失った。

 

 

「ハァ、ハァ…。これで決まりですね」

 

 

 今度こそ決まった。リーが勝利を確信した瞬間。我愛羅の体は砂となって崩れ去る。

 

 

「な、ありえん。一体、いつ身代わりと入れ替わった」

「痛みでリーの動きが止まった瞬間さ。敵ながら大した者だよ」

 

 

 カカシは写輪眼を発動し、視ていたから気付いたが…他の上忍も入れ替わる瞬間は気付いていない。強さだけではない。術の制度、仕掛ける速さ。何れも下忍クラスが出来る芸当ではない。何せ、白眼を持つ天才 日向ネジすらも入れ替わりの瞬間に気付く事は出来なかった。

 

 

 今はまだ実力は上忍には届かない。それでも末恐ろしい忍だとカカシは冷たい汗を掻いて我愛羅を見つめる。

 

 

 

 

 

「ククク さあ、次はどうする?どう仕掛ける?俺をもっと楽しませてみろ」

 

 

 立場が逆転し、今度は我愛羅が攻勢に出た。襲い来る砂を避けようにも痛みで体の自由が利かない。相手もそれが分かっているのだろう。仕掛ける攻撃はどれも手加減がされていた。甚振り、嬲って楽しんでいる。このまま自分は敗北するのか?何も出来ずに惨めな気持ちで相手に首を垂れるのか?

 

 

 

 

 忍術が使えない。この事で自分は散々、周りから馬鹿にされた。それでも諦めずに努力して…下忍になる事が出来た。努力すれば報われる。そう信じて我武者羅に突き進んだ。例え、忍術が使えなくとも立派な忍になれる。それを証明する為に…

 

 

 

 だけども現実は甘くない。同じ班になった日向ネジ、天才と呼ばれる彼に何度も挑んだ。努力で才能を超える。これも証明したかったから…しかし、自分は一度も勝つ事は出来なかった。

 

 

 それだけではない任務で遭遇した敵の術に嵌まり、自分は仲間の足を引っ張った事だってある。その度、仲間から厳しい言葉を投げられ、冷たい目を向けられた。悔しくて言い返そうにも返す言葉は出て来ず、謝る事しか出来ない。

 

 

 

 

 そんな自分が出来る事、それは努力する事だけ。厳しい鍛錬に励んでいる時は辛い事を忘れられる。でも悔しさが消えてなくなる訳じゃない。何度努力しても報われる事はなく、鍛錬をしても無駄に終わる。

 

 

 

 気付けば自分は泣いていた。数々の失敗、他者からの失笑。それらが頭から離れない。挫けるな、諦めるなと自身に言い聞かせれば、言い聞かせる程…その事実と笑い声も大きくなって押し潰そうとする。

 

 

 

 もういいじゃないか。自分は頑張った。どうやっても天才には敵わない…いっそ諦めてしまおう。そんな時だった。あの人が光明をくれたのは‥‥。

 

 

 

「何だ?もう鍛錬はお終いか?リーよ」

「…先生には関係ないです。一体、何の用ですか?任務の失敗での事なら詫びた筈です」

「その事じゃない。あれはもう済んだ事だ」

「…じゃあ、何ですか?僕は修行の最中です。邪魔はしないでください」

「リー お前は確かに…ネジとは違う。だが、お前もネジに無い物を持っている」

「気休めですか…。いりませんよ そんな物は」

 

 

 やめろ。何も言うな、これ以上…言われたら自分は抑える事が出来なくなる。

 

 

 

「気休めじゃない。お前は努力の天才だ。俺が言うんだから間違いないぞ」

「…果たしてそうでしょうか? 確かに僕は努力してきました。誰よりも修行を頑張れば、いつかは報われると思って…でも僕はネジに一度も勝てない。任務だって失敗して迷惑をかけてばかりです。本当に僕は強くなれるのか?努力しても無駄なんじゃないかって‥思うんです。ずっと…落ちこぼれのまま終わると考えると怖くて溜まらない」

 

 

 

 一人で抱え堪えていた感情を自分は初めて吐き出した。もう全て諦めてしまおう。そうすれば、これ以上…苦しむ事も傷付く事もない。全て楽になる。途方もない絶望感に自分は完全に囚われていた。

 

 

 

「お前は…そんな気持ちで努力していたのか? 甘えるなぁっ!! 確かに努力が全て報われる事はない。それでも自分を信じる事が出来ない奴に努力する価値はない」

 

 

 

 

 普段は見せない厳しい顔であの人…ガイ先生は自分を一喝した。言葉だけならきつい一言だ。しかし、この一言はどんな慰めや励ましよりも自分の心の奥深くに響いていた。

 

 

 

「おっと…すまん。つい熱くなってしまったな。リーよ まだ時間はあるか?」

「はい。大丈夫です」

 

 

 近くの岩場に腰掛けた後、ガイ先生は静かに語り始めた。それはガイ先生も自分と同じく落ちこぼれと呼ばれていた事。何度も壁に当たっても諦めることなく、努力を続けたから今の俺がいる。ガイ先生は笑ってそう言っていた。

 

 

「リー お前の忍道は忍術が出来なくても”立派な忍になれると証明する事”だったな。やりがいのある目標じゃないか。大変だろうがお前なら出来ると信じてる。そして俺が笑って見ていられるくらい強くなれ。それが俺とお前との熱い約束だ」

「オッス!! 必ず守って見せますっ」

 

 

 

 そうだ。ガイ先生は笑って見てくれている。僕はまだ諦めない。諦めては…いけない。

 

 

 

 

 

 

 

「…お前もこの程度か。興醒めだな」

「だったら、お見せしましょう。僕のもう一つの切り札をね」

 

 

 

 退屈そうに呟く我愛羅へリーは笑って言葉を返す。此処に来て、更に切り札を出す。誰もがハッタリと思うが…余裕の笑みを浮かべるリーの様子からハッタリでは無さそうだ。一体、どんな切り札なのか?検討もつかない。

 

 

 

「…ガイ。お前、まさかとは思うがあの事を言ってるのか?」

「流石だな。カカシ、そのまさかだ」

 

 

 思い当たる節があるカカシはガイの言葉で表情を険しくする。意味が分からないサクラは張り詰めた空気を醸し出す二人に困惑していた。

 

 

「冗談でも笑えないぞ。あの子は八門遁甲を?」

「ああ。開く事が出来る」

 

 

 ガイの返答にカカシは頭を抱えた。大方、自分と同じ境遇のリーに自信を与える為に伝授したのだろう。蓮華を会得している以上、可能性はあったが信じたくは無かった。

 

 

「あの子には”アレ”を使える才能があったからな」

「だからといって、お前…裏蓮華だけは教えちゃ駄目でしょうよ。あの子とお前に何があったのか知らないし、詮索するつもりない。だが、私情を挟んで超えてはいけない一線があるだろ」

「…お前にあの子の何が分かるんだ? 確かに私情があるのは事実だ。それにあの子には命を賭しても成し遂げたいものがある。その想いを強く感じたからこそ、俺は禁じ手とされる裏蓮華を授けたんだ」

 

 

 ガイの言葉にカカシは口を閉ざした。彼の気持ちは自分も理解は出来る。

 

 

 

「ガイ あの子はいくつの門を開ける?」

「五門だ」

「…なんてこった。努力でどうこう出来るものじゃないぞ」

「ああ。俺も驚いているよ。体術の才能なら俺すら超えている」

「ねえ、その八門何とかってはどういう術なんですか?分かる様に説明してよ」

 

 

 二人の会話を黙って聞いてたサクラだったが、痺れを切らして叫んだ。二人の様子から危険な術であるのは間違いない様だ。後ろで観戦していたネジも二人の会話は耳に届いており、密かに気になっていた。

 

 

 

「俺がリーに教えた蓮華は二つあってな。一つは先程見せた表蓮華。そして裏蓮華が存在する。これは八門遁甲という”リミッター外し”から始まる」

「リミッター外し?」

「ああ。チャクラが流れる経絡系には全部で八の門が存在する。これはチャクラの流れを抑える役割を持っている。普段は閉まっていて、術を使う時やチャクラを放出する時に開閉する。頭部から順番に開門、休門、生門、傷門、杜門、景門、驚門、最後に死門だ」

「因みに表蓮華は一の門 開門を開けるだけだ。開門で抑制を外し、休門で無理矢理に体力を上げる。裏蓮華は第三の門、生門から裏蓮華に入る」

 

 

 二人の話にサクラは戦慄を抱いた。負担が少ない表蓮華だけでリーはボロボロになっている。それなのに裏蓮華を使ったら…。

 

 

「サクラ、お前の想像通り。裏蓮華は諸刃の剣だよ。この八門全てを解放した状態を八門遁甲の陣と言ってな。これは火影すら上回る力を得るが…使用した者は代償として命を落とす」

 

 

 

 

 

 

 

 ネジ、サスケくん。そしてナルトくんも予選を突破した。こんなところで僕だけ負ける訳にいかない。だからこそ、許して下さいガイ先生。今こそ僕の忍道を貫き守る時…!!

 

 

 

「第三生門…開!!」

 

 

 

 体内の門を開いた瞬間。リーの体は紅く染まり異様な姿へ変貌する。更にリーは第四傷門を解放した。体から蒸気が立ち上がり、額に浮かぶ血管が負担の大きさを表している。

 

 

 

 

(切り札と言うから何をするかと思えば…只の見掛け倒しか。もういい、こんな詰まらない戦いは終わりだ)

 

 

 

 戦いを終わらせようと我愛羅が引導を渡そうとした刹那の瞬間。突如、風切り音が響いた後…自分の体が宙に浮かんでいる事に気付いた。

 

 

(何だ!? 俺は何故、宙に浮いているんだ?一体、何が…)

 

 

 

 何が起きたのか。それを思考する前に今度は上から凄まじい衝撃を受けた。障壁となる砂が上に向かっている事で我愛羅は攻撃を受けたのだと理解した。しかし、リーの超人的な速さの前に砂が追い付けず、あらゆる方向からの繰り出される全ての攻撃が容赦なく、叩き込まれる。一撃の威力も重く、食らう度に砂の鎧が剥がされ、重厚な守りを貫き我愛羅の体に着実にダメージを刻んでいく。これでは何れ、砂の鎧が完全に砕かれてしまう。防御が出来ない状態で攻撃を食らえば、一溜まりもない。

 

 

 

 この窮地を脱する策を巡らせる中、我愛羅より先に限界を迎えたのは攻めているリーであった。八門遁甲による急激な負荷で腕の筋が千切れ、激痛が迸る。時間が無いと判断したリーは此処で第五杜門を解放し、全身全霊の裏蓮華を我愛羅に繰り出した。

 

 

 蹴りの反動で離れた我愛羅を巻き付けた包帯で引き寄せ、拳と蹴りの同時攻撃。引き寄せられる反動で無防備になっている所への攻撃。轟音を立て地面に落下した我愛羅にテマリとカンクロウは絶句する。あの我愛羅が負ける!? 自分達が全力を出しても敵わないであろう弟が負ける…それは二人にとって受け入れがたい現実だった。

 

 

 

 遅れて着地したリーが我愛羅の方へ視線をやる。砕けた右腕と右足は最早、使いものにならない。これで決まっていなかったら…自分はもう打つ手は残されていない。

 

 

 

 どうか…これで終わってくれ。祈る様な思いは残酷な形で砕かれた。舞い上がる土煙の中から、伸びた砂の帯はリーの手足に絡み付く。嫌な予感を感じ、気力を振り絞り砂から逃げようとするも我愛羅の方が一手早く術を発動させた。

 

 

 

 我愛羅の術 砂漠柩で手足を砕き、動けないリーにとどめを刺すべく、追撃を仕掛けた。だが、その攻撃は助けに入ったガイによって、振り払われ未遂に終わった。

 

 

 

 まるで守る様に立ちはだかるガイに我愛羅は過去の記憶を思い出し、苦しそうに眉を顰めた。自分には理解できない出来事に我愛羅は知らず、その事を口にしていた。

 

 

「何故、助ける…?そいつはお前にとって何だ?」

「この子…リーは俺の愛すべき部下だ」

 

 

 

 愛。これは我愛羅が知らない感情だった。暫し、睨み合うガイと我愛羅だったが…時間の無駄と判断したのか。我愛羅は戦意を失くし、踵を返した時…思わぬ事が起きた。

 

 

 自分への視線を感じ、我愛羅が振り向けば起き上がり自分を睨むリーの姿が目に映る。満身創痍で戦う事はおろか、立つのがやっとの状態でありながら闘志はまだ尽きていない。

 

 

 しかし、当に限界を超えているのは事実。ガイはリーに駆け寄り、止めるべく声をかけようとしてある事に気付き、その目から涙が零れ落ちる。

 

 

 

 

 既にリーは意識を失っていた。自分が立派な忍者である事、それを証明する。只、その一心で彼は立ち上がり、戦う意志を示したのだ。生半可な気持ちや中途半場な覚悟では決して出来ない。ガイは愛する弟子を抱き寄せ。人目を憚らず泣いていた。

 

 

 

 我愛羅は二人の様子を無表情で眺めていた。彼が二人の気持ちを理解出来ない様に…他者もまた我愛羅の想いを理解する事は出来ない。波乱の予選第九試合は我愛羅の勝利で幕を閉じた。




今回の話 いかがだったでしょうか?


木ノ葉の忍が行う試合の中で印象が強いと感じる人も多いと思います。

次回、遂に予選が終了して木ノ葉崩し編に移ります。今回はガイとリーメインの回なのと二人の関係に自身は口出しする事を避けたというご都合の為、サチの出番はありませんでしたが今後は増えていきます。


次回もお楽しみに
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