日常と恋模様に祝福を   作:Syo5638

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第13話:体育祭での出来事③

sideリサ

 

 

 グラウンドに戻ると友希那達が集まってきた。

 

友希那「リサ。もう大丈夫なの?」

 

リサ「うん。なんとかね~」

 

あこ「 よかった~」

 

燐子「本当に…怪我が酷くなくて…良かったです 」

 

リサ「心配かけてごめんね」

 

紗夜「いえ。それよりも先程の件で今井さんも蒼真さんも注目を浴びているようですね」

 

友希那「そうみたいね」

 

 …やっぱりそうなるよねぇ…

 

リサ「…あ、あはは~…大丈夫だって言ったんだけどねぇ」

 

紗夜「まぁ…あれだけ盛大にコケたのだから仕方ないとは思うわ」

 

友希那「そうね。それにリサも満更ではなかったのではないかしら」

 

リサ「そそそ、そんな事…ないよ?」

 

あこ「蒼真さん凄く必死な顔でリサ姉を連れて行ってたよ。蒼真さんチョーカッコよかった!まるで王子様とお姫様みたいだった!」

 

 お、王子様とお姫様!?

 

リサ「ぅぅ…///」

 

燐子「あ…そろそろ…学年対抗リレー始まる…みたいですよ」

 

 もうそんな時間かぁ。皆と話してると時間が経つのが早い。

 

リサ「アタシの変わりだから蒼真はアンカーかぁ」

 

友希那「そういえば、リサはこの競技に出る予定だったわね」

 

リサ「うん。足がこんなだから変わりに蒼真が出てくれるようになったの」

 

友希那「そう」

 

あこ「蒼真さーん!ガーンバレー!」

 

 …素朴な疑問だけど、蒼真って走るのは得意なのかな?

 

友希那「そういえば、さっき蒼真と少し話をしたのだけれど」

 

リサ「どうしたの?」

 

友希那「あまり走るのは得意じゃないって言っていたわ」

 

リサ「え!」

 

 じ、じゃあ何で引き受けたんだろ…

 

友希那「だけど、リサがあれだけ頑張ったのだから俺も頑張るって言ってた。どんな結果になっても全力で走るって。そう言っていたわ」

 

リサ「そっか…」

 

 ならアタシもしっかり応援しないと。頑張れ!蒼真!

 

 

 

そしてピストルを合図に競技が始まった。

 

 今回の学年対抗は例年と違って男子も混ざっているから実質1,2年生の勝負となる。

 

 2年生は男子が蒼真1人だけだから不利に見えるけど、この学年は段違いで早い子達が揃っている。だから1年生男子にも負けないと思う。

 

 そうこうしているうちに第3走者だ。3人目は日菜だ。今現在5人中の3位。意外と他のクラスや学年の子も速い。だけど日菜はホントに規格外だ。

 

 1位とは既に2秒以上離されていたけど、一気に2位の子を追い抜き1位の子のすぐ近くまで追いついた。ただ、流石にスポーツをしてそうな男子なだけに1位の子は中々抜けない。

 

 そして、蒼真の順番になった。

 

日菜「蒼真くん!お願い!」

 

蒼真「おう!」

 

 勢いよく飛びたした。バトンの受け渡しも完璧だった。

 

 …全然速いじゃん…

 

 蒼真の走りは日菜程圧倒的に速い訳じゃないけど、徐々に1位の人に詰め寄る。

 

リサ「頑張れ…頑張れ蒼真…」

 

 そして最終コーナー…アタシがコケた場所。

 

 ちょうどその場所に差し掛かった時――

 

リサ「あ!」

 

蒼真「っく!」

 

――一瞬よろめいた。

 

 お願い!どうか怪我だけはしないで!

 

 アタシは咄嗟にクラスの勝ち負けよりも蒼真が怪我しないか心配した。

 

 でも蒼真は足腰のバランス感覚がいいみたいで、なんとか持ち直した。

 

 …すごい…あそこから持ち直すなんて。

 

 そこから一気にダッシュして相手選手に追いついた。

 

 蒼真は凄く必死に走っている。手に汗握る勝負だ。見ているこっちまで緊張してしまう。

 

 頑張れ…

 

リサ「負けるな!蒼真!!」

 

 

 そして…決着が着く。

 

 ほぼ同着だった。

 

 係の子が持っていたカメラで判定されるみたいだ。

 

 その間に蒼真は円外に出て転がり込んだ。

 

 相当キツかったんだろうなぁ…お礼も兼ねて労いもしなくっちゃ。

 

 そして、結果が分かったみたい。

 

 結果は………蒼真の勝ちだ!

 

やっったーー!

 

 アタシは自分の事のように喜ぶ。

 

 そして蒼真の方を見ると、ちょうど目が合う。

 

 こっちを見た蒼真は寝転んだまま腕を突き上げ笑顔でピースサインをしてきた。

 

 その笑顔が眩しくて…凄く胸が高鳴る。顔も熱くなってきた。

 

 あ…これが…アタシの恋なんだ…

 

 もう理由なんてどうでもいいくらい…蒼真の事好きになっちゃってたみたい…

 

 ど、どうしよう…意識しだしたら蒼真を見るだけで顔が熱くなっちゃう…どうにかしてバレないようにしないと…

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 

 ふぅ…なんとか…勝つことが出来た。

 

 なんでだろ…こんなに上手く走れるとは思ってなかった。…途中俺までコケそうになったけど…

 

 ふと、リサの事が頭を過ぎって絶対負けられないって気持ちが強くなり体勢を立て直す事が出来た。

 

 そしてそのままゴール出来たのはやっぱりリサの声が聞こえたからだ。負けるな!って。

 

 普通あの中で聞こえる訳はないと思うけど、何故かその時だけははっきり聞こえた。

 

 …不思議な事もあるものだなぁ。

 

 でも…一瞬でもリサの声が聞こえたから俺は頑張れたんだと思う。

 

「おつかれー」

 

 そう言って引っ張り上げてくれたのは、やっぱりリサだった。

 

蒼真「おつかれー。いやぁホントしんどかったァ…」

 

リサ「だろうねぇ。ホントに頑張ってたもん」

 

蒼真「こんなに思いっきり全力で走ったのは初めてかも」

 

リサ「そうなの?」

 

蒼真「うん。あんま走る機会とかなかったけさ」

 

リサ「…そっかー」

 

 そんな事を話しているうちに閉会式に移ろうとしている。

 

 

 閉会式が終わった後友希那達が集まってきてそれぞれ労いの言葉をくれた。

 

 そして時間が過ぎ、下校時間。

 

 

友希那「蒼真ちょっといいかしら」

 

 帰る前に友希那に呼び止められた。

 

蒼真「どうした?」

 

友希那「いえ。たいしたことではないのだけれど。リサ、ちょっと蒼真を借りていくわよ」

 

リサ「う、うん。分かった…て、てかアタシに言わなくてもいいんじゃない?」

 

 そんな事を他所に、友希那に連れられ廊下に出た。

 

蒼真「で、どうしたん?」

 

友希那「ごめんなさい急に。本当にたいしたことではないのだけれど、今日は色々あったしリサも今は足もあんなだから蒼真が連れて帰ってくれないかしら」

 

蒼真「まぁ、それは全然いいんやけど友希那はどうするん?」

 

友希那「私は先に戻らないと行けない用事があるから一緒には帰れないわ。ごめんなさい」

 

蒼真「そっか。まぁそんな謝らんでいいよ。家も目の前なんまし」

 

友希那「お詫びと言っては何だけど、お弁当箱とは私達で持って行っておくわ」

 

蒼真「そう?ならお願い…ん?私達?」

 

友希那「あ…」

 

あぁ…なるほど。何となさっしがついたぞ。何とは言わないけど。

 

蒼真「まぁいいや。じゃあお願いするわ。リサは任せとき」

 

友希那「ありがとう。お願いね」

 

 そうして友希那に弁当箱を預けて教室に戻った。

 

リサ「あれ?友希那は?」

 

蒼真「今日は用があるから先に帰るって」

 

リサ「え?そんな事言ってたかなぁ」

 

蒼真「…まぁ急に用事が出来たんやろ。リサを頼むっち言われたけさ」

 

リサ「そ、そっか…」

 

蒼真「まぁそんな感じやけ帰るぞ」

 

リサ「う、うん」

 

 そうして俺達は学校を出た。

 

 

 

 今日は疲れているのか、俺もリサも口数が少なかった。

 

 リサはまだ足の痛みも残っているだろうからゆっくり歩いている。

 

リサ「ごめんね…アタシに付き合わせちゃって」

 

蒼真「んー。気にせんでいいよ。元々そのつもりやったけさ」

 

 友希那に言われなくても送って行くつもりだった。

 

リサ「…ありがとね。蒼真」

 

蒼真「…おう」

 

 なんか…改めて言われると少し照れてしまうな…

 

リサ「蒼真は優しいね」

 

蒼真「そうか?自分じゃよく分からんけど」

 

リサ「うん。凄く優しいと思うよ。ていうか、皆同じこと言うと思うよ」

 

蒼真「ちょ、そう言うのやめてっチャ…恥ずかしいやん」

 

リサ「あはは~♪蒼真照れてる~可愛い~♪」

 

蒼真「…先帰るぞ」

 

リサ「あ、ちょっと待って…あ!」

 

蒼真「ちょ!危ない!」

 

 急いで歩こうとしたリサはバランスを崩し、転びそうになる。

 

 なんとか受け止める事が出来たけど…

 

 咄嗟の事だったから、抱き締める形になってしまった。

 

蒼真「ご、ごめん…大丈夫か?」

 

リサ「う、うん!大丈夫…///アタシの方こそごめんね。ありがと」

 

蒼真「そ、そっか…大丈夫ならよかった…」

 

 

 

 それからというもの、気まずくて家に着くまで一言も喋らなかった。

 

 着くまでの間に色々と考えてしまった。リサ…嫌じゃなかったかな…とか、出しゃばり過ぎじゃなかったかとか。そんな事を考えた。

 

 

 

リサ「今日は色々と…その…ありがとね」

 

蒼真「…おう」

 

リサ「…凄く…嬉しかったよ」

 

蒼真「そ、そっか」

 

リサ「うん…じゃあまたね!おやすみ」

 

蒼真「おやすみ」

 

そう言って家に入ろうとした。

 

リサ「蒼真!」

 

蒼真「ん?なん……」

 

 俺は一瞬頭がフリーズした。

 

頬に柔らかいものが…

 

リサ「…ん……き、今日たくさん助けてくれたお礼とアタシの為にリレー頑張ってくれたお礼///」

 

蒼真「……」

 

リサ「じ、じゃあ今度こそまたね!」

 

 そのまま俺は呆然と立ち尽くしてしまった。

 





読了ありがとうございます。

これで体育祭編は終わりとなります。

これから先また期間が空くかもしれませんが、更新出来た時はまたよろしくお願いします。


それではまた次回

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