日常と恋模様に祝福を   作:Syo5638

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第2章
第1話:心境の変化


 

 

 

 

 

 私は最近気になっている事がある。それは…蒼真の事。学校の休み時間や練習の休憩中、無意識のうちに目で追っている。

 

 不意に蒼真に話しかけられると顔が熱くなる事もある。

 

 それが何なのか分からなかったから、この前蒼真とリサが家に来た夜―――

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

―――蒼真が家に入り、リサも部屋に戻ろうとした時、私は唐突にリサに声を掛けてしまった。

 

「…ねぇ…リサ」

 

「ん?どうしたの?」

 

「…えっと…その…」

 

 何も考えずに呼び止めてしまった私は、何をどう言うか思考を巡らせていた。

 

「珍しいね。友希那が言い淀むなんて」

 

「…私にもそういう時くらいあるわ」

 

「そっかー。それもそうだね」

 

 そう言いつつ未だに何を言っていいか分かっていない。だから――

 

「少し歩かない?」

 

「OK~いいよ」

 

 私達はすぐ近くにある公園に向う事にした。

 

 

 

「それにしても、今日は色んなことが聞けて良かった~♪」

 

「そうね。お父さんがあんなに楽しそうに話すのは久しぶりに見たわ」

 

「それだけ蒼真と再会出来て嬉しかったんだねぇ」

 

 そうだと思う。私がお父さんに蒼真の事を話した時も凄く嬉しそうだったし。何故かはその時話してくれなかったけど、さっきの話しでようやく分かる事が出来たわ。

 

「幼馴染かぁ。何だか実感はないけど、ずっと懐かしい様な感じはしてたんだよねぇ」

 

「確かにそうね。私も何故蒼真をRoseliaのサポートに誘ったか自分でも疑問に思っていたけれど、その時から懐かしく感じていたのかもしれないわ」

 

 …そういえば、あの時私…蒼真に抱きついてしまったわね…

 

「…っ」

 

 そう思うと次第にまた顔が熱くなってきた。

 

「友希那大丈夫…?顔が赤いけど…」

 

「え、えぇ。大丈夫よ」

 

「そう?ならいいんだけど」

 

 やっぱり蒼真の事を思うと顔が熱くなってしまう。

 

「…」

 

「友希那?ホントに大丈夫?風邪とか引いてない?」

 

「大丈夫よ。ただ…」

 

「ただ…?」

 

 …この際だからリサに聞いてみよう。

 

「…リサは…蒼真の事どう思う?」

 

「え…?蒼真の事?」

 

「そう。リサはどういう風に思っているか気になったの」

 

「…そ、そうだなぁ…優しくて気が利いて色々出来る凄い人だなぁと思うよ」

 

「そうね。私もそう思うわ」

 

「友希那がそんな風な事聞いて来るなんて珍しいね。ホントにどうしたの?」

 

 そう言われた私は、今思っている事をリサに話した。

 

 

 

 

「…そっかァ…そうなんだね…」

 

「えぇ。…私はどうしたらいいのかしら」

 

「…うーん…そうだなぁ…(どうしよ)(どう言ったらいいだろ)…」

 

 リサは真剣に考えてくれている。

 

 そして少しして――

 

「……それはね友希那。アタシからは何も言えないかな…」

 

「え…?」

 

 リサから思いもよらない言葉が返ってきた。

 

「意地悪で言ってるんじゃないよ?これは…友希那自身が気付かないといけない事だと思うから」

 

 私自身が気付かないといけない事…

 

「…そう…」

 

「ごめんね友希那…力になって上げられなくて」

 

「いいのよ気にしなくて。私の方こそ変な事聞いてごめんなさい」

 

 そう言った直後――

 

「変じゃないよ!」

 

「えっ?」

 

――急に大きな声を出したリサに少し驚いてしまった。

 

「全然変じゃない…むしろ今の友希那の抱いてる気持ちは凄く大切な事だと思う。…だから変だなんて言わないで…」

 

 …リサ…

 

「ごめんなさい…私が軽率だったわ。…ありがとうリサ。私の事をそんなに親身になって考えてくれて」

 

「幼馴染なんだから当然だよ。でも友希那がこんな事を話してくれる日が来るなんて思わなかったから凄くびっくりしたよ」

 

「そうなの?」

 

 そんなに大ごとなの?今抱いてる気持ちは…

 

「うん。友希那からは絶対に聞かないだろうと思ってたから」

 

 やっぱりリサは何か知っているのね。

 

「そう…」

 

 でも、何も聞かない。リサが言ってくれた。この気持ちはとても大事な事だから、自分で気付かないといけないと。だから、私は自分で答えを見つける。

 

 

 

 それからしばらく雑談をして――

 

「今日はありがとね友希那色々と話してくれて」

 

「いいえ。私の方こそ話を聞いてくれてありがとう。お陰で少しはスッキリしたわ」

 

 リサに聞いてもらえて本当に良かった。と言うより、リサ以外こんな話は出来ないと思う。

 

「そう?それなら良かったよ♪もし、また何かあったら話して欲しいな。相談に乗れるかは分からないけど話なら聞いてあげれるから」

 

「えぇ。またその時はお願いするわ」

 

 そして私達はそれぞれ家に戻った―――

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 それからしばらくが経ち今に至るわけだけれど…未だにこの気持ちが何なのかははっきりしない。

 

 けれど、嫌な気はしない。色々と不安もある…でもそれも何だか心地がいい。

 

 だから、リサに言われた通りこの気持ちを大事にしていこうと思う。この答えが見つかるまでちゃんと向き合っていきたい。

 

 

 

「…き……ゆ…な……友希那!」

 

「!……何かしら?蒼真」

 

「そろそろ休憩終わるぞ。珍しいな友希那がぼーっとしとるとか。どっか体調とか悪くないか?」

 

 そうだった。今はバンド練習の休憩中だったわ。

 

「…心配を掛けてしまったみたいね。でも大丈夫よ。ありがとう」

 

「そうか?ならいいんやけど」

 

 気を引き締めてまた練習を再開する。

 

「じゃあ、さっきの続きからいこうか。まずONENESSの頭からLOUDERの終わりまで。あこちゃんには結構負担掛かると思うけど大丈夫やか?無理はせんでいいけ」

 

「大丈夫です!任せてください!我が闇の力に……えっとー……りんりん…」

 

「…(不可能はない。がいいと思うよあこちゃん)…」

 

「うん!我が闇の力に…不可能ない!」

 

「はははっいいねそのノリ。うん、じゃあよろしくね」

 

「はい!」

 

 あこの言っていることはいつもよく分からないけど、蒼真は良く分かるわね…

 

 それにしても、蒼真が加入してくれてからは凄く練習効率が上がっている。他の皆のレベルも蒼真の意見で確実に伸びてきている。

 

 凄く有難いし、感謝してるけど…無理してないかしら…

 

 

 

 それから2時間続けて演奏し続けた。

 

「蒼真。そろそろ時間かしら?」

 

「お、そうやな…てかもうこんな時間か」

 

「時間経つの早いねぇ」

 

 確かにリサの言う通りあっという間に時間が過ぎたように感じる。

 

「それだけ濃い時間だったということです」

 

「まぁこれだけみっちり短い時間で詰め込んだらそうなるわな」

 

「うへぇ~…疲れたよ~…」

 

 あこも集中して演奏していたからだいぶクタクタのようね。

 

「お疲れあこちゃん。よく頑張ったね。はい、スポーツドリンク」

 

「わぁー!ありがとうございます!蒼真さんが作ってくれたドリンクすっごく美味しくて大好きです!」

 

 …何故かしら…あこの好きと言う言葉を聞くと胸が苦しくなって何だかもやもやしてしまう。

 

「そう?嬉しいこと言ってくれるね」

 

 そう言うと今度はあこの頭を撫でる。

 

「えへへー…♪」

 

 あこも照れながら嬉しそうにしている。……羨ましい…

 

 そう思っているとリサが動きだし蒼真の方に向かう。

 

「っイテ!!ちょリサ!?」

 

 リサは蒼真の足を踏み付けた。ヒールで。

 

「っふん!」

 

 何故かは分からないけれど、少しだけ良くやったわリサと思った。

 

「…なんかしたやか…?俺…」

 

「…何をしているのですか…早く片付けて出ますよ」

 

 紗夜の一喝で皆急いで片付けをし、スタジオを出た。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 それからスタジオを出たあとは外のカフェテリアで少し雑談をし、解散となる。これは最近の私達の日常。

 

「それではまた」

 

「皆バイバ~イ」

 

「お…お疲れ様でした…」

 

 そしてそれぞれ帰路についた。

 

「友希那、リサ。俺達も帰るか」

 

「えぇ。そうね」

 

「OK~」

 

 

 蒼真が加入して2ヶ月ほど経つ。その間に少しだけど色々と変化して来ている。多分…私自身も変化して来ている。

 

 そして…この中ではリサが1番変化している様な気がする。

 

「そういえばこの間学校でね蒼真――」

 

 凄く蒼真と仲良くなっている。

 

「――へぇそんな事があったんやねぇ」

 

 そう思うとまた少しもやもやしてしまう。…何なのかしら一体…

 

「あ、そうだ友希那。さっきの練習中にまとめた全員の練習資料なんやけど――」

 

 でも、蒼真はどんな時でも平等で私にもちゃんと声を掛けてくれる。だからさっきのもやもやもすぐに消えてしまった。

 

「そうね…これは――」

 

 蒼真はRoseliaのために本当に色んなことを考えてくれている。このノートも凄く参考になるアドバイスなどがびっしりと書き綴られている。

 

 よく皆の事を見ているわね。と思いつつ、技術面の事までしっかり書いてくれていて凄く助かる。

 

 

 そうした事を話しているうちにあっという間に家に着いてしまう。

 

「じゃあまた明日」

 

「はーい♪明日ね~」

 

「おやすみなさい」

 

 

 そしてまた一日が終わる。

 

 今まで無かったこの風景。

 

 だけどそれが当たり前になっていく。

 

 悪い気はしない。

 

 むしろ心地が良い。

 

 そんな柄にもない事を思うそんな一日。

 

 

 蒼真に対するこの気持ちが何なのかまだ分からない。何度も思っている事だけれど…

 

 でもこれからゆっくりとこの気持ちを知っていきたい。

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。


今回から2章に突入します。

…何かががる訳では無いですけど、ゆっくり物語は動いて行くと思います。


これからもまだまだ投稿に時間がかかってしまうと思いますが、気長に待って頂ければとおもいます。


ではまた次回


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