ショッピングモールで蒼真と会う少し前──
「いやぁありがとね友希那。買い物に付き合ってもらって」
「断ってもまたお願いしてくるでしょ。まぁ楽器店なら私も用があったからちょうどよかったわ」
モールまで行く道の間、友希那と色々な会話をしていた。
何だかんだ言って友希那は以前よりどんどん人付き合いが良くなってきていると思う。
この間も友希那のクラスに行った時、麻弥、同じクラスの
それもこれも、Roseliaというバンドを結成して。そして、蒼真と再び出会ったおかげだと思う。
「そういえば、今日は蒼真は誘わなかったのね」
最近では友希那の方から蒼真の話題を振られることがある。
「んー今日は蒼真は日直で忙しそうだったから誘わなかった。それにほら、今日は久々にRoseliaの休みでもあるからゆっくりしてほしいし」
「そう。確かにそうね。しっかり身体を休めてもらわないと。彼も私達の一員なんだから」
こういう事を言うようになるなんて今までは思いもしてなかった。ホントに成長してるなぁ友希那。
それからもたわいもない話をしながら目的の場所に着いた。
そして2階へ行きマップで楽器屋と他に見たい所の目星を付けて改めて向かおうとしてた。
「あ、そう言えば」
「どうしたの?」
アタシは昼間に蒼真と話をしていた事を忘れていた。
「蒼真の事なんだけどね。さっきのはあぁ言ったけど、ふと今日話していた事を思い出したんだよね」
「そう」
「うん。今日日直の仕事が終わったらRoseliaの練習休みだからちょっと遠出して買い物をして来ようと思うって言ってたんだ」
色んな会話の中で聞いた話だったからすっかり忘れちゃってた。
でも何で今思い出したんだろ……
「……もしかすると、蒼真はここに来るかもしれないわね」
「あぁ……確かに有り得ちゃうかも。ちょっと遠出するって行ってたし、この辺りまで来るのかもしれないね」
一応冗談交じりで言ったんだけど…もし来てたとしてもこれだけ大きなモールだからそうそう会うことはないと思うんだけどなぁ…
そんな事を思っていると、1階から見慣れた人が上がってきた。もちろん蒼真だ。
──そして今に至るんだけど……まさかホントに蒼真が現れるなんて思わなかった。ビックリし過ぎて心臓が飛びたしちゃうかと思ったよ……
ただでさえ最近は蒼真と一緒いるだけでもドキドキしっぱなしなのに……でも…蒼真と一緒にいるのは凄く楽しい。
だからかな……あの場を離れようとした蒼真を引き止めてしまったのは…
自分で言うのもアレだけど、上目遣いって……凄くあざといなぁ…それに……今になってめっちゃ恥ずかしくなってきた…
でも、慌てた表情をする蒼真。可愛かったなぁ。
楽器店に寄った時は蒼真の友達の話をしている時にその人から電話が掛かってきたようだ。
大体掛かってくるって言ってホントに掛かってきた時はホントにビックリした。狙いすましてるんじゃないかと思うくらい。
そしてその友達の蒼真の対応が物凄く辛辣で驚いた。いつも温厚で優しい蒼真があんな風に話をするなんて思っても見なかった。
でもまた蒼真の新しい一面が見れて嬉しい。
それからしばらく蒼真その友達と話をしていた。
その間にアタシと友希那は買い物を済ませて蒼真の所へ向かった。
蒼真は電話を終えた後急いで買い物を済ませに行き、戻ってきて次はどこに行くか聞くと、前にお世話になった所に行くと言う。
蒼真がお世話になった所かぁ…ちょっと気になる。
ついて行っていいと言ってくれてるのだから是非ついて行こう。
☆★☆★☆★☆★☆★
蒼真の目的の場所に向かっている途中思わぬ出来事にあった。
アタシ達が話をしながら歩いて少し余所見をしていたのがよくなかったかな…
「わきゅ」
「うお!」
小さな女の子と蒼真がぶつかってしまった。女の子は走って来ていた様子。手にはコーンに乗ったアイスクリーム……の残骸……
ぶつかった衝撃で落としてしまったみたいだ。……蒼真のズボンに。
「蒼真大丈夫? キミもケガはない?」
女の子がケガをしていないか確認する。
「……うん……」
「俺は大丈夫やけど…」
女の子にケガはなかった。だけど、今にも泣きそうになっている。アイスクリーム、凄く楽しみにしてたんだろうなぁ。嬉しくてはしゃいでいたんだと思う。だから蒼真にぶつかってアイスを落としちゃって色々混乱しているみたい……
…あぁどうしよう……こういう時どうしたらいいんだろ…
アタシも友希那も唐突な出来事で少しパニック状態で体が動かなかった。
だけど蒼真は、女の子の前でしゃがみ…
「お嬢ちゃん。ごめんな。俺のズボンがお嬢ちゃんのアイスを食べちゃった」
冗談を交えながら蒼真はゆっくり話している。
「お詫びとしてはアレだけど、このお金でまた新しいアイスをお母さんに買ってもらいな」
財布からお金を取り出し女の子に渡した。
「ぇ……でも……」
「大丈夫、気にしなくていいから。ほらお母さんも迎えに来たよ」
「……うん! ありがとう! お兄ちゃん!」
そう言って女の子はお母さんの方に走って行った。
お母さんも気付いたようで深々と何度もお辞儀をされた。
そしてそれを見て蒼真は頭を下げその後手を振って2人を見送った。
「やっぱり蒼真…カッコイイなぁ……」
アタシは思わずそう呟いてしまった。
はっ! っとなったアタシは思わず友希那方を見た。
幸い今のは聞かれていなかったけど、じっと蒼真の方を見つめていた。
「あ、蒼真ズボン大丈夫? 汚れちゃったけど」
やっと動けるようになったアタシは蒼真の元に駆け寄りズボンの汚れを確認する。
「うーん…洗えば落ちると思うけど……」
「このくらい大丈夫」
でもなぁ……あ、そうだ!
「この際だから服見に行こ。アタシがコーデしてあげるから」
「え…いやでも」
「ちょうどアタシも服見たかったからさ。友希那も、お願い!」
友希那にも了承を得ないと。
「私は別に……行きたいとは思わないけど……蒼真のズボンは見ないと行けないと思うから、ついて行くわ」
「ありがとう~友希那♪」
そしてアタシはまた蒼真の方を向く。
「……はぁ…しょうがない。行くかぁ」
そんな訳でアタシ達は服屋に寄ることになった。
と意気込んで来たはいいけど、男の子の服って選んだ事ないんだよなぁ。友希那の服なら沢山選べるんだけど。
まぁ今回は無難な服を選んでいこう。
1つづつ手に取って蒼真な服とズボンをあてては替えてを繰り返していく。
「うーん……蒼真にはコレとコレかな」
蒼真に渡した服は白いメンズシャツと黒のスキニーパンツ。この服なら他の服とも着合わせが出来るからちょうどいいと思う。
「なるほど。ちょっと着てみるわ」
そう行って蒼真は試着室方に行った。
「相変わらずリサは手際がいいわね」
「そんな事ないよ。男の子の服なんて選んだ事なかったからちょっと緊張しちゃった」
「ふふっ。そうなの?」
「そこ笑うとこ? まぁいいけど」
そりゃあまぁ……す…好きな人の服を選ぶんだから緊張もするよ……
「あ、ちなみに友希那の服はもう選んでるからね♪」
「え……私も……?」
友希那は思ってもみなかったという顔をしている。
「もちろん♪蒼真だけ私服じゃあ可哀想でしょ。アタシも買って着替えるから友希那も着替えてね」
「……はぁ……分かったわ」
少し考えた友希那は諦めたように了承する。
そんな事を話しているうちに蒼真も出てきた。
「こんな感じやけどどうやか?」
「うん♪ アタシの、見立てに狂いはなかった。凄く似合ってるよ♪」
「そう? なら買ってくる」
「あ、待って待ってここはアタシが出すから」
「え…いやでも悪いって」
「言い出しっぺはアタシだし、それに…蒼真にはいつもお世話になってるからたまにはアタシからプレゼントさせて?」
最初からそう決めていた。何か蒼真にお返しをしたいとずっと思っていたからチャンスだと思った。服選びはアタシの専売特許だから。
「…うーん……分かった。リサがそう言うならお願いするわ。ありがとう」
「うん♪」
そうしてアタシはレジに向かった。ついでにアタシの服と、友希那の服も一緒に買った。
服を買ったアタシ達はそれぞれ着替えてまた集合した。
「ホントによかったと?」
「いいのいいの。アタシがそうしたかったんだから気にしなくていいよ」
「…そっか。ホントにありがとな。友達からプレゼントとか貰ったことなかったけ凄く嬉しい」
初めて…か……ふふっ♪アタシも蒼真にプレゼント出来て嬉しいな♪
そして、また改めて蒼真の目的の場所に向かった。
その目的の場所は──
オシャレなカフェだった。
読了ありがとうございます。
時間が経つのは早いですね。
気付けばこの小説を書き始めて1年が経ちました。
……どうですかね…少しは自分も成長しているでしょうか。
まだまだこれからも続けて行きますのでこれからもどうぞよろしくお願いします。
それではまた次回