「ふぅ……暑~……」
俺は今家の物の買い出しをしに、商店街にやって来ている。
季節は夏も中盤。夏休み真っ只中である。
俺がこの場所に引越してきてまだ数ヶ月しか経っていないが、本当に沢山の出来事があった。
その中でも凄く印象に残っているのは、先日行われたばかりのRoseliaのライブだ。
それよりも少し前にもかなり大きなライブがあったのだけど、そのライブをきっかけに一時Roselia崩壊の危機にまで陥ってしまった。
そのライブ自体は悪くないものだったと思うが、ライブでの評価がRoseliaにとって……いや、友希那にとっては心に突き刺さる評価だったようだ。
そこから友希那は何かに取り憑かれたように練習に入れ込むようになり、時にキツく当ったりと凄く苦しんでいた。他のメンバーもキツく辛い数日数週間だったと思う。
その時はRoseliaに纏っている空気感、雰囲気がかなり澱んでいたと思う。
あこちゃんと燐子ちゃんは今までとRoseliaの空気感が違う事に戸惑い、あこちゃんはミスを連発し友希那に何度も注意を受けた。そしてその態度言動にあこちゃんと燐子ちゃんは激怒し『こんなのRoseliaじゃない!』と言いスタジオから飛び出した。
俺とリサは、友希那に話を聞こうとするが突っぱねられた。そしてそのまま友希那も帰宅した。俺はこれからどうすればいいか悩み、リサは今までここまで突っぱねられる事がなかったようで、ショックで酷く落ち込んでしまっていた。
紗夜さんもこの事に悩み俺達とどうすればいいか考えつつ、自分達は練習を続けようと演奏を続けた。
俺は紗夜の意見は正しいと思うが、他に何か出来ないものかと奔走した。
これがホント良かったのかは分からないが……
一方、友希那は友希那で酷く思い悩んでいたようだ。1人で悩みを抱え込んでしまっていた。自分ではどうすればいいのか分からずどんどんと塞ぎ込んでいってしまったようだ。
そんな時、駅前でPoppin’Partyのボーカル戸山香澄ちゃんが何かに思い悩み泣いている友希那を見つけ、いてもたってもいられなくなり、勢いで友希那にその日行われるポピパのライブに誘ったようだ。
そのライブを観た友希那は何かを感じ、憑き物が落ちたように悩んでいた事が吹っ切れたようだ。
その後、友希那から何を悩んでいたかを話してくれて謝られ、話してくれたおかげで
一人一人が悩み、考え、やっぱりRoseliaが大好きだと皆がそう思い至る。
皆個に囚われがちでRoseliaというもの自体に意識を向けられていなかったと気付く。
そして新たにRoseliaは始動した。
そして、冒頭の方にあったが、先日行われたRoseliaのライブ。
一言で表すなら、在り来りだがとても感動した。
今までにないRoselia。全員が活き活きとした表情で演奏をしている。
新曲も歌った。Roseliaメンバー全員の意志と誇りを新たに掲げるに相応しい曲だった。
以前と比べて遥かに技術も向上している。
そして、皆顔にはあまり出さないが凄くライブを心から楽しんでいる。
全員が同じ方向を向き、同じ目標を目指し進む新たな姿。
聴き終えた俺は自然と涙が出ていた。
Roseliaの初ライブから今までのライブまでの映像は全て観たし、皆からの話を聞いてこれまでRoseliaは成長している事は分かっていたが、肌で感じ取れたのはこの時が初めてだった。
ライブ中は鳥肌が立ちっぱなしだった。それほど今回のライブは迫力があった。
ライブ後、控え室ではリサが号泣していた。
安堵して気が緩み、涙腺が崩壊したそうだ。それはそうだろう。この中で1番不安に感じていたのはリサだったと思う。だから安心した途端涙が溢れてきたに違いない。
そしてそんな俺は控え室に入ると、友希那に抱きついていたリサだったがすぐに俺の方に向かってきて抱きつかれた。
俺は驚き、たじろいでしまい皆に笑われてしまった。
俺はどうすればいいか分からず、とりあえず頭を撫でた。それで涙が止まるのならそれでいい。リサはやっぱり笑顔が似合うから──
それからも色々とあったが、しばらく経ち今に至る。
「あ、蒼真さん! こんにちは」
買い出しの途中やまぶきベーカリーに立ち寄った。
「こんにちは。沙綾ちゃん」
昼も近く匂いにつられてやって来た。
「買い物ですか?」
「うん。買い物の途中でいい匂いがしてきたから寄ってみたんだ」
「それはどうもありがとうございます♪」
トレイにパンを載せていき手早く会計を済ませた。
「あ、そういえば…この間は大丈夫でしたか…?」
この前の事というと友希那の事だろう。
「うん。もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。あ、戸山さんにもお礼を言っておいて。友希那にライブ誘ってもらったみたいだから」
「はい。分かりましたー。……って言うか、蒼真さん白々しいなぁ」
「んー? なんの事かな?」
「まぁいいですけどね」
そんなやり取りをしつつ店を出ようとすると…
「あ、そうだ! これ、どうぞ」
紗綾ちゃんから何かの紙を2枚渡された。
「これは?」
「今商店街で福引をやってるんです。良かったら蒼真さんも福引をして行ってください」
「分かった。帰りによってみる。ありがと、また来るね」
「はーい! ありがとうございました」
そして店を出た。
それからしばらく買いのを続け、帰り際に商店街の奥まで行き福引を行っている所までやってきた。
「ここか……ふむふむ。景品は……」
五等からあり、まずはおなじみのティッシュ1枚。
四等は、500円分の商品券。
三等は、3000円分の食事券。
二等は、テーマパークの招待券。
一等は、海外旅行の優待券。
となっているようだ。
あんまり期待はしてないけど、食事券とか当たるといいなぁと思い2回回してみた。
そして、一回目はやはりというか五等のティッシュだった。まぁそんなものだろう。
そして2回目……
これは──
☆★☆★☆★☆★☆★
「え!? テーマパークのチケットが当たったの!?」
Roseliaの練習を終え、帰り際にリサに先日の事を話した。
「うん。まさかの当たるとは思ってなかった。しかも都合よく6人分。やけ皆を誘って行こうと思うんやけど…」
「凄いじゃん! 蒼真! 運がいいねぇ。早速明日皆に話をしていつ行くか決めよ!」
リサは凄く喜んだ。そんなに喜ぶとは思っていなかった。
「そうやね。明日皆に聞いてみようか。皆も喜んでくれるといいけど」
「絶対喜んでくれるって」
「そうやか? そうやといいけど」
話をしているうちに家の前まで着いていた。
「あ、そうだ」
とリサが切り出してきた。
「ん? どうしたと?」
「あー……えーっと……こ、この前はゴメンね。控え室に入っていきなり抱きついちゃって……」
どうやらこの前の事を思い出したようだ。
「あ…おう…気にしてないけ大丈夫」
アレは俺も恥ずかしかったなぁ。皆の前だったし。いや、皆の前じゃなかったらもっと恥ずかしいかも。
「…そっか…」
少しだけリサのトーンが落ちた気がする。どうかしたのかな…
「まぁ…ちょっと嬉しかったりしたかな…」
ポロッと口に出してしまった。
「ふぇ!?」
「あ…いや、うん…まぁそんな感じやけ気にせんでいいよ」
やば…凄く恥ずかしい…全身熱くなってる気がする。
「う、うん…」
「じゃ、じゃあまた明日練習で!」
そう言い、急ぎ早に家に入った。
「もう…バカ…急にあんな事言われたら我慢出来なくなっちゃうじゃん……」
家に入る直前、何か聞こえたような気がしたが何を言っていたかは分からなかった。
次の日の練習中、少し気まずかった。
ちなみに、テーマパークに行く事は即決まった。
読了ありがとうございます。
そして、リサ。お誕生日おめでとうございます。
今年も誕生日の話は書くことが出来ていませんが、何とか今日に間に合わせる事が出来ました。
さて、主人公も少しづつ感情の振れ幅が見え隠れしてきました。
これからどうなって行くのか、気長に楽しみにお待ちいただけたらと思います。
感想や評価などお待ちしています。
ではまた次回