入学初日の夜、緑谷は昔の夢を見ていた。
個性が無いと言う現実を受け入れられずに居た幼少の頃、周りの子達が次々と個性を発現させる中必死に個性が出ないかと足掻いていた。
どうやっても何も個性が出ないと泣いてた時に出会ったのは少女のような少年のような不思議な同年代の子供。
「どうして泣いてるの?」
「僕ね……僕ね……」
聞いてくる子供に個性が無いという現実を話してしまう。それを聞いた子供は笑いながらも緑谷の手を取る。
「今は個性が無いかもしれないね。でもね世の中には誰かに力を与える個性もあるんだ」
「えっ……」
手を取りその子供は個性を使ったのだろう。すると緑谷は今まで出したことの無い力で拳や足を振るえていた。
「すごい!」
「ふふっ……だからさ諦めないで?諦めなければ夢は叶うよ」
1度だけ会ったその子の言葉に随分と励まされた。もう朧げな思い出。
そこまで見て緑谷の目は覚める。
「懐かしいな……あの子今はどこに居るんだろ」
あれから自分は憧れていたヒーローに力を……個性を貰った。今はまだ借り物だけどいつか扱える様になってお礼を言いたい。緑谷はそう思いながら朝の支度をする。
雄英のヒーロー科のカリキュラムにヒーロー活動を実技で経験するヒーロー基礎学という物がある。
事前に提出した書類にはヒーローコスチューム案という物があり業者が各々の要望に合わせてコスチュームを作ってくれる。
各自の個性に合ったコスチュームを着ている中天環はと言えば。
「地味だったかな」
青の男物の拳法服に大きさ自在の拳と脚のプロテクターであった。
「どういう案出したんだ?」
「動きやすい事と女性が着てても違和感が無い事と手と足の保護」
「なるほどなぁ……」
歯車を意識していると思われる切島の男らしい衣装や見るからに危ない奴である爆豪なんかと比べると地味だと天環は思ってしまう。
「天環くんは下手に肌を晒す訳には行かないだろうから仕方ない」
「ありがとう飯田君。衣装カッコいいね」
コスチュームに関して意見を言い合っているとヒーロー基礎学担当のオールマイトが来る。授業説明の後にチーム決めが行われる。
「1人余りましたけどどうします?」
余ったのは轟であったがオールマイトは問題無いと判断する。轟も轟で構わないと述べる。最後に誰かと戦って貰うという。
「じゃあ第1チーム配置に着いたか?」
第1チームはヒーローサイドが緑谷と麗日でヴィランサイドが爆豪と天環であった。
「よろしくね爆豪君」
「うっせークソモブ」
ぶっきらぼうな態度の爆豪に苦笑いの天環。そして上の階に設置した核弾頭の模型の前で開始の合図が告げられる。
「クソモブはそこから動くんじゃねぇ!」
「あーちょっと!」
独断先行で勝手に行動する爆豪。静止も聞かずに飛び出した彼に困り顔の天環であるが仕方ないと個性を発動して模型の前に待機する。
「聴力強化でいいか」
下の階がどったんばったん大騒ぎである為強化倍率を調節してこの階の音が聞こえるレベルにだけ強化を施す。
「……」
コツコツと少しずつ近づいてくる1人分の足音。動く事無く様子見を決める。
部屋を1つ1つ確認しながらも確実に近づく。そして顔をこっそりと出す麗日であったが天環が音の感知を止める。
「……」
気づかれていないと思っている麗日に対して天環も脚力強化で奇襲を行う。2歩で部屋を出て麗日と接敵。
「スニーキングはもう少し慎重にね?」
「あうっ!」
高い機動力で後ろを取られて腕を押さえて倒される。動こうとするも腕力の強化で完全に封じられている。
「爆豪君こっち抑えた。後はそっちだけ」
一応配布されたインカムで爆豪に報告を行うが聞いているか怪しいと思ってしまう。
………………………
そして緑谷が個性を抑えた力で殴りつけるも直ぐに戻った爆豪にマウントを取られて結果ヴィランサイドの勝利に終わる。
「今回のMVPは天環少……年?だ。最低限の動きで相手を捕らえる動きは見事。麗日女史も接敵の際に焦ってはいけないよ」
緑谷も動きは悪くない。そして爆豪は周りに気を使って戦う事を言い渡された。
そして次々と訓練が進み最後に轟と誰かの試合になる。
「爆豪少年リベンジしてみるかい?」
「あぁ!?上等だ!」
緑谷に何か挑発されたのかイライラが貯まっている爆豪。
「天環少年もいいかい?」
「構いませんよ」
個性を解除して男性に戻っている天環に大丈夫か尋ねる。個性を発動し女性になる。
「足を引っ張んじゃねーぞ」
「気を付けますよっと」
再度爆豪チームがヴィランで配置に着く。そして試合開始の宣言直後に轟が個性を発動させる。
「あの野郎!!」
「うわー遠慮が無い」
ビルの中が一瞬で凍らされる。爆豪の爆破により天環は凍らされずに済むが模型が凍らされている。
「あちゃーこれじゃ動かせないね」
「そこで待ってろ!」
「いや一緒に行くよ。多分ここに残っても意味無いし」
同じ様に先行しようとする爆豪に同行しようとする天環。爆豪がやられたら再度ビルを凍らせてゲームエンドである。それだけは避けなければならなかった。
「音で索敵はするから」
「……勝手にしろ」
そうして爆豪も徒歩での散策となる。探し始めて2分段々と轟の足音が近づく。
(曲がり角の階段から足音。あと15秒ほどで接敵)
インカムで情報を送る。それを聞いた爆豪が奇襲の準備を済ませる。
天環の宣言通り15秒後に邂逅し爆豪と轟の戦闘が始まる。
轟が出す氷を爆豪が最低限の爆破で砕いて行く。そして一気に近づき氷が出ない方を掴み投げ飛ばす。
「こんな戦闘に介入なんて無理だなぁ」
天環は寒い廊下の中遠い目で爆豪の勝ちを祈っていた。この状況で出て行っても微妙だろう。凍らされて足手まといがオチである。
………………………
「あっ後ろ向いてるや」
爆豪と轟の入れ替わり立ち代わりの戦闘で轟が天環に背を向ける形になった。
「距離にして4歩……次の爆発で……!」
足音を消し去る爆音を合図に天環は脚力強化で氷を踏み抜き赤髪側に距離を詰めて跳躍後に肩にかかと落としを決める。前のめりに倒れた所で踏みつけ右腕を極める。
「っぐぁ!天環テメェ」
「おいクソモブ邪魔すんじゃねぇ!」
「何で恨まれてんの!?いいや轟君確保ー」
『ヴィランチームの勝利』
爆豪と轟共に消化不良で訓練が終了する。
「何で邪魔したァ!?」
「だってさーあのままだとどっちかが倒れるまでやったでしょ?訓練として合理性に欠けると思う」
天環としての本音は寒いしさっさと終わらせて欲しかったという物であるが言わない。そして納得できないといった顔の爆豪。
「チーム戦だったって言うのが運の尽きだと思って。そのうちサシで戦う機会もあるでしょ」
天環がそれだけ言って一方的に会話を切る。お互い言い合っても無駄だと分かっているのだ。
オールマイトと行う総評で爆豪の周りへの配慮をした戦い方を褒めていたし轟の核確保方法も褒めていた。
「それと天環少……いや女史と言おうか。大きく動くスタイルなら胸に気を使った方が良いだろう。コスチューム班にもそう伝えておく」
それだけ言って総評は終わりであった。
ヴィランサイドにインカムって配布されてましたっけ?と書いた後に疑問に思ってしまった。
この主人公不意打ちしかしてないの巻。次の話でデクと一緒にワチャワチャ予定です。ちなみにUSJはダレルだろうしキンクリである。