アルケミアストーリー~クロとエルの物語~ 作:cloverlight
現在連載中のストーリーとは、前後の繋がりが一切ありませんのであしからず
みんなのニヤニヤ顔が見たくて書きました(^ω^)
雪山と平原で、レモンを拾った。
「ハイボールに合成しようか?炭酸石もあるし。」
エルサイスはそういうと、クローバーが答える前に合成を始めた。
「ハイボールより、レモネードがいい。」
「レシピが無いからできないよ。」
錬金術師だからといって、エルサイスはなんでも作れるわけではない。
エルサイスを含め、錬金術師の多くは『レシピ』を元に合成する。
その元となる『レシピ』を作れる先駆者は、ほんのひと握りの才能を持った者だけだ。
そして、残念ながらエルサイスは、その先駆者ではない。
ハイボールは作れても、レモネードは作れない。
「お酒は好きじゃない。」
「クロはすぐ酔っちゃうもんね。いいよ、僕が飲むから。」
クローバーは自他ともに認める、下戸なのだ。気持ちよく酔う前に、気持ち悪くなってしまうので、お酒は滅多に飲まない。
一方エルサイスは、ザルというより、沼だ。いくら飲んでも酔わない。
特にすることもなく、2人は平原を横切って、橋を渡り、神へ続く道に入っていく。
「海でも見に行く?」
「なんのために?」
エルサイスの誘いに、クローバーは素っ気なく答える。
「海を見るのは楽しいじゃないか。」
「そうか?」
「正しくは、海ではしゃぐクローバーを見るのが楽しい。」
「お前時々馬鹿正直だよな。」
エルサイスは照れたように笑う。
「褒めてねーよ。」
クローバーは呆れながらも、海の方へと足を進める。
天気は快晴。歩いていると少し汗ばむような陽気だ。
ひねくれ天才錬金術師の家の前を通り過ぎ、裏手に回ると、砂浜へと続く道を下っていく。
「え?は!?今飲むの!?」
「まぁいいかな?って思って。」
エルサイスは歩きながら、合成したばかりのハイボールを飲み始めた。空いた合成枠では、既に次のハイボールの合成を始めている。
「意外に行儀悪いんだな。」
「僕はそんなにいい子じゃないんだよ。」
「悪いやつって知ってたわ。」
エルサイスはクローバーの返答に肩をすくめると、ハイボールをゴクリと1口飲んだ。
海風が、2人の頬を撫でる。
クローバーは少しずつ近づいてくる海に、高揚感を覚えたが、それがエルサイスにバレたら笑われると思い、踊る心を必死で隠していた。
エルサイスはというと、そんなクローバーの心の内はお見通しで、うずうずしているクローバーを見て、楽しんでいる。
砂浜は白く、熱く、キレイだった。
「わーーー!」
どこまでも広がる青い海に、クローバーは思わず歓声をあげた。
それを見て、嬉しそうにニヤニヤするエルサイス。
「なんだよ。」
「別に。」
クローバーは一瞬迷ったが、エルサイスのせいで楽しめないのは損だと考え直すと、狩人の外套を脱ぎ捨て、海へと走り出した。
「さすがに暑いなー。」
この日差しに、エルサイスのソーサラーローブは厚すぎる。彼はクローバーが脱ぎ捨てた外套を拾うと、砂浜に座り込み、ステータス画面を開いて、軽装を探す。
暖かい日差しとは対照的に、海の水は冷たかった。クローバーはその冷たさに「きゃーきゃー」言いながら波と戯れている。
いつのまにか、コロセウムベストと、ジーニアスシューズの軽装に着替えたエルサイスが、その様子を目を細めて見ていた。
「エル!見て!魚がいる!」
そうはしゃぐクローバーに
「釣り餌がないから釣れないね。合成枠空いたら作ってあげるよ。」
と、エルサイスが優雅にハイボールを飲みながら返す。
平和な時間だ。
エルサイスが砂浜に寝そべりながら、3杯目ハイボールを飲んでいるときだった、ほろ酔い気分で気持ちのいい酔いを楽しんでいたところに
「エル!見て見て!」
と、クローバーが声をかけた。
「んー?」
ふわふわした視界で、クローバーを捉える。
「え?!あれ?釣り餌は?」
クローバーの手の中で、立派なアルブマーリンがビチビチと暴れ回っている。
「素手で捕まえた。」
「……え?」
「え……?」
2人とも、顔を見合わせて沈黙。
次の瞬間エルサイスが爆笑した。
「なんだよもー。」
クローバーは不機嫌そうにそう言うと、アルブマーリンを海に離した。
「だって、素手で魚を捕まえるなんて!」
エルサイスは笑いが止まらない。
「できるかなーってやってみたら、できた。」
「できちゃうクロはすごいよ!」
エルサイスは
「(野生児だね。)」
と思ったが、口には出さないでおくことにした。
クローバーは時々、ものすごく子供っぽくなる。子供のように、なんでも楽しめる。それは彼女の長所だろう。
その後も、2人はそれぞれたっぷり海を楽しんだ。
陽の光がだいぶ落ち着いてきた夕方には、クローバーは疲れて、両手を頭の後ろで組み、片膝を立てて砂浜に寝そべっていた。目は開いているが、トロンとしていて、眠そうだ。
その隣にはエルサイスがもう何杯目かわからないハイボールを飲みながら、座っている。
「気持ちいいね!」
エルサイスはそう言うと、ハイボールを飲み干した。
「ねぇ、私もレモネードが飲みたい。」
クローバーが不満そうに訴える。
「キスしてくれたら作ってあげるよ。」
「は?」
「そんなゴミを見るような目で見ないでおくよ。」
エルサイスはそう言うと、愉快そうに笑った。
「どうせキスしたとしても、レモネードは作れないんでしょ。」
「まぁそうだけど。クロだって、どうせキスしてくれないだろ?」
「それはどうかな?」
クローバーはそう言って、イタズラっぽく笑ったが、エルサイスはまったく相手にしない。
クローバーがキスなんて絶対するわけないと、確信があった。
風が吹き、砂浜に砂埃が舞う。
エルサイスは目を閉じてそれをやり過ごそうとした瞬間、頬になにか、冷たくて、柔らかいものが触れて、はっと目を開ける。
クローバーが顔のすぐ近くにあって、心臓がドキドキする。
「え……生臭い……。」
エルサイスの頬に押し付けられたビーチフラウンダーは、ヌメヌメしていて、生臭く、弱々しく跳ねていた。
「びっくりした?」
クローバーはしてやったりの顔で、ものすごく嬉しそうだ。
エルサイスは真っ赤になる顔を抑えて、その場に崩れ落ちた。一瞬でもクローバーの唇を期待した自分が恥ずかしく、悔しい。
「そんなものどっから出したんだい?」
「さっき捕まえた。」
「素手で?」
「うん。」
エルサイスはもうお手上げだと言うように、大きなため息をついた。予想の遥か斜め上をいくクローバーに、手も足も出ない様子だ。
「まったく、君は本当に最高だよ…。」
「それ褒めてる?」
「どうだろうね…。」
「なんだよそれ。」
おもしろくなさそうに頬を膨らますクローバー。
このまま無理やり押し倒して唇を奪ってやりたくなる衝動を、必死で抑えるエルサイス。
両者の溝は思ったよりも深かった。
「そろそろ帰ろうか。」
エルサイスはやっとの思いでそう絞り出すと、立ち上がった。
「うん。」
クローバーはそう言うと、ビーチフラウンダーを海に離してから帰路につく。
海は夕日に照らされ、ルビーのように真っ赤に光っていた。