アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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第76話 地下牢

地下牢までくると、私はエルサイスの手を乱暴に振り払い、怒りを込めた目で睨みつける。

不愉快だった。

「クロ、ごめんってば、そんなに怒らないで。」

エルサイスが眉を下げ、困った顔でこちらを説得してくる。

「仕方なかったんだよ。」

「仕方ないにしても、気に食わねーんだよ!」

私はぶつけどころのない感情を、とりあえず目の前のエルサイスに投げつけた。何もかもに腹が立つ。

私たちを反逆者扱いしたジョージ王も、取り押さえようと体に触れてきた兵士たちも、反撃しようとした私を止めたエルサイスも、全員切ってやりたい気分だった。

「クロ、落ち着いて。大丈夫だよ。」

「何が大丈夫だっていうんだ。」

「それは……まぁとりあえず落ち着こう?」

「そーやって誤魔化して!私の事何にも知らないくせに!わかったような口きくな!」

一瞬だけ、エルサイスが悲しそうな顔をしたので、私は思わず口をつぐむ。言いすぎだ。つい、口が滑ってしまった。

しかし、エルサイスが悲しげだったのはほんの一瞬で、すぐにいつものにこやかな表情に戻ると

「大丈夫だよ。」

と繰り返した。

胸がズキリと痛む。この痛みが何なのか、自分でもよくわからなかった。

「おまえも運が悪かったな。」

言い合いをしている私たちの間に、アンドルが割り込む。

「可愛そうだからこの鍵はしめないでおいてやる。適当に逃げ出すがいい。」

「そんなことしていいんですか?」

エルサイスが訝しげに首を傾ける。そんなことをしたら、今度はアンドルが反逆罪に問われるのではないだろうか。

「最近はこんなのが毎日のことでな。全員、牢に入れておいたら、いっぱいになっちまう。」

アンドルはそう言うと、疲れたため息をつく。

「最近あの王はどうも様子がおかしい。すぐにキレて、牢にぶち込めと怒鳴るんだよ。」

それは王の資質として、問題があるのではないかと、私は思った。

気が短いというのは、私も人のことは言えないが、国1つを動かす権力を持った者が短気では、それに振り回される国民達が大変だ。

「安心しろ。国王は人の顔を覚えられない。逃げたとて、明日には忘れているさ。」

「それはそれで問題のような気がしますね。」

エルサイスがアンドル苦笑いを返す。

連邦の王は、変な王だ。あんまり近づかない方がいいかもしれない。

「あぁ、それと……」

一度立ち去ろうとしたアンドルが、立ち止まってこちらを振り返る。

「魔王国の宝、だが、おそらくこの地下牢の奥にいる、あれのことだろう……。」

「いる?」

「あれ?」

私とエルサイスは顔を見合わせ、首を傾げる。アンドルの表現になんとなく違和感を覚えたが、それがなんなのかまではわからない。

「この国の宝は、地下牢の奥、宝物庫に眠っている。が、奥は魔物の巣でな。簡単には立ち入れないのだ。」

アンドルは簡単な情報だけ残すと

「じゃぁな。」

と言って去っていった。

「さて、どうしようか?」

さっきあんなに言い争ったのに、何事もなかったかのように接してくるエルサイスが、私は嫌だった。

彼にとっては、あんなのは言い争いとも言わないのかもしれない。私が一方的に、勝手に怒りをぶちまけている。ただそんな状況に過ぎない。

私ため息をついた。とにかくすべてがバカバカしかった。

別にエルサイスに、自分をもっと知って欲しいなんてことは、1ミリも思わない。

実際私は、まだこの気持ちを説明できるだけの言葉を持っていないし、他人に話せるほど、傷も癒えていない。

ただ、腹は立つ。

私が何に怒って、何に苦痛を感じているのか、何も知らないくせに、無責任になだめすかされるのは、自分の気持ちを軽く見られているようで、不快だった。

魔王国の宝がなんだろうと、私にはどうでもいい。ただなんとなくむしゃくしゃしていたので、体を動かして発散したい。そんな気分だ。

「行くぞ。」

私はそう短く言うと、エルサイスの返事も待たずに、地下牢の奥、炎の洞窟へと入っていった。

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