アルケミアストーリー~クロとエルの物語~ 作:cloverlight
現在連載中のストーリーとは、前後の繋がりが一切ありませんのであしからず
話の中の『ユイゼ』さんとそのYOME『セリク』、『レッコ』さんとそのYOME『ラト』の設定は、ユイゼさんレッコさん本人への取材を元に構成しています。
お二人ともご協力ありがとうございました・:*+.\(( °ω° ))/.:+
「あー!ラトちゃーん!!」
遠くに弟であるラトを見つけたユイゼは、パートナーのセリクを置いて走り出す。
「あ、急に走ると危ないよ!」
ユイゼはセリクのそんな注意も聞かず、石化した村の大通りをパタパタ走っていった。その後ろをセリクが急いで追いかける。
ユイゼの目線の先には、何やら真剣に話し合うレッコとラトがいた。2人はまだユイゼの存在に気がついていないようで、ユイゼの呼びかけに反応を見せなかった。
「ラトちゃーん!」
ユイゼは走りながらもう一度呼びかけ手を振る。やっと気がついたラトが、驚いて顔を上げた。それが嬉しくてユイゼが顔をほころばせた瞬間
「きゃっ!」
ユイゼは石につまづき、すてーんと前のめりにすっ転んだ。派手に転んだせいであたりにもわんと土埃が舞った。
「ユイゼ!」
「お姉ちゃん!」
セリクとラトが慌てて駆け寄って、ユイゼを助け起こす。ユイゼは
「うぅうう……セリクぅう……。」
と弱々しい声を上げながらゆっくり起き上がる。
「大丈夫?」
目に涙を浮かべるユイゼにセリクはハンカチを渡した。
いつもなら「うわーん」と泣き出してセリクに抱きついてしまうユイゼだが、今は弟のラトが傍で見ている。ユイゼは大きく鼻をすすって涙を押し込めると、セリクからハンカチを受け取り土埃で汚れた顔を拭く。
「大丈夫?」
「大丈夫。」
ラトに顔を覗き込まれたユイゼは、奥歯を噛んで込み上げる嗚咽を飲み込んだ。ラトの前でいつもの甘えん坊の泣き虫の姿は見せられない。たとえ1歳しか違わなくても、自分はお姉ちゃんなのだ。ユイゼはそう強がった。
「ユイゼさん、セリクさん、お久しぶりっす!」
ラトの後ろからレッコがひょっこり顔を出す。
「久しぶりだね。元気だった?」
セリクはそう言って2人に優しく微笑みかける。ラトはユイゼの弟だが、セリクにとっても弟みたいなものだし、そしてそのパートナーであるレッコも妹ように思っていた。それはユイゼも同じだった。2人はレッコとラトの前ではお兄ちゃんとお姉ちゃんなのだ。
「元気っす!冒険者も板についてきたし、もうなんでもできるんっすから!」
そう得意そうに言うレッコを
「なんでもはさすがに言い過ぎだよ……。」
っとラトがたしなめる。
その横でセリクがユイゼのスカートについたホコリをポンポンと叩いて払おうとする。
ユイゼはそれを手で制して
「大丈夫。」
っと言って不満そうに唇を尖らせた。ラトの前で世話を焼かれるのが恥ずかしいらしい。そんなかわいいプライドを見せるユイゼが愛おしくて、セリクは思わず笑ってしまった。
「2人はどうしてここに?」
セリクがそう尋ねると、レッコとラトはギクリと体を強ばらせ目を泳がせる。
「えっと……」
「ちょっと用事があって……」
俯き加減に目を逸らす2人を見て、ユイゼとセリクは顔を見合わせた。
石化した村は、いつも連邦や公国をウロウロしているレッコとラトの行動範囲からいうと、随分遠い場所だった。わざわざこんな所まで来たのには、それなりの理由があるはずなのだが、その理由が人に言えないようなものなら、少し心配だ。
ユイゼとセリクは目だけでそう会話すると、うんっと頷き合いラトとレッコに向き合う。
「ラトちゃん!隠し事してるでしょ!」
「うっ……。」
ユイゼ詰め寄られ、ラトは困ったように呻き声をあげる。
「なんにもしてないっすよ!」
横からレッコが助け舟をだしたが
「ほんとに?」
っと真剣な顔のセリクに射抜くように見つめられ
「ほ、ほんと……っす……よ……。」
と尻すぼみになってあっという間に沈没してしまった。
「何か困ってるなら、相談してくれていいんだよ?」
「そうそう、私たち姉弟なんだから!ね?」
2人がそう優しく言うと、レッコとラトは「どうする?」というように顔を見合わせる。
「そんなん、とっとと事情話して、手伝ってもらったらええんちゃう?」
「ボルシチ!!」
ラトの鞄の中から紫色の鳥が飛び出してきて、名前を叫んだレッコの頭にとまる。
「お前!よけーなこと言ってんじゃねーよ!」
頭にとまったボルシチを捕まえようとしたレッコの手を、ボルシチはひらりとかわすとパタパタと羽ばたき、今度はラトの肩にとまる。
「ボルちゃん久しぶり。」
「おおきに。」
ユイゼの挨拶に、ボルシチは気のいい返事をする。
「うーん……レッコ、とりあえず話してみよう?僕ら2人じゃ難しいの確かだし……。」
ラトが降参したようにレッコに言う。レッコはしばらく不満そうな顔で黙っていたが、やがて諦めたため息つくと
「そうだね。」
とラトの提案に従った。