アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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第14話 月夜の戦闘

走りの勢いを利用して、魔物の手前5mのところで踏み切り、飛び上がる。

今宵は満月で、夜でもそれなりに明るく、視界は悪くない。

夜空に舞いながら、剣を振り上げ、下を見ると、魔物と目が合った。

窪んだ目と大きな鷲鼻、異様に長い手、ブツブツした肌、痩せた巨人のような姿、オーガ族だ。

落下しながら、頭を狙って剣を打ち下ろす。スカルティガーの一撃。

入ったはずだが、手応えが薄い。肉を切った感じがしない。金属に弾かれたような感覚だ。

「かてぇ!」

そう叫んで、エルサイスに報告する。

普通のその辺にいるオーガとは格が違うようだ。突然変異の亜種だろうか?

着地は成功。バックステップして、距離をとる。

「15秒だけ弱体化させるよ。」

やっと追いついたエルサイスが、そう言って、魔法の詠唱を始める。

「(あんなに食べるから走れないんだ。)」

そう思いながら、次の攻撃の準備をする。

夜の冷たい風が頬に吹き付け、走った時に出た汗を冷やしていく。しかし、寒さは一切感じない。

気分は高揚していて、むしろ熱いくらいだ。アドレナリンが出ているのを自覚する。

あたりが一瞬真っ暗になり、魔法陣が浮かび上がった。エルサイスの魔法、グランドクロスだ。

グランドクロスには、敵の物理・魔法両方の、攻撃力、防御力を下げる効果がある。

グランドクロスの光が魔物を貫いた瞬間、私は連続でスキルを叩き込む。

剣全体を凍らせて敵を貫く、氷晶刃。

水の力を纏った剣戟、流水剣。

どちらもオーガ族の弱点属性で、発動までの時間が短い単体スキルだ。

「攻撃予告あり。」

「了解。支援するからヘイト上がるよ。」

エルサイスが詠唱に入ると、魔物がそちらを向く。

エルサイスの使う全体魔法や補助魔法は、私の単体攻撃に比べて、ヘイトが高い。すぐ敵に狙われてしまう。その割に、彼は紙装甲なのだ。

「こっち向け!デカブツ!」

プロヴォーグで挑発して、無理やりこっちを向かせる。魔物の目が、怪しく光って、私を捉える。

「こい!」

剣を構える。恐怖は1ミリも感じない。むしろ気持ちがいい。私は戦っている。生きている。

私が前衛で、エルサイスを守りながら攻撃し、エルサイスが後衛で、私を支援しながら援護する。

それが2人の戦闘スタイルだった。

両手を振り上げるオーガ。

そこに、エルサイスのスペクトラルパウダーが滑り込む。光のカーテンが私を包み、物理防御力と魔法防御力をあげてくれる。

最高のタイミングだ。

魔物は、両手をめちゃくちゃに振り回し、連続攻撃してきた。

オーガの爪が、何度も私を襲ったが、被害は少ない。肌の表面に小さな傷がついた程度だ。

戦闘において、パートナーとの連携は、最重要事項だ。連携がうまく取れないと、戦闘が長引き、肉体的にも精神的にも消耗が激しくなる。

前に一度、エナと共闘する機会があった。

あの時は本当に最悪だった。思い出すだけで吐き気がしてくる。

簡単なボスのはずだったのに、まったく連携がはかれず、ものすごい苦労したのだ。

私が前衛で前にいたら、エナが私より前に出てきたり、後衛にスイッチするため下がったら、エナも下がってきたり、エナが指示を出すので、それに従っていたら、「自分で動いてよ」と怒られたり、もう本当に何がしたいのかまったくわからなかった。

挙句の果てにエナは「ふふ……この疼き!まさに生命の軌跡!」「闇の炎に抱かれて深淵に消散しなさい!」などと意味不明なセリフを吐き始め、事態をさらに混乱させた。

結局、見かねたエルサイスが助太刀してくれて、なんとか倒したのだ。

前に出たいのか、下がりたいのか、指示したいのか、されたいのかだけでなく、攻撃のタイミング、防御や支援、ヘイト管理などなど、様々な情報を共有し、お互いのしたいことと、してほしいことを考え、実践するのが、連携だ。

もう何千回と一緒に戦ってきたパートナーとの共闘は、余計なことを一切考える必要が無い。

基本的に、エルサイスは私の背中側にいるので、その姿を視界に収めることはできない。

でも、その存在はたとえようもなく身近に感じる。

考えていることも、何をしようとしているのかも、どうしてほしいかも、すべてを共有している気になるのだ。

私は、それが心地いい。

1人ではないと、仲間がいると、実感できる。

そんな理由で戦闘を好むのは、頭がおかしいといわれるのだろうが、そうやって誰かに接続できる術を、私はここにしか持ってないのだ。

エリアボスを狩りまくった戦闘狂の日々だって、生き続けることの絶望を確かめながら、1人ではないという希望に縋っていた。

こんな下らない承認欲求に付き合わされるエルサイスも、かわいそうだなと哀れみながら、自嘲する。

私は、振り返らない、迷うこともない、思う存分、剣を振り回す。

攻撃された反撃に、魔物の脇腹にオーシャンリッジを叩き込む。

いい手応えだった。

少しバランスを崩したので、2,3歩下がって体勢を立て直す。

ふらついている私の後ろから、エルサイスがウォーターヴェインで追撃を加え、援護してくれる。

「攻撃予告あり。」

「ごめん、クールタイム中。耐えて。」

エルサイスが淡々とそう言う。

できないことを、できないとはっきり言う。それも大事なことだ。

「がってんしょうち!」

私は構わず突っ込んでいく。

エルサイスがファイバーフロウを唱える。一時的に武器の強度が上がり、物理攻撃力が高まる補助魔法だ。

デモンブレイド=アビスの刃が黄金色に光る。

いい支援だ。これならあと一撃でいける。

魔物の両手が振り下ろされる。

焼け付くような痛みが、右頬から肩、腕と走っていく。肌が破け、血が吹き出す。

それでも、一切怯むことなく、剣を振るう。

「これで最後だ!」

地を這う水の一撃、ウォータースラッシュ。

「ぐわああぁぉぁああ」

魔物は、断末魔をあげると、倒れた。

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