アルケミアストーリー~クロとエルの物語~   作:cloverlight

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第22話 兵士?盗賊?

雨の日というのは、それだけで憂鬱だ。

宿屋の窓から、街を見下ろす。

人通りはまばらで、みんなどこか早足で必要最低限の用事を済ませている。

エルサイスはベットの上にあぐらをかいて、プレジャーBOXの開封作業をしている。

私はついさっき起きたばかりで、眠い目を擦りながら、彼がが合成してくれた、クロムッシュを食べていた。

「あと何個?」

「あとねー…64個。半分くらい開けたね。」

「水杖は?」

「アクアウッドロッドはまだ出てないよ。今のとこ火片手2、風両手1、土短剣1。」

ほしいものは中々出ないものだ。

ガチャだってそうだ。「とりあえず回しとくか」で回すといいのが出る。「これ絶対ほしい」で回すと出ない。あと、周りの人がみんな「UR上下揃った」と喜んでいるからといって、「自分も回せば出る」と思っていると、絶対出ない。

世の中には、そういう目には見えない法則がいっぱいある。

「オーブばっかりだよ。あと時々僕の強化素材。」

エルサイスがつまらなそうに言う。

「おーおー。強化素材飲んどいてよ。強くなれ、強くなれ。」

私の投げやりな言い方を、エルサイスは

「はいはい」

と言って受け流した。

城塞都市は、今日は珍しく雨天だ。大粒の雨が降り注ぎ、石畳の道を黒くしている。

雨の日は、余程のことが無ければ、冒険には出掛けず、街の中で過ごすことが多い。

私が雨が嫌いなのもあるが、雨の日の戦闘というのは、そうではない日よりもずっと難しいからだ。

視界は悪いし、足元はぬかるみで不安定だし、声が通りにくいし、思わぬアクシデントが起こりやすい。

そういうアクシデントがあると、消耗が激しく、やりたいことがあっても、結局達成出来ずに終わることが多い。

それなら最初から出掛けない方がいい。

「あ、出た出た。アクアウッドロッド。」

エルサイスが淡々と言う。

「おー、じゃぁ合成しといて。」

「とりあえず、これあげる。」

エルサイスはそう言うと、合成したばかりの紅茶をくれた。私はそれに口をつけると、また窓の外を見た。

雨は止みそうな気配はない。空は黒い重そうな雲でいっぱいだ。

「あ、クロ。」

「んー?」

「鉄鉱石足りないや。」

「え?」

「素材足りなくて合成できない。」

「えー……。」

これだから、雨の日は嫌いだ。

 

 

 

炎の洞窟は、ほんのり暖かく、カラッとしていて、雨の外より気持ちがいい。

ファントムロッドIを合成するのに、鉄鉱石が20個必要だったが、15個しか持っていなかったらしい。

鉄鉱石なんて、その辺でよく拾うので、個数なんて気にもしなかった。

酒場にいた他の冒険者から、この街の地下洞窟『炎の洞窟』に採取ポイントがあると教わり、取りに来たのだ。

ここは地下だから、雨に濡れる心配も無いし、ずっと宿屋でダラダラ過ごすよりましだろう。

私は退屈は苦手なのだ。

「5個くらいすぐ拾えるだろ。」

「そうだね。」

次々エリア移動しながら、リポップした鉄鉱石を拾う。中々わかないときは、暇つぶしにその辺にいるコノミや、べネッシーを狩る。

リポップ時間が長く、結構な時間がかかったが、それでも午前中には終えることができた。

「帰るか。」

暇つぶしの戦闘でほどよい汗をかいていたが、まだまだウォーミングアップというところだ。しかし、今日はもうすることはない。いいトレーニングだと思うことにする。

「そうしようか。」

そう言ったエルサイスに続いて、出口に向かう。この炎の洞窟の最初のエリアは、連邦の地下牢として利用されている。

地下牢は炎の洞窟内部に比べて、ひんやりしていた。火照った体に丁度いい温度だ。

「あ。」

エルサイスが何か見つけたような声を出す。

「ん?」

そちらを見ると、兵士の格好をした長身の男がいた。フードを被っていたので、顔は見えない。

「あれ、昨日リーヤンさんが言ってたペンダントを盗んだ盗賊かな?」

「なんだあんた。俺がペンダントを盗んだ?何を言ってるんだ?」

男は中々耳ざとい。エルサイスの声に反応し、こちらに出てきた。

「俺はグレン。アルブ連邦の兵士だ。ここは我ら連邦兵士が警備をとされた場所。あんたらこそ、ここに近づくな。」

そう言った男は、赤茶色の髪の間から、黄色い腫れぼったい目を覗かせた。なんとなく陰気臭い。

エルサイスが「どうする?」と目配せしてくる。

リーヤンのことはどうでもよかったが、この兵士なのか、盗賊なのかわからない男には、少し興味がある。

「本当に兵士なの?」

私の質問に、グレンは眉をひそめ、顔を歪めた。不快感を示したのか、正体がバレそうで焦っているのか、まだ判断はつかない。

「疑っているなら、証明書をみるか?」

グレンはそう言うと、ポケットを探る。

「……ない、だと……?どこへ行った……?まさか落としたのか……?」

そう焦る様子のグレン。

「何か怪しいね。」

エルサイスが私に耳打ちする。

ペンダントはどうでもよかったが、こいつが盗賊なら盗賊で、捕まえるのは悪くない。連邦に恩を売っておくことに、損はないだろう。

ただ、こいつが本当の兵士だった場合、大変面倒なことになる。

「どうだろうね?」

「あんたが俺を疑っても、俺がアルブ連邦の兵士であることは揺るぎがない事実だ。」

グレンはそう言ってこちらを睨む。

グレンは名前を名乗った。盗賊自分の名前を自ら名乗るだろうか?しかし、グレンは兵士の証明書を持っていないようだった。そんな大事なものを、まともな兵士が無くすだろうか?

「エルはどう思う?」

「うーん。まぁ怪しいよね。僕の感想はそれだけかな。」

下手に手を出さない方がいいかもしれない。私がそう思った時、グレンの後ろに宝箱があるのを発見した。

「あの宝箱は?」

そう言うと、グレンは明らかに挙動不審になった。目を泳がせ、落ち着きなく腕を何回も組み替えている。

怪しい。そしてそれとは別に、宝箱の中身が気になる。

「俺はこの牢屋に近づこうとする者を、排除するよう陛下から申し使っている。」

グレンはそう言うと、腰から剣を抜いて構えた。

「あんたが立ち去らないなら、俺は命令に従ってあんたをこの場から排除する。」

何とも急で、乱暴な話だ。

でも、悪くない。私の中の、戦いの血が騒ぐ。ウォーミングアップは既に済んでいた。

「多勢に無勢じゃ卑怯だ。エル、手出すなよ。」

エルサイスは、何も言わず、数歩後ろに下がって身を引いた。エルサイスはいつだって私の意思を尊重してくれる。いいパートナーだ。

もう私は、グレンが兵士だろうと、盗賊だろうと、どうでもよくなっていた。戦えて、それが楽しければそれでいい。

後悔先に立たず。

私はデモンブレイド=アビスを構えた。

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